タイトル 令和6年度各会計決算審査意見書、基金運用状況審査意見書、財政健全化審査意見書(読み上げ対応) 令和6年度品川区各会計決算審査意見書 地方自治法第233条第2項の規定に基づき、令和6年度品川区各会計歳入歳出決算書およびその関係書類を審査した結果について次のとおり意見を述べる。 令和7年9月4日 品川区監査委員 コウチユタカ 同     アリガヤスコ 同       コシバアラタ 同       アクツヒロオ 第1 審査対象 1 令和6年度品川区各会計歳入歳出決算書 2 令和6年度品川区各会計歳入歳出決算事項別明細書  3 令和6年度品川区各会計実質収支に関する調書 4 令和6年度品川区財産に関する調書 第2 審査実施の時期 令和7年7月1日から令和7年8月19日まで 第3 審査の方法 計数に誤りはないか、財政運営は健全か、予算の執行は関係法令に従って効率的になされているか、財産管理は適正かなどに主眼をおき、それぞれの関係帳簿および証拠書類との照合、説明聴取その他必要と認める審査方法により実施した。 第4 審査の結果 審査に付された各会計歳入歳出決算書等の様式は、関係法令の規定に準拠して作成されており、計数はいずれも符合し誤りのないことを確認した。 各会計の決算内容、予算執行状況および財産の管理状況については、適正かつ妥当と認められた。 なお、事業の執行状況に関する意見については付帯意見として記した。 以下、順を追って審査の概要を述べる。  1 決算の総括 金額は千円のくらいで四捨五入し、万円単位としている。パーセントは小数点第2位で四捨五入している。 各会計決算額を単純に合計した総計は、歳入額2,918億593万円、歳出額2,832億6,098万円で、差引残額は85億4,495万円の黒字となっており、前年度に比べ歳入額は6.0%増加し、歳出額は5.8%増加している。差引残額は13.0%増加している。 各会計歳入歳出決算の総括は、次のとおりである。 一般会計 歳入額 2164億4488万円 歳出額 2097億31万円 差引残額 67億4457万円 国民健康保険事業会計 歳入額 362億7639万円 歳出額 358億8668万円 差引残額 3億8971万円 後期高齢者医療特別会計 歳入額 106億9218万円 歳出額 106億3238万円 差引残額 5980万円 介護保険特別会計 歳入額 283億9061万円 歳出額 270億3975万円 差引残額 13億5086万円 災害復旧特別会計 歳入額 186万円 歳出額 186万円 差引残額 0円 総計 歳入額 2918億593万円 歳出額 2832億6098万円 差引残額 85億4495万円 2 一般会計 (1)決算の概況  歳入総額2,164億4,488万円、歳出総額2,097億31万円で、形式収支(歳入歳出差引額)は67億4,457万円の黒字となっており、翌年度へ繰り越すべき財源1億3,811万円を差し引いた実質収支も66億646万円の黒字となっている。  歳入総額は前年度(2,005億2,931万円)に比べ159億1,557万円、7.9%増加し、歳出総額は前年度(1,941億5,557万円)に比べ155億4,474万円、8.0%増加している。  当年度実質収支66億646万円から前年度実質収支(58億9,419万円)を差し引いた単年度収支は7億1,226万円の黒字となっている。 (2) 歳入  調定額2,180億1,571万円、収入済額2,164億4,488万円で、調定額に対する収入率99.3%は前年度に比べ0.1ポイント上昇している。  収入未済率は0.7%で、前年度と同率である。  予算現額、調定額、収入済額および収入未済額は、前年度に比べそれぞれ8.6%、7.9%、7.9%、3.1%増加している。  不納欠損額は、前年度に比べ19.5%減少している。 (3)歳出  支出済額は2,097億31万円で、前年度(1,941億5,557万円)に比べ155億4,474万円、8.0%増加している。  主な増加額は次のとおりである。  土木費(大崎駅周辺地区再開発事業など)59億7,750万円、29.5%、民生費(子どもの未来応援基金積立金など)59億7,418万円、6.0%、総務費(公共施設整備基金積立金など)41億7,272万円、15.2%。  主な減少額は次のとおりである。  衛生費(予防接種事業など)マイナス5億5,764万円、マイナス3.3%、教育費(学校改築推進経費など)マイナス4億4,135万円、マイナス1.8%。  予算現額に対する執行率は94.5%で、前年度(95.0%)に比べ0.5ポイント低下している。 イ 普通会計における性質別歳出状況  各地方公共団体相互の比較をするために国が定めた統一基準による普通会計の歳出状況を見ると、決算額は2,092億7,883万円で、前年度(1,937億9,606万円)に比べ154億8,277万円、8.0%増加している。このうち、人件費、扶助費および公債費の合計である義務的経費は829億6,376万円で、前年度(771億7,449万円)に比べ57億8,927万円、7.5%増加している。  経常的経費は1,463億3,574万円で、前年度(1,318億6,396万円)に比べ144億7,178万円、11.0%増加している。 3 国民健康保険事業会計 (1)決算の概況  歳入総額362億7,639万円、歳出総額358億8,668万円で、形式収支(歳入歳出差引額)は3億8,971万円の黒字となっており、翌年度へ繰り越すべき財源(0円)を差し引いた実質収支も同額の黒字となっている。  歳入総額は前年度(369億4,415万円)に比べ6億6,776万円、1.8%減少し、歳出総額は前年度(365億9,612万円)に比べ7億944万円、1.9%減少している。  当年度実質収支3億8,971万円から前年度実質収支(3億4,804万円)を差し引いた単年度収支は4,168万円の黒字となっている。 (2)歳入  調定額378億4,362万円、収入済額362億7,639万円で、調定額に対する収入率95.9%は前年度(96.3%)に比べ0.4ポイント低下している。  収入未済率は3.5%で、前年度(3.1%)に比べ0.4ポイント上昇している。  予算現額、調定額、収入済額および不納欠損額は、前年度に比べそれぞれ2.6%、1.4%、1.8%、1.3%減少し、収入未済額は12.2%増加している。 (3)歳出  支出済額は358億8,668万円で、前年度(365億9,612万円)に比べ7億944万円、1.9%減少している。  主な減少額は次のとおりである。  保険給付費マイナス6億9,595万円、マイナス3.2%、諸支出金マイナス2億1,082万円、マイナス42.1%、国民健康保険事業費納付金マイナス6,169万円、マイナス0.5%。  増加額は次のとおりである。  総務費2億6,790万円、27.2%。  予算現額に対する執行率は97.4%で、前年度(96.7%)に比べ0.7ポイント上昇している。 4 後期高齢者医療特別会計 (1)決算の概況  歳入総額106億9,218万円、歳出総額106億3,238万円で、形式収支(歳入歳出差引額)は5,980万円の黒字となっており、翌年度へ繰り越すべき財源(0円)を差し引いた実質収支も同額の黒字となっている。  歳入総額は前年度(99億9,530万円)に比べ6億9,688万円、7.0%増加し、歳出総額は前年度(99億5,703万円)に比べ6億7,534万円、6.8%増加している。  当年度実質収支5,980万円から前年度実質収支(3,826万円)を差し引いた単年度収支は2,154万円の黒字となっている。 (2)歳入  調定額107億9,222万円、収入済額106億9,218万円で、調定額に対する収入率99.1%は前年度と同率である。  収入未済率は0.8%で、前年度と同率である。  予算現額、調定額、収入済額、不納欠損額および収入未済額は、前年度に比べそれぞれ6.9%、7.0%、7.0%、10.6%、6.8%増加している。 (3)歳出  支出済額は106億3,238万円で、前年度(99億5,703万円)に比べ6億7,534万円、6.8%増加している。  主な増加額は次のとおりである。  分担金及び負担金6億1,776万円、6.6%、総務費4,166万円、21.8%、保健事業費1,358万円、5.5%。  予算現額に対する執行率は99.3%で、前年度(99.4%)に比べ0.1ポイント低下している。 5 介護保険特別会計 (1)決算の概況  歳入総額283億9,061万円、歳出総額270億3,975万円で、形式収支(歳入歳出差引額)は13億5,086万円の黒字となっており、翌年度へ繰り越すべき財源(0円)を差し引いた実質収支も同額の黒字となっている。  歳入総額は前年度(278億2,602万円)に比べ5億6,459万円、2.0%増加し、歳出総額は前年度(270億2,489万円)に比べ1,485万円、0.1%増加している。  当年度実質収支13億5,086万円から前年度実質収支(8億112万円)を差し引いた単年度収支は5億4,974万円の黒字となっている。 (2)歳入  調定額285億9,944万円、収入済額283億9,061万円で、調定額に対する収入率99.3%は前年度と同率である。  収入未済率は0.6%で、前年度と同率である。  予算現額、調定額、収入済額および収入未済額は、前年度に比べそれぞれ0.6%、2.0%、2.0%、7.1%増加している。  不能欠損額は、前年度に比べ17.0%減少している。 (3)歳出  支出済額は270億3,975万円で、前年度(270億2,489万円)に比べ1,485万円、0.1%増加している。  増加額は次のとおりである。  保険給付費2億9,317万円、1.2%、地域支援事業費1億2,325万円、7.1%。  減少額は次のとおりである。  基金積立金マイナス2億754万円、マイナス49.7%、総務費マイナス1億286万円、マイナス11.3%、諸支出金マイナス9,117万円、マイナス20.2%。  予算現額に対する執行率は93.9%で、前年度(94.5%)に比べ0.6ポイント低下している。 6 災害復旧特別会計 (1)決算の概況  歳入総額186万円、歳出総額186万円で、形式収支(歳入歳出差引額)は0円となっており、翌年度へ繰り越すべき財源(0円)を差し引いた実質収支も同額の0円となっている。  歳入総額は前年度(4,676万円)に比べ4,490万円、96.0%減少し、歳出総額も前年度(4,676万円)に比べ4,490万円、96.0%減少している。  当年度実質収支0円から前年度実質収支(0円)を差し引いた単年度収支は0円となっている。 (2)歳入  調定額186万円、収入済額186万円で、調定額に対する収入率100.0%は前年度と同率である。  収入未済率は0.0%で、前年度と同率である。  予算現額は前年度と同様であり、調定額および収入済額は前年度に比べそれぞれ96.0%減少している。 (3)歳出  支出済額は186万円で、前年度(4,676万円)に比べ4,490万円、96.0%減少している。  減少額は次のとおりである。  災害復旧費マイナス4,490万円、マイナス96.0%。  予算現額に対する執行率は0.1%で、前年度(3.1%)に比べ3.0ポイント低下している。 第 5 付帯意見 1 総括意見 令和6年度に実施された施策の概況について意見を述べる。 令和6年度において、その決算状況(執行率)は一般会計ベースで94.5%(令和5年度95.0%)となった。計画と比較すると実績が伸びなかった事業はあるものの、ウェルビーイングの視点からの施策を積極的に展開し、高い執行実績をあげているといえる。 はじめに、重点的かつ緊急的に取り組んだ施策について述べる。 物価高騰対策の一環として、住民税非課税世帯等物価高騰対策支援給付金、定額減税補足給付金、子育て世帯生活支援特別給付金、ひとり親世帯臨時特別給付金について、区民生活および区内経済の安定に向け適宜補正予算を編成し、支援を行った。 次に、令和6年度に掲げたウェルビーイング予算における重点政策について述べる。 まず、重点政策の1つ目「安全・安心を守る」についてである。 はじめに、防災対策についてである。減災への取組として、木造住宅の耐震診断費用を全額助成するとともに、非木造住宅の耐震診断および補強設計費用の助成額の拡充を図った。また、震災時の電気火災を抑制する感震ブレーカー設置費用の助成および旧耐震基準の木造住宅の除却助成の対象地域を区内全域に拡大した。 災害用携帯トイレを防災ハンドブックとあわせて全世帯に無償配布し、マンションの防災対策としては、希望する共同住宅に対しエレベーター用防災チェアの無償提供を行った。そして、首都直下地震などの大規模災害に備え、断水時も水洗トイレとして使用できる自走可能なトイレトラックを導入した。また、女性視点での備蓄品の拡充や避難所運営の見直しを図るとともに、ペットの同行避難への対応強化に取り組んだ。 次に、防犯対策については、犯罪等のリスクから区民を守るため、個人住宅への防犯カメラ・録画機能付きドアホンの設置費用の助成を行った。 さらに、感染症対策等として、65歳以上の区民のインフルエンザ定期予防接種費用の無償化を行った。また、区施設等に設置しているAED(自動体外式除細動器)については、地域のコンビエンスストアと連携し、設置場所の大幅な拡充を図った。 2つ目は、「社会全体で子どもと子育てを支える」についてである。 まず、子どもや子育てを支援する最前線の拠点として、令和6年10月に品川区児童相談所を開設した。また、各家庭が負担している学用品の費用負担軽減のため、各学校が選定する補助教材費について、都内初の所得制限のない完全無償化を実施した。 保育料の負担軽減については、所得制限なしの一部助成を認証保育所、認可外保育施設および企業主導型保育事業に拡大した。 乳児を育てる家庭への支援としての産後ケア事業については、対象者や利用回数等を拡大した。また、未就園児の定期預かり事業については拡充を図り、本格実施した。 小学生の子を持つ家庭の負担軽減を図るため、すまいるスクールにおける夏休み期間中の昼食については、全37か所で仕出し弁当の配達サービスを利用できるよう体制を整えた。 次に、子どもの健康づくりについてであるが、子どものインフルエンザ予防接種費用については助成対象者を拡大した。また、HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンについては、女性の接種率向上に向け勧奨を進めるとともに、新たに任意接種である男性への全額助成を実施した。 さらに、子どもを産み育てたいと望む方に対しては、不妊治療にかかる区独自の助成制度を新設するとともに、不妊・不育等相談事業を開始した。 3つ目は、「生きづらさをなくし住み続けられるやさしい社会をつくる」についてである。 まず、ひとり暮らしの高齢者等の見守りを支える観点から、救急代理通報システムのサービスを所得制限なく無償で提供した。また、「聞こえ」の支援対策として、中等度難聴の高齢者および18歳未満の中等度難聴児の補聴器購入費助成の所得制限を撤廃し、18歳未満の障害児の補装具・日常生活用具の購入助成についても所得制限を撤廃した。 次に、福祉を支える人材の確保については、介護を担う人材の定着を図る観点から区独自の介護職員・介護支援専門員居住支援手当を創設した。また、認知症施策については「あたまの元気度チェック」の対象年齢を75歳から50歳以上に引き下げるなど、早期発見の取組を実施した。 障害等により長時間の就労が難しい方には、超短時間就労の雇用創出に向け、就労希望者と区内企業とのマッチングを行った。また、令和7年の東京でのデフリンピック開催に向け、デフリンピック啓発イベント「デフスポーツ&アートフェア2024」を開催した。 次に、子どもが抱える課題への支援についてである。まず、発達障害等のある児童への支援を行うため、小学校と義務教育学校前期課程の全校に発達障害教育支援員を配置した。 不登校対策については、全校に校内別室指導支援員を配置するとともに、不登校になった際の居場所、相談機関等の情報を網羅したポータルサイトの開設や、メタバース技術を活用した不登校支援を行った。 いじめ防止・対策強化の取組については、学校において、全児童・生徒を対象とした「いじめ予防授業」や、1人1台配られるタブレット端末を活用した心の健康状態等の調査を実施するとともに、全教職員を対象に研修を行った。また、教育委員会ではスクールロイヤーの配置などいじめ事案への体制強化を図り、区長部局ではいじめ被害者への弁護士費用の助成を行った。 さらに、孤独・孤立対策としては、普及啓発イベント「アウェイクニング ポート〜ちいさなぬくもり 探してみませんか〜」を開催した。また、ヤングケアラー対策では、配食支援や日本語が苦手な親の通院などへの通訳者の同行、学習支援やキャリア相談等の支援拡充を図った。 4つ目は、「未来に希望の持てるサステナブルな社会をつくる」についてである。 まず、SDGsの推進に向けた取組については、ウェルビーイング・SDGs推進ファンドを創設し、ウェルビーイング・SDGsに資する地域課題の解決に向けた事業への助成を行った。さらなる資源の有効利用とごみ減量に向け、製品プラスチック回収の本格実施を区内全域でスタートさせるとともに、マイボトル用給水機設置助成制度を創設し、使い捨てプラスチックの削減を図った。また、低炭素型モビリティの普及を目指し、グリーンスローモビリティの実証運行を行った。 次に、地域経済の活性化についてである。中小企業に対しては、引き続き融資あっせんを行うとともに、販路拡大の促進や人材スキルアップ支援等を行った。また、女性起業家に対してはテストマーケティングの機会を提供した。商店街については、プレミアム付区内共通商品券への経費の助成およびキャッシュレス決済ポイント還元事業を実施し、区内経済を後押しした。 次に、スポーツの力を生かしたまちの魅力発信についてである。令和7年3月に初めて大井競馬場をゴールとする特設コースで「しながわシティラン2025」を開催した。また、友好都市のオークランド市を通じて、ニュージーランドとのホッケー交流事業を実施した。 町会・自治会に対する支援については、NPOなどの団体と協働して行う取組への後押しとして地域力連携促進補助金を創設した。 さらに、水辺空間の利活用については、天王洲、東京湾コースなどの舟運事業を実施することで、水辺の魅力向上を図った。 令和6年度の決算審査を通じ、次のとおり意見を述べる。 その1は、地域の課題に対する支援体制の強化についてである。 まず、町会・自治会への活動支援である。活動が低調であったことにより令和6年度に各種助成金の申請をしなかった町会・自治会4団体のうち1町会において、令和7年度に入り、町会長を公募するなど活動への盛り返しの動きがあった。町会・自治会の活動停止や解散は地域にとって重大な問題である。活動が継続的に行われるよう助成金も含め総合的な支援を実施されたい。 次に、防災課が対応する火災被災者への支援である。災害対策職員待機寮は、低廉な家賃で入居でき、一部は区民住宅を用途変更して活用されている。入居職員の防災訓練は年20回実施し、出席率は93%に達している。また、風水害時には9回延べ77人が緊急対応に従事した。待機寮職員の迅速な対応能力を生かし、火災時の支援体制としても出動を検討されたい。 その2は、安全・安心なまちづくりに向けた取組についてである。 まず、高齢者等を見守る災害時自動安否確認システムについては、現在、救急代理通報システムと合わせて普及を図っている。加入数は1,365件であるが、区内の65歳以上のみの世帯は45,700世帯に上る。必要な世帯に広く行き渡るよう、効果的な周知に努められたい。 次に、避難行動要支援者の支援体制である。町会・自治会による要支援者の支援体制構築にあたっては、諸事情により困難なケースも見受けられる。避難計画の作成を区が支援する際には、避難行動要支援者に関する情報共有および関係部署・機関との十分な連携に努められたい。 さらに、児童・生徒を守る防犯対策である。通学路に設置される登下校区域防犯カメラは、学校、PTA、警察などと連携し実施した点検結果を踏まえ、全46校で合計212台を設置している。今後も事件事故への防犯カメラの抑止効果を考慮し、設置位置の改善を図るなど、引き続き児童・生徒の登下校時における安全確保に努められたい。 その3は、部署間の連携強化と課題解決についてである。 まず、若者層を対象とした事業の連携である。子ども育成課の子ども・若者応援事業「エールしながわ」は、社会的自立に困難を抱える若者の社会参加のため、相談事業や勉強会、社会体験プログラムを提供している。一方で、福祉計画課の孤独・孤立対策推進事業である24時間365日無料匿名のチャット相談は、年齢・性別問わず誰でも利用できる。両事業間に重複する部分を精査し、それぞれ連携しながら若者への適切な支援につなげられたい。 次に、生活保護受給世帯における夏季の生活必需品であるエアコンの設置である。生活保護の一時扶助には条件があり、全世帯への設置は困難である。これに対し、住宅課が住環境整備の観点から新たな取組を開始した。具体的には、住宅確保要配慮者が入居する物件の家主へのエアコン設置に伴う協力金の加算である。この施策により家主の費用負担が軽減され、当該住宅へのエアコン設置が普及していく見込みである。各課の連携による効果的な課題解決を推進されたい。 さらに、商店街の装飾灯については、令和5年度の決算審査の中でも述べているが、維持管理が困難になっている商店街もある。防犯上の観点から地域全体へ及ぼす影響は大きいため、関係部署による協力体制の下、課題解決に向けて対応されたい。 その4は、新たな事業の今後の展開についてである。 まず、リチウムイオン電池が原因とされる火災が全国的に発生している昨今、区では令和6年9月より国に先行して、リチウムイオン電池の各戸収集を実施している。火災を未然に防ぐこの取組に謝意を表するとともに、今後も継続的な対応に努められたい。 また、コミュニティバスについては、令和4年3月より西大井駅〜大森駅北口区間の試行運行を開始しており、65歳以上の利用者が約5割を占めるということである。今後の事業の方針を判断するにあたっては、収支のみに焦点を当てるのではなく、移動に困難を抱える区民の利用環境にも配慮した福祉的視点からの検証も検討されたい。  次に、一般会計のうち特別区民税収について意見を述べる。  特別区民税の収入済額は551億7,898万円で前年度(540億311万円)に比べ2.18%、11億7,588万円増加している。現年課税分の収入率は99.53%で前年度(99.37%)に比べ0.16ポイント上昇し、滞納繰越分は60.16%で前年度(66.98%)に比べ6.82ポイント低下している。全体の収入率は99.22%となり前年度(99.13%)に比べ0.09ポイント上昇している。なお、令和4年度からの全体の収入率は、4年度99.19%、5年度99.13%、6年度99.22%と、主に納付手段の拡充の効果により依然高い数値を維持している。  次に、特別会計について意見を述べる。  国民健康保険事業会計は、歳入総額は対前年度6億6,776万円減少し、歳出総額も対前年度7億944万円減少したが、単年度収支においては4,168万円の黒字(前年度1億551万円の赤字)となっている。歳入については、主な歳入項目のうち、国民健康保険料、国庫支出金が対前年度それぞれ8.9%、1,283.0%増加したものの、繰入金、都支出金、繰越金は対前年度それぞれ18.4%、2.0%、23.3%減少したため、全体として対前年度1.8%の減少となっている。  一方、歳出については、主な歳出項目のうち、総務費が対前年度27.2%増加したものの、保険給付費、諸支出金、国民健康保険事業費納付金が対前年度それぞれ3.2%、42.1%、0.5%減少したため、全体として対前年度1.9%の減少となっている。  令和6年度の保険料の対調定収納率は86.58%で前年度(86.70%)に比べ0.12ポイント低下している。このうち現年分は91.45%で前年度(92.41%)に比べ0.96ポイント低下したものの、依然として高い収納率を達成することができた。これらは、特別区民税と同様に主に納付手段の拡充によるところが大きい。引き続き高い収納率を維持できるよう努められたい。  後期高齢者医療特別会計は、歳入総額は対前年度6億9,688万円増加し、歳出総額も対前年度6億7,534万円増加し、単年度収支においては2,154万円の黒字(前年度2,758万円の赤字)となっている。歳入については、繰越金、諸収入が対前年度それぞれ41.9%、0.7%減少しているが、後期高齢者医療保険料、繰入金が対前年度それぞれ9.6%、5.1%増加し、全体として対前年度7.0%の増加となっている。  一方、歳出については、支出総額の93.5%を占める分担金及び負担金が対前年度6.6%増加し、全体として6.8%の増加となっている。  令和6年度の保険料の対調定収入率(還付未済額を除く。)は98.06%で前年度(98.02%)に比べ0.04ポイント上昇している。今後も、口座振替の促進等によりさらなる収納率の向上に努められたい。  介護保険特別会計は、歳入総額は対前年度5億6,459万円増加し、歳出総額も対前年度1,485万円増加し、単年度収支においては5億4,974万円の黒字(前年度4億1,580万円の赤字)となっている。歳入については、主な歳入項目のうち繰越金、国庫支出金が対前年度それぞれ34.2%、1.8%減少しているが、保険料、支払基金交付金、繰入金が対前年度それぞれ12.6%、2.6%、2.8%増加し、全体として対前年度2.0%の増加となっている。  一方、歳出については、基金積立金、総務費が対前年度それぞれ49.7%、11.3%減少しているが、保険給付費、地域支援事業費が対前年度それぞれ1.2%、7.1%増加し、全体として0.1%の増加となっている。  令和6年度の保険料の対調定収入率(還付未済額を除く。)は96.84%で前年度(96.31% )に比べ0.53ポイント上昇している。今後も、口座振替の促進等によりさらなる収納率の向上に努められたい。  災害復旧特別会計は、歳入総額、歳出総額それぞれ対前年度4,490万円減少している。  平成29年度に創設された同会計は、令和6年7月21日および同年8月21日の大雨に伴う対応ならびに同年8月16日の台風に伴う対応として、令和元年度、令和5年度に続き3度目の執行がなされた。災害時における弾力的かつ迅速な執行に努められたい。  以上、令和6年度決算における事業の執行状況についての総括意見を述べた。令和6年度は、特別区税が前年度の576億円を11億円(1.9%)上回る等歳入は堅調に推移した。雇用・所得環境の改善等の効果により、景気は緩やかに回復している一方で、止まらない物価上昇、米国の通商政策および金融資本市場の変動等の影響により先行きに不透明感がみられるなど、区政を取り巻く環境は依然として予断を許さない状況にある。今後も特別区民税や都区財政調整交付金の動向を見据えた慎重な行財政運営が求められる。 ここで、契約事務および事務事業の執行について意見を述べる。 契約事務については概ね適切に運用がなされていると認識しているものの、決算審査ヒアリングの過程で都市ブランディング推進事業における契約変更や包括連携協定等において、契約の機会均等の原則の観点から懸念される事例が見られた。もとより、地方公共団体の契約に求められる基本原則である公正性、経済性および適正履行の確保を十分に踏まえ、より慎重な契約事務の遂行に努められたい。また、事務事業の執行にあたっては、法令遵守の観点から、具体的な事業計画や執行の枠組みについて事前確認を徹底し構築することが肝要である。将来的な問題発生のリスクを最小限に抑制し、円滑かつ効果的な事務事業の執行にあたられたい。 品川区総合実施計画(第2次)(令和7年4月策定)に示された人口推計によると、本区の生産年齢人口(15〜64歳)は、令和17(2035)年にピークを迎えた後、減少に転じる見通しである。この予測は、本区が近い将来において、財政上重大な転換点に直面する可能性があることを示唆している。このような人口動向の変化が予測される中、令和6年度の当初予算は初めて2千億円の大台を超え、過去最大規模となった。さらに、令和7年度においても前年度を上回る予算が編成されている。 「いるをはかりていずるを制す」。歳入の伸長が顕著な今だからこそ、財政規律の重要性をしっかりと認識し、決して気を緩めることなく、将来を見据え長期的視野に立った持続性のある行財政基盤の確立に注力されたい。今後とも真摯な取組を継続されることを切に期待する。 2 個別意見 (1) 主要決算数値および指標について  令和6年度普通会計(決算統計)の決算状況について、主な決算数値および指標は次のとおりである。  歳入総額2,160億2,340万円、歳出総額2,092億7,883万円で、形式収支は67億4,457万円(対前年度5.8%の増)の黒字となっており、翌年度へ繰り越すべき財源1億3,811万円を差し引いた実質収支は66億646万円の黒字(対前年度12.1%の増)となっている。また、単年度収支(当年度実質収支−前年度実質収支)は7億1,226万円の黒字、それに財政調整基金積立金を加えた実質単年度収支は12億9,682万円の黒字となっている。  財政運営の状況を判断する指標とされる実質収支比率は5.4%で、前年度(5.2%)に比べ0.2ポイント上昇している。これは、一般財源のうち都区財政調整交付金の増(約57億円)等により実質収支額が増加したことによるものである。  一般的に3〜5%が望ましい水準とされているが、23区の平均値(6.4%、速報値)と比べると1.0ポイント下回っており、当該年度の財政規模や経済状況等に影響されるところが大きい。  財政構造の弾力性を判断する指標とされる経常収支比率は78.1%で、前年度(76.8%)に比べ1.3ポイント上昇している。これは、経常一般財源総額は、都区財政調整交付金の増(約50億円)、地方特例交付金の増(約19億円)、特別区税の増(約11億円)、株式譲渡所得割交付金の増(約10億円)、地方消費税交付金の増(約6億円)等により約102億円増加したが、経常的経費充当一般財源においても、物件費の増(約41億円)、人件費の増(約40億円)、補助費等の増(約8億円)、繰出金の増(約4億円)等により、約95億円増加したためである。  23区の平均値(77.7%、速報値)と比べると0.4ポイント上回っている。  経常収支比率と同様に、財政構造の弾力性を判断する指標とされる公債費負担比率は0.8%で、前年度と同率である  歳出総額に占める人件費の割合を示す人件費比率は13.7%で、前年度(12.8%)に比べ0.9ポイント上昇している。これは、23区の平均値(14.1%、速報値)と比べると0.4ポイント下回っている。 また、人件費の経常収支比率は20.6%で、前年度(19.0%)に比べ1.6ポイント上昇している。  平成23年度以降マイナスであった自主財源人員(いわゆる財調過員)は、令和3年度以降プラスになっている。  以上、令和6年度普通会計の決算に見られる主な決算数値および指標は、いずれも適正な水準を維持していると言える 令和6年度品川区基金運用状況審査意見書 地方自治法第241条第5項の規定に基づき、令和6年度品川区基金の運用状況を審査した結果について次のとおり意見を述べる。 令和7年9月4日 品川区監査委員 コウチユタカ 同     アリガヤスコ 同       コシバアラタ 同       アクツヒロオ 第1 審査対象 1 用品基金 2 公共料金支払基金 (参考) 1 奨学金貸付基金 2 社会福祉基金 3 平和基金 4 地球環境基金 5 地域振興基金 6 公共施設整備基金 7 財政調整基金 8 減債基金 9 義務教育施設整備基金 10 介護給付費等準備基金 11 文化スポーツ振興基金 12 災害復旧基金 13 庁舎整備基金 14 国際交流推進基金 15 子どもの未来応援基金 第2 審査実施の時期 令和7年7月1日から令和7年8月19日まで 第3 審査の方法 各基金が確実かつ効率的に運用されているかなどに主眼をおき実施した。 第4 審査の結果 関係帳簿を審査した結果、別表のとおり適正に運用され計数に誤りのないことを確認した。 別表1 用品基金 令和6年度末保有状況 15000000円 令和6年度中運用状況 用品調達額 215541858円 用品払出額 215550044円 基金回転数 14.37回 運用益金 8186円 公共料金支払基金 令和6年度末保有状況 270000000円 令和6年度中運用状況 公共料金支払額 1930328168円 収入額 1928203521円 基金回転数 7.15回 運用益金 0円 別表2 用品基金 令和5年度末現在高 15000000円 令和6年度中増減 増分0円 減分0円 令和6年度末現在高 15000000円 公共料金支払基金 令和5年度末現在高 270000000円 令和6年度中増減 増分0円 減分0円 令和6年度末現在高 270000000円 合計 令和5年度末現在高 285000000円 令和6年度中増減 増分0円 減分0円 令和6年度末現在高 285000000円 令和6年度品川区財政健全化審査意見書 地方公共団体の財政の健全化に関する法律第3条第1項の規定に基づき、令和6年度決算に係る健全化判断比率およびその算定の基礎となる事項を記載した書類を審査した結果について次のとおり意見を述べる。 令和7年9月4日 品川区監査委員 コウチユタカ 同     アリガヤスコ 同       コシバアラタ 同       アクツヒロオ 第1 審査対象 実質赤字比率、連結実質赤字比率、実質公債費比率および将来負担比率(以下健全化判断比率という。)ならびにその算定の基礎となる事項を記載した書類 第2 審査実施の時期 令和7年7月1日から令和7年8月19日まで 第3 審査の方法 令和6年度決算に基づく健全化判断比率が地方公共団体の財政の健全化に関する法律(以下法という。)その他関連法令に基づいて算出され、かつ、その算定の基礎となる事項を記載した書類が適正に作成されているかに主眼をおき実施した。 第4 審査の結果 審査に付された健全化判断比率の算定の基礎となる事項を記載した書類は適正に作成されているものと認められた。また、いずれの比率も早期健全化基準を下回っており特に指摘すべき事項はない。 以下、順を追って審査の概要を述べる。 1 健全化判断比率の状況 法は、自治体の財政状況により、財政が比較的健全な自治体、早期の財政健全化が必要な自治体(早期健全化団体)、財政の再生が必要な自治体(財政再生団体)に区分する。 この区分は、(1)実質赤字比率、(2)連結実質赤字比率、(3)実質公債費比率、(4)将来負担比率の各健全化判断比率に応じて決定され、このうち、(1)から(4)の比率のいずれかが早期健全化基準以上になると早期健全化団体となり、(1)から(3)の比率のいずれかが財政再生基準以上になると財政再生団体となる。 2 各比率の状況 (1)実質赤字比率 一般会計および災害復旧特別会計を対象とした実質赤字額の標準財政規模に対する比率である実質赤字比率は、実質収支額が黒字であるため算定されない。算出比率はマイナス5.42%で、早期健全化基準の11.25%を下回っている。 (2)連結実質赤字比率 全会計を対象とした連結実質赤字額の標準財政規模に対する比率である連結実質赤字比率は、連結実質収支額が黒字であるため算定されない。算出比率はマイナス6.90%で、早期健全化基準の16.25%を下回っている。 (3)実質公債費比率 地方債に係る元利償還金および準元利償還金の標準財政規模に対する比率である実質公債費比率はマイナス3.0%で、早期健全化基準の25.0%を下回っている。 (4)将来負担比率 将来負担すべき実質的な負債の標準財政規模に対する比率である将来負担比率は、充当可能財源等の額が将来負担額を上回るため算定されない。算出比率はマイナス92.9%で、早期健全化基準の350.0%を下回っている。 さらに詳細な内容については、次の担当部署へご連絡ください。 監査委員事務局 電話 0 3 5 7 4 2 6 8 5 0 ファクシミリ 0 3 5 7 4 2 6 8 9 9