品川人物伝 第29回
更新日:平成24年8月17日
SF小説家 星 新一 その2
品川歴史散歩案内 品川人物伝 第29回 12月1日~12月31日
SF小説家 星 新一 その2
品川人物伝 第29回は、前回に引き続き、品川区平塚に居住していた小説家、星新一を紹介します。
星新一とショートショート
昭和32年(1957)、SF短編小説「セキストラ」で、作家としてデビューした新一は、翌年、美人ロボットを主人公にした短編小説「ボッコちゃん」を執筆します。
この作品は、一つのアイデアをもとに一般の短編小説よりさらに短く表現するもので、ショートショート形式といいます。
それは、新一の作品の原型となり、代表作品のひとつにあげられます。
昭和34年には、新潮社の「小国民の科学」シリーズ第8巻『生命のふしぎ』を担当しました。
これを機に依頼を多く受けるようになり、テレビ番組の原案を執筆するなど活動の場を広げていきます。
昭和36年には、直木賞の候補となり受賞こそ逃しますが、「ボッコちゃん」を収録した初めての作品集『人造美人』が刊行され、注目を集めます。
同年3月、新一はバレリーナの村尾香代子と結婚、港区麻布十番のマンションに居を構えます。
2年間ほど港区で暮らした後、品川の実家へ戻っています。
作家として
人気作家としての道を歩み始めた新一は、多くのショートショート作品を執筆し続け、テレビの人気番組にも出演するようになります。
自宅近くの戸越銀座商店街をアンダーシャツとサンダルで散歩することが新一の息抜きでしたが、顔が知られたことで、気軽に散歩ができなくなり、テレビへの出演は断るようになったと言われています。
発表された作品は1000編以上に及びました。
ショートショートの執筆にあたっては、性行為や残虐な殺人シーンを描写しない、時事風俗を扱わないなどの制約を自ら課し、登場する主人公の名前は「エヌ氏」などアルファベットで表しました。
また、新一の作品の中には、ショートショート以外に、父・星一を描いた伝記的小説『人民は弱し 官吏は強し』や、昭和46年頃から発表された『殿様の日』等の時代小説も含まれています。
時代小説を書くにあたって、新一は近くに住んでいた歴史小説家の池波正太郎を訪ね、アドバイスをお願いしています。
その後、57歳の時に1001編目にあたるショートショートの9作品を9つの出版社からそれぞれ発表したことを機に、ショートショートについては休筆を宣言します。
マンネリとの批評もありましたが、苦しみながら打ち立てられた金字塔でした。
以後、随筆の執筆や雑誌の対談、ショートショートコンテストの選考などの活動を続けながら、時代の変化に見合うよう、自作の手直しを行いました。
平成5年、母親の死去に伴う遺産相続の関係で自宅を売却し港区高輪に転居します。
平成9年12月30日死去、享年71歳でした。
日本におけるSF小説の草創期に、ショートショートの形式を確立し、先頭に立ち大きな足跡を残しました。
星新一の生涯については、最相葉月(さいしょうはづき)著『星新一 一〇〇〇一話(せんいちわ)をつくった人』を参考としました。
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星新一が散歩した 戸越銀座商店街
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