品川区ジェンダー平等と性の多様性を尊重し合う社会を実現するための条例 令和6年3月28日条例第6号 目次 前文 第1章 総則(第1条−第9条) 第2章 基本的施策等(第10条・第11条) 第3章 推進体制(第12条−第15条) 第4章 雑則(第16条) 付則 人は誰もが個人として尊重される権利を持ち、性別等により差別されることのない平等な存在である。人権尊重都市品川宣言は、「人間は生まれながらにして自由であり、平等である」「いかなる国や個人も、いかなる理由であれ絶対にこれを侵すことはできない」と謳っている。 品川区では、男女共同参画から、SDGsの目標である「ジェンダー平等」の実現に向けて、国際社会や国内の動向と協調しつつ、施策を推進してきた。 「ジェンダー平等」とは、一人ひとりの人間が、性別にかかわらず、平等に責任や権利、機会を分かち合い、あらゆる物事を一緒に決めることができることを意味している。 これまでの取組により、ジェンダー平等は前進してきているものの、個人の希望や能力ではなく性別等によって生き方や働き方の選択肢や機会が決められてしまうなど、今なお固定的な性別役割分担意識やそれに基づく社会的慣行等が存在している。 品川区が公平で平等な社会として発展していくために、すべての人が、性別や性的指向、ジェンダーアイデンティティにかかわらず、性別等に起因した差別や暴力を受けることなく、多様な個人として尊重され、自らの意思によって社会のあらゆる分野における活動に平等に参画する機会が確保され、その個性と能力を十分に発揮して、自分らしく生きることのできる社会の実現を目指して、ここにこの条例を制定する。     第1章 総則  (目的) 第1条 この条例は、ジェンダー平等と性の多様性を尊重し合う社会の実現に関し、その基本となる理念を明らかにし、品川区(以下「区」という。)、区民等、教育関係者および事業者等の責務等を定めることにより、ジェンダー平等と性の多様性を尊重し合う社会の実現に関する施策(以下「ジェンダー平等社会推進施策」という。)を総合的かつ計画的に推進し、もって誰もが自分らしく生きることのできる社会の実現に資することを目的とする。  (定義) 第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。 (1)ジェンダー平等と性の多様性を尊重し合う社会 すべての人が、性別等に起因した差別や暴力を受けることなく、多様な個人として尊重され、自らの意思によって社会のあらゆる分野における活動に平等に参画する機会が確保され、その個性と能力を十分に発揮して、自分らしく生きることのできる社会をいう。 (2)性別等 性別(出生時に判定された性をいう。以下同じ。)、性的指向およびジェンダーアイデンティティをいう。 (3)性的指向 恋愛感情または性的感情の対象となる性についての指向をいう。 (4)ジェンダーアイデンティティ 自己の属する性別についての認識に関するその同一性の有無または程度に係る意識をいう。 (5)配偶者暴力等 配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)、パートナーもしくは交際相手である者またはあった者からの身体的、精神的、社会的、経済的または性的な暴力をいう。 (6)ハラスメント 他の者を不快にさせる性的な言動(性的指向またはジェンダーアイデンティティに関する言動を含む。)および妊娠、出産、育児もしくは介護に関する制度等を利用することまたは妊娠し、もしくは出産したことを理由に、精神的苦痛もしくは身体的苦痛を与える言動をいう。 (7)メディア・リテラシー 多様なメディアが伝える様々な情報を無批判に受け止めるのではなく、主体的に読み解き、取捨選択したうえで適切に利用し、または発信する能力をいう。 (8)エンパワーメント その人が本来持つ力を発揮できるように支援し、環境を整えることまたは個人もしくは社会集団としてあらゆる段階の経済、政治その他の分野における意思決定の場に参画し、自律的な力を発揮することをいう。 (9)区民等 区内に住所を有する者、区内で働く者、区内で学ぶ者をいう。 (10)教育関係者 区内において学校教育、社会教育その他の教育に携わる個人、法人その他の団体をいう。 (11)事業者等 営利または非営利にかかわらず、区内で事業活動を行う個人、法人その他の団体をいう。  (基本理念) 第3条 区は、次に掲げる事項を基本理念として、ジェンダー平等と性の多様性を尊重し合う社会の実現を目指す。 (1)性別等に起因する差別、配偶者暴力等、ハラスメントその他の性別等に起因する人権侵害が根絶されること。 (2)すべての人が、固定的な性別役割分担意識に基づく社会制度や慣行にとらわれることなく、その個性と能力を発揮し、自らの意思と責任において多様な生き方を選択できること。 (3)すべての人が、性別等にかかわりなく、社会の平等な構成員として、あらゆる分野の活動方針の立案および決定に平等に参画する機会が確保されること。 (4)すべての人が、家事、子の養育、家族の介護その他の生活における活動および職場、学校、地域等における活動の調和の取れた暮らしを営むことができること。 (5)すべての人が、妊娠、出産等のリプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康と権利)を認め合い、生涯にわたり健康で自分らしい生き方を選択できること。 (6)学校教育、社会教育その他の教育の場において、ジェンダー平等と性の多様性を尊重し合う社会を支える意識の形成およびメディア・リテラシーの育成に向けた取組が行われること。 (7)女性のエンパワーメントの推進により、女性が尊厳と誇りをもって自分自身の生活と人生を決定する権利を保障し、あらゆる参画の機会において、女性個人がもつ力を十分に発揮できること。 (8)すべての人の性的指向およびジェンダーアイデンティティが尊重され、性的指向およびジェンダーアイデンティティに起因する日常生活上の困難等が解消されること。 (9)国際社会および国内におけるジェンダー平等と性の多様性を尊重し合う社会の実現に係る取組を積極的に理解し、推進すること。  (区の責務) 第4条 区は、前条の基本理念に基づき、ジェンダー平等社会推進施策を総合的かつ計画的に推進するものとする。 2 区は、区民等、教育関係者、事業者等、国、他の地方公共団体その他の関係機関等と連携し、協力してジェンダー平等と性の多様性を尊重し合う社会の実現を目指すものとする。  (区民等の責務) 第5条 区民等は、ジェンダー平等と性の多様性を尊重し合う社会について理解を深め、生活、職場、学校、地域等の活動において、これを実現するよう努めるものとする。 2 区民等は、区が実施するジェンダー平等社会推進施策に協力するよう努めるものとする。  (教育関係者の責務) 第6条 教育関係者は、ジェンダー平等と性の多様性を尊重し合う社会の実現に果たす教育の重要性を認識し、教育を行うよう努めるものとする。 2 教育関係者は、区が実施するジェンダー平等社会推進施策に協力するよう努めるものとする。  (事業者等の責務) 第7条 事業者等は、ジェンダー平等と性の多様性を尊重し合う社会について理解を深め、事業活動を行うにあたり、これを実現するよう努めるものとする。 2 事業者等は、すべての人が生活、職場、学校、地域等における活動の調和の取れた暮らしを営むことができるよう環境の整備に努めるものとする。 3 事業者等は、区が実施するジェンダー平等社会推進施策に協力するよう努めるものとする。  (禁止事項) 第8条 何人も、性別等に起因する差別的取扱い、配偶者暴力等、ハラスメントその他の性別等に起因する人権侵害を行ってはならない。 2 何人も、個人の性的指向、ジェンダーアイデンティティに関して、公表を強制し、もしくは禁止し、または本人の意に反して公にしてはならない。  (情報の発信および流通にあたっての配慮) 第9条 何人も、情報の発信および流通にあたっては、性別等に起因する人権侵害を助長することのないよう十分に配慮しなければならない。     第2章 基本的施策等  (推進計画) 第10条 区は、ジェンダー平等と性の多様性を尊重し合う社会を実現するための計画(以下「推進計画」という。)を策定し、これに基づき、ジェンダー平等社会推進施策を総合的かつ計画的に推進するものとする。 2 推進計画の策定にあたっては、あらかじめ第12条第1項の品川区ジェンダー平等と性の多様性を尊重し合う社会推進会議の意見を聴くものとする。 3 区は、区の附属機関その他の会議体における委員の男女構成について、推進計画に数値目標を定め、積極的改善措置を講じるものとする。 4 区は、推進計画を策定し、または変更したときは、速やかにこれを公表するものとする。 5 区は、毎年、推進計画に基づくジェンダー平等社会推進施策の進捗状況を公表するものとする。  (普及啓発および広報) 第11条 区は、ジェンダー平等と性の多様性を尊重し合う社会の実現に関する理解を促進するために必要な普及啓発および広報活動に努めるものとする。     第3章 推進体制  (推進会議) 第12条 ジェンダー平等と性の多様性を尊重し合う社会を実現するため、区長の附属機関として、品川区ジェンダー平等と性の多様性を尊重し合う社会推進会議(以下「推進会議」という。)を設置する。 2 推進会議は、次に掲げる事項について調査および審議を行う。  (1)推進計画の策定、評価、変更その他推進計画に関する重要事項  (2)区のジェンダー平等社会推進施策に関する事項 (3)前2号に掲げるもののほか、区におけるジェンダー平等と性の多様性を尊重し合う社会の実現に関するものとして区長が必要と認める事項 3 推進会議は、区長が委嘱する10人以内の委員をもって組織する。 4 委員の任期は2年とし、再任を妨げない。ただし、委員が欠けた場合における後任の委員の任期は、前任者の残任期間とする。 5 推進会議は、必要があると認めるときは、委員以外の者の出席を求め、必要な資料を提出させ、意見を聴き、または説明を求めることができる。 6 推進会議の組織および運営に関し必要な事項は、規則で定める。  (拠点の整備) 第13条 区は、ジェンダー平等と性の多様性を尊重し合う社会の実現を図るための拠点を整備するものとする。  (苦情・相談の申出) 第14条 区民等、教育関係者および事業者等は、区長に対して、次に掲げる事項について苦情および相談の申出(以下「苦情等の申出」という。)をすることができる。  (1)区が実施するジェンダー平等社会推進施策  (2)性別等による差別的取扱いその他ジェンダー平等と性の多様性を尊重し合う社会の実現を阻害する要因によって人権が侵害されたと認められる事項  (苦情・相談の対応) 第15条 区長は、前条の規定による苦情等の申出に対し、ジェンダー平等と性の多様性を尊重し合う社会の実現に資するよう適切に対応するものとする。 2 区長は、前項の規定による苦情等の申出に対応するにあたっては、当該苦情等を申し出た者に係る情報を保護するとともに、公平かつ適切に処理するものとする。 3 区長は、苦情等の申出に対応するにあたっては、必要に応じて関係機関等に説明を求め、または資料の提出を求めることができる。 4 区長は、苦情等の申出について、必要に応じて有識者の意見を聴くことができる。     第4章 雑則  (委任) 第16条 この条例に定めるもののほか、条例の施行について必要な事項は、区長が別に定める。    付 則  (施行期日) 1 この条例は、令和6年4月1日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。 (1)付則第6項の規定 公布の日 (2)第12条、第14条および第15条の規定 令和6年7月1日  (推進計画に関する経過措置) 2 この条例の施行の際、現に男女共同参画社会基本法(平成11年法律第78号)第14条第3項の規定により策定されている男女共同参画のための品川区行動計画は、第10条第1項の規定により策定された推進計画とみなす。  (委員に関する経過措置) 3 令和6年7月1日から令和8年3月31日までの間に第12条第3項の規定により委嘱される委員の任期は、同条第4項本文の規定にかかわらず、委嘱の日から令和8年3月31日までとする。  (変化への対応) 4 区は、将来の環境および社会的な状況の変化に対応していくため、この条例の施行後5年を経過した場合において、必要に応じて、この条例の内容を見直すものとする。  (品川区立総合区民会館条例の一部改正) 5 品川区立総合区民会館条例(平成元年品川区条例第15号)の一部を次のように改正する。   第1条第1項中「男女共同参画」を「ジェンダー平等」に改める。   第2条第1項第2号中「男女共同参画センター」を「ジェンダー平等推進センター」に、「男女共同参画会議室」を「ジェンダー平等推進会議室」に、「男女共同参画関係資料コーナー」を「ジェンダー平等推進関係資料コーナー」に改める。   第14条第4号中「男女共同参画センター」を「ジェンダー平等推進センター」に改める。   別表第1中 男女共同参画センター 総合相談室 交流室 男女共同参画会議室 男女共同参画関係資料コーナー を ジェンダー平等推進センター 総合相談室 交流室 ジェンダー平等推進会議室 ジェンダー平等推進関係資料コーナー に改める。  (品川区組織条例の一部を改正する条例の一部改正) 6 品川区組織条例の一部を改正する条例(令和5年品川区条例第55号)の一部を次のように改正する。  第3条の表総務部の項の改正規定中「、第4号を第5号とし、第3号」を「、同項第4号中「男女共同参画」を「ジェンダー平等の推進」に改め、同号を同項第5号とし、同項第3号」に改める。