令和6年度予算の執行について(依命通達) 我が国の経済状況は、ウクライナへの侵攻の長期化や石油生産の減少等によるエネルギー価格の上昇、 各国でのパンデミック対応の副作用によるインフレなど、特に海外からの影響で円安や資材不足が 引き起こす物価高騰が顕著となり、区民の生活にも大きな影響を及ぼした。今後の経済回復と所得環境の 改善には期待するが、一方で、日本銀行が17年ぶりに金利を引き上げ、「マイナス金利政策」を 解除したことにより、企業の資金調達に影響が出る可能性が懸念されており、昨年度と同様に、 世界的なインフレ圧力、中国経済の不透明感、中東地域の情勢など、ダウンサイドリスクも様々見受けられる。 品川区の根幹をなす収入は、特別区税や特別区交付金など、景気の波に左右されやすい不安定な収入構造にあり、 現状では、区内人口および所得の増加や堅調な企業業績から増収傾向にはあるものの、過去数十年において発生した、 アジア通貨危機やリーマンショック、新型コロナウイルス感染症など、突然の不況が訪れることを忘れてはならない。 日常生活においては、新型コロナウイルス感染症が5類に位置づけられ、行動制限がなくなり、 マスクを外していることに違和感がなくなるなど、意識の上でも通常の生活に戻ったものと言える。 その一方、行動制限下における日常生活がもたらした影響は、デジタル技術の加速度的な進歩もあり、 コミュニケーション手段のみならず、働き方や生活様式、ひいては生き方に対する考え方にも大きな変化につながった。 これらの事象は、今後の区の施策を展開する上で、従来とは異なる視点からも取り組む必要があり、留意していかなければならない。 このような状況の中、令和6年度予算では、全区民アンケートの調査結果を分析し、区民が自分らしく幸せに暮らしていくために 重要だと考える項目を「安全・安心を守る」「社会全体で子どもと子育てを支える」 「生きづらさをなくし住み続けられるやさしい社会をつくる」「未来に希望の持てるサステナブルな社会をつくる」の 4つの領域に整理したウェルビーイング予算を始め、様々な観点からの予算を編成したところである。 各事業の実施にあたっては、区民にとって何が大事で必要とされているのかを常に考察し、さらに、区民がその事業により、 具体的な便益を享受する、または「不」を解消しなければ意味がないことを理解する必要がある。 そのためにも、職員一人一人が、日々の業務において絶えず思考を繰り返すことで、従来の業務の進め方にとらわれず、 効果を最大限に発揮するよう取り組まなければならない。 よって、各部局においては、 第一に、事務事業評価で顕在化した課題に対し、積極的に事業の見直しを進め、施策の新陳代謝(アップデート)を促すことにより、 効果的な事業実施を行うこと。なお、事務事業評価を引き続き実施することとし、総合実施計画の改定とあわせて、その整合性には十分に留意すること。 第二に、すべての人がお互いの人権と尊厳を尊重し合いながら生きていくインクルーシブ社会(共生社会)の実現を念頭に、 施策を実施する際においても十分に留意して取り組むこと。 第三に、日常的な業務や定型的な作業について、デジタル技術の活用等により改善に結び付く製品や手法が数多く広まっていることから、 知識の習得や情報収集を行い、これを積極的に活用し、効率化と働き方改革に直ちに取り組むこと。 第四に、会議の在り方や資料の簡素化など業務改善に努めることはもとより、業務における各種プロセスの廃止を含めた簡略化を行うことにより、 仕事改革の推進を行うこと。 以上を踏まえ、下記事項に留意して令和6年度の予算執行にあたられたい。 この旨、命によって通達する。 第一 全般的事項 1 ウェルビーイング予算をはじめとする各新規事業については、迅速かつ着実に実施すること。 2 予算執行については、予算事務規則、会計事務規則、契約事務規則等に基づき、適正に処理すること。 3 国および都の動向や社会情勢を注視し、年度途中であっても補正予算の計上が必要となる事業については施策実施に向けた検討を行うこと。 4 歳入は、予算計上額の確保が歳出予算執行の前提となることに留意すること。 ⑴ 前年度以上の収入額(率)を達成するよう努め、前年度同月比で低下しているものについては、原因等の分析を行い、適切な措置を講じること。 ⑵ 新規事業に対する国・都支出金については、積極的に情報収集を行い、対象となる歳入を確保すること。 5 歳出は、最少の経費で最大の効果をあげるため、次の点に留意すること。 ⑴ 行政評価を踏まえて、事業に対する公費負担のあり方や費用対効果を検証し、無駄を無くす取組みを徹底するとともに、より効果的かつ効率的に事業を執行すること。 ⑵ 新規事業については、関係各課および関係機関との情報交換や協議等を十分に行い、周到な事業計画を作成し、 適時、進行管理を行いながら、早期着手、適正な執行に努めること。 ⑶ 予算執行は、議決予算(予算見積書の事業別予算の各節を指すもの)に即して適正に行うこと。 なお、補正予算の計上が必要となる事業の事前執行は、厳に避けること。 ⑷ 不測の事態により緊急の対応が必要となった場合は、速やかに財政課と協議すること。 ⑸ 目的に応じてウェブサイトやSNSなど、デジタル媒体を積極的に活用すること。 また「誰に何の情報を届けるか」等ターゲットを意識した効果的な情報発信を行うこと。 ⑹ 区有施設における光熱水費の使用については、引き続き物価高騰の状況等を踏まえ、節電等の対策を徹底することにより、使用量の縮減に努めること。 ⑺ 各種会議等における資料作成や業務プロセス等についてはゼロベースで見直すとともに、新しい働き方を取り入れた業務改善に努めること。 6 会計管理室における資金繰りを円滑に進めていくため、特に次のことに留意すること。 ⑴ 国・都支出金は、関係機関との連絡を密にして、早期収納に努めること。 ⑵ 収支予定を綿密に積算し、収入日と執行日を明確にするとともに、収入に応じた支出を図るよう努めること。 7 新公会計制度の運用については、「品川区新公会計制度基本方針」に基づき適正な処理に努めること。 8 誰もが自分らしく生きられる社会の実現を目指すとともに、多様な生き方の選択、平等な参画機会の確保等の推進に取り組むこと。 第二 歳入について 1 特別区民税は、歳入の根幹であり、区財政に大きな影響を与えるものである。 ついては、課税対象を的確に把握するとともに、負担の公平性の観点からも滞納整理を促進し、一層の徴収率向上に努めること。 2 各特別会計における保険料は、保険制度の基盤をなすものであるので、 制度の趣旨普及等を通じて特段の徴収努力を行い、徴収率の向上に努め、 一般会計による負担の縮減を図ること。 3 国・都支出金については、補助制度の創設、組替えなどの動向に注意を払い、積極的な活用を図るなど、一層の収入確保に努めること。 ⑴ 補助金等の申請にあたっては、事業計画を綿密に立て、早期に行うこと。 ⑵ 補助基準との単価差・対象差等により生じる区の超過負担の解消について、関係機関に積極的に働きかけること。 4 当初見込んでいた補助金・交付金等に減収のおそれがあるときは、速やかに財政課と協議し、支出抑制等の措置を講じること。 5 各施設使用料については、施設利用のPR等に努めるとともに、利用形態や納付方法等を見直し、増収を図ること。 また、受益者負担の考えを踏まえ、使用料の適正化について検討すること。 6 負担の公平を図るため、自己負担金、各種貸付金返還金、保育園保育料、区営・区民住宅使用料等の未納分・滞納分の徴収については、特段の努力をすること。 7 新たな寄附金収入については、速やかに予算化し、寄附者の意向を踏まえ執行すること。 8 基金の運用については、経済動向を踏まえ、安全性を最重要視するとともに、効率性も考慮すること。 9 クラウドファンディングの活用を含めたふるさと納税については今まで以上に情報発信を行う等、積極的な財源確保の取組みを強化すること。 また、広告収入や各種団体が行っている助成制度を積極的に活用し、税外収入の確保に努めること。 第三 歳出について 1 議決を要する契約締結(変更を含む。)を行う事業については、議案提出時期を含め経理課との緊密な調整を行うこと。 なお、翌年度への予算の繰越しが発生するおそれがある場合は、速やかに財政課へ報告し、関係機関との調整を図ること。 2 地域経済対策の観点から、工事の発注や物品購入等については、区内業者への受注機会の確保に努めること。 3 債務負担行為を設定している事業については、工事出来高等の状況に注意を払い、債務負担行為の変更・追加が見込まれる場合には、速やかに財政課へ協議すること。 4 委託等の業務全般については、仕様内容が適正なものであるかを必ず確認し、改めて、真に職員が実施すべき企画立案などのコア業務と、 委託することがふさわしい業務とを精査のうえ不断の見直しを行い、必要最小限のものとすること。 また、こうした見直しの成果を次年度予算編成過程に適切に反映すべく、各部局において、委託業務のあり方についての再検証を行うこと。 5 各種計画の策定にあたっては、真に必要なものであるか見極めるとともに、策定委員会の委員数の適正化および構成に留意し実施すること。 なお引き続き、会議・審議会等における女性委員の登用を推進(委員構成を男女いずれの性も40%以上を目標)すること。 6 事業の進捗に大きな影響を与える各種の調査・設計委託等については、翌年度の予算編成に支障が生じないよう関係各課と十分な調整を図り、計画的に進めること。 7 「ゼロカーボンシティしながわ宣言」の達成に向け品川区環境基本計画および職員環境行動計画(しながわ職員エコアクト)に基づき、 これまで以上に環境負荷の軽減を図ること。 8 各種啓発物品等の作製・購入にあたっては、費用対効果など必要性を精査し、効果的な執行に努めること。 9 情報システムに係る経費については、情報システム調達ガイドラインに基づき標準化および効率化を図り、適正な調達プロセスを経ること。 第四 予算執行計画について   各部局の長は、経営的視点に立ち、自主的な判断と責任により着実な事業執行を図ることを目標に、 予算事務規則第14条に基づき、予算執行計画を策定すること。また、やむを得ず計画を変更する場合は最小限にとどめること。 第五 執行手続について         1 予算流用について 予算の執行上やむを得ない事由がある場合は、一定の範囲内において各部局の長の権限で流用を行えるものとするが、事前に財政課と調整すること。 2 執行委任について 執行委任は、委任する側と受任する側との間で綿密な意思の疎通を図り、適切な時期を考慮して行うこと。 3 不用額の処理について 予算執行につき生じた差額(見積差、契約落差等)は、その要因を明確に区分し、減額補正または決算上の不用額とすること。 4 進行管理について 施策の目的が効果的・効率的に達成できるよう、執行状況を的確に把握し、執行実績の客観的な分析・評価を行うこと。 ⑴ 予算執行は、執行計画において、事業別・四半期ごとに定めた執行計画額の範囲内で行い、予算を超過しないよう厳に注意すること。 ⑵ 予算執行にあたり、次の事項については別途企画経営部長より通知する。 ① 区長報告案件 ② 進行管理対象事業 ③ 企画課・財政課協議事業 ④ パブリックコメント対象事業 ⑶ 予算事務規則第24条第2項に基づく収支状況報告および実績報告は、次のとおり行うこと。 ① 収支状況報告は、各四半期の執行計画における執行率が80%未満の事業について、各四半期終了後15日以内に執行残額説明書を財政課に提出して行うこと。 また、同説明書指示事項欄には、各部局の長の指示を必ず記入すること。 ② 「特に区長が指定する事業」に係る実績報告は、前号①区長報告案件②進行管理対象事業の報告をもって充てる。 第六 その他 1 監査結果における注意事項   定期監査において、例年指摘されている支払遅延や契約手続の不備等のほか、DX化に伴う各処理については、従来の紙による処理や手続き等と同様に留意し、 予算の執行にあたっては、関係法令等に特段の注意を払うこと。 2 公共施設等の整備・管理計画について 「品川区公共施設等総合計画」および各課において策定している「個別施設計画」に基づき、各施設の維持管理にかかる経費について適切に把握し、 より効率的な運営に努めるとともに、施設の複合化や集約化、民間活力の導入について積極的な検討を行うこと。 3 令和7年度予算編成に向けて   ウェルビーイングの視点を基軸に据え、「誰もが生きがいを感じ、自分らしく暮らしていける品川」の実現に向けた施策を年度当初より積極的に検討すること。   なお、検討にあたっては、行政評価シートを活用し、各事業や政策の不断の検証や見直し・改善を行うとともに、 廃止・中止等と判断した事業については、その道筋をつけること。 4 条例制定等における注意事項   条例の制定・改廃にあたっては、事前に企画課および総務課に協議すること。