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明治維新後の品川 第12回

更新日:2012年8月3日

前回も述べたように、「品川工作分局」では、板ガラス製造を目標として操業して いたのですが、失敗しては中止、再開しては失敗という状況が続いていました。

とどのつまり、明治16年(1883)に工作局は廃止され、「品川工作分局」は、元の 「品川硝子製造所」と名を改めて工部省の直轄工場となりました。

それまでの7年 間、ガラス製造技術の改良を図り、努力を重ねてきたのですが、日本人の生活様式 は、まだそれほどガラス製品を必要としてはいませんでした。

従って、この工場が1ヶ月操業してつくる製品は、優に1ヶ年の需用を満たすものであったといいます 。

 

しかし、品川硝子製造所がいかに良い製品を世に出そうとも、市中には、俗に“ジャパン吹き”と呼ばれる粗製品が安く出回り、これと価格競争ができず、毎年損失を重ねていきました。

こうした状況から、政府はこのガラス工場を民間に払い下げることになったのです。

当時、明治政府は鉱山・造船所などを中心に財政緊縮等を理由として、それらを払い下げようとしていました。

その一方、間接的な保護を加えながら、殖産興業政策を推進しようとしていたのです。

 

さっそく、これに応じたのが旧淀藩主の稲葉正邦と、靴製造や革の製造などを手広く営んでいた西村勝三でした。

明治17年(1884)2月、稲葉と西村は共同で10ヶ年間の貸与を出願し、操業を開始しました。

翌年、稲葉は将来に不安を抱いていたようですが、西村は磯部栄一と共同して明治18年(1885)5月28日に政府から払い下げを受けたのです。

民間移譲後の明治19年(1886)頃の営業内容は、改善されたとはいえ、ほぼ採算がとれるといった程度にすぎませんでした。

 

西村勝三は明治19年に、海外でのガラス工業の視察と技術改良法を探求のため渡欧し、ドイツ人シーメンスの発明した複熱式窯の導入を企図しましたが成功せず、翌20年(1887)に品川硝子製造所技師の中島宣をドイツに留学させ、実地研究に当たらせたのです。

そして同地から、技術者をはじめ、熟練工を管理者として雇いいれ、純然たる私有の有限会社組織にあらためたのでした。明治21年(1888)4月25日には、共同発起で「有限会社品川硝子会社」を設立し、ただちに旧品川硝子製造所の地所・家屋・器械・窯・原料まで一切を5万7500円で買収したのです。

当時の職工数は120名でした。

 

買収当時の品川硝子会社には、第一から第四の工場があり、第一から第三までの工場はガス窯を用い、ビール瓶や酒壜・薬壜、ランプの油壺・ホヤなどを製造していました。

第四工場は、工部省時代からの慣行で、軍艦備え付けの燈台用ホヤ・食器・薬壜・陸軍薬剤用瓶や兵士水呑瓶・鉄道用燈火用類、など注文に応じて製作していました。

 

しかしながら、主要株主にも三井の益田孝、日本ビールの馬越恭平、小野田セメントの笠井順八ら、錚々たる日本資本主義形成過程における担い手たちが名を連ねていたにもかかわらず、明治23年(1890)以降は製品売上高も激減し、赤字続きとなってしまいました。

職工数も、明治22年(1889)には最高の150名を数えていたものが、その半数に減少してしまうのです。

同社の支社・小野田工場も竣工したものの、充分に操業する暇もなく、「品川硝子会社」は明治26年6月に解散したのでした。

 

「品川硝子会社」の母胎となった「品川硝子製造所」が、官営から民営に移ったとき、ここで養成された伝習職工たちは、東京市内や大阪へと移っていきましたが、彼らは既設の工場へ入るか、独立してガラス工場を開いていったと考えられています。

その後、この工場跡は、明治41年(1908)、当時の三共合資会社(現在の三共株式会社の前身)が買収し、製薬工場として再びスタートを切ることになったのです。

 

2回にわたって品川におけるガラス工業の歴史をお話してきました。

当時の、関係する製品のいくつかは、品川歴史館に展示されています。

その一つの「金赤色被桜文硝子花瓶 (きんあかいろきせさくらもんガラスかびん)」(明治中期の製作)は、品川硝子製造所の職工として経験のある大重仲左衛門の作と伝えられるガラス花瓶で品川区指定有形文化財として指定されています。

また、当時のビール壜・ガラス食器も展示されています。

 

明治12

明治時代中期の作で、品川硝子製造所の工人であった経験のある、大重仲左衛門の作と伝えられています。

当時の最新技術の数々を駆使した、優れた作品です。

品川区立品川歴史館の常設展示品となっています。(特別展・企画展などの際はごらんになれません)

 

・金赤色被桜文 (きんあかいろきせさくらもん)硝子 (ガラス)花瓶

(品川区指定文化財:工芸品第4号)

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