東海道品川宿のはなし 第30回

更新日:平成20年12月15日

お地蔵さまは「地蔵菩薩」のことで、左手に宝珠、右手には錫杖 (しゃくじょう)を持つ姿で一般には知られています。

地蔵菩薩は、亡者を地獄から救い出してくれる仏として信仰され、賽 (さい)の河原での救いの姿は「地獄絵」や「六道絵」などに数多く描かれてきました。

また、子どもの守護としてしばしば童身で現れると考えられています。

このようなことから、「お地蔵さま」信仰は、延命地蔵、子育て地蔵、といったように様々な御利益や由来と結びつき、現在にいたるまで幅広く展開されてきたのです。

 

ここで、今も品川区内で信仰されている特徴的なお地蔵さまをいくつか紹介しましょう。

人々の身代わりになってその苦しみを引き受ける役目を持っているお地蔵さまとして、京浜急行新馬場駅南口近くの願行寺 (がんぎょうじ)地蔵堂には、しばり地蔵(しばられ地蔵)があります。

現在の像は天保12年(1841)に再建されたもので、地蔵の身体を縄で縛ると苦しみを肩代わりしてくれるといわれ、こう呼ばれるようになりました。

地蔵は首がとれるようになっており、願をかける人は首をそっと持ち帰って祈願し、その願いが叶うと首を二つにして奉納するものとされていたため、像のまわりにはいくつもの首が並んでいます。

 

大井の三ツ又には、昔、ここを通りかかった僧侶が、土の中からお経を読む声を聞いて地蔵像を2体掘りだしたという伝承があり、1体は来福寺の本尊・経読 (きょうよみ)地蔵、もう1体は三ツ又のお堂に祀られたといわれています。

現在の像は戦後のものですが、病魔・難産などの「身代地蔵」(みがわりじぞう)として人々の信仰をあつめており、この地蔵堂には今もお線香の煙が絶えません。

 

大井四丁目の西光寺内には、関の地蔵堂に安置されていた石のお地蔵さまがあり、悪い病や風邪の平癒に御利益があるといわれています。

もとの地蔵堂には古ぼけた柄杓 (ひしゃく)があったといい、病人が出たときはこれを家に借りてきて病人に水をかける真似ををすると、病気が治るとされていました。

 

旧上大崎村、現在の西五反田3丁目の徳蔵寺には、塩地蔵と三輪地蔵があります。

塩地蔵は台石をいれると2メートルを超える石像で、眼病に御利益があるといわれ、眼を患った人が願をかけ、治るとお礼に塩を献じる風習があったので、このように呼ばれています。

三輪地蔵は医師の吉川栄順の妻「お三輪」の菩提を弔うために造立したものです。

 

多くの御利益と伝説をもつお地蔵さまとして、旧戸越村後地 (うしろじ)、現在、小山2丁目の朝日地蔵があります。

これは戸越村の有志が寛文7年(1667)に建立しました。

奥沢(世田谷区)の九品仏 (くほんぶつ)浄真寺の開山珂碩 (かせき)上人が心願を立て、毎日芝の増上寺まで参詣に往復していましたが、奥沢村を出てここにさしかかると、朝日が東の空にさし昇るころになったので、この地蔵様を朝日地蔵と命名し、諸願成就を祈願したことから朝日地蔵と呼ばれるようになり、安産・厄除け・子育ての御利益があるといいます。

 

子育て地蔵には荏原二丁目の中原街道供養塔群のところに、戸越地蔵尊として知られる子育て地蔵があり、北品川二丁目の地蔵堂も子育て地蔵です。

 

このようにその造立の由来や授かる御利益がたくさんあることは、お地蔵さまが庶民に身近に接していて、大衆的な仏であるからといえましょう。

 

品川宿361品川宿362
◆左から
・『三ツ又地蔵堂』
・『戸越地蔵尊』
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