品川区内保育園等あり方基本方針 品川区 2024(令和6)年4月 目次 序章 はじめに 1 1.方針の目的 1 2.方針の位置づけ 1 3.定義 2 第1章 区内保育園の現状 4 1.未就学児 4 2.区立保育園 8 3.私立保育園 15 4.地域型保育事業 19 第2章 区立保育園に関する今後の見通し 21 第3章 区立保育園に関する課題 24 第4章 区立保育園のあり方 25 1.基本的な考え方 25 2.区立保育園の事業展開 25 3.区立保育園に期待される役割と取組み 25 4.事業展開イメージ 27 5.区立保育園の再整備方針 28 序章 はじめに 1.方針の目的 品川区では、品川区内保育施設については待機児童対策や地域需要等を考慮し、私立保育園の新規開設のほか、区立保育園の改築および民営化計画を進めてきた。 しかしながら、未就学児の人口や国の保育施策の動向の変化等、区内保育施設を取り巻く社会情勢は、大きく変化している。そのため、区立保育園としての役割を明確化するとともに、統合等のハード面にかかる方針を策定することが必要とされる。一方、その際には品川区全体の保育の質を維持・向上させていく観点も必要であることから、区内の保育需要やその動向を踏まえたうえで、今後の品川区が目指す保育、その際の区立保育園、私立保育園のあり方を考えなければならない。 以上から、本方針では、区立保育園を中心とした区内保育園のあり方を整理したうえで、区立保育園の建替えを契機とする統合、その際の私立保育園との連携等の方向性を示す。本方針により、今後の品川区における保育の充実を図り、その際の区立保育園のあり方と実現性を高めることを目指す。 2.方針の位置づけ 品川区長期基本計画や子ども・子育て支援事業計画など関連する計画との整合を図りながら、区立保育園を中心とした区内保育園等の今後のあり方に関して方向性を示す。 本方針に基づき、区立保育園の建替えや適正配置、総合的な子ども・子育て支援の充実のため具体的な取組みを計画的に推進する。 子ども・子育てを取り巻く環境を踏まえ、必要に応じて見直すこととする。 3.定義 (1)保育園および地域型保育事業の定義 本方針における保育園および地域型保育事業の定義は以下のとおり。 区立保育園 区が設置した認可保育園および認定こども園。 基本的に、公設公営の保育園を指すが、民営化対象の保育園や公設民営の保育園を含める場合は、その旨記載する。 私立保育園 民間が設置した認可保育園および認定こども園。 地域型保育事業 家庭的保育・小規模保育・事業所内保育・居宅訪問型保育。 (2)区域 「品川区子ども・子育て支援事業計画」では、「地理的条件、人口、交通事情その他の社会的条件、教育・保育を提供するための施設の整備の状況その他の条件を総合的に勘案して定める区域」である「教育・保育提供区域」を設定して、その区域ごとの「量の見込み」及び「確保方策」を計画している。 区では、乳幼児人口と保育需要の増加にともない、平成29年度から教育・保育提供区域を、品川区全域から6地区(@品川地区、A東大井・八潮地区、B大崎地区、C大井地区、D五反田地区、E荏原地区)に設定し直した。 本方針でも、「教育・保育提供区域」を6地区で継続するものとする。 第1章 区内保育園の現状 1.未就学児 令和5年4月1日現在における区内の未就学児の人口は、19,658人となっており、地区別の未就学児の人口は、品川地区が3,817人と最も多く、次いで五反田地区が3,734人、東大井・八潮地区が3,536人、大井地区が3,400人、荏原地区が3,114人、大崎地区が2,057人となっている。 各地区における過去11年間の各年4月1日現在の未就学児の人口の推移をみると、いずれの地区でも増加傾向にあったが、平成31年に大崎地区、令和2年に五反田地区、令和3年に東大井・八潮地区、荏原地区、令和4年に品川地区、大井地区で減少に転じている。 2.区立保育園 (1)定員数・在籍数 区内には、区立保育園が43園(民営化対象園含む)あり、うち4園は保育所型認定こども園(以下、認定こども園)となっている。地区別の保育園数は、大井地区が10園と最も多く、次いで、荏原地区が9園、東大井・八潮地区が8園、五反田地区が7園、品川地区が6園、大崎地区が3園となっている。 令和5年4月1日現在における定員数は4,300人、在籍数は3,852人となっており、448人分の定員余剰がある。地区別・年齢別にみると、すべての地区・年齢で定員に余剰がある状況となっている。 各地区における平成30年から令和5年の4月1日現在における在籍数の変化をみると、ほぼすべての地区・年齢において減少している。 (2)提供している子ども・子育て支援の取組み 令和5年4月1日現在における区立保育園で提供している子ども・子育て支援の取組みとして、延長保育・一時保育は全43園で実施されており、子育て相談・地域交流事業(園庭開放等)は41園、0歳児保育は35園での実施となっている。病後児保育は3園、休日保育は2園での実施となっている。 (3)築年数 区立保育園の築年数をみると、「50年以上60年未満」が21園と最も多く、次いで「40年以上50年未満」が8園となっており、50年以上経過している施設が半数以上となっている。 (4)施設の併設状況 区立保育園の併設状況をみると、43園中34園が併設施設となっており、併設施設の種類は、「児童センター」が17件と最も多くなっており、次いで、「幼稚園」が6件、「都営住宅」が6件、「図書館」が3件となっている。 (5)公設民営保育園(民営化対象園除く) 令和5年4月1日現在、区内には、公設民営保育園(民営化対象園除く)が3園あり、それぞれ品川地区・大井地区・五反田地区に1園ある。 このうち、品川地区・大井地区の2園は暫定施設となっている。また、ぷりすくーる西五反田は、0〜2歳児については認可保育園、3〜5歳児については幼児教育施設としている。 3.私立保育園 (1)開設年 区内では令和5年まで経年的に私立保育園が開設され、平成26年から令和5年にかけて79園開設されている。地区別には、品川地区で16園、東大井・八潮地区で13園、大崎地区で3園、大井地区で11園、五反田地区で19園、荏原地区で17園開設されている。 (2)定員数・在籍数 令和5年4月1日現在、区内には、私立保育園が103園あり、うち7園は保育所型認定こども園(以下、認定こども園)となっている。地区別の保育園数は、五反田地区が23園と最も多く、次いで、品川地区が20園、荏原地区が18園、大井地区が17園、東大井・八潮地区が16園、大崎地区が9園となっている。 令和5年4月1日現在における定員数は7,722人、在籍数は6,737人となっており、985人分の定員余剰がある。地区別・年齢別にみても、ほとんどの地区・年齢で定員に余剰がある状況となっている。 各地区における平成30年から令和5年の4月1日現在の在籍数の変化をみると、大崎地区の0歳児・5歳児クラス、大井地区の0歳児クラスを除いて、ほとんどの地区・年齢において増加している。 4.地域型保育事業 (1)定員数・在籍数 令和5年4月1日現在、区内には、地域型保育事業が21園ある。地区別の保育園数は、荏原地区が7園と最も多く、次いで、大井地区が4園、大崎地区、五反田地区が3園、品川地区、東大井・八潮地区が2園となっている。 令和5年4月1日現在における定員数は251人、在籍数は193人となっており、58人分の余剰がある。地区別・年齢別にみても、品川地区の1・2歳児クラスを除いて定員に余剰がある状況となっている。 各地区における平成30年から令和5年の4月1日現在の在籍数の変化をみると、品川地区の2歳児クラス、大崎地区の2歳児クラス、五反田地区の2歳児クラス、荏原地区の2歳児クラスを除いて、ほとんどの地区・年齢において減少または横ばい傾向となっている。 第2章 区内保育園に関する今後の見通し 区内の未就学児人口は、令和4年の20,561人から令和5年の20,277人に減少するものの、令和6年から増加に転じ、令和8年には20,883人になると見込まれる。 第二期品川区子ども・子育て支援事業計画中間年度見直し改定版における、令和2年度〜令和6年度の教育・保育の量の見込みと確保方策の状況をみると、令和4年度〜令和6年度における2号認定の量の見込み(ニーズ量)は減少しており、3号認定も変動はあるものの5千人台に推移している。 そのため、2号認定及び3号認定ともに確保方策には余力分が発生している。 品川区の人口のピークは令和23(2041)年の429,304人であり、0〜4歳は減少しているが、5〜9歳は増加し、年少人口としては増加する見込みであることから、0〜5歳の増減の動向は注視する必要がある。 保育ニーズについては、令和4年度に実施した子ども・子育て支援事業計画の中間年度見直しに伴う意向調査によると、新型コロナウイルス感染症の流行により、平日の定期的な教育・保育事業の利用について、「利用する事業を変えた」等の何かしらの変化があったのは、5.0%台であった。その理由としては「コロナに感染するのが心配だったため」が50%以上となっている。 不定期な教育・保育事業の利用状況について、一時保育、オアシスルーム、ベビーシッターを利用した割合が前回調査(平成30年度実施)から増加しており、今後の利用意向は前回調査から大きく変化はないものの約65%が利用意向ありとなっている。また、病児・病後児保育施設の利用意向は前回調査から大きく変化はないものの約50%が利用意向ありとなっている。 以上を踏まえると、保育の量の見込みは減少傾向にあることから、保育施設数の見直しの段階として捉え、方向性の検討を進める必要がある。一方で、品川区の現時点での将来人口推計から、0〜5歳児の人口動向は注視する必要があるとともに、不定期な保育ニーズや配慮が必要な子どもへの対応などについては支援の検討が必要となる。 第3章 区立保育園に関する課題 区内保育園等の現状や今後の見通しを踏まえて、関係所管との協議のうえで整理した区立保育園に関する課題は以下のとおり。 1.定員の見直し 今後の人口の緩やかな減少、区立保育園の弾力化及び働き方改革等による保育需要の変化、以上に伴う民間の保育事業者の撤退リスクを背景に、区立保育園としての定員は保育のニーズ量の結果を踏まえながら見直しを検討する必要がある。 2.保育需要増減時のバッファとしての役割の確保 区立保育園としての定員の見直しを行った場合、施設(必要面積等)に余裕が生じる可能性がある。その際に、区立保育園は、地域の核として、ある程度施設に余裕を持たせておくことで需要増減にも対応できるセーフティネット的な役割を担うことが期待される。 3.建物の融通性、可変性 バッファを持たせることで、他園の利用、定員増減等の融通が利く、用途変更が可能等の余力を持つことが期待される。そのために、建物はあらかじめ変更を見込むことや、柔軟な運用の対象とする機能を想定することなどの対応の検討が必要となる。 4.地域での子育て支援への対応 通常は保育園に通わない保護者のレスパイト・リフレッシュや、子どもの地域での交流機会創出など、保育園に通わなくても利用できる支援を行う必要がある。 5.医療的ケア児等への対応 昨今増加している医療的ケア児や障害児を含む特別な配慮を要する子どもへの対応について検討が必要となる。区立保育園の強み、また民間事業者の取組が困難であることも踏まえ、区立保育園では医療的ケア児等に対して積極的に対応することが求められる。 6.就学後の特別な支援が必要な子どもたちへの対応 別な支援が必要な子どもたちについて、就学した後のより円滑な対応が必要であるため、保育施設等と小学校・地域との連携による支援を検討する必要がある。 第4章 区立保育園のあり方 1.基本的な考え方 区立保育園として期待される役割を担いつつ、私立保育園等との連携強化を図ることによって、区全体の保育の質を維持・向上させる。そのうえで、未就学人口の動向や保育に対するニーズ、保育を取り巻く社会状況を踏まえて、施設の適正配置を検討する。あわせて、民間活力の導入を推進する。 2.区立保育園の事業展開 区内保育園のあり方に関する基本的な考え方を踏まえたうえで、区立保育園の事業展開は、以下のとおりとする。 3.区立保育園に期待される役割と取組み 区立保育園の事業展開を推進するうえで、今後、区立保育園は以下のような役割を担うことが期待されることから、様々な取組みを検討していく。 1.良好な保育環境の確保とニーズへの確実な対応 区内の保育需要等を考慮しつつ、施設に適した定員の見直しを行う。 保育スペースを充実させることで、子ども一人一人が伸び伸びと遊べる環境を整備する。 私立保育園の閉園などによる園児の受入・予期しないニーズの変化等に対応できるよう、保育室面積に余力分を確保する。 2.区内全体の保育の質の向上を牽引 保育課が区内の保育施設を訪問し、必要に応じて助言を行う「巡回支援」を引き続き行うとともに、各地区の保育施設が保育に関する相談ができる体制を強化すべく「サポーター園」がその機能を担う。 相談を受けるだけでなく、区立保育園がもつノウハウや情報を提供するとともに、悩みや課題の共有、対策など有益な情報の交換を行うことで、区内全体の保育の質の向上や保育士が働きやすい環境づくりに取り組む。 取組例として、研修会・勉強会の開催、子どもの遊びや地域に関する情報の共有、災害時の協力体制整備・合同避難訓練などを想定。 3.包括的な支援の実現 医療的ケア児等の受入れの中心を区立保育園が担い、小学校などの関連する施設との早期の情報共有や円滑な引継ぎを行う。あわせて、私立保育園が取り組みやすい環境づくりのための支援を行う。 支援にあたっては、子ども家庭支援センターや児童相談所、要保護児童対策地域協議会、医療的ケア児等支援関係機関連絡会等との情報共有を密に行い、子育てに悩む家庭の支援を行う。 4.多様な子育てニーズへの対応 定員の見直しや施設建替え時の合築等を契機に、在宅子育て世帯の定期的な預かりの実施や地域交流スペースの提供など地域の子育て家庭を支援する役割を担う。あわせて、保育園を利用する保護者を含めて支援の要望を把握する。また、子育て家庭への情報提供や相談対応について所管課や関連施設等へつなぐ窓口としての役割を担う。 既存の子育て支援事業(子育て相談等)について、児童センターとの役割を整理・明確化し、区内の子育て家庭が抱える様々な悩みの相談について、様々な観点から支援する。 5.区立保育園職員の働きやすい環境づくり・資質向上・連携強化 定員の見直しを行うほか、特別保育等の事業の見直しを行うことで、区立保育園の職員の負担軽減を図り、働きやすい職場環境を整備していく。 職員のスキルアップに向け、引き続き研修を行うとともに、定期的に実情に応じた研修内容の見直しを行い、人材育成の強化を図る。 統括園に「統括園長」を配置し、園長を含む職員の育成・相談を行い、区立保育園全体の底上げを目指す。また、緊急時における区立保育園間の職員応援体制等を管理し、区立保育園の連携機能を強化する。 4.事業展開イメージ 「区立保育園に期待される役割と取組み」を実現すべく、以下のように事業を展開する。 5.区立保育園の再整備方針 区立保育園の再整備について、以下の考え方で計画を推進する。 1.区立保育園の統合を含めた再整備 「第4章 2.区立保育園の事業展開」および区内全体や各地区の保育需要、施設の築年数を考慮し区立保育園の統合を含め、再整備を検討する。 統合する場合、使用しなくなった施設を代替施設(仮園舎)として活用し、当該施設の近隣園を優 先とした施設更新を順次進め、保育環境という視点から保育の質の向上に努める。 2.今後の区立保育園民営化 施設更新した区立保育園(統括園・サポーター園除く)の一部を、民営化候補園とする。 区立保育園民営化ガイドラインに基づいて、現公設民営保育園を含め、当初5年間は公設民営保育園として運営し、その間の運営状況等を効果検証(※)のうえ、設置者を区から運営事業者へ変更する。 設置者変更にあたっては、「公私連携型保育所制度(児童福祉法第56条の8)」の導入を視野に入れ、区と法人で協定を締結し、職員配置や保育内容など、適正な運営が行われるよう連携がとれる手法の採用を検討する。 ※効果検証は、運営内容(保育関係書類・保育所視察等)、財務状況、第三者評価、利用者意見(利用者アンケート・三者協議会)等の項目を審査し、総合的に判断する。