「品川区ジェンダー平等と性の多様性を尊重し合う社会を実現するための条例」 に関するQ&A(令和6(2024)年4月・第1版) このQ&Aは、「品川区ジェンダー平等と性の多様性を尊重し合う社会を実現するための条例」(令和6(2024)年4月1日施行。推進会議および苦情・相談の申出・対応に係る規定は令和6(2024)年7月1日施行。)の内容・趣旨を広く区民・教育関係者・事業者の皆様にご理解いただくために作成したものです。なお、今後区に寄せられたご意見・ご質問を踏まえて順次必要な改訂をしていきます。 1.前文 人は誰もが個人として尊重される権利を持ち、性別等により差別されることのない平等な存在である。人権尊重都市品川宣言は、「人間は生まれながらにして自由であり、平等である」「いかなる国や個人も、いかなる理由であれ絶対にこれを侵すことはできない」と謳っている。 品川区では、男女共同参画から、SDGsの目標である「ジェンダー平等」の実現に向けて、国際社会や国内の動向と協調しつつ、施策を推進してきた。 「ジェンダー平等」とは、一人ひとりの人間が、性別にかかわらず、平等に責任や権利、機会を分かち合い、あらゆる物事を一緒に決めることができることを意味している。 これまでの取組により、ジェンダー平等は前進してきているものの、個人の希望や能力ではなく性別等によって生き方や働き方の選択肢や機会が決められてしまうなど、今なお固定的な性別役割分担意識やそれに基づく社会的慣行等が存在している。 品川区が公平で平等な社会として発展していくために、すべての人が、性別や性的指向、ジェンダーアイデンティティにかかわらず、性別等に起因した差別や暴力を受けることなく、多様な個人として尊重され、自らの意思によって社会のあらゆる分野における活動に平等に参画する機会が確保され、その個性と能力を十分に発揮して、自分らしく生きることのできる社会の実現を目指して、ここにこの条例を制定する。 【解説】 前文は、一般的に条例の制定の趣旨、目的などを述べるものであり、制定の理念を強調する場合に置かれます。この条例は、社会的にも重要課題と位置付けられているジェンダー平等と性の多様性を尊重し合う社会の実現に関する区の基本理念を定めるものであることから、条例を制定するに至った経緯や区が目指す姿を示し、ジェンダー平等と性の多様性を尊重し合う社会の実現に向けた区の決意を表明するため、前文を置くものです。 第一段落では、23区唯一の人権宣言である「人権尊重都市品川宣言」の一文である「人間は生まれながらにして自由であり、平等である」「いかなる国や個人も、いかなる理由であれ絶対にこれを侵すことはできない」ことを述べています。 第二段落では、品川区のこれまでの取組の歩みを述べています。区では、昭和56(1981)年に「婦人問題解決と婦人の社会的地位向上のための品川区行動計画」を策定して以来、平成11(1999)年に施行された男女共同参画社会基本法の理念に基づき、「男女共同参画のための品川区行動計画」を策定し、男女共同参画に関する施策を推進してきました。そして今、SDGsの目標の一つである「ジェンダー平等」を推進しています。 第三段落では、「ジェンダー平等」に関する内閣府の説明を述べています。 第四段落では、令和5(2023)年、日本のジェンダー・ギャップ指数が146カ国中125位となり、前年116位よりもさらに後退するなど、依然としてジェンダー平等に対する課題が存在していることを示すとともに、近年では性的マイノリティなど多様な性に対する課題への対応が求められていることを示しています 。 第五段落では、区が目指す「ジェンダー平等と性の多様性を尊重し合う社会」が実現された社会の姿を示し、条例制定の決意を表明しています。 1.条例の目的・定義 (目的) 第1条 この条例は、ジェンダー平等と性の多様性を尊重し合う社会の実現に関し、その基本となる理念を明らかにし、品川区(以下「区」という。)、区民等、教育関係者および事業者等の責務等を定めることにより、ジェンダー平等と性の多様性を尊重し合う社会の実現に関する施策(以下「ジェンダー平等社会推進施策」という。)を総合的かつ計画的に推進し、もって誰もが自分らしく生きることのできる社会の実現に資することを目的とする。 (定義) 第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。  (1)ジェンダー平等と性の多様性を尊重し合う社会 すべての人が、性別等に起因した差別や暴力を受けることなく、多様な個人として尊重され、自らの意思によって社会のあらゆる分野における活動に平等に参画する機会が確保され、その個性と能力を十分に発揮して、自分らしく生きることのできる社会をいう。  (2)性別等 性別(出生時に判定された性をいう。以下同じ。)、性的指向およびジェンダーアイデンティティをいう。  (3)性的指向 恋愛感情または性的感情の対象となる性についての指向をいう。  (4)ジェンダーアイデンティティ 自己の属する性別についての認識に関するその同一性の有無または程度に係る意識をいう。  (5)配偶者暴力等 配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)、パートナーもしくは交際相手である者またはあった者からの身体的、精神的、社会的、経済的または性的な暴力をいう。  (6)ハラスメント 他の者を不快にさせる性的な言動(性的指向またはジェンダーアイデンティティに関する言動を含む。)および妊娠、出産、育児もしくは介護に関する制度等を利用することまたは妊娠し、もしくは出産したことを理由に、精神的苦痛もしくは身体的苦痛を与える言動をいう。  (7)メディア・リテラシー 多様なメディアが伝える様々な情報を無批判に受け止めるのではなく、主体的に読み解き、取捨選択したうえで適切に利用し、または発信する能力をいう。  (8)エンパワーメント その人が本来持つ力を発揮できるように支援し、環境を整えることまたは個人もしくは社会集団としてあらゆる段階の経済、政治その他の分野における意思決定の場に参画し、自律的な力を発揮することをいう。  (9)区民等 区内に住所を有する者、区内で働く者、区内で学ぶ者をいう。  (10)教育関係者 区内において学校教育、社会教育その他の教育に携わる個人、法人その他の団体をいう。  (11)事業者等 営利または非営利にかかわらず、区内で事業活動を行う個人、法人その他の団体をいう。 【Q1】この条例が目指す「ジェンダー平等と性の多様性を尊重し合う社会」とは? 【A1】 この社会にはたくさんの人が生活しており、文化や身体的特徴など、一人ひとり違う存在です。性別や性的指向、ジェンダーアイデンティティもその違いの一つです。  すべての人が、自分らしく生きていくためには、この違いだけで役割や行動を決めつけるのではなく、互いの個性を尊重し合うことが大事です。  そのような考えのもと、区では、「すべての人が、性別等に起因した差別や暴力を受けることなく、多様な個人として尊重され、自らの意思によって社会のあらゆる分野における活動に平等に参画する機会が確保され、個性や能力を発揮して、自分らしく生きられる社会」の実現を目指します。 【Q2】なぜこの条例が必要なのか? 【A2】 令和5(2023)年の日本のジェンダー・ギャップ指数(※1)は146カ国中125位と、前年の116位よりもさらに後退しているなどの現状を踏まえ、性別にかかわらず平等に責任や機会を分かち合い、社会的性差のない社会づくりを目指していく必要があります。      また、「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律」(以下「理解増進法」という。)の施行に伴い、区内の理解を増進していく必要があることから、そのような社会的背景を踏まえ、区では、「品川区ジェンダー平等と性の多様性を尊重し合う社会を実現するための条例」を制定しました。 ※1 ジェンダー・ギャップ指数は、スイスの非営利財団「世界経済フォーラム」が独自に算定したもので、政治・経済・教育・健康の4分野の指標から構成された男女格差を測る指数です。〔引用元:「ひとりひとりが幸せな社会のために 〜令和2年版データ〜」,内閣府〕 【Q3】ジェンダー平等とは? 【A3】 「ジェンダー平等」とは、一人ひとりの人間が、性別にかかわらず、平等に責任や権利や機会を分かち合い、あらゆる物事を一緒に決めることができることを意味しています。  また、「ジェンダー」とは、日本では「社会的・文化的に形成された性別」として解釈されることが多く、社会において「男だから」「女だから」という理由で、性別によって生き方や働き方の選択肢が決められてしまうなどの課題が存在しています。  性別に起因する差別や不平等がなく、固定的な性別役割分担意識の影響が中立的である社会を追求することは、「ジェンダー平等」を実現するための考え方の一つです。 【Q4】性的指向とは? 【A4】 この条例では、性的指向を「恋愛感情または性的感情の対象となる性についての指向をいう。」と定義しており、例えば、男性が好き、女性が好き、男性も女性も好きなどのことです。 【Q5】ジェンダーアイデンティティとは? 【A5】 この条例では、ジェンダーアイデンティティを「自己の属する性別についての認識に関するその同一性の有無または程度に係る意識をいう。」と定義しており、その性質は、本人のその時々の主張を指すものではなく、自身の「性」についてのある程度の一貫性を持った認識を指すものと解されています。 【Q6】性の多様性とは? 【A6】 この条例では、「性の多様性」を性的指向およびジェンダーアイデンティティの多様性として捉えています。一般的な男性・女性というだけでなく、性のあり方は多様です。  性的指向やジェンダーアイデンティティに関して、そのあり方が少数派の方々は「性的マイノリティ」や「LGBT(※2)」と呼ばれます。 性的マイノリティには、LGBT以外にも、男女どちらにも恋愛感情を持たない方、自分の性を男女どちらかに決められない方など様々な方がいます。 ※2 L:レズビアン G:ゲイ B:バイセクシュアル T:トランスジェンダー 2.基本理念(第3条) (基本理念) 第3条 区は、次に掲げる事項を基本理念として、ジェンダー平等と性の多様性を尊重し合う社会の実現を目指す。  (1)性別等に起因する差別、配偶者暴力等、ハラスメントその他の性別等に起因する人権侵害が根絶されること。  (2)すべての人が、固定的な性別役割分担意識に基づく社会制度や慣行にとらわれることなく、その個性と能力を発揮し、自らの意思と責任において多様な生き方を選択できること。  (3)すべての人が、性別等にかかわりなく、社会の平等な構成員として、あらゆる分野の活動方針の立案および決定に平等に参画する機会が確保されること。  (4)すべての人が、家事、子の養育、家族の介護その他の生活における活動および職場、学校、地域等における活動の調和の取れた暮らしを営むことができること。  (5)すべての人が、妊娠、出産等のリプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康と権利)を認め合い、生涯にわたり健康で自分らしい生き方を選択できること。  (6)学校教育、社会教育その他の教育の場において、ジェンダー平等と性の多様性を尊重し合う社会を支える意識の形成およびメディア・リテラシーの育成に向けた取組が行われること。  (7)女性のエンパワーメントの推進により、女性が尊厳と誇りをもって自分自身の生活と人生を決定する権利を保障し、あらゆる参画の機会において、女性個人がもつ力を十分に発揮できること。  (8)すべての人の性的指向およびジェンダーアイデンティティが尊重され、性的指向およびジェンダーアイデンティティに起因する日常生活上の困難等が解消されること。  (9)国際社会および国内におけるジェンダー平等と性の多様性を尊重し合う社会の実現に係る取組を積極的に理解し、推進すること。 【Q7】基本理念とは何か? 【A7】 この条例の第3条では、「ジェンダー平等と性の多様性を尊重し合う社会」の実現を目指すにあたって基本となる理念を述べています。  基本理念は全部で9つあり、「人権侵害の根絶」「多様な生き方の選択」「平等な参画機会の確保」「生活と仕事、学び、地域活動の調和」「リプロダクティブ・ヘルス/ライツの尊重」「ジェンダー平等と性の多様性を尊重し合う社会を支える教育」「女性のエンパワーメント」「性的指向やジェンダーアイデンティティに起因する日常生活上の困難の解消」「国際社会・国内での取組に対する理解・推進」が条例に掲げられています。  このうち、「多様な生き方の選択」「平等な参画機会の確保」「生活と仕事、学び、地域活動の調和」については男女共同参画社会基本法が、「性的指向やジェンダーアイデンティティに起因する日常生活上の困難の解消」については理解増進法がそれぞれ法的な背景となります。また、「リプロダクティブ・ヘルス/ライツの尊重」については、内閣府の「男女共同参画基本計画」を背景としています。 【Q8】なぜ「女性のエンパワーメント」を基本理念に掲げる必要があるのか? 【A8】 2023(令和5年)の日本のジェンダー・ギャップ指数は146カ国中125位と、前年の116位よりもさらに後退しているほか、内閣府の『令和5年度版男女共同参画白書』では、仕事等の有償労働時間が男性に偏り、家事・育児等の無償労働時間が女性に偏っていることが示されています。  また、『品川区人権に関わる意識調査』(令和元(2019)年度実施)では、家庭内における家事分担は「妻」の割合が高くなっているほか、職場や社会通念・慣習・しきたりについて、「男性のほうが非常に優遇」「どちらかというと男性が優遇」との回答が6割を占めています。  そのような現状から、女性が尊厳と誇りをもって自分らしく生きられる社会の実現が必要であり、この条例の基本理念に「女性のエンパワーメント(※3)」を掲げています。 ※3 この条例では、エンパワーメントを「その人が本来持つ力を発揮できるように支援し、環境を整えることまたは個人もしくは社会集団としてあらゆる段階の経済、政治その他の分野における意思決定の場に参画し、自律的な力を発揮することをいう。」と定義しています。 【Q9】基本理念の「性的指向やジェンダーアイデンティティに起因する日常生活上の困難の解消」とは何を意味しているのか? 【A9】 東京都では「東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現をめざす条例」に基づき、多様な性への理解を深め、性的マイノリティの方々が暮らしやすい環境づくりにつなげる制度として、「東京都パートナーシップ宣誓制度」を実施しています。  区では、性的マイノリティ当事者への支援の一環として、パートナーシップ関係にある方の生活上の不便を軽減し、性的指向やジェンダーアイデンティティによらず誰もが暮らしやすい環境につなげていくために、「東京都パートナーシップ宣誓制度」の受理証明書を活用して、区営住宅への入居や保育園の申請などの行政サービスを提供しています。 【品川区ホームページ】 https://www.city.shinagawa.tokyo.jp/PC/kuseizyoho/kuseizyoho-zinken/kuseizyoho-zinken-kyodosankaku/20230216153302.html  東京都パートナーシップ宣誓制度の活用以外にも、性の多様性に関する講座や、性的マイノリティ当事者、その友人、家族向け交流スペース「みんなのひろば」、LGBT専門相談「にじいろ相談(※4)」などを通して、性の多様性の尊重に関する区民等の理解の促進や当事者の日常生活上の困難の解消に引き続き努めていきます。 ※4 これまでジェンダー平等推進センターのカウンセリング相談でセクシュアリティに関する相談対応をしてきましたが、これに加え、令和6(2024)年7月から毎月2回の頻度で、専門の相談員が主に性的マイノリティの方々を対象として、性を理由とする差別等に関する電話または面談による専門相談「にじいろ相談」を実施します。 3.区および区民等・教育関係者・事業者等の責務(第4条〜第7条) (区の責務) 第4条 区は、前条の基本理念に基づき、ジェンダー平等社会推進施策を総合的かつ計画的に推進するものとする。 2 区は、区民等、教育関係者、事業者等、国、他の地方公共団体その他の関係機関等と連携し、協力してジェンダー平等と性の多様性を尊重し合う社会の実現を目指すものとする。  (区民等の責務) 第5条 区民等は、ジェンダー平等と性の多様性を尊重し合う社会について理解を深め、生活、職場、学校、地域等の活動において、これを実現するよう努めるものとする。 2 区民等は、区が実施するジェンダー平等社会推進施策に協力するよう努めるものとする。  (教育関係者の責務) 第6条 教育関係者は、ジェンダー平等と性の多様性を尊重し合う社会の実現に果たす教育の重要性を認識し、教育を行うよう努めるものとする。 2 教育関係者は、区が実施するジェンダー平等社会推進施策に協力するよう努めるものとする。  (事業者等の責務) 第7条 事業者等は、ジェンダー平等と性の多様性を尊重し合う社会について理解を深め、事業活動を行うにあたり、これを実現するよう努めるものとする。 2 事業者等は、すべての人が生活、職場、学校、地域等における活動の調和の取れた暮らしを営むことができるよう環境の整備に努めるものとする。 3 事業者等は、区が実施するジェンダー平等社会推進施策に協力するよう努めるものとする。 【Q10】区は、この条例に基づきどのような施策を実施するのか? 【A10】 区は、この条例に基づき、ジェンダー平等と性の多様性を尊重し合う社会推進会議の設置(第12条)や苦情・相談の申出・対応のための体制整備(第14条・第15条)に取り組みます。また、令和6(2024)年7月よりSNSカウンセリング相談およびにじいろ相談を開始予定です。  区は、今後、推進計画を定め、ジェンダー平等と性の多様性を尊重し合う社会推進施策を総合的かつ計画的に進めていきます。 【Q11】区民等・教育関係者・事業者等にはどのような対応が求められるのか? 【A11】 区民等・教育関係者・事業者等の皆様には、ジェンダー平等と性の多様性を尊重し合う社会に関する理解を深めるとともに、区が実施するジェンダー平等社会推進施策に協力することが求められます。  区民等については、生活、職場、学校、地域等の活動において、事業者等については、事業活動において、ジェンダー平等と性の多様性を尊重し合う社会が実現するよう、基本理念を意識し、行動することが求められます。  具体的には、区が実施する啓発イベント等への参加・協力や、個人の性的指向やジェンダーアイデンティティに関するカミングアウト(※5)を強制または禁止したり、アウティング(※6)したりしないことのほか、事業者等においては、ワーク・ライフ・バランスの推進やハラスメント防止対策等、ジェンダー平等と性の多様性の尊重に配慮するよう努める必要があります。  また、教育関係者については、ジェンダー平等と性の多様性を尊重し合う社会の実現に果たす教育の重要性を認識し、教育を行うよう努める必要があります。  区は、区民等・教育関係者・事業者等のジェンダー平等と性の多様性の尊重に関する理解が進み、自主的・自律的に協力していただけるよう、普及啓発活動に取り組んでいきます。 ※5 性的マイノリティの当事者が、自身の性的指向やジェンダーアイデンティティについて他者に伝えることを「カミングアウト」といいます。 ※6 本人の同意なくその人の性的指向やジェンダーアイデンティティに関する情報を第三者に暴露することを「アウティング」といいます。 〔一部引用元:「多様な人材が活躍できる職場環境づくりに向けて 〜性的マイノリティに関する企業の取り組み事例のご案内〜」内閣府〕 4.性別等に起因する差別等の禁止(第8条)  (禁止事項) 第8条 何人も、性別等に起因する差別的取扱い、配偶者暴力等、ハラスメントその他の性別等に起因する人権侵害を行ってはならない。 2 何人も、個人の性的指向、ジェンダーアイデンティティに関して、公表を強制し、もしくは禁止し、または本人の意に反して公にしてはならない。 【Q12】「性別等に起因する差別的取扱い」とは? 【A12】 差別的取扱いとは、正当な理由なく、性別や性的指向、ジェンダーアイデンティティを理由として、不利益な取扱いをすることです。具体的には、配偶者暴力等、セクシュアル・ハラスメントやマタニティ・ハラスメント、個人の性的指向やジェンダーアイデンティティに関するカミングアウトの強制または禁止、アウティングのほか、相手の人格を否定する差別的な言動、SNS等での差別的な書き込みなどが考えられます。これらを未然に防ぎ、性別や性的指向、ジェンダーアイデンティティにかかわらず、自らの意思によって、社会のあらゆる分野における活動に平等に参画し、個性と能力を十分に発揮して、自分らしく生きられる社会が実現されることが重要と考えています。 【Q13】例えば、「ジェンダーアイデンティティが女性である戸籍上の男性」が女性専用エリアに立ち入った場合はどうなるのか? 【A13】 ジェンダーアイデンティティの多様性は尊重されるべきものですが、どのような場合においても、この条例の規定により、本人の自己の性別に対する認識が戸籍上または身体上の性別より優先されるわけではありません。  この条例は、いわゆる理念条例であり、一人ひとりの行動を制限したり、また、特定の者に何か新しい権利を与えたりするような性質のものではなく、性別により区分された施設における従来の取扱いを変える旨の規定はございません。  公衆浴場については、厚生労働省から、公衆浴場における男女の区分は、風紀の観点から混浴禁止を定めている趣旨から、男女とは身体的な特徴をもって判断するものである旨通知がされており、この通知に基づく施設管理者の指示に反して、公衆浴場等を利用した場合には、従前と同様、現行法令に従い、適切に対応されるものと承知しております。また、「品川区公衆浴場の設置場所の配置および衛生措置等の基準に関する条例」では、7歳以上の男女を混浴させないこと等が規定されています。  条例が、法律による規制を上回ることはないため、性の多様性の尊重を理由に、違法とされているものが合法とされるわけではなく、犯罪が正当化されるものではありません。  区としては、この条例の趣旨が、区民・事業者等に正しく理解され適切な行動や施設管理につながるよう普及啓発に努めていきます。 【Q14】「ジェンダーアイデンティティが女性である戸籍上の男性」の女湯利用を断ったら、憲法14条に照らして差別に当たらないのか。 【A14】 憲法14条はいわゆる法の下の平等を定めていますが、令和5(2023)年4月28日衆議院内閣委員会において厚生労働副大臣は、憲法14条は「合理的な理由なしに区別することを禁止するという趣旨」であり、「公衆浴場における入浴者について男女を身体的な特徴の性をもって判断するというこの取扱いは、風紀の観点から合理的な区別であるというふうに考えられております。憲法14条に照らしても差別に当たらないものというふうに考えております」と答弁しています。 なお、公衆浴場については、厚生労働省から、公衆浴場における男女の区分は、風紀の観点から混浴禁止を定めている趣旨から、男女とは身体的な特徴をもって判断するものである旨通知がされており、この通知に基づく施設管理者の指示に反して、公衆浴場等を利用した場合には、従前と同様、現行法令に従い、適切に対応されるものと承知しております。      また、「品川区公衆浴場の設置場所の配置および衛生措置等の基準に関する条例」では、7歳以上の男女を混浴させないこと等が規定されています。 条例が、法律による規制を上回ることはないため、性の多様性の尊重を理由に、違法とされているものが合法とされるわけではなく、犯罪が正当化されるものではありません。 区としては、この条例の趣旨が、区民・事業者等に正しく理解され適切な行動や施設管理につながるよう普及啓発に努めていきます。 5.情報の発信・流通における配慮(第9条)  (情報の発信および流通にあたっての配慮) 第9条 何人も、情報の発信および流通にあたっては、性別等に起因する人権侵害を助長することのないよう十分に配慮しなければならない。 【Q15】アニメや漫画など創作物における表現が規制されるのか? 【A15】 この条例の規定をもって、区がアニメや漫画など創作物における表現の規制を行う考えはございません。  情報の発信・流通における配慮に関する規定を設けた趣旨としては、SNS等における誹謗中傷の防止・予防を意図したものです。総務省の『令和5年度版情報通信白書』によれば、日本におけるソーシャルメディア利用者数の令和5年度予測値は、105百万人とされています。(SNSやアプリを月1回以上利用する人の数(アカウントの有無は問わない。))SNSはコミュニケーションを広げる面がある一方、情報発信の容易さ等から、他人への誹謗中傷を書き込んでしまうなど、その利用に際して他人の人権を侵害してしまう恐れがあります。安易な書き込みでほかの人の人権を傷つけないために、メディア・リテラシーの育成に向けた取組や情報の発信および流通にあたっては、性別等に起因する人権侵害に当たる表現を用いないよう十分に配慮することが必要です。 6.推進計画の策定(第10条) 第10条 区は、ジェンダー平等と性の多様性を尊重し合う社会を実現するための計画(以下「推進計画」という。)を策定し、これに基づき、ジェンダー平等社会推進施策を総合的かつ計画的に推進するものとする。 2 推進計画の策定にあたっては、あらかじめ第12条第1項の品川区ジェンダー平等と性の多様性を尊重し合う社会推進会議の意見を聴くものとする。 3 区は、区の附属機関その他の会議体における委員の男女構成について、推進計画に数値目標を定め、積極的改善措置を講じるものとする。 4 区は、推進計画を策定し、または変更したときは、速やかにこれを公表するものとする。 【Q16】推進計画にはどのような内容を定めるのか? 【A16】 区は現在「男女共同参画のための品川区行動計画」」を策定しており、この計画には「品川区配偶者暴力対策基本計画」「品川区女性活躍推進計画」が包含されています。これは、「男女共同参画社会基本法」や「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」等に基づき、区が策定している計画です。この計画には「男女平等意識の啓発」や「性の多様性を認め合うまちづくり」、「ワーク・ライフ・バランスの推進」「配偶者等からの暴力の未然防止と早期発見」等の目標が掲げられています。      この条例の制定を機に、基本理念に基づき、計画の視点や目標を見直していきます。そのため、令和6(2024)年度に人権・ジェンダー平等に関する区民意識・事業所状況調査を実施し、調査結果を踏まえて、推進計画の策定(現「男女共同参画のための品川区行動計画」の改訂)を行っていきます。 【Q17】区は、すべての会議体の委員構成を男女同数にしていくのか? 【A17】 「男女共同参画のための品川区行動計画」では、審議会等における女性委員の割合を令和5(2023)年度までに40.0%とする数値目標を掲げていますが、令和5(2023)年4月1日現在、審議会等における女性委員の割合は35.0%となっています。  区には、品川区防災会議や品川区介護認定審査会、品川区都市計画審議会、品川区債権管理審議会など、多くの会議体が設置されていますが、専門的な資格・知識を要するものもあるため、各会議体の設置目的を踏まえ、女性委員の参画促進に積極的に取り組んでいきます。 7.普及啓発と広報(第11条)  (普及啓発および広報) 第11条 区は、ジェンダー平等と性の多様性を尊重し合う社会の実現に関する理解を促進するために必要な普及啓発および広報活動に努めるものとする。 【Q18】区ではどのような啓発活動を行うのか? 【A18】 これまで行ってきた広報・ホームページ・SNSによる情報発信の充実や啓発誌「マイセルフ」の発行・配布、講演会・講座等の開催などに加え、令和6(2024)年度には新たに区民等・教育関係者・事業者等向けに、この条例の趣旨をわかりやすく掲載したリーフレットの作成・配布を通じて、より充実した広報啓発活動に取り組みます。  そのほか、区の職員や教職員を対象とした研修を充実し、区全体でジェンダー平等と性の多様性を尊重し合う社会の実現を図っていきます。 8.推進会議の設置(第12条)   (推進会議) 第12条 ジェンダー平等と性の多様性を尊重し合う社会を実現するため、区長の附属機関として、品川区ジェンダー平等と性の多様性を尊重し合う社会推進会議(以下「推進会議」という。)を設置する。 2 推進会議は、次に掲げる事項について調査および審議を行う。  (1)推進計画の策定、評価、変更その他推進計画に関する重要事項  (2)区のジェンダー平等社会推進施策に関する事項  (3)前2号に掲げるもののほか、区におけるジェンダー平等と性の多様性を尊重し合う社会の実現に関するものとして区長が必要と認める事項 3 推進会議は、区長が委嘱する10人以内の委員をもって組織する。 4 委員の任期は2年とし、再任を妨げない。ただし、委員が欠けた場合における後任の委員の任期は、前任者の残任期間とする。 5 推進会議は、必要があると認めるときは、委員以外の者の出席を求め、必要な資料を提出させ、意見を聴き、または説明を求めることができる。 6 推進会議の組織および運営に関し必要な事項は、規則で定める。 【Q19】推進会議の委員構成は? 【A19】 推進会議の委員数は10人であり、構成としては、区民公募委員、学識経験者、区内関係団体の代表などです。 9.拠点の整備(第13条)  (拠点の整備) 第13条 区は、ジェンダー平等と性の多様性を尊重し合う社会の実現を図るための拠点を整備するものとする。 【Q20】拠点とはどこか? 【A20】 品川区男女共同参画センターは、これまで男女共同参画を推進するために広報啓発活動や総合相談を行ってきました。この条例の制定に伴い、ジェンダー平等と性の多様性を尊重し合う社会の実現を図るための拠点として、令和6(2024)年4月1日より品川区男女共同参画センターの名称を「品川区ジェンダー平等推進センター」に変更しました。  品川区ジェンダー平等推進センターは、これまでどおり区立総合区民会館(愛称「きゅりあん」)3階にございます。 「品川区ジェンダー平等推進センター」       住所:品川区東大井5−18−1 きゅりあん3階 (JR大井町駅中央口より徒歩2分)       電話:03-5479-4104  Fax:03-5479-4111 10.苦情・相談の申出(第14条・第15条)  (苦情・相談の申出) 第14条 区民等、教育関係者および事業者等は、区長に対して、次に掲げる事項について苦情および相談の申出(以下「苦情等の申出」という。)をすることができる。  (1)区が実施するジェンダー平等社会推進施策  (2)性別等による差別的取扱いその他ジェンダー平等と性の多様性を尊重し合う社会の実現を阻害する要因によって人権が侵害されたと認められる事項  (苦情・相談の対応) 第15条 区長は、前条の規定による苦情等の申出に対し、ジェンダー平等と性の多様性を尊重し合う社会の実現に資するよう適切に対応するものとする。 2 区長は、前項の規定による苦情等の申出に対応するにあたっては、当該苦情等を申し出た者に係る情報を保護するとともに、公平かつ適切に処理するものとする。 3 区長は、苦情等の申出に対応するにあたっては、必要に応じて関係機関等に説明を求め、または資料の提出を求めることができる。 4 区長は、苦情等の申出について、必要に応じて有識者の意見を聴くことができる。 【Q21】苦情の申出にはどう対応するのか? 【A21】 区は、申出者のお話をよく聴き、ご本人の希望に応じて、申出者のプライバシーに配慮しながら関係者からもお話を伺います。その過程において、区は、必要に応じて弁護士などの有識者から意見を聴取します。関係者に対しては、同様の事例に対する判例等を共有したり、本条例の趣旨を丁寧に説明したりするなどして、対応していきます。また、必要があれば、労働基準監督署や法務省の人権擁護機関等につなげていきます。 11.付則(一部抜粋)  (施行期日) 1 この条例は、令和6年4月1日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。 (1)付則第6項の規定 公布の日 (2)第12条、第14条および第15条の規定 令和6年7月1日  (推進計画に関する経過措置) 2 この条例の施行の際、現に男女共同参画社会基本法(平成11年法律第78号)第14条第3項の規定により策定されている男女共同参画のための品川区行動計画は、第10条第1項の規定により策定された推進計画とみなす。  (委員に関する経過措置) 3 令和6年7月1日から令和8年3月31日までの間に第12条第3項の規定により委嘱される委員の任期は、同条第4項本文の規定にかかわらず、委嘱の日から令和8年3月31日までとする。  (変化への対応) 4 区は、将来の環境および社会的な状況の変化に対応していくため、この条例の施行後5年を経過した場合において、必要に応じて、この条例の内容を見直すものとする。 【Q22】「この条例の施行後5年を経過した場合において、必要に応じて、この条例の内容を見直す」とあるが、どのように見直していくのか? 【A22】 人権課題は、社会環境の変化等により複雑化しています。施行後5年を経過した場合において、人権・ジェンダー平等に関する区民意識・事業所状況調査の結果等を踏まえ、推進会議の意見を聴きながら、区として、この条例の見直しの必要性について検討していきます。