品川人物伝 第33回

更新日:平成25年5月1日

時代小説作家 池波正太郎 その2

品川歴史散歩案内 品川人物伝  第33回 4月1日~4月30日


時代小説作家 池波正太郎 その2


品川人物伝 第33回は、前回に引き続き、品川区荏原に暮らした小説家、池波正太郎を紹介します。

昭和24年(1949)、長谷川伸の門下生となった正太郎は、東京都職員として働きながら、師のもとで戯曲の執筆を続けます。

昭和26年、正太郎が執筆した戯曲が新国劇(しんこくげき)の島田正吾の目に留まったことから、初めて上演されることとなります。

新国劇は、大正6年(1931)に新たな国民演劇を目指して、沢田正二郎らによって結成された劇団で、当時、辰巳柳太郎(りゅうたろう)・島田正吾が人気を集めていました。

以後、10年あまり、正太郎は新国劇のため戯曲を書き続けていますが、芝居の脚本だけでは食べていけないからという師からの強い勧めもあり、小説の執筆も始めます。

 

数々の作品

昭和29年、長谷川伸を中心に結成された新鷹会(しんようかい)の同人誌『大衆文芸』に小説としての処女作『厨房(キッチン)にて』を発表。

翌年には都の職員を辞め、執筆活動に専念するようになります。

そして、信濃松代藩(まつしろはん)真田家のお家騒動を題材にした『恩田木工(おんだもく)』が、早くも昭和31年度下半期の直木賞候補となります。

この頃から、文芸雑誌等で数多くの作品を執筆、昭和34年、6度目の候補作品となった『錯乱』で直木賞を受賞しました。

火付盗賊改方(ひつけとうぞくあらためかた)長官、長谷川平蔵を主人公とした「鬼平犯科帳」は昭和43年から、「剣客(けんかく)商売」、「仕掛人・藤枝梅安(ばいあん)」は47年から、書き始められています。

この3作品はシリーズ化され、たいへんな人気を博し、繰り返し映画化やテレビ放映されています。

さらに、昭和49年からは、度々、小説のテーマとしてきた真田一族を扱った大河小説『真田太平記』の執筆にも取りかかっています。

この他、幕末の人物や忍者など、有名無名の人物を主人公にした作品を発表し続ける一方、映画や食べ物、旅行、男の生き方など、様々なテーマで数多くの随筆も書いています。

 

品川での暮らし 

こうして、時代小説家として不動の地位を築いた正太郎が、品川区内の荏原で暮らし始めたのは、結婚後間もない昭和27年でした。

その後、亡くなるまでこの地に自宅を構えました。

家族が愛着を持っているこの地から引っ越す気にはならなかったと、随筆の中で語っています。

日課の散歩は、近所にある武蔵小山商店街を端から端まで歩き、駅前の書店に必ず立ち寄るといったコースでした。

また、作品の中にも、現在の品川区域が登場しており、仕掛人・藤枝梅安の住まいは、現在の品川区東五反田1丁目に所在する雉子(きじ)神社付近に設定されています。

多くの読者が惹き付けられる時代小説を出し続けた池波正太郎は、平成2年(1990)3月、急性白血病のため入院、同年の5月に67歳で死去しました。

 

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