令和がん年度 品川区財務諸表 概要版 発行 品川区会計管理室 コンテンツ 1 新公会計制度と品川区の財務諸表の概要 1 新公会計制度とは 品川区は、平成28年4月に「品川区新公会計制度基本方針」を決定し、平成30年度から官庁会計による決算書に加えて、新たに複式簿記・発生主義会計による財務諸表を作成して います。 従来の官庁会計は、現金の収入・支出の変動を記録し、現金の収支に着目した会計処理である単式簿記・現金主義会計により予算の適正・確実な執行を図る目的で運用されていました。 一方、新公会計制度は、複式簿記・発生主義という企業会計の考え方を取り入れた会計制度です。 単式簿記とは、一つの取引について、現金の収支のみをとらえ、記録をする帳簿記入の方法です。 現金主義とは、現金の収入・支出という事実に基づいて記録する考え方です。 複式簿記とは、一つの取引について、原因と結果の両方からとらえ、記録をする帳簿記入の方法です。 発生主義とは、現金の収入・支出に関わらず、取引が発生した時点で収益・費用を記録する考え方です。 複式簿記を導入することにより、資産や負債の動きがわかり、ストック情報を把握することができます。 また、発生主義を導入することにより、減価償却や各種引当金繰入額など現金支出を伴わない費用を把握することができます。 決算までに未確定な費用であっても、発生していると認められる場合には、見積計算を行うこともあります。 これらのストック情報や現金支出を伴わない費用を把握することで、品川区の財政状態や運営状況の見える化を図ることができます。 2 新公会計制度導入のメリット 新公会計制度導入により、品川区の財政状態や運営状況の見える化をすることで、行政経営マネジメント力の向上や区民の皆様への説明責任の向上を図ることができます。 3 財務諸表からわかること 財務諸表を作成することにより地方自治体の財政状態運営状況、資金繰りに関する情報を得ることができます。 自治体の財政状況を見るには貸借対照表を、事業運営に関することは行政コスト計算書や正味財産変動計算書、資金の動きを知るにはキャッシュフロー計算書になります。 コンテンツ 2 財務諸表の基礎知識 財務4表のうち、貸借対照表とは、会計年度末時点で、区がどのような資産を保有しているのか、その資産がどのような財源でまかなわれているのかを対照表で示します。 行政コスト計算書は、一会計期間において、資産形成に結びつかない行政活動に伴う費用とその財源としての収入及び収支差額を表し、区民の負担と受益の関係を明らかにします。 キャッシュ・フロー計算書は、一会計期間における、区の行政活動に伴う現金等の資金の流れを性質の異なる三つの活動に分けて示します。 正味財産変動計算書は、貸借対照表の正味財産の部に計上されている各項目が、年間でどのように変動したかを示します。 附属明細書として、有形固定資産及び無形固定資産附属明細書は、固定資産の増減を変動事由ごとに示します。 コンテンツ 3 令和がん年度品川区財務諸表の概要 品川区の財務諸表には一般会計のほかに、国民健康保険事業、後期高齢者医療、介護保険、災害復旧の4つの特別会計があります。 一般会計で概要の説明をします。 1 貸借対照表 貸借対照表は基準日時点における品川区の資産、負債及び正味財産の状況を明らかにすることを目的として作成します。 資産の部 流動資産 274億1000万円 流動資産のうち 現金預金 51億1300万円 流動資産のうち 収入未済 14億8000万円 流動資産のうち 不納欠損引当金 マイナス4000万円 流動資産のうち 基金積立金 205億6900万円 流動資産のうち 短期貸付金 2億9000万円 流動資産のうち 貸倒引当金 マイナス100万円 固定資産 2兆2747億9500万円 固定資産のうち 行政財産、有形固定資産 7327億1900万円 固定資産のうち 行政財産、無形固定資産 13億円 固定資産のうち 普通財産 432億4700万円 固定資産のうち 重要物品 8億4000万円 固定資産のうち インフラ資産 1兆4009億9700万円 固定資産のうち ソフトウェア 14億2000万円 固定資産のうち 建設仮勘定 122億600万円 固定資産のうち 投資その他の資産820億6600万円の内訳は  有価証券 28億5200万円  出資金及び出捐金 13億8800万円  長期貸付金 25億5800万円  貸倒引当金 マイナス2600万円  基金積立金 752億9500万円 資産の部合計 2兆3022億500万円 負債の部 流動負債 23億3000万円 流動負債のうち 還付未済金 1500万円 流動負債のうち 特別区債 11億200万円 流動負債のうち 賞与引当金 12億1300万円 固定負債 229億5900万円 固定負債のうち 特別区債 98億4400万円 固定負債のうち 退職給与引当金 131億1400万円 負債の部合計 252億8900万円 正味財産の部  正味財産 2兆2769億1600万円 うち当期正味財産増減額 96億2300万円 貸借対照表上の負債と正味財産の割合により、過去世代と現世代が将来世代にどの程度財産を残したか、あるいは将来世代に負担を先送りしたかといった、世代間負担の公平性を把握することができます。 参考 区民一人当たりの資産と負債の状況 資産568万円 負債6万円 正味財産562万円 品川区においては正味財産が負債と比較して大きいため、将来世代の負担が低い水準となっています。 2 行政コスト計算書 行政コスト計算書は、一会計期間における品川区の行政活動の実施に伴い発生した費用を発生主義により認識し、その費用と財源としての収入との対応関係、及びその両者の差額を明らかにすることを目的として作成します。 通常収支の部 行政収支の部 行政収入 1628億円  行政収入のうち 地方税、地方譲与税、地方特例交付金等 633億400万円 行政収入のうち 特別区財政調整交付金 439億1100万円 行政収入のうち 国庫支出金、都支出金 408億2900万円 行政収入のうち 分担金及び負担金 29億3100万円 行政収入のうち 使用料及び手数料 42億400万円 行政収入のうち 寄付金 5800万円 行政収入のうち 財産収入、諸収入 75億6200万円 行政費用 1539億2500万円 行政費用のうち 給与関係費 220億8600万円 行政費用のうち 物件費、維持補修費 342億5300万円 行政費用のうち 扶助費、補助費等 528億3900万円 行政費用のうち 投資的経費 269億4300万円 行政費用のうち 繰出金 114億k1800万円 行政費用のうち 減価償却費、引当金繰入額 63億8600万円 金融収支の部 金融収入 1億500万円 金融費用1億6500万円 金融費用のうち 公債費利子 1億6500万円 通常収支差額 88億1400万円 特区別収支の部 特別収支の部 特別収入 固定資産売却代益等 1億4900万円 特別費用 固定資産除却損等 1億1400万円 特別収支差額 3400万円 当期収支差額 88億4800万円 行政収入の主なものは、地方税等が一番多く 38.9% 633億400万円 次に特別区財政調整交付金が 27.0% 439億1100万円となっています。 行政費用の主なものは、扶助費補助費等が一番多く 34.3%528億3900万円 次に物件費維持補修費が 22.3% 342億5300万円となっています。 参考として、区民一人当たりの収入と費用の状況は、収入が40万円、費用が38万円収支差額が2万円になります。 3 キャッシュフロー計算書 キャッシュ・フロー計算書は、資金の流れを行政サービス活動、社会資本整備等投資活動及び財務活動に区分し、各作成単位における区分別の収支の状況を報告することを目的として作成します。 行政サービス活動 行政サービス活動収入 1626億7000万円  行政サービス活動収入のうち 税収等 1070億6200万円 行政サービス活動収入のうち 国庫支出金、都支出金 408億1500万円 行政サービス活動収入のうち 業務収入その他 146億8900万円 行政サービス活動収入のうち 金融収入 1億500万円 行政サービス活動支出 1509億100万円 行政サービス活動支出のうち 行政支出 1507億3600万円 行政サービス活動支出のうち 金融支出 1億6500万円 行政サービス活動収支差額 117億6900万円 社会資本整備等投資活動 社会資本整備等投資活動収入 162億9900万円 社会資本整備等投資活動収入のうち 国庫支出金等 7億6200万円 社会資本整備等投資活動収入のうち 財産収入 7900万円 社会資本整備等投資活動収入のうち 基金繰入金 148億9400万円 社会資本整備等投資活動収入のうち 貸付金元金回収収入 5億6400万円 社会資本整備等投資活動支出 269億7300万円 社会資本整備等投資活動支出のうち 社会資本整備支出 162億7000万円 社会資本整備等投資活動支出のうち 基金積立金 104億400万円 社会資本整備等投資活動支出のうち 貸付金、出資金等 2億9900万円 社会資本整備等投資活動収支差額 マイナス106億7300万円 財務活動 財務活動収入 0 財務活動支出 11億7100万円 財務活動収支差額 マイナス11億7100万円 前年度からの繰越金 51億8800万円 形式収支=期末時点での現金残余 51億1300万円 キャッシュフロー計算書により、資金の使い道を3つにわけることで、どんなことにお金を使っているのかを理解することができます。 品川区の資金の流れは 行政サービス活動収支差額が117億6900万円であることから、行政サービスの提供を効率的に運用している状況です。 社会s資本等投資活動収支差額がマイナス106億7300万円であることから、社会資本整備を積極的に行っている状況です。 財務活動収支差額がマイナス11億7100万円であることから、返済額が借入額を上回っており、債務残高が減少している状況です。 4 正味財産変動計算書 正味財産変動計算書は、一会計期間における貸借対照表の正味財産の部の項目の変動状況を明らかにすることを目的として作成します。 令和がん年度の当期期末残高は、2兆2769億1600万円です。 コンテンツ 4 指標による財務分析 財務諸表を作成することで、各種指標を用いた財務分析を行うことが可能となります。指標には、財務諸表利用者である住民等のニーズに応じていくつかの分析の視点があり、それぞれ単独または組み合わせて分析することが可能です。 分析 1 資産形成度 指標 有形固定資産減価償却率  品川区の有形固定資産の減価償却類型率は44% 未焼却残高は56%であり、老朽化の度合いがやや低いことがわかります。 2 資産形成度 指標住民一人当たり資産額 品川区の令和がん年度の住民一人当たりの資産額は568万円となっています。 3 世代間公平性 指標 正味財産比率 品川区の令和がん年度の正味財産比率は98.9%で将来世代の負担がとても少ないことがわかります。 4 世代間公平性 指標 将来世代負担比率 有形固定資産などの社会資本に対する将来世代の負担比率は0.5%であり、将来世代の負担が少ないことがわかります。 5 持続可能性 基礎的財政収支 必要とされる政策的経費を税収等でどれだけ賄われているかがわかります。品川区の基礎的収支はマイナス32億k2900万円ですが、内訳は行政サービス活動収支が119億3400万円のプラス、社会資本整備等投資活動尾収支が151億6400万円のまいなすであり、社会資本整備にお多くの資金を投入していることがわかります。 6 持続可能性 指標 住民一人当たりの負債額 年度末時点の負債額を同時点の人口で除します。住民一人当たりの負債は約6万円で、資産と比較すると、資産が大幅に上回っていることがわかります。 7 効率性 指標 住民一人当たり行政コスト 住民一人当たりの行政コストにより行政活動の効率性を測定することができます。品川区の一人当たりの行政コストは約38万円となっています。 8 自立性 指標 受益者負担比率 使用料や手数料といった行政サービスにかかる受益者負担の金額と、行政費用や金融費用といった経常的な費用と比較することにより、行政サービスの提供に対する受益者負担の割合を算出することができます。品川区では受益者負担率は7.7%と低く、区が提供するサービスの多くは税収等の収入で賄われていることがわかります。