2026年1月1日号 広報しながわ
【新春対談 2026】森澤恭子(品川区長)×伊沢拓司さん(QuizKnock)
あけましておめでとうございます
新年おめでとうございます。
皆さんにとって本年が、笑顔あふれる幸せな一年であるよう、心からお祈り申し上げます。
今年の新春対談は日本を代表するクイズプレーヤーであるQuizKnockの伊沢拓司さんにお越しいただきました。
昨年伊沢さんには品川区公式チャンネルしながわネットTVにご出演いただき、大きな反響がありました。
品川区の印象や、地域と若い世代が共に築く未来についてお話を伺いました。

八潮子育て支援施設「IKUMOやしお」えほんのもりにて撮影
新春座談会

品川区都市ブランディング「しあわせ多彩区」のアート原画と
学校や職場とは異なる地域の居場所が持つ価値に注目しよう
「しあわせ多彩区」を掲げ様々な施策に取り組んでいます。
誰もが生きがいを感じ、それぞれの個性が発揮できる、そんな品川区をめざしています。 森澤区長
区長 あけましておめでとうございます。
伊沢 おめでとうございます。
区長 伊沢さんには昨年、品川区公式YouTubeチャンネル「しながわネットTV」の動画にご出演いただきました。そのご縁があり、本日はお越しいただきました。どうぞよろしくお願いいたします。
伊沢 動画の出演をきっかけに、区内の様々な場所を訪れる機会をいただきました。品川区は、運河を活用した舟旅通勤の推奨、充実した防災対策、区立学校の給食の無償化など、行政の手厚い取り組みを実感しました。
区長 いま品川区では、区民の方が行政に相談に来てくれるのを待つのではなく、区が区民の方につながりを持っていくという取り組みに力を入れています。
伊沢 僕が最初に出演させていただいた動画の中の「見守りおむつ定期便」は、まさにそうした取り組みでした。赤ちゃんのためにおむつを届けることに終わらず、見守り支援員の方が保護者にお声がけして話を聞いて、みんなで見守っていく。人に寄り添うことを主眼においた取り組みに魅力を感じました。
区長 昨年の夏は熱中症対策として、75歳以上の高齢者世帯に飲料水を宅配し、「エアコンつけていますか?」「お困りのことはありませんか?」とひと声かける見守りも行いました。区民の方々からはお礼の言葉をいただき、行政から手を伸ばしていく、アウトリーチしていくことは非常に大切だと実感しています。
伊沢 マンションなどの集合住宅には多くの人が住んでいますが、周りとの関係性が希薄だと感じます。行政が訪問し、声をかけてくれることは、本当に心強いことです。このような取り組みを始めようと思われたきっかけはあるのですか?
区長 子育て世代ではコロナ禍で外出できずにいたことがきっかけで、孤独を感じながら育児をしたという声を聞きました。行政に頼りたくても躊躇(ちゅうちょ)する気持ちがあると伺い、困っていることがないか行政から聞きにいくことが必要だと思いました。伊沢さんもおっしゃるとおり、集合住宅が多く地域や人とのつながりを持ちにくい都市部においては、行政からつながりを構築していくことが大事だと感じています。
伊沢 僕は講演会などで公共施設を利用する機会が多いのですが、地域には学びや遊び、交流のための居場所が数多くあることを実感しています。例えば今日の会場である「IKUMOやしお」は、子どもの遊び場であると同時に、保護者同士、あるいは保護者と職員の方の対話や情報交換の場となっていると聞きました。こうした地域の施設を多くの人が知って、もっと活用できるようになれば、暮らしやすさや居心地のよさが広がるのではないでしょうか。
区長 おっしゃるとおり、地域の中で子どもや高齢の方など、様々な人たちが自然と行き交う居場所を作っていくことが必要だと感じています。
伊沢 最近「サードプレイス(第三の居場所)」が注目されていますが、学校や職場とは異なる場所には特別な価値があると思います。学校のクラスでは自然と役割などが定着し固定的な関係ができやすいですが、僕が各地の学校の講演会で少し視点を変えた投げかけを行うと、生徒たちの意外な一面が見えたり、新しい行動が生まれたりします。同様に、地域の居場所で様々な人と関わりを持つことは、日常から少し離れて新しい自分に気づき、成長するきっかけを与えてくれるかもしれません。

「しながわネットTV」で豊葉の杜学園を訪れた伊沢さん
若い世代の意見を取り入れ区政の可能性を広げる
区長 今回伊沢さんにご出演いただいた動画の中で、防災に関する動画は約2.5万回再生され、多くの人が防災について関心を持っていることが改めてわかりました。
伊沢 防災への関心の高さは、若い世代にも感じます。東日本大震災以降に生まれた子どもたちも、当時の出来事を学び、理解しているように思います。子どもたちが防災について考えることは、親世代にも波及効果がありとてもよい学びですね。
区長 昨年からは中学生を対象に、「しながわ防災ジュニアプロジェクト」が始まりました。防災意識を高めるための教材をもとに、授業で防災教育を実施しています。
伊沢 そうした取り組みを通じて、若い世代の区民と行政の距離が近くなったらいいですね。
区長 まさにそれを期待しています。動画では「豊葉の杜学園」へも行っていただきましたが、QuizKnockの取り組みとして学校訪問プロジェクトを実施されているそうですね。
伊沢 はい。僕たちは「楽しいから始まる学び」をビジョンに若者向けの活動を展開していますが、若い世代と直接対話することがとても大切だと考えています。YouTubeの配信だけでは、彼らと直接話せません。だったらこちらから会いに行こうという趣旨で始まったのが、学校訪問プロジェクト「QK GO」です。
区長 まさに、アウトリーチですね。
伊沢 2019年から開始し、47都道府県の約70校を訪問しました。生徒たちと話してみると、地域による意識の違いはあっても、デジタルを使いこなす力などに差はほとんどありません。一方で、環境の差は大きな影響があるようです。例えば、書店がない地域では、能力があっても得られる情報が限られ、機会を逃している可能性があります。周りの大人や行政が、多様な選択肢を持てる環境を整えることの重要性が増していると感じます。
区長 訪問する学校によって、プログラムは全部変えているのですか?
伊沢 変えていますが、必ず企画として入れているのはクイズです。例えば、生徒に「伊沢が答えられないクイズを出してくれ」と投げかけたりしています。
区長 答えられないクイズを考えるのも大変ですね。
伊沢 そうすると、地域の話題や方言を問題に出してくる生徒がいて、それはすごく素敵なことだなと思うんです。そして地域愛は、クイズ王に勝つんです。
区長 伊沢さんが答えられないクイズを出題したなんて、きっと一生の思い出になります。
伊沢 自信を持てるし、自己愛やさらなる地域愛にもつながります。地域に誇りを持ち、地域に目を向ける意識が芽生えることを願っています。
区長 学校訪問プロジェクトは、学校の中にイノベーションを起こす取り組みでもありますね。
伊沢 様々な手本、進路、選択肢があることを知って、「じゃあ、なんでもできるぞ!」と思ってもらいたいですね。
区長 品川区では、「こどもまんなか社会」を実現するため、子どもの意見を区政に反映する取り組みを進めています。「中高生リバースメンター事業」や「こども会議」などがその例です。未来を担う子どもたちの意見に耳を傾けることが不可欠だという思いから始めました。今は社会の変化のスピードが早く、正解のない時代です。これまでの経験が通用するとは必ずしもいえない時代にあって、子どもたちは大人よりも柔軟な発想を持ち、常識にとらわれずに物事を感じ取っていると思います。そうした感性を持つ子どもたちから様々な意見をいただき、大変興味深いです。
伊沢 僕は子どもの行動力に、いつも驚かされるんです。そうした子どもたちの意見や感性を社会にいかすには、行政のサポートが欠かせません。
区長 おっしゃるとおりです。今回は子どもたちの提案を区職員も一緒に考え、どういった施策につなげていけるのか、結論を出していきたいと考えています。行政や政治を身近に感じることはとても大事なことであり、「自分が意見を言うと何かが変わる」という経験を、子どもたちに体験してほしいと思っています。

Quizの「Q」をかたどったお花を手に持ち撮影
生きやすい社会、幸せな暮らしの実現を諦めない
自分が生きやすい社会をめざすことを諦めない、自分が好きなことを諦めない。
それが僕の活動の原動力になっています。 伊沢拓司
区長 品川区では現在、「しあわせ多彩区」を掲げて都市ブランディングを進めています。伊沢さんは「しあわせ多彩区」と聞いて、どのような印象を持たれましたか。
伊沢 多彩な人が幸せになれる。老若男女、様々な立場にある人たちすべてに向けたメッセージだと考えると大変な課題です。一方で、この正解のない時代に、子どもから高齢の方まで取りこぼしのないように区政を展開するという強い決意を感じました。
区長 ありがとうございます。いま、行政だけでは解決できないことがとても増えています。「しあわせ多彩区」をめざすには、企業を含めた多様な主体がお持ちの知見を提供いただくなど、行政と民間が連携して社会課題を解決していくことが必要不可欠だと強く感じています。
伊沢 QuizKnockでは学びを楽しく伝える活動を展開してきました。教育は社会の仕組みを変える力を持っています。私たちの活動で区民の皆さんが区政に関心を持ち、よりよい区政を作ることにつながっていくようになればよいと思います。
区長 ありがとうございます。伊沢さんは大変お忙しくされていると思うのですが、その活動の原動力はどこにあるのですか?
伊沢 根本的には、自分自身が生きやすい社会をめざして活動しています。現代社会には情報があふれ、自ら「粘り強く知る意欲」が薄れていると感じます。それが生きづらさにつながっていると思い、QuizKnockの活動を通じて、「学び続けた先には楽しさが待っている」というメッセージを発信し続けています。その原点にあるのは、僕が好きな世の中を作りたいというエゴ(自己主張)です。エゴだからこそ粘り強く、考えがどう伝わるかこだわり、世の中をよくすることを諦めず活動を続けることができています。
区長 諦めずに粘り強く活動する。
伊沢 それと同時に、生きやすさや心地よさなど、自分の欲求を出発点に行動することを大切にしたいと思っています。
区長 一人ひとりがそのように行動していけば、結果として社会がよくなり、生きづらさを感じる人が少なくなると思います。私の活動の原動力は、区民の皆さんの不安や不満といった「不」を少しでも減らしたいという想(おも)いです。生きづらさを感じている人が安心して暮らせるように、誰もが自分らしく生きられるように、どんな環境であっても自分の望む生き方を選択できるように。今年もやさしくて寛容なウェルビーイングな社会をめざして、区政に取り組んでいきます。
伊沢 僕は今年も「諦めない」をテーマに、自分自身も諦めませんし、諦めずに知り続ける、情報を丁寧に追い続ける大切さを若い世代に伝えていきます。
区長 今日は有意義なお話をありがとうございました。
伊沢 ありがとうございました。

(八潮子育て支援施設「IKUMOやしお」で収録)
プロフィール
- 森澤 恭子 (もりさわ きょうこ)
- 神奈川県出身。慶応義塾大学卒業。日本テレビ、森ビル、ベンチャー数社を経て、2017年東京都議会議員選挙に初当選。2022年品川区長就任。

- 伊沢 拓司 (いざわ たくし)
- 埼玉県出身。東京大学卒業。『高校生クイズ』で史上初の個人2連覇を達成。2016年に知的エンタメ集団・QuizKnockを立ち上げ、2019年に株式会社QuizKnockを設立し、CEOに就任。
