令和5年度施政方針

「新時代のしながわ」「誰もが生きがいを感じ、自分らしく暮らしていける品川」

~区民とともに創っていく、その出発点となる1年としていきます~

 令和5年の第1回区議会定例会は2月21日に開会し、5年度の一般会計予算案や各種議案を審議しています。開会にあたり森澤区長は、区政運営の基本方針と施策について所信を表明しました。

区議会定例会写真1

時代の大きな転換期

 現下の社会情勢は、長引くコロナ禍に加え、ウクライナ侵攻に端を発する世界的なエネルギー供給不安や円安による物価高騰、また今年は関東大震災の発災から100年という節目の年で、いつ何時起こるかもしれない自然災害など、先行きが見通しづらい、時代の大きな転換期にあります。

 新型コロナウイルス感染症に関しては、国において、季節性インフルエンザと同じ「5類」感染症に移行することが決定され、新型コロナ対策も新たなフェーズを迎えます。ポストコロナにおいていかにして区民生活を守り、支え、そして発展させていくか。これまでの経験から、新たな感染症の脅威に対していかにして備えていくか。区民の生命と暮らしを守るため取り組んでまいります。

 一方、少子化の進行は深刻さを増しています。令和4年の全国出生数は国の想定よりも8年早く、初めて80万人を下回る見通しとなり、このまま少子化が続けば、経済活動を衰退させるばかりではなく、地域や社会全体の活力が失われかねません。

「区民の幸福」のための政策を推進

 こうした中、品川区は「子育て・教育で選ばれるしながわ」の実現に向け、他自治体に先駆けスピード感をもって、先進的な少子化対策、子育て政策を積極的に推進してまいります。

 大きな時代の転換期にあるからこそ、子育て、教育、福祉、まちづくり、政治や行政の仕組みも含め、時代にあわせて変えていく必要があり、積極果敢に「区民の幸福(しあわせ)」のために4つの重点政策を掲げ邁進(まいしん)していきます。

施政方針の全文は、区ホームページでご覧いただけます。

4つの重点政策

重点政策1
一人ひとりをささえ、伸ばす 子育て・教育で選ばれるしながわ
重点政策2
高齢者も障がいのある方も誰もが安心を実感できるしながわ
重点政策3
歴史と伝統を未来へつなぐまちづくり 経済と環境が両立するSDGsしながわ
重点政策4
区民とともに進める新時代のしながわ

予算案として編成したその他の主な項目については、次から紹介しています。

【重点政策1】一人ひとりをささえ、伸ばす 子育て・教育で選ばれるしながわ

少子化対策・子育て政策の推進

 子どもの笑顔があふれるまち。全ての子どもが伸びやかに、生き生きと学び成長できるまち。子どもは未来を支える社会の宝であり、社会全体で子育てを支えることが重要です。誰にとっても子どもを産み育てやすい環境、全ての子どもが自分らしく健やかに成長できる環境を整備し、少子化対策、子育て政策を力強く推進します。

子育て3つの無償化

 「保育・給食・医療 子育て3つの無償化」は、所得制限を設けず、全ての子育て家庭の負担を減らすため5年度より実施します。第2子の保育料の無償化は都に先駆け4月から実施し、認証保育所は、認可保育園と同程度を助成します。小・中・義務教育学校の給食は、4月以降全ての児童・生徒を対象に無償化を実施します。高校生等の通院医療費の助成については、所得制限により都の制度の枠組みから外れる高校生等に、区が独自に助成することで全ての高校生等に無償化を実現します。

全ての出産・子育て家庭へ支援

 全ての0歳児家庭を対象とした「おむつ宅配定期訪問」を実施し、おむつなどの子育て費用の負担軽減に加え、子育ての不安や悩みをうかがうことにより社会とつながり、緩やかな見守りが図られることをめざします。

 妊娠・出産届け出時に「出産・子育て応援ギフト」を配付し、2歳までの子育て家庭を対象に伴走型相談支援を引き続き実施します。空きのある保育所などで、未就園児を対象とした定期的な預かり保育をモデル実施します。

在宅子育て支援の強化

 在宅子育て支援については、八潮・勝島地域の在宅子育て支援の拠点として、旧八潮南保育園園舎を活用し、オアシスルームやポップンルーム、木のぬくもりの中で遊べる木育ルームなどを7年度の開設に向け、5年度は基本設計・実施設計を実施します。

 児童センターでは子育て支援の拠点として、各世代の多様化するニーズや地域ごとの特色を生かした機能の充実を進めます。

児童発達支援センターの整備と安全で安心な保育・教育環境の整備

 区内2カ所目となる児童発達支援センターを7年度の戸越地区での開設に向け、5年度は施設改修の設計を実施します。

 保育園・幼稚園に対して、通園バス置き去り防止機器を設置する費用や園外活動などの見守り要員雇い上げ費用を助成します。また、認可保育園の新設、区立保育園や区立学校の改築を計画的に取り組み、保育・教育の環境整備を進めます。

児童相談所開設準備・ヤングケアラー支援・特別支援教育の推進

 区立児童相談所は6年度の開設に向け、人員の確保・育成、運営体制の整備や都からのケースの移行など準備を進めます。

 ヤングケアラーの実態把握に向けWebアンケート調査を実施し、本人支援の場としてオンラインサロンやSNSによる相談支援を実施します。

 複雑・長期化する学校での問題について教職員の負担を軽減するため、外部の力を借りて解決に取り組む仕組みを導入します。

 5年度、特別支援教育の推進を所管する組織を設置し、教育の場で、支援が必要な子どもの施策を拡充します。また発達障害児への支援の充実に向け、発達障害教育支援員を小学校15校に配置します。円滑な教育の提供のため、台場小学校から豊葉の杜学園に難聴通級指導学級を移設し、宮前小学校には、自閉症・情緒障害特別支援学級を新設します。

5年度予算の主な項目(案)
子育て3つの無償化
新規 第2子の保育料無償化 490,051千円
新規 区立学校給食の無償化 1,339,709千円
新規 高校生等の医療費無償化 270,285千円
新規 0歳児見守り・子育てサポート事業「おむつ宅配定期訪問」 180,000千円
新規 未就園児の預かり事業モデル実施 7,587千円
新規 八潮地区における在宅子育て支援施設の整備 46,615千円
新規 南品川児童センター改築基本構想策定 7,013千円
新規 児童発達支援センターの整備 25,035千円
(空欄) 区立学校の改築 7,871,528千円
(空欄) 区立児童相談所の開設準備 119,306千円
新規 ヤングケアラー支援基盤強化事業 12,620千円
新規 学校トラブル相談体制の強化 1,354千円
(空欄) 発達障害教育支援員の追加配置 53,325千円

【重点政策2】高齢者も障がいのある方も誰もが安心を実感できるしながわ

高齢者・障害者福祉施設の整備

 誰もが住み慣れた地域での生活が継続できるよう、認知症高齢者グループホーム、障害者グループホームの定員を増やします。200名分の整備を目標に民間事業者に対する整備費補助金の周知強化、区有地や都有地などの未利用公有地、民有地などの洗い出しと貸し付け、事業者が活用しやすい手法などを検討し施設整備を推進します。5年度は、小山台住宅跡地の整備、八潮南特別養護老人ホームの増改築整備に向けた設計を実施し、さらに西大井三丁目に障害者グループホーム「出石(いずるいし)つばさの家」の建築工事を進めます。

重層的支援体制の整備

 誰ひとり取り残さない地域共生社会の実現に向け、社会的孤立や8050問題など、複雑化・複合化した課題の解決のため、重層的支援体制整備(しあわせ創設プラン)の検討を進め、本格的な相談支援を実施します。また、区民の活動の場や居場所などの地域資源に関する情報をシステム整備します。

障害者の超短時間就労促進とデフスポーツの啓発

 障害により長時間の就労が難しく、働く意欲があっても就労に結びつかない方を対象とした、超短時間就労の雇用の創出に向け具体的な検討を開始します。5年度は、区内の就労環境の整備や研修を実施します。

 2025年に東京でデフリンピックが開催されることを契機に、デフスポーツの啓発イベントや手話講座などを実施し、聴覚障害への理解促進、地域共生社会の実現を図っていきます。

認知症予防事業と補聴器購入助成

 新たな認知症予防対策として、子どもへの絵本読み聞かせ講座を実施し、高齢者の認知機能の低下を抑え、高齢者の生きがいづくりひいては、高齢者が安心を実感できる地域社会へとつなげます。医療機関や業界団体と連携して、聞こえの問題や補聴器への正しい理解を十分に進め、新たに補聴器購入費用の助成を実施します。

がん対策・感染症対策

 がんになっても「自分らしくある」ために、5年度は新たにアピアランス支援として、外見の変化による苦痛を除去するためのウィッグや胸部補整具などの購入費を助成し、がん患者の負担軽減とあわせ、生活の質の向上を図ります。

 新たに50歳以上の区民を対象に帯状疱疹(ほうしん)ワクチンの接種助成を開始します。

 これまでの感染症対応などの記録の整理や医療関係者への聞き取り、区の取り組みの総点検を実施し、新型コロナウイルス感染症への体制整備とともに、新たな感染症の脅威への備えを万全にします。

多様性が尊重される社会をめざす

 性的マイノリティの方への支援について、4年11月に「東京都パートナーシップ宣誓制度」が開始されたことに伴い、区営住宅への入居など行政サービスでの活用を進め、多様性が尊重される社会をめざします。

5年度予算の主な項目(案)
(空欄) 高齢者・障害者福祉施設の整備 887,278千円
新規 障害者の超短時間就労促進 2,730千円
新規 デフスポーツ啓発 6,337千円
新規 補聴器購入費助成 3,552千円
新規 アピアランスケア*1の充実 5,132千円
新規 帯状疱疹ワクチン予防接種費用の一部助成 45,004千円
(空欄) 新型コロナウイルス感染症対応の検証と健康危機管理体制の整備 4,050千円
新規 「東京都パートナーシップ宣誓制度」の活用 500千円

*1 アピアランスケア=がん治療で生じた外見の変化に伴う患者の精神的苦痛に対し行うケア

【重点政策3】歴史と伝統を未来へつなぐまちづくり 経済と環境が両立するSDGsしながわ

品川の新たな都市ブランディング*2を実現

 品川歴史館は6年度の全面リニューアルに向けた工事を進めます。荏原地区全体を盛り上げる「まちぐるみ文化イベント」を実施します。また、「しながわシティラン」の6年度開催に向け、5年度は実行委員会を立ち上げ準備を進めます。

 水辺空間の利活用についてハード、ソフト両面から水辺のにぎわいやうるおいのあるまちづくりを進めます。観光舟運イベント「しながわクルーズ」の実施や、水辺の拠点施設である「しながわ水族館」の全面リニューアルに向けた基本設計に着手します。また、しながわ区民公園の北側ゾーンについては、5年度末のオープンに向け、防災機能の強化とともに運動施設をリニューアルします。

*2 都市ブランディング=都市の持つ魅力や価値を高めること

町会・自治会への支援

 一番身近なコミュニティであり、地域力の源泉でもある町会・自治会に対して伴走型支援による課題解決を図るとともに、テーマ別の交流会を開催し町会・自治会の横のつながりの強化を後押しします。

災害に強い安全・安心なまちづくり

 不燃化特区支援事業や住宅・建築物耐震化支援事業をはじめ、地震や風水害などに強い、都市の強靭(きょうじん)化を推進します。

 「品川区地域防災計画」の大規模修正を行い、災害対策備蓄倉庫の拡充や備蓄物資輸送の強化を図ります。

 広町地区のまちづくりについては、官民が連携して、品川区の中心核に相応しい、にぎわいのあるまちづくりの実現に向け事業を進めます。また、立会川・勝島地区のまちづくりについては、「(仮称)勝島人道橋」の設計や都市再生整備計画の手続きを引き続き進めます。

経済と環境が両立するSDGsしながわの実現

 中小企業に対して、引き続き融資あっせんを行うとともに、生産性向上や競争力の強化などのチャレンジを応援し成長を後押しします。スタートアップ企業との連携による新規事業創出・課題解決支援など品川独自の産業支援施策を引き続き実施します。さらに、商店街ににぎわいと活気をもたらす、プレミアム付区内共通商品券を引き続き発行するとともに、商店街サポーター事業、商店街企業連携推進事業など意欲ある商店街を後押しします。

 環境施策は、「エコルとごし」を環境学習、意識啓発の拠点として、最大限活用します。また区有施設における太陽光発電設備設置の推進や低炭素化に有効な道路舗装の試験施工を実施します。プラスチックについては、容器包装に加えて、製品の回収について一部地域からスタートし、プラスチックのさらなる資源化を促進します。

 さらに、2030年を目標に世界中で取り組んでいる持続可能な社会の実現に向けたSDGsについて、5年度は内閣府が募集する「SDGs未来都市」に応募するなど、取り組みを加速します。

5年度予算の主な項目(案)
(空欄) しながわシティラン開催準備 5,867千円
新規 しながわクルーズ事業 15,442千円
(空欄) しながわ水族館リニューアル 162,000千円
(空欄) しながわ区民公園北側ゾーン改修工事 715,700千円
(空欄) 町会・自治会への支援 16,200千円
新規 災害備蓄物資輸送・管理および民間倉庫の活用(都内初) 49,203千円
(空欄) 商店街の活性化推進 138,673千円
新規 区有施設における太陽光発電設備など設置推進 33,000千円
新規 低炭素アスファルト混合物を活用した舗装工事(試行) 41,000千円
新規 プラスチック製品の資源回収・再商品化 31,672千円
新規 SDGs未来都市に向けた取り組み 10,000千円

【重点政策4】区民とともに進める新時代のしながわ

区民の意見を区政に反映、民間活力の活用

 多様化する区民の価値観やニーズを的確に把握し、区政に反映していくために、高校生以上の区民約36万人を対象に区政に関するアンケートを実施します。また、小・中・義務教育学校の児童・生徒には別途アンケートを用意し、子どもたちの意見も聞いていきます。羽田新飛行ルートについては、アンケートの回答を把握・分析し、国に届けるとともに、東京都や関係自治体とも連携し、固定化回避の早期実現を含む具体的な解決策を国に働きかけていきます。

 旧荏原第四中学校跡地の活用については、ワークショップの開催や公募委員を含む検討委員会の設置などにより多くの区民の声、意見を把握し、区民に愛される施設の整備に向け検討を進めます。

 民間事業者の優れた技術、経験、資金などを取り入れ、効果的・効率的な施設整備、質の高い施設運営、区民負担の軽減を引き続き進めます。また、Park-PFI制度*3の導入に向け、4年度に実施した調査結果を踏まえ、運営事業者の公募・選定を行い、魅力ある都市公園の創出を図ります。

 新庁舎整備については、民間事業者のノウハウを取り入れつつ基本設計に着手し、行政機能を集約する答申に基づき計画を滞りなく進めます。現庁舎跡地の一体的なまちづくりについては、官民連携手法の導入による区民負担の軽減について検討を進めるとともに、収益性と公共性の両立をめざすために、ワークショップの実施などを含む区民参加型の跡地活用検討委員会を設置するなど、区民ニーズの叶うまちづくりに向けた検討に着手します。

*3 Park-PFI制度=都市公園における民間資金を活用した新たな整備・管理手法

新たな行政評価の実施

 行政評価の実施について、事業評価の対象を全事業とし、新たに区民意見を踏まえた政策評価を実施します。各事業や政策について、不断の検証や見直し・改善を行い、より効率的で効果的な行財政運営につなげ、区政そのものをバージョンアップさせます。さらに、各事業や政策の達成度を測る成果指標に、区民の幸福度・満足度を取り入れることについて検討を進めます。

DX*4等の推進

 DX(デジタル・トランスフォーメーション)を活用した区民サービスの向上について、区の従来の行政サービスのあり方を根本から見直し、最先端のテクノロジーを活用したデジタル化をさらに推進します。区民の利便性の向上に向けたオンライン申請システムの推進や、デジタル技術を活用した業務の改善と効率化などを積極的に進めます。また、キャッシュレス決済端末を文化センター、中小企業センターなどにも拡充し、利便性を向上していきます。

 一方、様々な移動手段を用いて行政サービスをきめ細やかに実現するMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)*5の実証実験として、マイナンバーカードの出張申請などのサポートをモデル実施し、マイナンバーカードのさらなる取得促進を図ります。実証実験を通じ、その効果や課題などを見極め、新たな移動型行政サービスの実施に向けた検討を進めます。

*4 DX=情報通信技術の浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させること

*5 MaaS=様々な移動手段を用いることで各種サービスをよりきめ細やかに実現していく仕組み

5年度予算の主な項目(案)
新規 区民アンケート 98,165千円
新規 旧荏原第四中学校跡地の活用検討 11,000千円
(空欄) 民間活力を活用した公園整備 14,000千円
(空欄) 新庁舎整備事業 100,084千円
新規 現庁舎跡地などの活用検討 30,000千円
新規 新たな品川区行政評価の実施 19,437千円
新規 マルチタスク車両によるマイナンバーカード手続きサポート 4,600千円

区政運営の基本姿勢

 私たちは今、まさに激動する時代の真っただ中にあります。この局面を何よりのチャンスと前向きに捉えることが重要で、勇気をもって大胆かつ戦略的に政策を展開していくことで、社会の新たな景色をつくりあげていかなければなりません。

 「誰もが生きがいを感じ、自分らしく暮らしていける品川」の実現に向けて、まさに「新時代のしながわ」元年のスタートダッシュを切るべく、全力で区政の舵取りをしてまいります。

区議会定例会写真2