<表紙> 資料No.7 品川区新庁舎整備基本構想・基本計画策定委員会 令和3 年9 月1 4 日 品川区新庁舎整備基本構想 素案 令和3年9月 品川区新庁舎整備基本構想・基本計画策定委員会 <目次ページ1> 目次 目次 第1章 検討の経緯 1. これまでの検討経緯 1) 庁舎整備に関連する組織体と整備計画全体の経緯 2) 品川区議会「行財政改革特別委員会」への報告および説明 3) 「品川区庁舎機能検討委員会」の答申 4) 「品川区新庁舎整備基本構想・基本計画策定委員会」の設置 2. 基本構想の位置付け 1) 基本構想の位置付け 3. 上位関連計画などの整理 1) 社会動向 2) 上位計画・関連計画 第2章 現庁舎の現状と課題 1. 施設の現状と課題 1) 現庁舎の概要 2) 現庁舎が抱える課題 2. 現庁舎整備の必要性 第3章 整備方針 1. 新庁舎整備の基本的な考え方 2. 基本理念・基本方針の導き出された背景 3. 基本理念・基本方針 1) 基本理念 2) 基本方針 3) 基本理念・基本方針・導入機能の関係性 4. 導入機能の整備方針 1) 新庁舎に必要となる導入機能の整備方針 第4章 建設計画 1. 建設概算規 1) 規模算定に当たって考慮すべき要素 2) 規模算定の方法 3) 新庁舎建設想定規模および現庁舎との比較 2. 建設候補地 1) 建設候補地の概要 品川区新庁舎整備基本構想 <目次ページ2> 第5章 事業計画 1. 事業手法 1) 事業手法とは 2) 事業手法の検討に当たって考慮すべき事項 3) 事業方式の比較 4) 概略事業スケジュール 2. 概算事業費、財源の考え方 1) 概算事業費 【資料編】 1) 品川区新庁舎整備基本構想・基本計画策定委員会 設置要綱 2) 品川区新庁舎整備基本構想・基本計画策定委員会 委員名簿 3) 品川区新庁舎整備について(諮問) 4) 品川区新庁舎整備基本構想・基本計画策定委員会 開催経過 5) 用語解説 <1ページ> 第1章 検討の経緯 1. これまでの検討経緯 品川区新庁舎整備に係るこれまでの検討経緯は次に示すとおりです。 1) 庁舎整備に関連する組織体と整備計画全体の経緯 現庁舎は築50 年を経過しており、経年劣化が多く見られることから大規模な改修などが必要となり、区庁舎のあり方の検討が進められてきました。 平成29 年度 平成29(2017)年6 月13 日 区議会行財政改革 特別委員会  総合庁舎における設備機器などの更新に関して経過、今後の方針などについて説明 平成30 年度 平成30(2018)年6 月12 日 区議会行財政改革特別委員会  総合庁舎における設備機器などの更新に関して経過、今後の方針などについて説明 平成30(2018)年10 月31 日 区議会行財政改革特別委員会  庁舎について、ハード・ソフト両面で課題があり、庁舎の改築を含めた検討を進めることを説明 平成31(2019)年2 月27 日 区議会行財政改革 特別委員会  特定事件調査のまとめとして、庁舎のあり方について、新庁舎整備検討の必要性が認められる 令和元年度 令和元(2019)年6 月11 日 区議会行財政改革特別委員会  庁舎の建て替えに関して、令和元(2019)年度の取組について説明(建て替え検討、現庁舎の課題整理、区分所有者との連絡・調整、他自治体の事例研究) 令和元(2019)年8 月27 日 区議会行財政改革 特別委員会  4 つの庁舎建て替え候補地を提示し、土地再編による広町敷地への庁舎移転に向けて検討を進めることを報告 令和元(2019)年9 月~10 月 地域、関係団体などへの説明  4 つの庁舎建て替え候補地を提示し、土地再編による広町敷地への庁舎移転に向けて検討を進めることを説明 令和元(2019)年12 月5 日 区議会行財政改革特別委員会  関係団体への説明状況を報告  求められる庁舎機能について報告  今後の庁舎機能の検討の進め方を説明 令和2(2020)年3 月 庁内プロジェクトチームキックオフ  庁舎機能について、庁内プロジェクトチームでの検討を開始(ワンストップ窓口、保健衛生機能、教育機能、文化・スポーツ機能、防災機能・環境機能、他機関との調整、ペーパーレス・ICT推進、庁内動線) 令和2 年度 令和2(2020)年4 月21 日 区議会行財政改革特別委員会  品川区庁舎機能検討委員会の設置について説明 <2ページ> 令和2(2020)年7 月13 日 品川区庁舎機能検討委員会  第1 回品川区庁舎機能検討委員会を開催  新庁舎に導入を検討する機能について審議を開始 令和2(2020)年11 月 品川区  「大井町駅周辺地域まちづくり方針」策定 令和3(2021)年3 月26 日 品川区庁舎機能検討委員会  「新庁舎の機能に関する事項について」 答申 令和3 年度 令和3(2021)年4 月19 日 区議会総務委員会  品川区庁舎機能検討委員会委員長から区長へ答申があったことを説明 2) 品川区議会「行財政改革特別委員会」への報告および説明 平成29(2017)年度から令和元(2019)年度まで、区議会の「行財政改革特別委員会」で庁舎建替えの建替え候補地について説明を行い、広町敷地を庁舎移転に向けた建設候補地として検討を進めることを報告しました。 3) 「品川区庁舎機能検討委員会」の答申 令和2(2020)年度の「品川区庁舎機能検討委員会」では、現庁舎が抱える課題、求められる庁舎機能や導入機能、あるべき姿についての考え方が検討されました。 4) 「品川区新庁舎整備基本構想・基本計画策定委員会」の設置 これまでの経緯を踏まえ、新庁舎整備を進めていくために、基本的な考え方を示す「新庁舎基本構想」の策定に向けた検討に着手しました。検討に際し、学識経験者や区議会議員、公募区民、関係団体から構成される「品川区新庁舎整備基本構想・基本計画策定委員会(以下、策定委員会という。)」を、令和3(2021)年2 月に設置しました。 <3ページ> 2. 基本構想の位置付け 1) 基本構想の位置付け 基本構想では、新庁舎の整備を進めるための大枠を示します。「だれのために、何のために、どんな庁舎を作るのか」という方針を明らかにする段階です。 具体的には、庁舎のあるべき姿を基本理念および基本方針として掲げ、それを具体化するために必要となる機能を整理するとともに、概算規模や概算事業費、事業スケジュールなどを想定します。基本構想を基にして、より詳細な整備内容は次のステップである基本計画をはじめ、基本設計や実施設計の段階で決定していきます。 なお、本構想は、策定委員会での検討のほか、区民アンケート・パブリックコメントなどでいただいた、区民をはじめとする多くの方からの意見を取り入れながら策定が進められました。 機能 検討段階 現状の 課題の整理、導入機能を検討する 基本構想段階 基本理念・基本方針、新庁舎の規模、事業費、スケジュールを検討する<新庁舎整備の大枠、整備方針> 基本計画段階 敷地条件に基づく施設計画素案や建設諸条件を検討する<基本構想の具体化、設計などの条件設定> 基本設計段階 新庁舎の基本性能を決定する 実施設計段階 新庁舎建設工事に必要な設計図書を作成する 工事段階 設計図書に基づいて、新庁舎を建設する 供用開始 <4ページ> 3. 上位関連計画などの整理 1) 社会動向 ① 人口減少・少子高齢化 品川区の人口は、昭和39(1964)年の東京オリンピックの年をピークに減少してきましたが、平成10(1998)年以降増加に転じ、平成22(2010)年には人口35 万人を超え、令和元(2019)年には40 万人を突破しました。 将来人口推計では令和26(2044)年まで増加を続け、同年に約44.8 万人でピークを迎えた後に減少傾向に転じるとされ、平成20(2008)年以降人口が減少している日本全体の状況とは異なった傾向となっています。 年齢3 区分別人口の推移を見ると、年少人口(0~14 歳)と生産年齢人口(15~64 歳)はそれぞれ、令和18(2036)年、令和12(2030)年にピークを迎えた後に減少に転じる一方、老年人口(65 歳以上)は、令和30(2048)年までの推計期間中一貫して増加し、令和30(2048)年には老年人口の比率が約29.4%となり、おおよそ区民の3 人に1 人が高齢者となるとされています。 このことから、区においては今後10 年以上にわたって人口が増加するとともに、高齢化は着実に進行していくことが見込まれます。 このような社会を鑑み、子どもから高齢者まですべての人が暮らしやすいユニバーサルデザインやバリアフリーの社会づくりを進めていくことが求められています。 <5ページ> ② 安全・安心な社会 近年、多発する大規模な自然災害など、区民生活の安全・安心を脅かす要因が増加しています。こうした災害などに対し、被害を最小限に抑えるためには、治水対策の基盤整備をはじめ、建築物の耐震化を促進するとともに、災害発生時の対応など危機管理体制を充実させていくことが重要です。 ③ 環境に配慮した社会 地球温暖化、酸性雨、廃棄物問題など様々なレベルで環境問題が社会の課題となっています。それに伴い、リサイクル活動の活発化、省エネルギー・省資源などにライフスタイルを変えていくことなどが求められるほか、風力・水力・太陽光といった再生可能エネルギーへの着目により、資源循環型の都市づくりにも注目が集まっています。環境をめぐる課題の解決には、わたしたちの生活のあり方を見直し、人と自然の共生や環境と調和したまちづくり、省資源・循環型社会の形成などに努める必要があります。 カーボンニュートラルやSDGs、建築物のZEB化など、最新の動向を見つめた計画が不可欠です。 ④ 働き方の多様化 令和2(2020)年以降の世界中に大流行した新型コロナウイルス感染症や、ICT・AIの進展などを背景に、一部の人だけの働き方と考えられていた「テレワーク」などが推進されるようになりました。 社会が大きな変化を迎える現時点で、区役所の「あり方」や「機能」はどうあるべきか考え、再構築することが必要です。 <6ページ> 2) 上位計画・関連計画 基本構想・基本計画の検討をはじめ、今後庁舎整備を進めるにあたっては、主に次に示す区の上位計画との整合を図ります。 ① 品川区基本構想(平成20(2008)年4 月施行) 品川区基本構想では、「輝く笑顔 住み続けたいまち しながわ」を将来像とし、3 つの理念、5 つの都市像を掲げています。その都市像を確実に実現するため、区政運営の基本姿勢として「ゆるぎない財政基盤の確立」、「区民にとって身近な区政の推進」、「信頼される職員の育成」の3つを示しています。 <7ページ> ② 品川区長期基本計画(令和2(2020)年4 月策定) 品川区長期基本計画では、目標年次である令和11(2029)年までに想定される課題の解決やその後の品川区の未来を見据え、「超長寿社会に対応する視点」、「多文化・多様な生き方を尊重する視点」、「強靱で魅力あるまちを未来につなぐ視点」、「先端技術を活用して課題解決と発展を図る視点」の4 つの視点を踏まえて策定されています。 これら4 つの視点と世論調査などから浮かび上がる区民ニーズに基づき、「地域」「人」「安全」の3 つの政策分野で構成する計画体系とされています。 【関連する記載内容】 <第2章の1 政策の柱20 地域特性を活かした計画的なまちづくり 10 年後のめざす姿を実現するための基本的な考え方と主な施策①> 大井町駅周辺は、区の中心核としてふさわしい業務・商業機能が充実し、芸術や文化など、人々が集い楽しく安全に暮らすことができるまちとし、広町地区においては更なるにぎわい創出を図ります。そのため、区有地を含めた土地の再編や基盤整備を進めるとともに、新庁舎整備による行政機能向上や防災拠点機能の強化などを検討します。 <8ページ> <第2 章の2 変化に対応する区政運営 今後10 年間の方向性④> ワンストップ窓口など来庁者の利便性の向上や防災機能の充実を図るとともに、にぎわいの創出も見据えた新庁舎整備を検討します。 <品川区長期基本計画とSDGs> 品川区長期基本計画が示す方向性はSDGsと重なるところが多く、長期基本計画において掲げる各施策を推進することは、SDGsの達成にも資するものと考えます。 SDGsには、以下の表で掲げています17の目標があります。庁舎を整備するにあたって、計画・設計段階から建設工事段階、完成後の運用段階において、各項目の達成を目指していきます。基本計画において、各項目の対応可能性を検討し、実現化の方策を示します。 <9ページ> ③ 品川区まちづくりマスタープラン(平成25(2013)年2 月策定) 品川区まちづくりマスタープランは、品川区全域や地区ごとのあるべき都市像や課題 に応じた整備方針、住宅施策の方向性など、まちづくりの分野を総合的に定めた都市計画の基本的方針を示すものです。この計画に準じて庁舎整備計画は、都市の活性化や災害時における庁舎のあり方を検討していきます。 【関連する記載内容】 <都市活性化拠点 大井町駅周辺地区>  都市活性化拠点にふさわしい商業・文化機能の息づくまちづくりを推進します。 ・大井町駅周辺地域のポテンシャルを活かした新たな開発事業の促進 ・バリアフリー計画の検討 ・JRアパート・総合車両センターにおけるまちづくりの推進 <防災拠点機能>  災害時の対策本部である区役所を、防災機能拠点として本計画の都市構造にも明確に位置付け、防災まちづくりを一層強力に進めていくとともに、区役所を補完し、現地の災害対策に即応していく新たな防災機能拠点について、その機能や配置のあり方について検討を行います。 <10ページ> ④ 大井町駅周辺地域まちづくり方針(令和2(2020)年11月策定) 大井町駅周辺地域まちづくり方針は、「大井町駅周辺地区まちづくり構想」(平成26(2014)年策定)の実現に向け、まちづくりの方針を示すとともに、先行的にまちづくりを牽引していく「広町地区」の整備方針などを示すものです。この計画に準じて庁舎整備計画は、広町における行政機能のあり方やまちづくりの観点から検討を進めていきます。 【関連する記載内容】 <土地利用方針>  行政機能・にぎわい集積ゾーン  区民サービスの向上に資する区庁舎再編により、生活サービス・公共公益機能・文化芸術機能などを集積させ、区民活動を活性化し、交流促進による賑わいを創出します。 <広町地区整備方針>  合理的な市街地環境  大規模土地利用転換による新たな都市機能の集積に加え、区庁舎再編と連携し区の中心核としてふさわしい複合拠点を形成します。  駅とまちが一体となるまちづくり  既成市街地・活力創造ゾーンと交通機能を相互につなぐ歩行者ネットワークを形成します。 <11ページ> ⑤ 品川区公共施設等総合計画(平成29(2017)年策定) 品川区公共施設等総合計画は、区有施設の現状や課題を整理し、より効果的・効率的に区民サービスを提供するために今後の方向性を示すものです。 この計画に準じて庁舎整備計画は、近隣における公共施設の集約化や再編を総合的に勘案して検討をします。 【関連する記載内容】 <全体方針> ① 財政負担を考慮しながらも、必要な施設は整備 ② 施設の必要性や存在意義をゼロベースで検証 ③ 施設需要に合わせた弾力的な使用・運用および転用などを検討 ④ 公設民営・民設民営をはじめ施設の民間への移行を検討 ⑤ PPP/PFIを含め民間活力の活用を幅広く検討 <建物類型ごとの方向性>  現状と課題  総合庁舎(本庁舎・第三庁舎・議会棟)は、平成23(2011)年度に免震装置の導入が完了しているが、設備機器や内装材については劣化が著しい状況であります。  マネジメントの方向性  庁舎については、大井町エリアの再開発の動向を注視しながら、賑わいを創出するまちづくりの視点も含めたあり方を検討します。 <12ページ> 第2章 現庁舎の現状と課題 1. 施設の現状と課題 1) 現庁舎の概要 現庁舎の敷地は、総面積約13,484 ㎡、区役所通りに面した場所にあります。南面は東急大井町線の高架があり、東面は東日本旅客鉄道の敷地に面しています。敷地内には、第二庁舎・防災センター、本庁舎・議会棟、第三庁舎が位置し、駐車場が配置されています。 施設概要 本庁舎 RC 造地上8 階 昭和43(1968)年築 延床面積 29,481 ㎡ 議会棟 RC 造地上6 階 第三庁舎 RC 造地上8 階 第二庁舎 防災センター RC 造地上8 階 平成6(1994)年築 延床面積 13,620 ㎡ 施設敷地面積 約13,484 ㎡(本庁舎・第二庁舎・第三庁舎敷地を含む) アクセス 〇JR 線・東急線・りんかい線大井町駅徒歩 8 分 〇東急大井町線下神明駅徒歩 5 分 在庁職員数 1,454 人(区職員のみ) ※令和3(2021)年4 月1 日現在 <13ページ> ① フロア構成 現庁舎のフロア構成は次のとおりです。 ② 現庁舎の区分所有状況 現本庁舎は、国の機関である東京法務局品川出張所、東京都の機関である第二建設事務所および品川都税事務所が、それぞれ区分所有しています。 国・都・区の所有面積は、次のとおりです。 本庁舎・議会棟・第三庁舎 国765.33㎡ 都6,241.42㎡ 区22,474.57㎡ 計29,481.32㎡ 第二庁舎・防災センター 区13,620.55㎡ 合計42,912.82㎡ ※面積は計画通知時の床面積。登記簿に記載された専有部分の面積割合より算定 2) 現庁舎が抱える課題 昭和43(1968)年に建築された本庁舎・議会棟・第三庁舎は、築53 年を迎え、構造体や仕上げ、設備の老朽化が進んでいる一方、区を取り巻く環境変化や多様化する行政需要に対応する機能が求められています。 <14ページ> ① 施設の老朽化に伴う維持管理負担の増大  平成29(2017)年度~令和元(2019)年度における現区庁舎の年平均維管理費:約5 億円/年  令和2(2019)年度~令和6(2024)年度における設備機器想定維持更新費:約9.2 億円 ② バリアフリー対応の問題点 以下に示すように、バリアフリーに対しては様々な課題があります。  3 階レベルがメイン(ロビー)フロアとなっているのに対して、実際のバリアフリー動線が2 階レベルとなっており、スムーズなバリアフリー動線が確保されていません。  トイレ入り口前に数段の階段があるフロアもあります。  来庁者が目的の窓口へ行くための導線・案内表示が十分とはいえません。 ③ 建築物および、情報機能・設備の老朽化  雨漏りや床、壁のひび割れなど老朽化が進行しています。  増築の結果、一旦外部へ出なければアクセスできない室があり、外部にさらされているため、度々漏水が発生しています。  設備が老朽化しており、エネルギー効率が低いことから、環境負荷が大きく、省エネ対応が求められます。  将来のICT化を想定した環境の整備が求められています。 <15ページ> ④ 防災機能の強化  発災時にフロア全体を災害対策本部として利用するための会議室などのスペースが不足しています。  災害対策本部要員のための備蓄品の格納スペース・水防本部従事者の休憩室が確保されていません。  災害時における非常用電源や非常用水確保のための設備が不足しています。  災害時の庁舎機能維持のため各種バックアップ機能が不足しています。 ⑤ 機能分散化による分かりにくさ、非効率性  本庁舎に入りきらない機能が周辺施設に分散化しています。  議会棟3 階の区民サービス窓口では、待合スペースが2 か所に分かれ、対応カウンターが奥にあるため分かりづらくなっています。  庁内動線が複雑であり、サイン計画も不十分なため、分かりづらくなっています。 ⑥ 執務スペースの狭隘化、労働環境の問題  職員数増の課では現状高密に席が配置されており、面積拡大が必要となります。  執務スペース内に打合せスペースや書庫・資料棚を、必要に応じて増設・設置しているため、執務スペース狭隘の原因になっています。 ⑦ 交流スペースや交通部分面積などの不足  区民交流スペースが不足しています。  授乳室やバリアフリートイレが不足しています。  待合や記入スペースが狭く、通路空間に待合椅子や記入台が設置されており、通行者とのすれ違いが不便なところがあります。 2. 現庁舎整備の必要性 現庁舎の課題を考えると、大規模修繕や耐震改修といった方法では、庁舎の抱える課題のすべてを解決し、区を取り巻く環境変化や多様化する行政需要に対応することは困難であると考えられます。また維持管理費の観点からも、建替えによる新庁舎の整備が妥当と考えます。 新庁舎の整備に向けては、利便性が高く、機能的な施設整備を推進するとともに、関連計画との整合を図りながら、区庁舎再編により区の中心核としてふさわしい複合拠点形成に向けて、まちづくりを含めた検討を進めていくこととします。 <16ページ> 1. 新庁舎整備の基本的な考え方 新庁舎整備を進めるための基本的な考え方として、基本理念および基本方針、導入機能の整備方針をまとめました。基本理念および基本方針とは、品川区らしい庁舎を整備するための、考え方の根幹となるものです。そして、基本理念・基本方針に基づき、新庁舎の機能の整備方針・考え方を示したものが、導入機能の整備方針です。 基本理念 新庁舎のあるべき姿を示します 新庁舎整備の骨格となる考え方です 基本方針 基本理念を実現するための具体的な庁舎像を示します 導入機能の整備方針 基本理念・基本方針を具体化する新庁舎の機能の整備方針・考え方を示します 2. 基本理念・基本方針の導き出された背景 令和2 年度品川区庁舎機能検討委員会答申における「求められる庁舎機能」をもとに、これまでの検討内容の整理・区民意見の集約を行い、策定委員会での検討を経て、新庁舎の「基本理念」「基本方針」を策定しました。 令和2 年度答申 求められる庁舎機能 (区民サービス) 区民にとってわかりやすく、利用しやすい庁舎 (区民協働・交流) 区民の協働と交流の拠点となる開かれた庁舎 (⾏政・議会) 機能的・効率的で柔軟性の高い庁舎 (防災) 区民の安全・安心を支える防災拠点となる庁舎 (環境) 環境にやさしい低炭素型の庁舎 (将来変化・経済性) 将来の変化に対応し、長期間有効に使い続けられる庁舎 共通機能 これまでの検討内容の整理 現庁舎の課題 関連上位計画 区民アンケート パブリックコメント 電子意見フォーム 新庁舎整備基本構想・基本計画策定委員会 3 つの基本理念 6 つの基本⽅針 基本理念・基本方針 策定 <17ページ> 3. 基本理念・基本方針 1) 基本理念 品川区における最上位の行政計画である品川区長期基本計画の体系は、次の「3 つの政策分野」から構成されています。 ① 地域 にぎわい 活力 ② 人 すこやか 共生 ③ 安全 あんしん 持続 品川区にふさわしい庁舎として、これらを支えていくための拠点となることを目指し、3 つの基本理念を設定します。 理念 『にぎわい都市』の魅力と発展をつなぐ、明るく親しみやすい庁舎 『暮らしが息づく国際都市』にふさわしい、誰にでもやさしく、便利で機能性にあふれた庁舎 『環境都市』の実現とともに、災害時にも区民を守る、力強く持続可能な庁舎 品川らしさ 旧東海道品川宿をはじめ人々の交流・物流の拠点としてにぎわい、発展してきた歴史を背景に、活気ある商店街があり、いまなお下町の風情も残る多様な街なみを形成しています。 国際都市東京の表玄関として、外国人住民・旅行者の増加や安全で快適な都市基盤整備が進み、品川は東京の繁栄を担う人びとが活躍する都市へと発展しています。 自助・共助による自主防災意識の高まり、公助による災害対策の取り組みにより、地域防災力が強化された住みよいまちの環境が形成されています。 目指す庁舎 様々な区民が交流でき、区内団体などの活動を支援するスペースを充実させることで、地域コミュニティの活性化を図り、魅力あるまちのにぎわいと発展をつなぐ庁舎を目指します。 区内にある鉄道延べ40駅・14路線のアクセス性の良さを活かし、誰もが気軽に立ち寄れ、区の魅力を積極的・効果的に発信できる明るく親しみやすい庁舎を目指します。 国籍、性別、年齢、障害の有無などにかかわらず、誰にでもやさしく、使いやすい庁舎を目指します。 ワンストップサービスの実現や先端技術を活用したDXの推進により、利便性の高い庁舎を目指します。 職員にとっても働きやすい機能性にあふれた庁舎とすることで、業務効率化と質の高い区民サービスが提供できる庁舎を目指します。 周辺の環境と調和しながら、地球環境の改善を先導する高い性能を確保した庁舎を目指します。 今後予想される首都直下地震や豪雨などの大規模自然災害などから、力強く区民の安全・安心を守り、防災指令拠点にふさわしい庁舎を目指します。 ライフサイクルコストの低減を図り、次の世代を見据えた柔軟性の高い計画とすることで、SDGsの考え方を反映した持続可能な庁舎を目指します。 <18ページ> 2) 基本方針 新庁舎の基本理念を具体化するため、6 つの基本方針を定めました。 また、策定委員会での主な意見をそれぞれの方針ごとに整理しています。 区民サービス 「区民にとってわかりやすく、利用しやすい庁舎」 ・高齢者や障害者、子供連れの方や外国人など、様々な方が利用しやすい庁舎 ・ワンストップサービスの導入などによる利便性の高い窓口機能の整備 ・だれもがわかりやすい案内表示や、プライバシーに配慮された相談機能の充実 策定委員会での主な意見 ・区民にとってわかりやすく、利用しやすい庁舎が建物の基本。 ・品川区の中心である庁舎は、障害者が活躍できる場であってほしい。 ・子ども連れの方が来やすい場所であってほしい。 ・オアシスルーム(生活支援型一時保育)のようなお子さんを預かるスペースを、活用してほしい。 ・複数の階にその都度エレベーターで縦移動するのではなく、1フロアの横移動で用件が済まされるような低層型庁舎を望む。 区民協働・交流 「区民の協働と交流の拠点となる開かれた庁舎」 ・区民と区との協働、交流拠点としての役割を果たす庁舎 ・様々な主体の交流の促進や活動を支援するスペースの充実 ・区政情報や区の魅力を発信する適切なスペースと設備を整備 策定委員会での主な意見 ・産業振興やにぎわい創出に寄与するような庁舎。 ・みんなから愛され、いろいろな形で集まれる空間のある庁舎。 ・区民協働や交流を充実させたものにしたい。 ・協働推進していくには、職員や交流スペースなど空間の確保が必要。 ・にぎわい作りや協働・交流、社会情勢の変化などに対応するための多目的スペースが必要。 ・区長と区民が直接会話できるような場所など、交流できるスペースがあるとよい。 ・歴史館のように、教育的な雰囲気を持たせた区役所のあり方を検討することも有意義である。 <19ページ> 行政・議会 「機能的・効率的で柔軟性の高い庁舎」 ・部署間の連携やレイアウト変更に柔軟に対応できる執務環境の整備 ・効率的に活用するための運用システムや、ICT環境が導入された会議室の整備 ・関係諸室や各種設備など議会機能の一層の充実 策定委員会での主な意見 ・ICTによる業務や仕事の進め方の変化を考慮していく必要がある。 ・職員の方の昼休憩スペースがない。職員の福利厚生を考えていくことも重要である。 ・議会には見学ルートを設けるなど、親しみやすくなるようなしつらえがあるよい。 ・議会の公開性、議員活動の充実、区民にもわかりやすい議会運営活動の観点から、さらなる電子化が進むことが望ましい。 ・障害を持つ方の議会活動の機会を考慮し、議会機能諸室へのバリアフリー対応を充実する必要がある。 防災 「区民の安全・安心を支える防災指令拠点となる庁舎」 ・高い耐震性や浸水対策などの建物性能と非常用電源などのバックアップ機能を備えた、区民の安全・安心を支える庁舎 ・災害時の指令拠点として、災害対策本部機能が充実・強化された庁舎 ・災害時の臨時スペースを備え、区民への対応機能を確保 策定委員会での主な意見 ・区民の皆さんの安全を守るうえでの防災が非常に重要。 ・避難所・災害対策本部・輸送拠点の併設は虻蜂取らずにならないか。 ・災害時の「区民受け入れ機能」と「地域内輸送拠点機能」については慎重に議論すべき。 ・「災害対策本部要員室」と「応援職員・関係機関とのワークスペース」について、整理をする必要がある。 ・今後のICTの進展などを考慮し、災害対策本部機能として必要な部屋や設備などは、固定せずに柔軟に動かせるようにするのがよいのでは。 ・災害時の活動に困難をきたすことがないよう、低層型庁舎を望む。 ・災害時に備えておくべき機能については、より具体的に明記しておくべきでは。 <20ページ> 環境 「環境にやさしい脱炭素型の庁舎」 ・地球温暖化対策および持続可能な発展に寄与する、環境にやさしい庁舎 ・費用対効果を考慮して、環境に配慮した機能・設備を積極的に導入 ・緑化などが整備され、周辺の環境に配慮した庁舎 策定委員会での主な意見 ・脱炭素化や自然エネルギーなど新しい時代にふさわしい観点。 ・脱炭素型の庁舎を目指す上で、木材などの積極的な活用についても表現してほしい。 ・駐車場の中に電気自動車の充電設備を設置することで、より一層区民にとって身近な区役所になるのではないか。 将来変化・経済性 「将来の変化に対応し、長期間有効に使い続けられる庁舎」 ・今後の行政需要の多様化やICT技術の高度化などの様々な変化に対応できる庁舎 ・設備面や構造面で財政負担に配慮し、長期間有効に使い続けられる庁舎 策定委員会での主な意見 ・コロナを機会に時代が大きく、早く動き始めている。走りながら考え、新たなICTの流れに乗り遅れないようにしていただきたい。 ・将来にわたり区民が利用しやすい、そしてまた職員の方が働きやすい庁舎。 <21ページ> 3) 基本理念・基本方針・導入機能の関係性 基本理念・基本方針・導入機能の関係性について、下図のとおり体系的に整理します。 導入機能についても、令和2 年度品川区庁舎機能検討委員会答申を基に、基本理念・基本方針を踏まえて設定しました。 3つの基本理念 『にぎわい都市』の魅力と発展をつなぐ明るく親しみやすい庁舎 『暮らしが息づく国際都市』にふさわしい、誰にでもやさしく、便利で機能性にあふれた庁舎 『環境都市』の実現とともに、災害時にも区民を守る、力強く持続可能な庁舎 6つの基本方針 【区民サービス】区民にとってわかりやすく、利用しやすい庁舎 【区民協働・交流】区民の協働と交流の拠点となる開かれた庁舎 【行政・議会】機能的・効率的で柔軟性の高い庁舎 【防災】区民の安全・安心を支える防災拠点となる庁舎 【環境】環境にやさしい脱炭素型の庁舎 【将来変化・経済性】将来の変化に対応し、長期間有効に使い続けられる庁舎 導入機能の整備方針 ■ 窓口機能 ■ 相談機能 ■ 案内機能 ■ 情報発信機能 ■ 協働・交流機能 ■ 執務機能 ■ 会議機能 ■ 議会機能 ■ 強くしなやかな建物性能の実現 ・災害時のバックアップ機能 ■ 災害対策本部機能 ■ 災害時区民対応機能 ■ 建築物の環境性能 ■ カーボンニュートラル ■ 周辺環境への配慮 ■ ライフサイクルコストの低減 ■ 将来の変化への柔軟な対応 【共通機能】 ■ユニバーサルデザイン ■DXの推進 ■セキュリティ対策 導入機能のうち、【共通機能】に関する策定委員会での主な意見を下記に示します。 策定委員会での主な意見 ・ユニバーサルデザインを導入してほしい。 ・区民情報の漏洩を防ぐためにセキュリティ対策をしっかりと。 ・若い方が来やすいようICT活用を進める一方、ICTに不慣れな方、ご高齢の方のために、バリアフリー化やワンストップサービスを整備してほしい。 ・現庁舎はトイレの数が少なく、狭い。新庁舎では充実してほしい。 <22ページ> 4. 導入機能の整備方針 1) 新庁舎に必要となる導入機能の整備方針 新庁舎に必要となる各導入機能の視点から現庁舎の課題を整理することにより、新庁舎における整備方針を設定します。 ① 区民サービス 「区民にとってわかりやすく、利用しやすい庁舎」 (ア) 窓口機能 【課題の整理】 ・区民が利用する窓口サービスにおいて、複数窓口間の移動が必要であるとともに庁内の動線が複雑で出入り口も多く、わかりづらくなっています。 ・待合スペースが狭隘なことにより来庁者同士の間隔が近く、窓口カウンターはスペースの不足や仕切りがないため、プライバシーの配慮に欠けています。 ・電子申請しやすい環境が十分に整っていないため、来庁して様々な手続きを行う必要があります。 【整備方針】 ○窓口機能の配置 ・区民の移動距離を短くわかりやすい窓口とするため、窓口機能はできる限り低層階、同一フロアへ配置します。 ・手続内容や区民のニーズに応じて、利便性を考慮したワンストップサービスを導入します。 ○窓口および待合スペースの環境整備 ・手続内容に応じてローカウンター、ハイカウンターを適宜配置します。 ・仕切りの設置などにより、プライバシーに配慮した窓口とします。 ・十分な待合スペースを確保します。 ○各種行政手続きの電子申請の拡充 ・オンラインで申請できるサービスを拡充し、来庁しないで手続き可能な区役所を目指します。 <23ページ> (イ) 相談機能 【課題の整理】 ・相談スペースが狭く数が少ないことに加え、音漏れや視線などへの配慮が足りず、プライバシーが十分に確保できていません。 【整備方針】 〇相談機能の充実 ・相談ブースや相談室を相談内容や頻度に応じて、効率的に配置します。 ・相談室は個人情報やプライバシーの保護のため、遮音性に配慮します。 (ウ) 案内機能 【課題の整理】 ・総合案内やフロアマネージャーの位置がわかりづらく、案内表示が不十分なため、来庁者が目的の窓口に行くまでに時間がかかります。 【整備方針】 ○案内機能の充実 ・来庁者をスムーズに案内・誘導できるよう、総合案内やフロアマネージャーを配置します。 <24ページ> ② 区民協働・交流 「区民の協働と交流の拠点となる開かれた庁舎」 (ア) 情報発信機能 【課題の整理】 ・区の持つ豊富な魅力やイベント情報、観光情報などを定期的に情報発信するためのスペースが不足しており、効果的なPRができていません。 ・区政資料コーナーは位置がわかりづらい上に狭く、十分に活用できていません。 【整備方針】 ○情報発信機能の充実 ・品川の歴史や文化、産業などの豊富な魅力を効果的に発信・展示できる仕組みを導入します。 ・区政情報や区のイベント情報、観光情報などを定期的に発信する情報発信スペースを配置します。 ・エントランス付近などにデジタルサイネージなど、視認性の高い方法を利用した情報発信機能を整備します。 ・区政資料コーナーは、区民が気軽に立ち寄りやすい場所に設置します。 (イ) 協働・交流機能 【課題の整理】 ・区民交流や区民と区が協働して事業を進めていくためのスペースが不足しています。 ・イベントフロア・展示スペースなどが十分に活用されていない、もしくは臨時窓口などの別用途として利用されています。 【整備方針】 ○協働・交流機能の充実 ・低層階を中心に、区民が気軽に立ち寄れる、区民同士の交流促進や活動を支援するスペースを整備します。 ・区民が開催するイベントや展示スペースとして活用できる場所の整備を行います。 ・災害対応の臨時スペースや打合せスペースなど、多目的な使い方に対応できる設えとします。 <25ページ> ③ 行政・議会 「機能的・効率的で柔軟性の高い庁舎」 (ア) 執務機能 【課題の整理】 ・座席が高密に配置されていることに加えて、打合せスペース・書庫の増設などにより執務空間が不足しています。・机やキャビネットなどが組織単位で分割された配置となっており、組織改正時に大規模なレイアウト変更が必要です。 【整備方針】 〇機能的な執務環境の確保 ・庁内業務のICT化に伴う最先端なシステム・機能を導入した効率的で機能的な執務空間を整備します。 ・窓口、執務、打合せなど用途ごとの区分けにより機能的な動線を確保します。 ・重複する資料の整理やペーパーレス化によって書類を削減し、効率的な運用が行われる執務空間を目指します。 ・職員用のリフレッシュスペースを設けるなど、職員が働きやすい環境を整備します。 〇執務スペースの柔軟性の確保 ・将来の組織や新しい働き方、臨時発生業務などに柔軟に対応できるようユニバーサルレイアウトを導入します。 ・業務内容に応じて、フリーアドレスなどの環境整備を行います。 (イ) 会議機能 【課題の整理】 ・会議室や打合せスペースの不足に加え、効率的な管理システムが導入されていません。 ・設備機器やネットワーク構成がオンライン会議などに十分対応していません。 【整備方針】 〇会議スペースの配置 ・現庁舎での利用実態を踏まえ、必要な規模・数の会議室を確保します。 ・目的に応じてフレキシブルに活用できる会議室を確保します。 ・執務空間や共用部に、様々なタイプの打合せスペースを整備します。 〇利用環境の整備 ・会議室管理システムを強化し、効率的な運用を図ります。 ・ペーパーレス会議やウェブ会議に対応できるICT環境を整備します。 <26ページ> (ウ) 議会 【課題の整理】 ・区民にとって議会関係諸室の配置や動線がわかりづらく、傍聴席も不足しています。 ・ユニバーサルデザインやバリアフリー、ICT化への対応が不十分です。 【整備方針】 〇議会機能の配置 ・議会の独立性を確保するため、議会機能と行政機能を区分した配置とします。 ・議会機能の同一フロア化による利便性向上を検討します。 ・本庁舎とつながりがわかりやすい議会配置とします。 ・アクセスしやすい縦動線を確保します。 ・区民利用が中心となる機能の配置の検討を優先し、議会機能は動線計画や構造形式を踏まえて配置します。 〇議会機能の充実 ・議会活動の一層の充実のため必要なスペースの確保と適切な配置を行います。 ・本会議場は、多目的な利用を視野に入れた機能を検討します。 ・当事者の利用を踏まえ、可能な限りユニバーサルデザインおよびバリアフリーに対応した議会機能を確保します。 ・災害時に対応できる機能の確保を検討します。 ・効果的・効率的な議会活動のため、最先端技術などを活用したICT環境の整備を図ります。 ・十分なセキュリティ水準を確保します。 〇区民に開かれた議会の整備 ・区民の動線として、議員への相談や議会傍聴が考えられるため、それらの動線をわかりやすくします。 ・区民が身近に議会を感じることができるよう明るく開放的なつくりとします。 ・議場や委員会室の傍聴スペースを拡充します。 <27ページ> ④ 防災 「区民の安全・安心を支える防災指令拠点となる庁舎」 (ア) 強くしなやかな建物性能の実現・災害時のバックアップ機能 【課題の整理】 ・被災当初の混乱期においても業務継続が可能な建物性能が求められます。 ・現庁舎は電気室・自家発電機室が地下に配置されており、浸水対策に課題があります。 【整備方針】 〇耐震性の確保 ・防災指令拠点として高い耐震性を確保するため、国土交通省が定めた「官庁施設の総合耐震・対津波計画基準」の最高水準である「構造体Ⅰ類、非構造部材A類、建築設備甲類」を目標とします。 ・免震構造または制震構造の採用を検討します。 〇ライフラインのバックアップ機能の確保 ・電気室、非常用発電機、受水槽を中層階以上に配置します。 ・7日間電気を供給するための非常用発電機を整備します。 ・エネルギー、通信網の多重化を図り、業務継続性を確保します。 ・上水道の途絶に備え、飲料水に使用可能な貯水槽を確保するとともに、トイレ洗浄水などに利用する雨水槽や中水槽を整備します。 <耐震安全性の分類と目標> 構造体 Ⅰ類 大地震動後、構造体の補修をすることなく建築物を使用できることを目標とし、人命の安全確保に加えて十分な機能確保が図られるものとする Ⅱ類 大地震動後、構造体の大きな補修をすることなく建築物を使用できることを目的とし、人命の安全確保に加えて機能確保が図られている Ⅲ類 大地震動により、構造体の部分的な損傷は生じるが、建築物全体の耐力の低下は著しくないことを目標とし、人命の安全確保が図られている 建築非構造部材 A類 大地震動後、災害応急対策活動等を円滑に行ううえ、又は危険物の管理のうえで支障となる建築非構造部材の損傷、移動等が発生しないことを目標とし、人命の安全確保に加えて十分な機能確保が図られるものとする B類 大地震動により建築非構造部材の損傷、移動が発生する場合でも、人命の安全確保と二次災害の防止が図られている 建築設備 甲類 大地震動後の人命の安全確保及び二次災害の防止が図られているとともに、大きな補修をすることなく、必要な設備機能を相当期間継続できることを目標とする 乙類 大地震動後の人命の安全確保及び二次災害の防止が図られている <28ページ> (イ) 災害対策本部機能 【課題の整理】 ・災害時およびその後の復旧・復興時において庁舎が果たすべき役割を整理し、十分な機能を整備する必要があります。 ・防災関連諸室が分散していることや、応援職員や関係機関職員の活動スペースおよび災害対策本部要員室が不足しています。 【整備方針】 〇災害対策本部機能の強化 ・区の災害対策の指令機能としての役割を果たすため、災害対策本部機能の充実、強化を図ります。 ・応援職員・関係機関(自衛隊、警察、消防など)とのワークスペースを確保します。 〇災害対策本部機能の配置 ・災害時の意思決定の迅速化や、災害対策本部要員の動線・情報の流れの円滑化を図るため、災害対策関係諸室を近接するフロアに集約配置します。 ・電力途絶によるエレベーターの停止なども想定し、できる限り低中層階への配置を検討します。 ・平常時に会議室などの別用途で利用可能なレイアウト、設えとします。 〇災害対策本部要員室の充実 ・災害発生時に支援物資が供給されないことに備え、必要な資機材や食料、飲料水を保管する備蓄倉庫を確保します。 <29ページ> ⑤ 環境 「環境にやさしい脱炭素型の庁舎」 (ア) 建築物の環境性能 【課題の整理】 ・現庁舎は設備機器の老朽化や外壁などの断熱性能が低いために、エネルギー効率に課題があります。 ・環境に配慮した建物のモデルとなるような、高い環境性能を備えた庁舎が必要です。 【整備方針】 〇環境性能の確保 ・CASBEE(キャスビー:建築環境総合性能評価システム)における、高い環境性能ランクを目指します。 自治体におけるCASBEE活用のメリットとして、次のことが考えられます。 ・CASBEEの導入によって、民間建築主などの自主的な環境配慮の取組みを促進する。 ・CASBEEの評価結果を、自治体による建築環境施策の達成状況の把握や目標設定に活用する。 <30ページ> (イ) カーボンニュートラル(※) 【課題の整理】 ・品川区環境基本計計画に基づき、区内の温室効果ガスの削減に向けた一層の取り組みが必要です。庁舎はそのけん引役を担い、区民や事業者の環境意識の向上を図ることが求められます。 ・将来にわたる持続可能な発展のため、再生可能エネルギーの積極的な活用が重要です。 【整備方針】 〇省エネルギーの推進 ・パッシブ技術(日射遮蔽、通風など)やアクティブ技術(LED照明や空調機器などの高効率化)を併用して省エネを推進します。 〇再生可能エネルギーの導入 ・再生可能エネルギー(太陽光発電、風力発電など)を最大限活用することにより脱炭素化、ZEB化(ゼブ:ゼロエネルギービル)を推進します。 〇脱炭素型エネルギーの調達 ・脱炭素型エネルギーへの切り替えを検討します。 ・国による「2050 年の脱炭素化達成の宣言」や東京都の「ゼロエミッション東京戦略」に沿ったゼロエミッションビル(廃棄物ゼロ)への対応をします。 ※炭素中立:二酸化炭素など温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させ、排出量を実質ゼロに抑えるという概念。 <31ページ> (ウ) 周辺環境への配慮 【課題の整理】 ・区内における既存のみどりが減少傾向にあることを踏まえ、品川区みどりの条例に基 づき、敷地内に十分な量のみどりを確保する必要があります。 ・区民がみどりとふれあう空間の創出が求められます。 ・地球温暖化の防止や循環型社会の形成に向けて、木材の利用を促進することが求めら れます。 【整備方針】 〇グリーンインフラ(※)の推進 ・ヒートアイランド現象や景観などに配慮し、敷地や建物の緑化を進めます。 ・内装材や家具などに、木材を積極的に活用します。 ※自然環境が有する多様な機能を活用し、持続可能な魅力ある国土づくりや地域づくりを進めるという概念。 <32ページ> ⑥ 将来変化・経済性 「将来の変化に対応し、長期間有効に使い続けられる庁舎」 (ア) ライフサイクルコストの低減 【課題の整理】 ・現庁舎は、施設の老朽化に伴い年々維持管理費が増大しています。財政負担の縮減を図るためにも、維持管理や将来の修繕を考慮した建物とすることが重要です。 ・庁舎は、いかなる時も機能を発揮し、長期にわたって有効に使い続けられることが求められます。 【整備方針】 〇建物の長寿命化 ・長寿命・高耐久な構造や材料を採用します。 〇ランニングコストの低減 ・維持管理がしやすいシンプルな平面形状とします。 ・維持管理がしやすい構造や材料を採用します。 ・省エネルギー設備の採用などランニングコストを抑制できる機器を積極的に導入します。 ・設備更新を考慮したメンテナンススペース(機器の点検、交換などのための空間)を確保します。 建築物のライフサイクルコストにおいて、建設費(イニシャルコスト)は氷山の一角 であり、修繕費・運用費など(ランニングコスト)が圧倒的な割合を占めています。 <33ページ> (イ) 将来の変化への柔軟な対応 【課題の整理】 ・現庁舎は、躯体と内装が一体的な作りとなっているため、組織改正時に柔軟な対応ができていません。 ・将来の行政ニーズの変化や新しい働き方など様々に想定しながら、設計・施工を進めていく必要があります。 【整備方針】 〇柔軟性の高い環境の整備 ・将来の行政ニーズや行政組織に対応したレイアウト変更を想定し、スケルトン・インフィルの採用を検討します。 ・大規模空間化により、設計自由度を確保します。 ・新しい働き方などを想定し、エリアごとに制御できる電気・空調設備を整備します。 耐用年数が異なる建物の構造部分と内装や設備部分をプランニングや断面計画によって切り分け、構造部分に手を加えることなく将来の改修や設備更新に対応しやすい計画とする考え方のことです。 <34ページ> ⑦ 共通機能 (ア) ユニバーサルデザイン 【課題の整理】 ・区ではユニバーサルデザインの考え方を基本に、バリアフリー化や高齢者や障害者への配慮など、すべての人にとって暮らしやすいまちづくりを目指しています。庁舎においても通路やトイレなどの「ハード面」とともに、誰にでもわかりやすい情報提供や来庁者への意識啓発など「ソフト面」も含めて、一体的に取り組むことが重要です。 【整備方針】 〇ユニバーサルデザインの導入 ・すべての来庁者が不自由なく利用できるよう、ハード面とソフト面において、ユニバーサルデザインに配慮します。 〇利用しやすい移動空間 ・誰もが安心して移動できるよう、十分な幅を確保し、段差のない出入口や通路を設けます。 ・エレベータは使いやすさと安全性を考慮した配置・大きさとします。 〇わかりやすいサイン・案内設備 ・色彩やピクトグラムにより、直感的でわかりやすいサインを整備します。 ・多言語対応のデジタルサイネージや音声誘導装置などにより、障害者や高齢者、外国人など、すべての利用者を円滑に誘導できる設備を導入します。 〇利用しやすい環境整備 ・多機能トイレやオストメイト対応設備を適正に配置する他、ジェンダーフリー型トイレの整備を検討します。 ・子育て関連の窓口には、授乳室やキッズスペースを設け、親子で利用しやすい環境を整備します。 <35ページ> (イ) DX(※)の推進 【課題の整理】 ・国(総務省)が「自治体DX推進計画」を示していることや、区の長期基本計画においても「ICTなどの先端技術を活用した利便性向上の推進」を掲げていることから、デジタル社会の構築に向けた取組みを着実に進めていく必要があります。 ・区民サービスの利便性を高める電子決済の導入や、職員のテレワークなど多様な働き方を実現するために、情報通信環境や設備の整備が必要になります。 【整備方針】 〇ICT(情報通信技術)の活用 ・来庁者や職員にとって最適なICTを活用することで、窓口サービスの充実やペーパーレスなどの実現による業務効率化・環境への負荷軽減を図ります。 ・あらゆる立場の方々がICTの恩恵を享受できるよう、情報格差(デジタルデバイド)に十分に配慮します。 ・情報通信量の増大に対応できるよう、情報通信機器の設置スペ―スや配線スペースの拡張性に配慮します。 〇AI(人工知能)の活用 ・AIの導入による窓口業務の自動化や審査業務の迅速化などを検討します。 ※デジタルトランスフォーメーション:進化したIT技術を浸透させることで、人々の生活をより良いものへと変革させるという概念。 <36ページ> (ウ) セキュリティ対策 【課題の整理】 ・現庁舎は、来庁者と職員の立入れるエリアの区分けが曖昧です。 ・庁舎内の様々な個人情報や行政情報を、確実に保護しなければなりません。 【整備方針】 〇セキュリティ対策の強化 ・庁舎全体でセキュリティを段階的に設定します。 ・ICカードや生体認証システムなどを導入します。 ・防犯対策や情報保護機能を強化します。 <37ページ> 第4章 建設計画 1. 建設概算規模 1) 規模算定に当たって考慮すべき要素 ① 職員数と議員数 新庁舎の規模の検討に用いるために設定した前提条件は、以下のとおりです。 職員数 1,600 人 現在の在庁職員数(1,454 人)に、分散している機能の集約などを考慮し加算 議員数 40 人 現在の議員定数 また 、規模検討に係る考え方として 、以下の3つの要素を踏まえます。 ② 令和2 年度品川区庁舎機能検討委員会答申 区を取り巻く環境変化や多様化する行政需要に対応するために、答申に基づき必要な機能を整備します。 ③ 第二庁舎の活用 第二庁舎は、築年数などを踏まえて残すこととして、その活用については別途検討します。 ④ まちづくりとの連携 まちづくりが進む広町地区において、周辺環境などに配慮しながら適切な面積を確保します。 <38ページ> 2) 規模算定の方法 新庁舎を次の4 つに区分し、それぞれに必要な面積を算定します。 行政・防災・議会機能など ・事務室、倉庫、会議室 ・災害対策関係諸室 ・議会関係諸室 など 面積算定根拠 ・総務省旧「地方債同意等基準」(※) ・他自治体の実績 ・令和2 年度庁内PTなど 屋内駐車場 ・地下駐車場 など 面積算定根拠 ・現庁舎の駐車場規模や利用状況 ・法令で必要な駐車台数 ・建設候補地で確保可能な台数など 国および都の機関(調整中) 面積算定根拠 ・現庁舎における使用面積 ・要望面積 など 協働・交流機能 ・区民協働スペース、情報コーナー、カフェなど(災害時は臨時対応スペースに転用) 面積算定根拠 ・他自治体の実績など ※総務省の旧「地方債同意等基準」(平成23(2011)年度廃止)は、庁舎建設の際に起債をするための基準となる面積を算定するものでした。現在は交付金として措置されるため、この基準に沿う必要はありませんが、客観的な基準として庁舎整備では参考とされています。 3) 新庁舎建設想定規模および現庁舎との比較 新庁舎建設想定規模および現庁舎との比較については、以下のとおりです 新庁舎建設想定規模 行政・防災・議会機能など 約37,000㎡ 屋内駐車場 約11,000㎡ 国および都の機関(調整中 約10,000㎡ 協働・交流機能 約2,000㎡ 合計 約60,000㎡ 現庁舎規模 区(本庁舎・議会棟・第三庁舎)約18,000㎡ 区(第二庁舎) 約12,000㎡ 駐車場 約9,000㎡ 国および都の機関(使用面積) 約7,000㎡ 合計 約46,000㎡ 上記より、新庁舎整備で検討する全体規模は、約60,000 ㎡ となります。 ただし、これはあくまでも現段階での想定規模です。DX・ICT化による働き方の変革などにより庁舎全体の規模を縮小することや、余剰となった面積を活用して協働・交流機能の面積を増やすことなど、引き続き検討の余地があります。 詳細な面積については、今後の基本計画策定段階にて、職員による庁内PT(プロジェクトチーム)や、執務環境調査などを踏まえて精査していきます。 <39ページ> 2. 建設候補地 1) 建設候補地の概要 土地区画整理事業が予定されている広町地区内の敷地を新庁舎の建設候補地としています。 今後、地区計画において定められる用途の制限や容積率の最高限度などの地区整備計画に基づき、新庁舎として必要な機能を確保していきます。 <40ページ> 第5章 事業計画 1. 事業手法 1) 事業手法とは 施設の設計や施工、完成後の維持管理および運営など、事業の進め方のことです。品川区が発注する公共事業では、原則として、設計と施工を分離発注する「従来方式」を採用してきました。設計者が作成した設計図書に基づき価格競争入札で施工者を選定する方式です。 近年では、コスト縮減や工期短縮などを図れる場合があることから、設計段階で施工者の持つ技術的ノウハウを取り入れた事業手法を採用する他自治体事例も増えてきています。 2) 事業手法の検討に当たって考慮すべき事項 事業手法の検討に当たって考慮すべき主な事項は、下記のとおりです。 <コスト> ・コストの縮減や将来にわたる財政負担の平準化を行いやすく、責任の所在が明確な手法であること。 <区民や区の意向反映> ・設計・施工の各段階で十分なチェック機能が働き、区民や区の意向を反映させやすい手法であること。 <事業期間> ・現庁舎の老朽化や求められている庁舎機能の整備に速やかに対応するために、早期の事業着手を見込むことができる手法であること。 <41ページ> 3) 事業方式の比較 本事業に適用可能な事業手法を大別すると、従来方式、設計・施工一括発注方式、PFI方式に分類されます。それぞれの概要や特徴については以下のとおりです。 従来方式 概要 ・設計と施工を個別に発注する方式。 コスト 資金調達 ・区が自らの財源によって調達する。 ・公共調達は民間調達よりも金利が低いため、利息の差額部分について初期投資費が抑えられる。 財政負担平準化 ・基金と起債で賄うことにより、区の財政負担を平準化できる。 コスト縮減 ・設計・施工段階でのVEや総合評価方式の活用などによって、一定のコスト縮減が期待できる。 意向反映 ・設計および工事を段階的に仕様発注するため、その都度チェックが可能であり、区民や区の意向を具体的に設計・施工に反映できる。 事業期間 ・従来の手続きであるため、発注回数は多いが比較的早期に事業を進めることができる。 維持管理・運営 ・維持管理業務は単年度・個別発注が基本となるため、想定外の事態や区民ニーズの変化などに柔軟に対応しやすい。 事例 ・世田谷区庁舎 ・川崎市本庁舎 ・町田市庁舎など 他多数 設計・施工一括発注方式(DB方式) 概要 ・設計・施工を一括して設計・施工企業に発注する方式。 コスト 資金調達 ・区が自らの財源によって調達する。 ・公共調達は民間調達よりも金利が低いため、利息の差額部分について初期投資費が抑えられる。 財政負担平準化 ・基金と起債で賄うことにより、区の財政負担を平準化できる。 コスト縮減 ・設計段階から施工企業が関与することで、施工に配慮した設計が可能となり、コスト縮減が期待できる。 意向反映 ・設計および工事を一括して性能発注するため、チェック機能が働きにくく、区民や区の意向を設計・施工内容に反映しにくい。 事業期間 ・事業者選定には従来方式よりも時間を要するが、発注回数が少ないことや設計段階から施工企業者が関わることにより、事業期間の短縮は期待できる。 維持管理・運営 ・維持管理業務は単年度・個別発注が基本となるため、想定外の事態や区民ニーズの変化などに柔軟に対応しやすい 事例 ・中野区庁舎 ・横浜市庁舎 ・米沢市庁舎 PFI方式 概要 ・設計・施工、維持管理・運営を包括的に民間事業者グループに発注する方式。 コスト 資金調達 ・民間事業者が調達し、区が民間事業者に対して支払う。 ・民間調達は公共調達よりも金利が高くなるため、利息の差額部分について初期投資費(=区の支払い額)が増える。 財政負担平準化 ・民間調達分を割賦・均等払いすることにより、区の財政負担を平準化できる。 コスト縮減 ・設計段階から施工企業が関与することで、施工に配慮した設計が可能となり、コスト縮減が期待できる。 意向反映 ・設計および工事を一括して性能発注するため、チェック機能が働きにくく、区民や区の意向を設計・施工内容に反映しにくい。 事業期間 ・PFI法に基づく手続きなどにより、従来方式と比較すると事業着手までに時間を要する可能性が高い。 維持管理・運営 ・庁舎においては、維持管理業務・運営業務に民間ノウハウを活用できる余地が少なく、長期一括発注に大きな効果は期待しにくい。 事例 ・九段第3合同庁舎・千代田区庁舎 ・京都市伏見区総合庁舎 ・大宮区役所庁舎 <42ページ> ※1:(Private Finance Initiative)民間の資金と経営能力・技術力(ノウハウ)を活用し、公共施設などの設計・建設・改修・更新や維持管理・運営を行う事業方式のこと ※2:(value engineering)性能や価値を下げずにコストを抑えること ※3:施設の配置・構造・建築材料など、業務に関わる詳細な要件などの仕様書を公共が作成し、民間に提示して発注すること。 ※4:必要な施設の性能要件や業務水準のみを公共が提示して、民間の裁量の下で要求水準を満たす施設を整備させること。 以上のように、事業方式ごとにコストや事業期間、維持管理・運営などの面で特徴が異なります。これらを勘案しながら検討を進め、基本計画において採用する事業手法を決定します。 4) 概略事業スケジュール 現段階での想定スケジュールは、以下のとおりです。 ・令和3(2021)年度に、基本構想を策定します。 ・令和4(2022)年度に、基本計画を策定します。 ・令和5(2023)年度から令和6(2024)年度にかけて、基本設計・実施設計を行います。 ・令和7(2025)年度から建設工事を開始し、令和9(2027)年度竣工・供用開始を目指します。 ※本スケジュールは、今後の進捗状況などにより変更の可能性があります。 <43ページ> 2. 概算事業費、財源の考え方 1) 概算事業費 本庁舎整備に関する事業費の概算について、概算規模面積約60,000㎡を前提に、他自治体事例を参考に想定しました。 ① 概算事業費 近年完成、工事中または計画中の他自治体事例の事業費は、下表のとおりです。 本庁舎整備事例の事業費 A 区 建設期間 着工:2021/7 完成:2024/5 事業費(税込)約262億円 延床面積 約4.7万㎡ 備考 免震、予定価格より ※実施設計および建設工事 B区 建設期間 着工:2021/7 完成:2027/10 事業費(税込)約420億円 延床面積 約6.4万㎡ 備考 免震、予定価格より ※建設工事および解体工事 C区 建設期間 着工:2025 完成:2028 事業費(税込)約303億円 延床面積 約5.5万㎡ 備考 免震予定、基本計画より※建設工事のみ 本庁舎整備の概算事業費に関しては、建設工事費・外構工事費の他に調査・設計費を勘案し、上記の事例やヒアリングなどのデータを参考にした結果、約400 億円となります。 この概算建設事業費は、構想段階における見込みを示すものです。今後、計画や設計段階において詳細に精査していきます。概算事業費に関しては、社会情勢により変動していくことがあります。 本庁舎の概算事業費 調査・設計費 約20億円 施工監理費含む 建設工事費 約360億円 60万円/㎡×60,000㎡ ※単価は他区事例より想定 外構工事費 約20億円 歩行者デッキなど 合計 約400億円 ※国および都(調整中)の機関の整備費を含みます。 ※備品更新費、移転費、現庁舎の解体工事費は含んでいません。  ※財源については、起債・基金を活用するほか、別途、区分所有者(国および都で調整中)からの分担金で確保することを予定しています。 ② ライフサイクルコスト縮減に向けた方策 ライフサイクルコスト全体の大半を占める維持管理費を削減することで、新庁舎整 備に係る費用の低減が期待されます。現庁舎でかかっている維持管理費(約5 憶円/ 年)を削減し、現世代および将来世代の財政負担を軽減することが重要です。そのた めには、メンテナンス性を考慮して標準品、省力化が図れる資材を採用するとともに、 光熱水費を抑えられる高効率な設備機器を積極的に導入するなど、徹底したライフサ イクルコストの縮減を目指します。 <44ページ> 【資料編】 <45ページ><46ページ> 1) 品川区新庁舎整備基本構想・基本計画策定委員会 設置要綱 <47ページ><48ページ> 2) 品川区新庁舎整備基本構想・基本計画策定委員会 委員名簿 <49ページ> 3) 品川区新庁舎整備について(諮問) <50ページ> 4) 品川区新庁舎整備基本構想・基本計画策定委員会 開催経過 第1回 令和3(2021)年6月3日 1. 現庁舎の現状と課題 2. これまでの経緯 3. 広町地区におけるまちづくりの検討状況 4. 令和2 年度庁舎機能検討委員会のまとめ 5. 関連上位計画 第2回 令和3(2021)年7月19日 1. 基本理念・基本方針 2. 第1回策定委員会での意見・区民意見の整理 3. 区民アンケート結果(経過) 第3回 令和3(2021)年8月26 日 1. 基本理念・基本方針 2. 導入機能の整備方針 3. 建設想定規模 4. 建設候補地 5. 第2 回策定委員会での意見・区民意見の整理 第4回 令和3(2021)年9月14 日 1. 第3 回策定委員会での意見と対応 2. 事業計画 3. 基本構想(素案)まとめ 第5回 令和3(2021)年11月16 日 1. パブリックコメント結果 2. 基本構想案の答申 <51ページ> 5) 用語解説 あ行 ●ICT (アイ・シー・ティー) 情報通信技術(Information and Communication Technology)の略称。情報処理や情報通信(コンピューターやネットワーク)に関連する分野における技術・産業・設備・サービスなどの総称。 ● AI(エー・アイ) Artificial Intelligence の略で、人工知能のこと。 ●SDGs(エス・ディー・ジーズ) 持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)の略称。2015 年9 月の国連サミットで採択された、2030 年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標。17 のゴール・169 のターゲットから構成される。 ●オストメイト対応設備 人工肛門、人工膀胱保有者向けの設備(大型の流しなど)。 か行 ●カーボンニュートラル 二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの「排出量」から、森林などによる「吸収量」を差し引いて、合計の排出量を実質的にゼロにすること。 ●CASBEE(キャスビー) CASBEE(建築環境総合性能評価システム)とは、2001 年に国土交通省主導のもと開発された、建築物の環境性能を評価するシステムのこと。資源循環や室内環境なども含めた総合的な環境性能を評価するシステムであり、環境負荷(Load)と環境品質Q(Quality)を2つの評価軸として明確に分けて扱っている点に特徴がある。 ●グリーンインフラ 自然環境が有する機能を社会における様々な課題解決に活用しようとする考え方。 ●コア エレベーターや階段、機械室、パイプスペース(住宅では便所、浴室、台所も含む)などを集めた建物の核、主に中央部のこと。 さ行 ●再生可能エネルギー 一度利用しても比較的短期間に再生が可能であり、資源が枯渇しないエネルギー(太陽光や太陽熱、水力、風力、バイオマス、地熱などのエネルギー)のこと。 ●自家発電 電気を消費する者が 、自身で消費することを目的に、自ら発電装置を備えて発電するための装置のこと。設置目的や用途から、常用自家発電設備と非常用自家発電設備に分けられる。 ●スケルトン・インフィル スケルトンは、建物の骨組みともいえる柱、梁、床などの構造躯体を指し、インフィルは、内部の内装、設備部分を指す。耐久性の高いスケルトンと、経年劣化 などに応じて柔軟に変更ができるインフィルを明確に区分けして、耐久性と可変性の高い建築物を整備する主法のこと。 ●ZEB(ゼブ) Net Zero Energy Building の略称。快適な室内環境を実現しながら、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建物のこと。 <52ページ> 省エネによって使うエネルギーをへらし、創エネによって使う分のエネルギーをつくることで、エネルギー消費量を正味(ネット)でゼロにすることができる。 た行 ●脱炭素化 地球温暖化の原因となっている二酸化炭素など温室効果ガスの排出を防ぐために、石油や石炭などの化石燃料からの脱却を目指すこと。 ●DX(ディー・エックス) 進化したIT 技術を浸透させることで、人々の生活をより良いものへと変革させるという概念。 ●DB方式(ディー・ビー方式) 設計(Design)、建設(Build)を一括発注する方式。 ●デジタルサイネージ 液晶モニターなどを用いたデジタル方式により、各種の情報を表示・伝達するシステム。 は行 ●パッシブ技術(⇔アクティブ技術) 省エネルギーのための技術の中で、建物内の環境を適切に維持するために必要なエネルギー量(エネルギーの需要)を減らす技術をパッシブ技術、エネルギーを効率的に利用する手法をアクティブ技術という。 ●バリアフリー(Barrier free) 〔「障壁のない」の意〕建築設計において、段差や仕切りをなくすなど高齢者や障害者に配慮をすること。 ●PFI(ピー・エフ・アイ) Private Finance Initiative の略称。公共事業を実施するための手法の1つ。民間の資金と経営能力・技術力(ノウハウ)を活用し、公共施設などの設計・建設・改修・更新や維持管理・運営を行う事業手法のこと。 ●ピクトグラム 何らかの情報や注意を示すために表示される「視覚記号(マーク)」のことで、文字表現の代わりに視覚的な図で表現することで、言語の違いによる制約を受けずに情報の伝達を行なう事ができるもの。 ●ヒートアイランド現象 郊外に比べ、都市部ほど気温が高くなる現象のこと。緑地や水面の減少やアスファルトやコンクリートに覆われた地面の増大、自動車や建物などから出される熱(排熱)の増大などが主な原因と考えられる。 ●PPP(ピー・ピー・ピー) パブリック・プライベート・パートナーシップ(Public Private Partnership)の略称で、「官民のパートナーシップ」と訳されることもある。国や地方自治体が提供してきた公共サービスに民間の資金や技術、ノウハウを取り入れることを指す。PPP の中には、PFI、指定管理者制度、市場化テスト、公設民営方式、さらに包括的民間委託、自治体業務のアウトソーシングなども含まれる。 ●フリーアドレス 個人の座席を固定せず、従業員がその日の業務内容などに合わせて自由に席を決めることができる形式のこと。 ●フロアマネージャー 庁舎内や窓口ヘの誘導を行う庁舎の総合案内役。 <53ページ> ●ペーパーレス 業務効率の改善やコストを削減することを目的として、紙で保存していた書類をデジタル化すること。 ま行 ●免震 建物と基礎との間に地震の揺れを受け流す部材を設置し、地盤と切り離すごとで、地震による建物の揺れを直接伝えないようにする構造のこと。 や行 ●ユニバーサルデザイン(Universal Design) 文化・言語・国籍の違い、老若男女といった差異、障害・能力の如何を問わずに利用することができる施設・製品・情報の設計(デザイン)のこと。 ●ユニバーサルレイアウト(Universal Design) 人事異動や組織の変更があっても基本的にデスクまわりのレイアウトを変えずに、人や文書が動くことで対応するデスクレイアウトのこと。 ら行 ●ライフサイクルコスト 製品や構造物などの企画、設計に始まり、竣工、運用を経て、修繕、耐用年数の経過により解体処分するまでを建物の生涯と定義して、その全期間に要する費用のこと。 ●ライフライン 電気・ガス・水道などの公共公益設備や電話やインターネットなどの通信設備、圏内外に各種 物品を搬出入する運送や人の移動に用いる鉄道などの物流機関など、都市機能を維持し人々が日常生活を送る上で必須の諸設備のこと。 ●ランニングコスト 機械や設備などを稼働させたときに、継続してかかる一定期間のすべての運転に必要な費用 (労務、燃料、電力、保全などのすべての費用)のこと。 ●ローカウンター/ハイカウンター ローカウンターとは、椅子などに腰掛けて使用するカウンターのことで、比較的長時間の相談対応などに適している。一方ハイカウンターとは、立ったまま対応するカウンターのことであり、比較的短時間の受付業務などに適している。 わ行 ●ワンストップ窓口 一度にさまざまな行政手続きを済ますことができる窓口のこと。 ●ワンストップサービス 関連するすべての手続きを、一度で、あるいは1か所で完了できる行政サービスのこと。