品川区空き家等対策計画。令和6年3月。品川区。 目次。 第1章、計画の基本事項、 1ページ。 1、背景と目的、1ページ。 2、法改正の動き、2ページ。 括弧1、不動産登記法の改正、2ページ。 括弧2、民法の改正、2ページ。 括弧3、空家等対策の推進に関する特別措置法(空家法)の改正、3ページ。 3、位置付け、3ページ。 括弧1、国との関係、3ページ。 括弧2、区における位置付け、3ページ。 4、計画期間、4ページ。 5、本計画における用語の定義、4ページ。 第2章、空き家等を取り巻く状況、9ページ。 1、人口推計、世帯数等からみた空き家の状況、9ページ。 括弧1、将来の人口推計、9ページ。 括弧2、区内の世帯数・住宅数、9ページ。 2、区が実施する調査、11ページ。 3、空き家の状況、12ページ。 括弧1、追跡調査からみた空き家の状況、12ページ。 括弧2、アンケート調査からみた空き家の状況、16ページ。 括弧3、空き地および空き地等の状況、19ページ。 括弧4、空き家等の相談状況、20ページ。 括弧5、改善された空き家の状況、21ページ。 括弧6、空き家等に対する行政代執行の実例、22ページ。 4、区内の道路状況、23ページ。 第3章、空き家等を取り巻く課題、25ページ。 1、課題発生の過程、25ページ。 2、課題の要因、26ページ。 3、課題の整理、29ページ。 第4章、空き家等に対する方針および施策、30ページ。 1、達成目標、30ページ。 括弧1、目標値の設定、30ページ。 括弧2、進捗管理、30ページ。 2、対象とする地域、31ページ。 3、対象とする空き家等の種類、31ページ。 4、対策の方向性、32ページ。 5、空き家等に対する方針、33ページ。 第5章、実施体制、48ページ。 1、対策の実施体制、48ページ。 2、各主体の役割、49ページ。 参考、品川区空き家等適正管理審議会、51ページ。 括弧1、設置の目的、51ページ。 括弧2、委員の構成、51ページ。 第1章、計画の基本事項。 1、背景と目的。 少子高齢化や社会情勢の変化に伴い、居住等として使用されていない空き家が全国的に年々増加しています。このうち、適正に管理されていない空き家には、火災や倒壊等の危険性、公衆衛生の悪化、景観の阻害等、様々な問題を引き起こす可能性があります。 また、建物内等に廃棄物が放置されるいわゆるごみ屋敷や空き地についても、その対応が必要となっています。 今後、さらに空き家等が増え続けると、これらの問題が区民の生活環境に与える影響は、より一層深刻化すると予測されています。 こうした背景から、国は平成27年5月26日に空家等対策の推進に関する特別措置法、以下、空家法という、を施行し、国、都道府県、区市町村の緊密な連携による空き家に関する施策を推進しています。 品川区においても、品川区空き家等の適正管理条例、以下、条例という、の施行や、品川区空き家等実態調査等の実施により、区内における空き家等の実態を把握してきました。 平成31年には品川区空き家等対策計画を策定し、適正管理の促進や自主的な除却の支援など空き家対策の施策を講じてきました。 計画策定以降、所有者不明土地への対応や今後の空き家対策のさらなる推進のため、空家法や民法等の改正が行われており、国において空き家対策が強化されています。 そのため、品川区においても国、東京都の動向を踏まえ、品川区空き家等対策計画の中間見直しを行います。 表1-1、空き家等に対する取り組みの経過。 2、法改正の動き。 近年では、所有者不明土地が増加しており、今後ますます深刻化するおそれがあることから、所有者不明土地の解消に向け不動産登記法や民法の見直しが行われました。 また、令和5年には空家法が改正され、周囲に悪影響を及ぼす前の段階からの対応など、空き家対策が総合的に強化されました。 括弧1、不動産登記法の改正。 相続登記の申請は義務ではないことから、相続登記されず所有者不明土地が増加していましたが、令和6年4月から相続登記の申請が義務化され、不動産の取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をすることが義務付けられます。 括弧2、民法の改正。 所有者が特定できないまたは所在が不明な場合には、土地の円滑な利用、管理が困難な状況にありました。 所有者不明土地の利用の円滑化を図るため、隣地の使用や越境した竹木の枝の切取り、不明共有者がいる場合への対応など令和5年4月に民法の見直しが行われました。 図1-1、民法の改正内容。 括弧3、空家等対策の推進に関する特別措置法の改正。 これまでの空家法では、周囲に悪影響を及ぼす特定空家等への対応を中心としていましたが、特定空家等となる前の段階の対策が強化されました。 空家等活用促進区域の創設や、放置すれば特定空家等になるおそれのある空き家を管理不全空家等とし、助言、指導、勧告をすることが新たに可能となりました。また、特定空家等に対しては、緊急代執行制度の創設により緊急時の早急な実施が可能となる等、空家法の改正が行われました。 3、位置付け。 括弧1、国との関係。 本計画は、空家法第7条第1項に規定する空家等対策計画であり、国の基本的指針である、空家等に関する施策を総合的かつ計画的に実施するための基本的な指針、平成27年2月26日、総務省、国土交通省告示第1号、に即し、策定するものです。 括弧2、区における位置付け。 本計画は、空家法および条例の規定や品川区総合実施計画、品川区まちづくりマスタープラン、品川区総合戦略等の上位計画との整合性を図ります。 図1-2、品川区空き家等対策計画の位置付け。 4、計画期間。 計画期間は、令和元年度から令和10年度までの10年間とします。 ただし、社会情勢、事業の進捗状況等の変化に的確に対応するため、5年を目処に行う中間見直しのほか、必要に応じ、計画の見直しを行います。 なお、事業の進捗状況等、見直しおよび次期計画の策定時期においては、本計画の、第4章、空き家等に対する方針および施策、で掲げる各施策の効果を検証し、継続的かつ実効性のある施策を検討します。 5、本計画における用語の定義。 本計画で使用している用語の定義は、以下の通りです。 空き家とは。空家法ではあきやとうと呼んでいます。 居住その他の使用がなされていない建築物をいいます。共同住宅や長屋は、住戸全てが空いている場合が対象となります。 居住、その他用途で使用されていない状態かどうかは、人の出入り、水道、電気、ガスの使用状況、建物の朽廃状況等から総合的に見て判断します。 図1-3、空き家の解説。 表1-2、空き家の例。 空家法第2条第1項より。 この法律において空家等とは、建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地、立木その他の土地に定着する物を含む。第14条第2項において同じ、をいう。ただし、国又は地方公共団体が所有し、又は管理するものを除く。 空き地とは。 区の区域内に存する土地、空き家以外の建築物の敷地を除く、をいいます。 条例第2条第2項より。 区の区域内に存する土地、空き家以外の建築物の敷地、建築基準法施行令、昭和25年政令第338号、第1条第1号に規定する敷地をいう、を除く、をいう。 空き地等とは。 空き地、空き家以外の建築物の敷地および空き家以外の建築物をいいます。 条例第2条第3項より。 空き地、空き家以外の建築物の敷地および空き家以外の建築物をいう。 図1-4、空き地と空き地等の解説。 所有者等とは。 空き家または空き地等の所有者や占有者または管理者をいいます。 条例第2条第5項より。 空き家または空き地等を所有し、占有し、または管理する者をいう。 区民等とは。 区内に住所を有する者ならびに区内で事業活動を行う法人その他の団体および個人をいいます。 条例第2条第4項より。 区内に住所を有する者ならびに区内で事業活動を行う法人その他の団体および個人をいう。 適正管理状態とは。 空き家等の所有者等によって、適正に管理されている状態をいいます。 不適正管理状態とは。 空き家等の所有者等によって、適正に管理されていない状態をいいます。空家法の管理不全空家等、管理不全状態にある空き家、空家法では特定空家等、および条例の廃棄物等に起因する管理不全状態にある空き地等を含みます。 管理不全空家等とは。 そのまま放置すれば、管理不全状態にある空き家、空家法では特定空家等、となるおそれのある空き家等を示します。 管理不全空家等も、管理不全状態にある空き家、空家法では特定空家等、と同様に品川区から勧告を受けた場合、固定資産税の住宅用地特例、1/6等に減額、は解除されます。 管理不全状態にある空き家、空家法では特定空家等とくていあきやとうと呼んでいます。 空き家のうち、所有者等により適正に管理されていないために、保安上危険であったり、衛生上有害であったり等、周辺の生活環境に悪影響を及ぼすおそれがあるものを示します。 図1-5、管理不全状態にある空き家のイメージ。 空家法第2条第2項より。 この法律において特定空家等とは、そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等をいう。 条例第2条第6項より。 管理不全状態は、次のいずれかに掲げる状態をいう。 ア、老朽化、自然災害等のために倒壊し、または建築材等が飛散するおそれがある状態。 イ、不特定の者が侵入すること等により火災を発生させ、または犯罪を起こすおそれがある状態。 図1-6、空き家の状態別イメージ図。 廃棄物等に起因する管理不全状態にある空き地等とは。 廃棄物等に起因する管理不全状態にある空き地等をいいます。具体的には、以下のいずれかの状態にある空き地等が該当します。 1、放置されたごみ等が原因となって火災を発生させるおそれのある状態。 2、ごみが放置され、飛散するおそれのある状態。 3、周辺の生活環境に著しい障害、ごみ等を原因とする悪臭や害獣、害虫の発生、草木の著しい繁茂や枯死等、を及ぼす状態。 図1-7、廃棄物等に起因する管理不全状態にある空き地等のイメージ。 条例第2条第7項より。 廃棄物等に起因する管理不全状態、次のいずれかに掲げる状態をいう。 ア、みだりに放置された廃棄物廃棄物の処理及び清掃に関する法律、昭和45年法律第137号、第2条第1項に規定する廃棄物をいう。以下放置廃棄物という、に起因して火災を発生させ、または放置廃棄物が飛散するおそれがある状態。 イ、放置廃棄物に起因する悪臭、ねずみ、害虫等の発生または草木の著しい繁茂もしくは枯死により、周辺住民の生活環境に著しい障害を及ぼし、または及ぼすおそれがある状態。 第2章、空き家等を取り巻く状況。 1、人口推計、世帯数等からみた空き家の状況。 括弧1、将来の人口推計。 区の人口推計を見ると、平成30年に算出された前回推計では、令和26年の447,884人をピークに増加すると予測されていましたが、令和3年度推計値では、令和23年まで増加し続け、ピーク時の人口は、下方修正され、429,304人と予想しています。老年人口、65歳以上は、令和42年までの推計期間中一貫して増加し、令和42年には老年人口の比率が約35.7%となり、区民の3人に1人以上が高齢者となるとされています。 図2-1、品川区の将来的な人口推計のグラフ。 括弧2、区内の世帯数、住宅数。 区内の人口、世帯数と、平成30年住宅、土地統計調査による区内の住宅数の推計値を比較しました。 表2-1、品川区の人口、世帯数と住宅数の比較。 参考、区内のマンションの空き室状況およびマンション関連事業。 平成28年度品川区分譲マンション実態調査では、間取りが1Rから1LDKの居室数は増加傾向、2Kから2LDKや3K以上の居室数は横ばいであり、分譲マンションの全体の居室数は増加傾向にあります。 しかし、長期空き室が10戸未満あるマンションは21.3%、10から19戸が0.3%、20から49戸が0.5%と、全居室が使用されているわけではありません。空き室の増加により、管理機能の低下や共同住宅内の住環境の悪化、未修繕や不衛生な階段やロビー、ごみ置き場等、をまねく可能性があります。 品川区では、マンション管理セミナーや建替えや修繕における専門窓口の設置等のマンション管理支援を行っています。また、東京都の管理状況届出制度に基づく管理不全の兆候があるマンションへの調査や助言などを実施し、専門家と連携しながらマンションの適正な管理を促進していきます。さらに、令和5年度より開始したマンション管理計画認定制度により、優良な管理計画を有するマンションに対し区が認定を行うことで管理組合の自律的な運営による適正なマンション管理を促進します。 表2-2、マンション関連事業の一覧。 2、区が実施する調査 品川区では、区内にある空き家等の所在および所有者等を把握するための調査のほか、空家法や条例の規定に基づく措置等を行うために必要な調査を行っています。 空き家等調査の種類について。 品川区が実施する空き家等調査には、任意調査、および空家法や条例の規定に基づいた調査の2つに大別されます。 任意調査としては、区内にある空き家等の実態を把握するための実態調査があります。さらに、実態調査の結果について状況の変化を把握するための追跡調査があります。 空家法や条例の規程に基づいた調査としては、個別に現地に赴き、敷地内に立ち入ることなく外観目視により状況を確認する実態調査があります。また、空家法や条例に規定される助言、指導、勧告、命令を行うために必要な限度において、敷地内に立ち入って空き家等の状況を確認する立入調査があります。今後、品川区では必要に応じて各調査を実施し、空き家等の実態把握および利活用、除却促進に努めていきます。 表2-3、空き家等調査の種類一覧。 3、空き家の状況。 括弧1、追跡調査からみた空き家の状況。 空き家の推移について。 これまでの実態調査や追跡調査の結果、平成28年度、および平成30年度末において大きく空き家数が減少しています。いずれも居住や除却が確認され、空き家ではないもしくは空き地となったため減少している状況です。 平成30年度以降は毎年、追跡調査を実施しており、年間15から30戸程度、空き家総数が減少し続け、令和4年度末には空き家数は541戸となっています。 図2-2、品川区における空き家数の推移のグラフ。 品川区の地区別空き家数について。サンプル数は合計541戸。 地区別の空き家数の分布に着目すると、荏原地区が最も多く270戸、次いで大井地区が145戸、品川地区が72戸、大崎地区が54戸となっています。 表2-4、令和4年度末の地区別空き家数。 図2-3、品川区の地区別空き家数の比較のグラフ。 平成28年度と令和4年度末の地区別空き家数を比較すると、北品川のみ空き家数が増えており、その他の地域では空き家数は減っています。特に空き家数が減少している地域は豊町、西大井、戸越、二葉、大井となっています。 図2-4、平成28年度の地区別空き家分布。 図2-5、令和4年度末の地区別空き家分布。 住宅、土地統計調査における空き家数について。 平成30年住宅、土地統計調査によると、昭和33年以降、日本の空き家数は増え続け、平成30年には約849万戸となっています。また、空き家率も年々増加しており、平成25年から0.1ポイント上昇した13.6%と過去最高となっています。空き家率とは住宅の総数に占める空き家の割合を言います。 東京都においては、平成30年の空き家数は約81万戸、空き家率10.6%となっています。平成25年と比較し、いずれも減少しています。 品川区では、空き家率9.8%、23,860戸と、国や東京都と比べ1.6ポイント減少している状況です。 表2-5、平成30年住宅、土地統計調査による空き家数、空き家率。 図2-6、令和4年度の地区別空き家分布のグラフ。 なお、空き家数および空き家率は、住宅、土地統計調査を基に整理しています。 当該調査は、品川区で実施している実態調査および追跡調査と異なり、マンションやアパート等の集合住宅や賃貸用住宅の空き室等も1戸としてカウントしています。 また、品川区の実態調査のように、電気メーターの稼働状況等は調査せず、外観のみで判断し、空き家をカウントしています。 そのため、これら調査手法の違いにより、調査結果の数値に誤差が生じています。 括弧2、アンケート調査からみた空き家の状況。 平成26年度実態調査と同時に実施した空き家と思われる建物1,679戸の所有者に対する住まい方アンケート、以下、住まい方アンケートという、では、542戸の建物の所有者から回答が得られ、回答率は32.2%でした。その結果は次のとおりです。 なお、本調査は複数回答を含んだ調査項目となっているため、各調査項目における回答数は異なっています。 空き家になった理由について。複数回答、回答数184件。 空き家になった理由としては、相続により取得したが、そのままとなっていると回答したかたが最も多く52件、次いで、別の住まいへ転居した、親や子どもとの同居、福祉施設への入所を含むと回答したかたが48件、賃借人などの入居者が退去したと回答したかたが40件でした。 図2-7、空き家になった理由のグラフ。 維持管理を行っていない理由について。複数回答、回答数19件。 維持管理を行っていない理由としては、遠方に住んでおり、維持管理ができないと回答したかたが最も多く6件、次いで権利者等が複数のため、維持管理が困難であると回答したかたが5件、高齢や身体が不自由なため、維持管理したくてもできないと回答したかたと費用の問題で維持管理ができないと回答したかたが4件でした。 図2-8、維持管理を行っていない理由のグラフ。 建物の現在の状況について。複数回答、回答数182件。 建物の現在の状況としては、現在でも住める状態である、特に目立った破損はないと回答したかたが最も多く115件、次いで建物内部に破損があると回答したかたが33件、外壁の一部に破損、崩れがあると回答したかたが27件でした。 図2-9、建物の現在の状況のグラフ。 建物で困っている点について。複数回答、回答数155件。 建物で困っている点としては、特に困っていることはないと回答したかたが最も多く107件、次いで借り手、買い手がいないと回答したかたが20件、取り壊したいが費用が不足していると回答したかたが19件でした。 図2-10、建物で困っている点のグラフ。 建物の利活用希望について。回答数191件。 建物の利活用希望としては、利活用したいと条件次第で利活用を考えたいと回答したかたを合わせ66.5%と、過半数を占めています。 図2-11、建物の利活用希望のグラフ。 行政に期待する支援について。複数回答、回答数69件。 行政に期待する支援としては、取り壊しの費用を助成してほしいと回答したかたが最も多く41件、次いで修繕や建替えの費用を助成してほしいと回答したかたが37件、建物の耐震性、老朽化による危険性の診断を支援してほしいと回答したかたが13件でした。 図2-12、行政に期待する支援のグラフ。 括弧3、空き地および空き地等の状況。 品川区では、令和4年度末時点で、不適正管理の空き地10ヶ所、不適正管理の空き地等54戸を確認しています。空き家とともに、空き地や空き地等に対しても、施策を実施していく必要があります。 図2-13、雑草が敷地外に越境している空き地のイメージ図、樹木が著しく繁茂している空き地等のイメージ図。 括弧4、空き家等の相談状況。 区の窓口および空き家ホットラインについて。 区の窓口および空き家ホットラインには、年間200から300件程度の所有者等からの相談や近隣住民等からの情報提供があります。相談の内容としては草木の繁茂に関する内容が最も多く、そのほか家屋の破損や動物、害虫の発生などがあります。 また、品川区からの指導等により、所有者等が対処した場合においても、再び草木が成長することにより、再度近隣住民等から情報提供いただくことがあります。 表2-6、相談窓口の対応状況。 図2-14、年度ごとの相談件数のグラフ。 空き家専門相談窓口について。 民間事業者と協定を締結し、空き家専門相談窓口を新たに開設しました。令和3年8月から受付を開始し、令和3年度には25件、令和4年度には28件、計53件の相談を受けています。そのうち15件、28.3%は解決済みとなっています。 解決済みの15件のうち、建替えが5件と最も多く、次いで売却、管理と剪定、および、解体が3件でした。 表2-7、空き家専門相談窓口における相談件数。 図2-15、空き家専門相談窓口における相談内容ごとの件数。 括弧5、改善された空き家の状況。 不適正管理状態にある空き家については、区が所有者等に対して文書や訪問等により改善を促しています。 令和4年度末は、居住確認または除却された空き家は57戸、不適正管理状態から改善された空き家は36戸あります。また、平成28年度以降、新たな空き家の発生に比べて除却または改善された空き家が多いため、空き家数は年々減少しています。 表2-8、改善された空き家の状況。 括弧6、空き家等に対する行政代執行の実例。 平成28年度に、品川区では管理不全状態にある空き家、および、廃棄物等に起因する管理不全状態にある空き地等に対し、行政代執行を実施しました。 事例1、空家法および条例に基づく行政代執行。 区では近隣住民等からの情報提供を受け、空き家に関して現地確認を行い、建物管理者に対する改善指導を行った。 再三にわたる改善指導をしても状況が改善されなかったため、品川区空き家等適正管理審議会での調査、審議を経て、区が特定空家等および管理不全状態にある空き家と認めた。 その後、空家法および条例に基づき助言、指導、勧告、命令を行ったが、改善が見られなかったため、行政代執行を実施した。 事例2、条例に基づく行政代執行。 区では近隣住民からの情報提供を受け、建物所有者に対して文書や面会により、道路上の放置廃棄物の撤去を促した。 再三にわたる改善指導をしても状況が改善されなかったため、品川区空き家等適正管理審議会での調査、審議を経て、区が廃棄物等に起因する管理不全状態にある空き地等と認めた。 その後、条例に基づき助言、指導、勧告、命令を行った。また、建物所有者と面談等により適正管理を促したが、改善が見られなかったため、行政代執行を実施した。 品川区は空家法や条例に基づき、建物の状況把握だけでなく、所有者等への対応等に関して、適確に対応しています。また、廃棄物等に起因する管理不全状態にある空き地等への対応では、廃棄物の撤去だけでなく、所有者等が抱える問題解決にも着目し、福祉部門と連携するなど、庁内横断的な体制で対応しています。 4、区内の道路状況。 建築基準法では、住宅を建築する場合、4メートル以上の道路に2メートル以上接している必要があると定められています。これにより、幅員4メートル未満の道路のみに接する建物は幅員が4メートルとなるよう後退しなければならず、現状よりも小さい敷地で建築することになります。そのため、このような建物は、建替えや除却後の空き地の利活用、流通に支障が生じます。その結果、細街路のみに接する建物や道路に接していない建物は、流通市場において買い手が見つかりにくい傾向があります。 図2-16、建築基準法における建替え制限のイメージ図、建替え可能な場合、建替えに制約ありの場合、建替え困難な場合。 空き家における接道状況別の割合について。サンプル数、合計572,970件。 平成30年住宅、土地統計調査によると、特別区の合計値と比較し、品川区は4メートル未満の道路のみに接している空き家は、特別区の合計値とほぼ同等の割合となっています。 図2-17、東京都内の空き家における接道状況別の割合のグラフ。 第3章、空き家等を取り巻く課題。 1、課題発生の過程。 空き家等を取り巻く課題は様々あり、その要因はこれら課題と複合的に結びついています。本計画を策定するにあたり、空き家等における課題の発生過程を整理し、対応する方針、対策をとりまとめます。 図3-1、空き家における課題の発生過程。 2、課題の要因。 各課題の要因は、住宅市場、法制度、所有および権利、経済的負担の4つに大別されます。これら要因が複合的に関与し、空き家予備軍の増加、所有者等の管理意識、知識、能力不足、除却に伴う経済的負担、空き家および空き地における利活用の停滞の4つの課題が発生すると考えます。 図3-2、空き家の要因および課題。 要因1、建物の老朽化に伴う価値の低下。 管理の有無にかかわらず、建物の老朽化は進行しますが、適切に管理されていない場合は、老朽化の速度は早くなります。 建物が老朽化することで、建物の倒壊や破損が起こり、近隣住民へ支障を来す可能性があります。 また、新耐震基準が適用されていない昭和56年5月31日以前に建築された建物は、現在の耐震基準で建てられた建物よりも地震による倒壊の危険性が高くなります。 老朽化した空き家は、価値が相対的に低く住宅市場における流通が困難になります。 要因2、建物や敷地の制約。 住まい方アンケートで、空き家になった理由に対して、建物が古く、そのままでは住むことができない、という回答が26件見られました。 実際に品川区の窓口に寄せられる所有者等からの相談で、所有者等には空き家等の利活用についての意思があるものの。 丸1、接道要件等の理由により、建替えたくても法的に建替えができない。 丸2、売却ができない、もしくは、売却するとしても低額に抑えられる。 丸3、用途変更例:住宅→共同住宅の際に、一定面積以上では、建築基準法上の手続きが必要。 等の理由により利活用が進まないケースがあります。 要因3、権利関係の複雑化。 住まい方アンケートの空き家になった理由で、相続により取得したが、そのままとなっているという回答と相続が決まっておらず、そのままとなっているという回答が合わせて59件と最も多い理由となっています。同調査の維持管理を行っていない理由でも、権利者等が複数のため、維持管理が困難であるが上位になっています。 また、品川区の窓口における相談対応の事例でも、以下の4点が、解決困難な権利関係の問題として多くなっています。 丸1、相続人が多く、全ての相続人が特定できない。 丸2、相続人が特定できても、互いに疎遠または意見が合致しない。 丸3、相続人がいない。 丸4、借地権等に関するトラブル。 相続問題が発生すると、相続人間の同意形成が困難なために裁判を伴うなど、短期的な解決が見込めません。 また、借地権等の権利関係が整理されずに、放置されてしまうケースもあります。 品川区としても、直接的に解決することができないことなどから、空き家等の課題の中でも、当該課題は問題解決における長期化の原因になります。 要因4、高齢者単身世帯、高齢者世帯の増加。 令和2年国勢調査の結果から、65歳以上の高齢者のいる世帯では、高齢者のみの単独世帯と夫婦のみの割合が年々増加しています。 また、品川区では高齢者のいる世帯に占める単独世帯の割合が41.2%となっており、東京都の38.1%を上回る結果となっています。高齢者世帯が多くなると居住者が施設へ入所して亡くなられた場合、次の居住者がいない場合には空き家になってしまいます。 また、住まい方アンケートの維持管理を行っていない理由では、高齢や身体が不自由なため、維持管理したくてもできないという回答が4件あり、適正な維持管理における妨げの要因ともなっています。 要因5、空き家および空き地の利活用における知識不足。 所有者等が空き家および空き地の利活用を考えていても、何から着手すればよいのかわからないというケースが見受けられます。 利活用方法が不明、費用や税制面の負担、専門家や業者に相談することの不安感等から、利活用に対する知識不足や消極的姿勢が推測されます。 要因6、所有者等の高齢等による管理への負担増。 住まい方アンケートでは、維持管理を行っていない理由で高齢や身体が不自由なため、維持管理したくてもできないが回答選択肢の中で3番目に多い回答です。 今後、高齢者世帯の増加に伴い、高齢等によって管理が難しくなるなど、管理への負担感が増し、不適正管理状態の空き家等が増加する可能性があります。 要因7、所有者等の管理意識の欠如。 空家法や条例ともに、空き家等の適正管理に努めることは所有者等の責務であることが明記されています。 しかし、適正管理に関する区からの協力依頼に対し、拒否するケースや意思表示がないケースもあります。 居住している建築物についても、物の貯めこみや整理を行わないことによる、いわゆるごみ屋敷状態となっているものがあります。 敷地外への物のはみ出しによる通行への支障や景観面、衛生面での近隣への影響が問題となっています。 要因8、管理等への経済的負担。 住まい方アンケートの維持管理を行っていない理由で費用の問題で維持管理ができないという回答が4件ありました。 空き家等を適正に管理するため、傷んだ所の修理や建築物の除却にかかる費用が多大となるケースがあります。 また、空き家等の大半に見られる草木の繁茂についても、年に数回の定期的な剪定等を行わなければ、再度草木が繁茂するなど、管理が不十分な空き家等には経済的負担を理由とするものも多いことが推測されます。 3、課題の整理。 様々な要因が複合的に影響して発生する課題は、空き家予備軍の増加、所有者等の管理意識、知識、能力不足、除却に伴う経済的負担、空き家および空き地における利活用の停滞の4つに大別されます。 課題1、空き家予備軍の増加。 建物所有者の高齢化により維持管理が行き届かない、家族との同居、施設への入所を含む転居、相続に関する課題から、今後空き家となり得る建築物である空き家予備軍の増加が予想されます。 課題2、所有者等の管理意識、知識、能力不足。 所有する建築物の適正管理に関する協力への拒否、空き家の発生に伴う防犯上、衛生上、景観上の周辺環境の悪化に対する意識の欠如、制約がある建築物、敷地への対応等、建物所有者の管理意識、知識、能力不足による空き家等の増加が予想されます。 課題3、除却に伴う経済的負担。 敷地内に居住用の家屋があれば、土地の固定資産税が低く抑えられる制度があるため、その家屋を除却すると、税負担が上がることを考慮し、除却せず空き家のままにしている事例も見受けられます。 また、除却するための費用を準備することができないため、空き家のままにしているなどの事例もあります。 課題4、空き家および空き地における利活用の停滞。 空き家および空き地の利活用に向けた情報や知識の不足、建築物の老朽化、制約のある建築物や敷地等の要因により、空き家および空き地が流通されず、放置されたままとなっているものがあります。 第4章、空き家等に対する方針および施策。 1、達成目標。 括弧1、目標値の設定。 空き家対策を総合的かつ計画的に実施し、計画の進捗状況を把握するため、定量的な目標を設定します。 具体的には、本計画の施策の方向性および4つの方針に基づく目標とするとともに、上位計画等との整合性や定期的な進捗状況の把握を行い、以下の目標値を設定します。 不適正管理状態から改善された空き家の数について。 不適正管理状態から改善された空き家の数は、平成30年度から増加傾向にあり、令和4年度には36戸の空き家が改善されています。 不適正管理状態の空き家は、周辺の生活環境に悪影響を及ぼすおそれがあることから、目標値を設定し、不適正管理状態の空き家の減少を目指します。 表4-1、本計画の目標値。指標、不適正管理状態から改善された空き家の数、年、40戸。 括弧2、進捗管理。 本計画の推進にあたって、目標値をもとに施策効果を評価し、必要に応じて適宜、計画や目標値を改善していくことが重要です。 また、施策効果の評価とともに、具体的な各取り組みの進捗状況等を整理し、計画全体の実施状況を検証、評価します。 計画全体の実施状況の検証、評価により、必要に応じて目標値の見直しを検討します。 2、対象とする地域。 空き家等は区内全域に発生しうることから、本計画では、品川区全域を対象区域と定めます。 図4-1、品川区空き家等対策計画における対象区域。 3、対象とする空き家等の種類。 本計画で対象とする空き家等は、原則として空家法に規定する空家等および条例に規定する空き家、空き地、空き地等とします。また、共同住宅や長屋は、住戸全てが空いている場合に本計画の対象とします。 空き家化の予防、発生抑制に向けた取り組みでは、将来空き家となる可能性のある全建築物等を対象とします。 4、対策の方向性。 適切な管理が行われていない空き家等に起因する課題の解決は、空き家等の所有者等が自らの責任により適正に対応することが前提です。 しかし、空き家等の所有者等が心身や経済的な事情等から管理を十分に行うことができず、その管理責任を全うできない場合もあります。 そのような場合においては、所有者等の第一義的な責任を前提としながらも、行政は所有者等と連携しながら、地域活性化等の観点から空き家および空き地の有効活用を図っていくことが重要となります。 さらに、周辺の生活環境に悪影響を及ぼす空き家等については所定の措置を講じるなど、空き家等に関する対策を実施することも必要となります。 空き家等の増加は、これに直接起因する防災や防犯等の問題にとどまらず、地域におけるコミュニティ活動の衰退や区全体の活力低下が懸念されます。 このような点を踏まえ、品川区では空き家にしない、発生の予防に加え、管理されずに放置された空き家等に対する、適正管理の促進、地域活性化等に向けた、有効活用の推進を対策の方向性と位置づけ、適切に施策を展開していきます。 図4-2、品川区空き家等対策計画における施策の方向性のイメージ図。 5、空き家等に対する方針。 空き家等は所有者等の私有財産にあたり、所有者等が自らの責任により、適正に管理することが原則です。 空家法では、所有者等の責務とし、空家等の適切な管理に努めることを定めています。 一方、条例ではさらに具体化し、空き家等の適正な管理に努めること、管理不全状態の解消、再発の防止に努めることとしています。 また、空き家を放置することなく有効に活用することで、空き家等の適正管理だけでなく、住宅ストックとして、住宅市場への流通させることもできます。 これらを踏まえ、品川区は、区内の空き家等の状況から導き出した課題に対して、4つの方針を立て、それぞれ具体的な施策を示すことで、空き家等対策の基本的な取り組み方針とします。 品川区の4つの方針とは、丸1、空き家化の予防、発生抑制、丸2、適正な管理の促進、丸3、自主的な除却の支援、丸4、空き家および空き地の利活用、流通の推進を言います。 図4-3、品川区空き家等対策計画における4つの方針。 図4-4、空き家等の各段階における方針イメージ。 空き家等における施策までのフロー。 要因について。 要因1、建物の老朽化に伴う価値の低下。要因2、建物や敷地の制約。要因3、権利関係の複雑化。要因4、高齢者単身世帯、高齢者世帯の増加。要因5、空き家および空き地の利活用における知識不足。要因6、所有者等の高齢等による管理への負担増。要因7、所有者等の管理意識の欠如。要因8、管理等への経済的負担。 課題について。 丸1、空き家予備軍の増加。丸2、所有者等の管理意識、知識、能力不足。丸3、除却に伴う経済的負担。丸4、空き家および空き地における利活用の停滞。 方針について。 丸1、空き家化の予防、発生抑制。丸2、適正な管理の促進。丸3、自主的な除却の支援。丸4、空き家および空き地の利活用、流通の推進。 施策について。 啓発パンフレット等の配布、セミナーの開催支援。町会、自治会への情報提供。管理促進への啓発。支援制度の活用。空家法や条例に基づく対応。財産管理制度の活用。空き家ホットラインの充実。空き家専門相談窓口の充実。全庁横断的な対応。耐震化、不燃化の除却費助成。国と都との調整、連携の強化等。空き家相談会の実施。公的利活用の検討。 方針1、空き家化の予防、発生抑制。 品川区においても空き家は今後も増加する可能性が高くなっています。 一度、権利関係が適切に整理されずに空き家となってしまうと、利活用、除却等に必要な合意形成が困難となります。 また、空き家の放置状態が継続すると、不適正管理状態の空き家となり、区民の生活環境への影響が長期化する可能性があります。 そのため、居住中、使用中の段階から空き家とならないよう、空き家の発生抑制が重要となってきます。 施策の方向性について。 居住中、使用中の段階から、空き家となった場合の所有者等の管理責任、維持管理への負担、周辺への影響等、空き家に関する知識や意識を高めることが重要です。 また、空き家となる前の相続関係の整理、土地や建築物の権利関係を確認し、将来の建築物用途に関する意向確認等、事前に準備をしていくことが空き家の発生抑制につながると考えられます。 一方、空き家に関する問題を地域の課題として捉え、地域コミュニティ内での相互の助言、情報交換等も空き家に関する知識や意識の向上に有効です。 そこで、空き家に関しての知識や意識の向上を目指し、所有者等への責務を周知、空き家予備軍の方が利用できる制度の紹介、相談窓口の案内、町会、自治会への情報提供等を進めます。 具体的な施策について。 施策1、啓発パンフレット等の配布、セミナーの開催支援。 居住中や使用中の建物所有者等に対し、空き家に関する知識の習得や意識向上のための啓発、相談窓口の案内等におけるパンフレットの配布を行います。 また、資産活用に関する啓発や高齢者に対する相続の準備等をテーマに、専門家等と連携したセミナー開催を検討します。 所有者等だけでなく、将来、相続する可能性のある子世代も対象とします。 これまでの実績。 空き家に関する問題意識の向上、啓発のために品川空き家ガイドブックを作成しました。 ガイドブックは、主に相続についてまとめた相続対策、トラブル予防編と、主に利活用についてまとめた適正管理、利活用編の2種類を作成し、配布を行っています。 また、区が主催するセミナーを毎年開催し、計画策定後から計7回開催しました。 周知については、区内関係施設や自治会の回覧板にてチラシ配布やポスター掲示を行いました。 引き続き、品川空き家ガイドブック等の配布で意識啓発を行うとともにセミナー開催を行います。 施策2、町会、自治会等への情報提供。 町会、自治会等に対し、区の空き家対策の内容や空き家専用相談窓口の周知等を行います。 これまでの実績。 近隣住民等からの情報提供を受け、町会、自治会等と連携し、空き家等の改善を促しています。 引き続き、町会、自治会等と連携した空き家対策に取り組みます。 方針2、適正な管理の促進。 不適正管理状態の空き家等は、保安面、衛生面、景観面等において、周辺の生活環境に悪影響を及ぼすことがあります。 そのため、不適正管理状態となってしまった空き家等に対し、適正な管理を促進していくことが重要となります。 施策の方向性について。 不適正管理状態にある空き家等が周辺環境に及ぼす問題点や適正な管理をするための制度といった情報を正確に発信し、所有者等の管理意識を醸成していくことが、適正な管理の促進につながります。 そこで、所有者等からの相談に対する空き家ホットラインおよび空き家専門相談窓口の充実や全庁横断的な体制の構築等を行います。 また、所有者等と町会、自治会の連携による問題解決が図られるよう支援していきます。 しかしながら、このような支援を行ってもなお、改善されず、管理不全空家等、特定空家等の管理不全状態にある空き家、および、廃棄物等に起因する管理不全状態にある空き地等に該当する場合は、空家法や条例に基づく助言、指導、勧告、命令、公表、代執行等、適切に対応していきます。 具体的な施策について。 施策1、管理促進への啓発。 区民等からの情報提供や区での調査に基づき、現地調査を行います。 不適正管理状態の空き家等に関しては、所有者等の調査を行うとともに、適正な維持管理を文書等で促します。 これまでの実績。 毎年の追跡調査の実施や、近隣住民等からの情報提供に基づき現地調査を行っています。 現地調査で確認した不適正管理状態の空き家等の所有者等に対しては文書の送付、電話連絡および訪問にて適正な管理を促しています。 引き続き、空き家等の適正な維持管理を促します。 施策2、支援制度の活用。 空き家等の所有者等からの要望に基づき、区の事業である施工業者の紹介や、住宅改善工事助成事業等の紹介を行います。 これまでの実績。 所有者等それぞれの状況や要望に応じた施工業者の紹介や各事業、助成等の紹介を行い、改善促進を促しています。 引き続き、支援制度の活用によって維持管理を促します。 施策3、空家法や条例に基づく対応。 特定空家等の管理不全状態にある空き家、または、廃棄物等に起因する管理不全状態にある空き地等については、空家法や条例に基づき、助言、指導、勧告、命令、公表、代執行等の措置を行います。 また、管理不全空家等のそのまま放置すれば特定空家等となるおそれのある空き家についても、助言、指導、勧告を行います。 これまでの実績。 空家法や条例に基づき、助言、指導、勧告、命令、公表、代執行等の措置を行っています。 これまでに、助言、指導を9件、勧告を5件、命令を2件、行政代執行を2件、実施しました。 引き続き、空家法や条例に基づいた措置を行います。 施策4、財産管理制度の活用。 土地、建物に特化した管理不全土地、建物の管理制度の活用を検討していくほか、不在者財産管理人や相続財産管理人の制度を活用し、相続人不存在の不適正管理状態の空き家等についても対応を行います。 施策5、空き家ホットラインの充実。 空き家ホットラインでは、所有者等および近隣住民等から、空き家等に関する相談を受け付けています。 その内容を踏まえ、品川区が対応すべきと判断したものに対し、その所有者等に文書や電話等で連絡し、改善を求めます。 また、必要に応じ関係団体や専門機関等を斡旋しています。 また、所有者等からの利活用等の相談に応じるワンストップ相談業務やサポート業務など、空き家等に関して総合的に対応できる窓口となるよう検討を進めます。 これまでの実績。 平成28年に開設した空き家ホットラインは、空き家専門相談窓口の設置に伴い、現在は近隣住民等からの情報提供を受け付けており、専門相談窓口と区とで連携を図りながら、空き家等に関する困りごとの解決を行っています。 専門相談窓口の設置前には令和2年度に54件と最も多くの相談がありましたが、専門相談窓口の設置によって令和3年度が27件、令和4年度が31件と、近年は年間約30件の相談を受けています。 引き続き、相談しやすい環境を構築し、所有者等に対しては適正な管理を促します。 施策6、空き家専門相談窓口の充実。 空き家専門相談窓口では、所有者等からの相談に対して、宅建士、建築士などの資格を持つ相談員が、豊富な知識、経験をもとに、空き家等の状況や条件に合わせて、さまざまな対策や活用方法をワンストップでご提案していきます。 施策7、全庁横断的な対応。 空き家等に関する問題に関して、必要に応じて、庁内各部署との連携を図り、問題の解決に向けて取り組んでいきます。 これまでの実績。 空き家担当である住宅課だけではなく、まちづくり部門や福祉部門など庁内各部署からの情報提供や連携を図り、空き家等のそれぞれの状況に応じた問題解決に取り組んでいます。 引き続き、庁内横断的な体制で取り組みます。 参考、適正な管理促進における品川区の取り組み。 品川区では、空き家等の所有者等へ適正管理を促進するための取り組みを行っています。 丸1、区民等からの情報提供等の受付。 丸2、空き家等における実態把握のため、現地確認および所有者等調査を実施。 丸3、適正な維持管理および改善を所有者等へ促す。 丸4、品川区や専門家等の関係者、団体の支援による空き家等の適正な維持管理の実現。 また、適正に管理されていない空き家等が改善されず、特定空家等の管理不全状態にある空き家、および、廃棄物等に起因する管理不全状態にある空き地等に該当する場合は、空家法や条例に基づく助言、指導、勧告、命令、公表、代執行等、適切に対応していきます。 なお、令和5年3月の空家法の改正により管理不全空家等に対しても指導、勧告の措置を行うことができますが、国の動向に応じた適切な対応をしていきます。 図4-5、空き家等および特定空家等に対する対応フロー。 方針3、自主的な除却の支援。 空き家が不適正管理状態となり、放置されると、周辺環境に悪影響を及ぼすため、適切な管理を実施する、もしくは空き家を除却し不動産市場に流通させることが基本です。 しかし、除却に伴う経済的負担の増加を危惧し、空き家としてそのまま放置されていることがあります。 そのため、空き家の除却に伴う経済的負担を軽減し、不適正管理状態の空き家等の放置を解消していくことが重要となってきます。 施策の方向性について。 空き家の除却に向けた助成や支援策に関する情報を発信、活用することで、経済的な問題を理由とした空き家の放置を解消することが空き家の減少につながります。 そこで、建築物の除却費の助成に関する情報を積極的に発信するとともに、国や東京都と調整しながら空き家の除却に向けた施策の充実を検討していきます。 具体的な施策について。 施策1、耐震化、不燃化の除却費助成。 旧耐震基準で建築された木造住宅等を対象とし、耐震診断費用を助成します。 空き家の所在地、築年数や構造が、区が実施している耐震化、不燃化のための助成制度の要件に合致する場合、建物所有者に対し、助成制度を利用した空き家の除却について支援します。 これまでの実績。 それぞれの助成制度の対象のうち、空き家を対象として、これまでに木造住宅除却工事支援が44戸、不燃化特区支援制度が37戸、計81戸の助成を行っています。 所有者等に対して、文書で管理を促す際に、助成制度のチラシを同封することにより助成制度の周知を図る等、所掌する課と連携を図り、助成制度の活用を行っています。 引き続き、助成制度を活用した除却の支援を行います。 施策2、国、都との調整、連携の強化等。 国や東京都と各制度の意見交換を行い、区の状況等を踏まえた要望等、連携の強化を行います。 これまでの実績。 国や東京都の補助金を活用した事業の実施や、東京都の都ワンストップ相談窓口を活用しています。 引き続き、国、都の施策を理解し、活用していきます。 方針4、空き家および空き地の利活用、流通の推進。 区内の不動産の需要は高く、民間の不動産市場、流通は十分に機能していることから、基本的な流通は民間市場に任せることができると考えます。 しかし、接道要件等による建替えの困難さや借地権等によるトラブル、所有者等の知識不足、認識不足等により、空き家が不動産市場に流通せず、空き家や空き地のまま放置されていることが少なからず存在します。 また、不動産市場に流通可能な空き家についても、長期間放置することにより、築年数の増加や耐震性の欠如等、住宅の性能や品質の評価が下がり、不動産市場で流通することができない建築物となるおそれがあります。 そのため、所有者等に適切な情報を提供し、不動産市場への流通を推進していくことが重要となってきます。 平成30年に建築基準法が改正され、空き家を福祉施設、商業施設等に用途変更する際に、大規模な改修工事を不要とするとともに、手続を合理化し、既存建築ストックの利活用が促進されるよう規制が緩和されています。 丸1、3階建の戸建住宅等を他用途に転用する場合の規制の合理化。 改正前は、3階建の場合、壁、柱等を耐火構造とする、石膏ボードを張るなどの大規模な改修を実施。 改正後は、3階建で200平方メートル未満の場合、在館者が迅速に避難できる措置を講じることにより、壁、柱等を耐火構造とする改修は不要。 丸2、戸建住宅から他用途への転用の際の手続き不要の対象を拡大。 改正前は、100平方メートル以下の他用途への転用は、建築確認手続き不要。注意、基準への適合は必要。 改正後は、200平方メートル以下の他用途への転用は、建築確認手続き不要。注意、基準への適合は必要。 施策の方向性について。 空き家および空き地の利活用、流通事例等の情報を適宜発信することが、公的な利活用や民間の不動産市場に流通させていくことにつながると考えられます。 そこで、区と専門家が連携して実施する空き家相談会を行っていきます。 さらに、所有者等が空き家および空き地を管理し続けたときの負担等についても認識できるよう、情報発信を行っていきます。 また、所有者等に対し、公的利活用等、空き家および空き地の活用術を提示していきます。 具体的な施策について。 施策1、空き家相談会の実施。 空き家および空き地の管理、利活用方法に困っている所有者等に対し、専門家等が相談に応じる空き家相談会を開催します。 これまでの実績。 区主催のセミナー開催に合わせて、空き家相談会を実施しており、計画策定後から計5回開催しています。 引き続き、空き家相談会を開催し、所有者等に適切な情報を提供し、不動産市場への流通を推進します。 施策2、公的利活用の検討。 地域活性化のための施設としての利活用を行うため、所有者等と相談や調整を行います。 これまでの実績。 空き家を公共的な用途として有効活用した場合に、所有者等が負担した改修費用の一部を助成する空き家改修助成に取り組んでいます。 また、実現には至っていませんが、これまでに公共的な用途として検討し、所有者等と調整を行った事例は4件あります。 引き続き、公的利活用を検討し、所有者等や相談者と調整を行います。 参考、戸建て住宅の流通。 住宅着工統計によれば、令和4年の東京都における住宅着工戸数は、戸建住宅3.3万戸、分譲マンション3万戸、賃貸住宅7.1万戸と、分譲マンションと戸建住宅は、ほぼ同等の着工数で年々減少傾向です。 また、経年的に見てみても、戸建住宅の着工戸数はほぼ横ばいとなっており、戸建住宅における流通の鈍化が伺えます。 図4-6、東京都における住宅着工戸数の推移のグラフ。 住宅の流通に関する国の取り組みとして、建物状況調査や、安心R住宅制度の創設、長期優良住宅の認定、住宅性能表示制度、等が挙げられます。 表4-2、住宅の流通に関する国の取り組み。 これら取り組みによって整備された制度を活用することで、空き家および空き地の利活用や流通に役立てることができます。 参考、空き家の譲渡所得から3000万円の特別控除。 相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋または被相続人居住用家屋の敷地等を、相続開始の日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに、一定の要件を満たして家屋または土地を譲渡した場合、譲渡所得の金額から最高3000万円まで控除することができます。 これを、被相続人の居住用財産、空き家、に係る譲渡所得の特別控除の特例といいます。 令和5年度の税制改正により、適用期限が令和9年12月31日までに延長され、譲渡後に耐震改修工事または除却工事を実施する場合も適用可能となるよう拡充されました。 なお、拡充については令和6年1月1日以降の譲渡が対象となります。 図4-7、空き家の譲渡所得における特別控除のフロー。 図4-8、税制改正により拡充された内容。 これまでの実績。 被相続人の居住用財産、空き家、に係る譲渡所得の特別控除の特例について、令和元年度以降、品川区では年間約30件以上、計146件の実績があります。 令和元年度32件、令和2年度30件、令和3年度40件、令和4年度44件。 参考、空き家や空き室を活用した住宅セーフティネット機能の強化。 高齢者、低所得者、子育て世帯、障害者、被災者の住宅確保要配慮者は、今後も増加が見込まれています。 しかし、住宅セーフティネットの根幹である公営住宅は、大幅な増加が見込めない状況にあります。また、民間の空き家や空き室は増加傾向にあります。 そこで、国は、増加する民間の空き家や空き室を活用した新たな住宅セーフティネット制度を平成29年10月に開始しました。 国は住宅セーフティネット制度を活用し、空き家や空き室の利活用や流通、増加する住宅確保要配慮者への対応等、住宅セーフティネット制度を推進しています。 住宅セーフティネット制度とは、住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律住宅セーフティネット法の一部を改正する法律を言います。 新たな住宅セーフティネット制度について。 丸1、住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅の登録制度。 1、空き家や空き室を住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅として賃貸人が都道府県等に登録。 2、都道府県等は登録住宅の情報開示を行うとともに要配慮者の入居に関し賃貸人を指導監督。 3、都道府県、市区町村による住宅確保要配慮者向け賃貸住宅の供給促進計画の策定。 丸2、登録住宅の改修や入居者への経済的な支援。 1、国と地方公共団体による改修費や家賃、家賃債務保証料等への補助。 2、住宅金融支援機構による改修費への融資等。 図4-9、要配慮者の入居における登録制度。 丸3、住宅確保要配慮者のマッチング、入居支援。 1、都道府県による居住支援法人の指定。 2、居住支援法人や居住支援協議会による居住支援活動の充実。 3、生活保護受給者の住宅扶助費等について代理納付を推進。 代理納付とは、本来、生活保護受給者が賃貸人に支払うべき家賃等を保護の実施機関が賃貸人に直接支払うことを言います。 4、適正に家賃債務保証を行う事業者の登録制度。 5、居住支援活動への補助。 第5章、実施体制。 1、対策の実施体制。 空き家等の対策を総合的に推進するため、所有者等、区民等、専門家団体、民間事業者等、多様な主体が連携して、空き家等対策計画の実現に取り組みます。 図5-1、対策の実施体制。 2、各主体の役割。 前項1、対策の実施体制で示したとおり、空き家等の適正管理や利活用、流通を促進していくために、品川区をはじめ、所有者等、区民等、専門家団体、民間事業者等が各自の役割を果たしていく必要があります。 そこで、各主体における役割を以下のとおりとし、相互に連携を図って、方針、施策に則った取り組みを推進していきます。 所有者等の役割について。 所有者等の転居や不在等により、空き家や空き地が発生してしまうため、家族や親族間で相続問題について十分に話し合っておく必要があります。 また、空家法第5条では、所有者等は、周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう、空家等の適切な管理に努めるとともに、国又は地方公共団体が実施する空家等に関する施策に協力するよう努めなければならない、と明記されています。 空き家等の所有者等は、不適正管理状態の空き家等にならないよう、適正な管理が求められています。 区民等の役割について。 空き家等は、地域の様々なところに点在しています。 空き家等の所有者等だけでなく地域住民も、地域活動や空き家や空き地の利活用でかかわることになります。 また、近隣の空き家等から保安面、衛生面、景観面への悪影響も懸念されています。 そこで、区民等にも、空き家等に関する知識を深め、品川区が推進する空き家等の対策を認識してもらい、対策推進に、区に相談や報告等の協力をしていくことが重要と考えます。 また、町会、自治会や民生委員等と連携し、地域における空き家化の予防や不適正管理状態の空き家等の発生抑制のため、所有者等と情報共有を図ることも大切です。 これらの取り組みを行うことで、区民等や地域から空き家等の対策を推進することが可能となり、地域コミュニティの維持にも繋がります。 専門家団体、民間事業者等の役割について。 専門家団体、民間事業者等は、空き家や空き地等の所有者等をはじめ、各主体の取り組みに対する助言や情報提供、提案等を行います。 相談会や各種セミナーの開催や、専門家団体、大学や特定非営利活動法人などの民間事業者等、それぞれの専門知識や強みを生かした協力や支援が重要となります。 区の役割について。 区は、本計画に則り、空き家等に関する施策を実施し、必要な措置を適切に講じるよう努めます。 また、各主体が連携できるよう、空き家等における対応状況について町会、自治会等への情報提供や対策の実施等、総合的な窓口としての役割を担います。 さらに、各主体が空き家等の対策実施や相談が可能となるよう、必要な支援および情報を提供していきます。 特に、所有者等に対しては、各種調査や区民等からの情報により、実態を把握し、空き家等の適正管理や利活用、流通に繋がるよう支援しています。 相談体制について。 区民等からの空き家等に関する相談に対応するため、以下のような相談体制の充実を図り、区と連携しながら取り組んでいきます。 図5-2、空き家等の相談体制。 参考、品川区空き家等適正管理審議会。 括弧1、設置の目的。 品川区では、条例第15条第1項の規定に基づき、空き家等の適正な管理に関する重要な事項を調査、審議するため、区長の附属機関として、品川区空き家等適正管理審議会を設置しています。 この審議会の役割は、区長の諮問に応じて調査、審議し、区長に第三者的な立場から意見を述べることです。 審議会における調査、審議事項について。 丸1、空き家が管理不全状態にあると認めること。 丸2、空き地等が廃棄物等に起因する管理不全状態にあると認めること。 丸3、条例第11条の規定による公表。 丸4、条例第12条の代執行。 丸5、その他区長が必要と認める事項。 括弧2、委員の構成。 審議会は、区長が委嘱する委員12人で組織されます。 委員の構成について。 丸1、学識経験者、7人。 丸2、警察、消防、その他の関係行政機関の職員、2人。 丸3、町会、自治会、その他の地域団体の構成員、2人。