5ページ 2 品川区の現況と課題 2-1 品川区におけるこれまでの教育の取り組み 区では、品川区教育大綱に掲げる基本理念「共に はぐくみ つなぐ 教育都市しながわ」に基づき、質の高い教育環境の整備を進めるとともに、家庭・学校・地域などが共に支え合い、共に成長していく社会に向けたさまざまな取り組みを進めてまいりました。 就学前の教育においては、保育園および幼稚園の相互の特色を活かした保育・教育を継続的かつ一体的に行うことにより、乳幼児の健全な育成を図るとともに、小学校・義務教育学校(前期課程)への滑らかな接続をめざし、「保幼小ジョイント期カリキュラム」(※2)に基づく、保幼小における指導内容・方法の関連性・系統性をより一層意識した質の高い保育・教育活動を進めてきました。 また、「しながわネウボラネットワーク」(※3)を充実し、妊娠・出産・育児の切れ目のない子育て支援に取り組んできました。 学校教育においては、時代を生き抜く児童・生徒の確かな学力と豊かな人間性を育成するために、「品川教育ルネサンス」(※4)の取り組みをとおして、自主性・自律性が高く、持続可能な学校の教育体制の構築を進めてきました。 2015(平成27)年の学校教育法の一部改正にともない、2016(平成28)年4月に施設一体型小中一貫校6校を義務教育学校として位置づけ、小学校、中学校、義務教育学校の三校種体制により学校教育を推進しています。 また、地域とともにある学校づくりを推進するため2016(平成28)年度から品川コミュニティ・スクールを順次拡大し、2018(平成30)年度からは全校で実施しています。学校選択制(※5)については、2018(平成30)年3月に学事制度審議会から学校選択制等のあり方等について答申を受け、新たな制度の構築・運用に取り組んできました。 また、急速に進展する情報社会に対応するため、すべての学校にプロジェクタ等の配備やタブレット端末の導入を行うなど、ICT 環境の整備を進めてきました。さらにハード整備については、安全で安心な教育環境を確保するため、計画的に改築や改修工事を行ってきました。 青少年教育においては、青少年が社会の一員として、自分らしく生き生きと躍動し、心豊かな大人へと成長していく姿を念頭に、彼らが主体的に地域社会の中でさまざまな体験や交流を積み重ねることができるよう環境整備に取り組んできました。 特に、品川区は地域主体の活動が活発であり、青少年委員会事業や地区委員会事業など体験型重視の施策を数多く実施しており、地域の多様な世代のつながりを大切にしています。 一方、社会との関わりに困難を有する青少年に対しては、教育、福祉、保健・医療、雇用など、さまざまな関係機関が連携し、青少年一人ひとりの置かれた状況に配慮しながら、きめ細かい支援を行うための環境整備に取り組んできました。 ※2 保幼小ジョイント期カリキュラム 「保育園・幼稚園5歳児の10月から1年生の1学期」をジョイント期とし、幼児期の教育と学校教育を滑らかに接続するために「ジョイント期」において育てたい力を「生活する力」「かかわる力」「学ぶ力」の3観点・10項目からまとめている。 ※3 しながわネウボラネットワーク 子どもを安心して健やかに産み育てるための、妊娠・出産・育児の切れ目のない支援を行う品川区の取り組み。妊娠から就学前まで、各関係機関が連携しながら、相談やサポートを行う。ネウボラとは、フィンランド語で「アドバイスする場所」の意味。 ※4 品川教育ルネサンス 次代を担う子どもたちのために、これまでの教育改革で培った成果を活かしながら、制度の見直しや施策の再構築を図り、新たな「品川教育」を創生すること。 ※5 学校選択制 品川区立学校では、通学区域の児童・生徒を受け入れた後に、受入可能児童・生徒数に余裕がある場合に、通学区域外の児童・生徒を受け入れている。 小学校・義務教育学校(前期課程)は通学区域が隣接する学校から、中学校・義務教育学校(後期課程)は区内全域の学校から選択し希望申請することが可能である。 6ページ 2-2 品川区の教育を取り巻く状況の変化 品川区では、人口が1998(平成10)年以降増加に転じ、2019(令和元)年には40万人を突破しました。2018(平成30)年に行った将来人口推計では、2044(令和26)年まで増加を続け約44.8万人でピークを迎える見込みです。年少人口(0〜14歳)も同様に増加を続け2036(令和18)年にピークを迎える見込みとなっています。 ICT(情報通信技術)(※6)、AI(人工知能)(※7)、IoT(モノのインターネット)(※8)、ロボット、ビッグデータなどの技術開発が急速に進展しており、教育分野においてもこれらの技術の活用が期待されています。国からはGIGAスクール構想が打ち出され、2020(令和2)年度中に児童・生徒に1人1台の端末を配備することと、それを効果的に活用することが求められています。 また、2015(平成27)年9月の国連サミットにおいて、SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)(※9)が採択されました。2030(令和12)年を目標に、教育分野においても「誰一人取り残さない」社会の実現をめざした取り組みを行う必要があります。 一方で2020(令和2)年から世界的に流行している新型コロナウイルス感染症は、わが国にも甚大な影響を与えており、本大綱改訂時点においても今後社会経済に与える影響は未知数です。教育分野においても、在宅における教育機会の確保が求められるなど、学校教育を取り巻く環境が大きく変容しています。 区内の外国人に目を向けると、これまで定住化・永住化傾向が続いていましたが、今後は不透明な状況です。しかし、国として外国人材の積極的な受入れを行っていく方針のもと、区としても多文化共生(※10)に向けた取り組みを推進する必要があります。 このように変化が著しく、先が見通せない状況にあっても、より充実した教育の取り組みを的確かつ着実に進めていく必要があります。 ※6 ICT( 情報通信技術) 情報通信技術(Information and Communication Technology)の略称。情報処理および情報通信に関連する諸分野における技術・産業・設備・サービス等の総称。 ※7 AI(人工知能) 人工知能(Artificial Intelligence) の略称。人間の脳が行っている知的な作業を、コンピュータで模倣したソフトウェアやシステム。具体的には、人間の使う自然言語を理解したり、論理的な推論を行ったり、経験から学習したりするコンピュータプログラム等のことをいう。 ※8 IoT(モノのインターネット) モノのインターネット(Internet of Things) の略称。コンピュータなどの情報・通信機器だけでなく、世の中に存在するさまざまな物体(モノ)に通信機能を持たせ、インターネットに接続したり相互に通信することにより、自動認識や自動制御、遠隔計測などを行うこと。 ※9 SDGs(持続可能な開発目標) 持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals) の略称。2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された2030年までに持続可能でより良い世界をめざす国際的に共通の達成目標。17のゴール・169のターゲットから構成され、地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っている。 日本でも「SDGsアクションプラン2020」として行動計画を作成し、国を挙げて取り組んでいる。 ※10 多文化共生 国籍や民族などの異なる人々が、互いの文化的な違いを認め合い、対等な関係を築こうとしながら、地域社会の構成員としてともに生きていくこと。