令和7年度予算編成に関する基本方針について(依命通達) コロナ禍による大きな社会変動のうねりの中で、デジタルシフト、コミュニケーションのオンライン化などが不可逆的な要素となり、 人々の行動や産業構造の変化など新しい社会像に適応した価値観、ニーズへの転換がされてきた。 社会環境の大きな変化を経て、我が国の経済については、「景気は、このところ足踏みもみられるが、緩やかに回復している」との基調判断が直近に示されたが、 エネルギー価格や原材料高に加え、円安の要素が物価高騰を加速させており、区民生活や区内経済にいまだ大きな影響を与えている。 区財政においては、令和5年度一般会計決算を見れば、納税義務者数の増加傾向等により特別区民税は堅調であるものの、使途の制限されない一般財源は0.5%の伸びにとどまることや、 ふるさと納税による特別区民税の流出額が令和6年度は51億円に上ると想定されることなど歳入状況の変動に留意していかなければならない。 一方で、持続可能な社会として発展していくために、区が抱える社会的課題の解決に向けた喫緊の対応がなお不可欠な状況にある。 直近の人口動態統計において、全国の合計特殊出生率が1.20と過去最低を更新する中、東京都は0.99と全国で最も低く、区調査では、区は0.96と東京都をさらに下回った。 少子化の傾向が経済成長にとって重しとなることは、区においても例外ではない。こうした危機的な状況に対応すべく、基礎自治体である区は、妊娠・出産・子育ての切れ目ない支援に進取果敢に取り組んでいかなければならない。 同時に、来るべき人口減少社会を見据え、労働人口の減少といった社会的課題を解決するため、DXにより、業務の効率化・生産性向上を実現していく必要がある。 また、コロナ禍における危機対応の経験等を活かし、首都直下地震、新たな感染症によるパンデミック、気候変動による異常気象や熱中症特別警戒アラートなど、 将来に発生しうるリスクに備え、危機意識や適応能力を高めていく必要があることについて特筆する。 区が直面しているこれら社会的課題の解消・克服を力に変え、区民のウェルビーイング(幸福)向上を実現すべく、区として、一層のスピード感を持った施策展開と適切なリソース配分が不可欠な状況にある。 よって、各部局においては、 第一に、区民アンケートの調査結果から分析し、区民が自分らしく幸せに暮らしていくために重要だと考える4つの政策領域「安全安心を守る」、「社会全体で子どもと子育てを支える」、 「生きづらさをなくし住み続けられるやさしい社会をつくる」、「未来に希望を持てるサステナブルな社会をつくる」の進化(深化)に向けて、区民のウェルビーイングのさらなる向上に関する取り組みを加速させること。 そのために、事務事業評価により20億円を生み出し、これを原資として、「品川区人材育成・確保基本方針」に掲げられたMVV(Mission Vision Value)の考え方を基軸に 区民のウェルビーイングに資する施策を企画・実現するとともに、国・都支出金の活用の徹底等による収入の確保と効果的・効率的な財政支出(ワイズスペンディング)の双方を意識した予算編成とすること。 第二に、SDGs未来都市および自治体SDGsモデル事業にダブル選定をされたことを契機に、SDGsの達成に向けた取り組みをさらに加速させ、「子どもとともに創るウェルビーイングシティしながわ」を目指し、 SDGsの17のゴールが区のすべての施策において考慮すべき共通目標であることを意識して施策を展開すること。 施策の企画・立案においては、SDGsのすべてのゴール・ターゲットを俯瞰し、経済的価値と社会的価値の両立に留意するとともに、 区民や事業者、地域団体、教育機関など多様なステークホルダーと連携し、官民共創を積極的に推進すること。 あわせて、策定中の「品川区SDGs未来都市計画」および改定中の「品川区総合実施計画」との整合性を図ること。  第三に、新庁舎整備を見据え、これまでの働き方を変革し、新しい働き方へとアップデートする(ワークスタイルイノベーション)という意識を念頭に、DX人材の育成を進めるとともに、 各部局において生成AIやデジタルツールの活用等によりさらなる業務の効率化を図り、より重要な事業に人的資本と財源を配分すること。 以上の基本方針を踏まえ、下記事項に留意して令和7年度の予算の編成にあたられたい。 この旨、命により通達する。 1 全般的事項 予算編成にあたっては、年間予算を的確に見積もり、限られた財源の中で区民のウェルビーイング(幸福)を意識し、各部局においては、区長の指示事項を踏まえ、 既存事業の内容・実施方法などの見直しの徹底を図る等、主体性を発揮し取り組むこと。 (1) 基本方針について 前文に掲げる3つの基本方針に基づいた、大胆かつ進取的な取り組みについて積極的に予算要求を行うこと。 (2) 指摘・要望事項について これまでの議会審議、監査の指摘事項および区民要望に十分留意し、これらを踏まえた予算要求を行うこと。 (3) 事務事業運営の効率化について 「品川区DX推進基本方針」に基づき、行政手続きのオンライン化や生成AI、RPA(ロボットによる業務自動化)などのデジタル技術の活用および民間活力の導入の検討を積極的に行うとともに、新庁舎への移転を見据えた業務改善を順次検討すること。また、施設整備や施設運営については、コストの最小化に努めるとともに、節電をはじめとする省エネに配慮した工夫を心がけること。 (4) 職員定数の適正化および長時間労働の抑制について  @ 「しながわ〜く」基本方針に基づき、事業のスクラップアンドビルド、業務の効率化等に努め、真に職員が行うべき業務を明確にし、職員定数の適正化を図ること。  A 公務能率を高め、短時間で成果を上げるよう、勤務時間に対する意識を改革し、長時間労働の抑制に取り組むこと。 (5)  障害者活躍の推進について @ 「品川区における障害者就労施設等からの物品等の調達方針」に基づき、障害者が就労する施設等が供給する物品や役務の活用を検討すること。 A 「品川区職員障害者活躍推進計画」に基づき、令和4年度から各課等で行っている印刷・封入等の軽作業を引き受ける「業務支援室」を設置している。障害者活躍の推進を図るため、積極的に「業務支援室」を活用すること。 (6) ジェンダー平等の視点に基づいた施策推進 @ 「品川区ジェンダー平等と性の多様性を尊重し合う社会を実現するための条 例」に掲げる基本理念を踏まえ、ジェンダー平等と性の多様性を尊重し合う社会の実現を目指すための施策を展開すること。 A 性別等にかかわりなく、区民一人ひとりがそれぞれの個性・能力を発揮して、あらゆる分野での参画・活躍を一層推進していくための施策を展開すること。 B 会議・審議会等における女性委員の登用を推進(委員構成を男女いずれの性も40%以上を目標)し、立案・決定過程への多様な参画の促進を図っていくこと。 (7) 包括的連携協定等を活かした官民共創の推進 行政課題や地域課題が複雑化・多様化している一方、区の財源や人的リソースには限りがあるため、企業等の持つ技術やノウハウの活用により、当該課題の解決に取り組んでいく必要がある。区と企業等が多様な分野での相互連携および協働により、様々な課題に対して積極果敢にチャレンジし、区民サービスの向上と地域の活性化を推進すること。また、多岐にわたる分野への取り組みにあたっては、部局を超えた密な連携を図ること。 (8) 経常的事務事業について 経常的経費については、引き続き部局編成枠方式による編成とし、各部局長は、 事業執行の効率化の観点から、自主的な工夫を反映させること。また、既存事務事業の見直しを徹底するとともに、これまで以上に部内の調整を図ること。 2 歳入に関する事項 (1) 区税収入について 一般財源に占める重要性を認識のうえ、経済情勢や税制改正等を十分見極め、的確な年間収入を見込むこと。 (2) 国・都支出金について @ 補助制度を最大限に活用することはもとより、補助制度の創設や組替えなど、国・都の動向に十分留意すること。 A 超過負担の原因となっている補助基準(単価・規模等)の改善を要望するなど、積極的な財源確保に努めること。 (3) 基金について 積極的な施策展開を行う事業については、充当可能な基金の活用を図ること。 (4) 起債について 区債発行については、将来負担等を勘案し、慎重に行うこと。 (5) 使用料および手数料について 各施設使用料等について、受益者負担の考えを踏まえ、適正化を検討すること。 (6) 税外収入について 各種団体が行っている助成制度の情報収集に努め、積極的に活用するとともに、クラウドファンディングを含めたふるさと納税やネーミングライツ等の活用を検討し、 より一層の税外収入の確保に努めること。また、有効活用が困難な公有財産は、早期の処分に努めること。 3 歳出に関する事項 (1)  既存の事務事業について 事務事業評価による見直しを徹底し、ゼロベースの視点から縮減・廃止を検討すること。その際は、費用対効果に見合わない事業や、社会情勢の変化に適合しない事業について、スクラップを進めるとともに、新規事業を実施する際は終期(見直しの時期)を考慮すること。 (2) 各種委託経費の適正化について    委託業務については、仕様内容が適正なものであるかを再度確認し、改めて、真に職員が実施すべき企画立案などのコア業務と委託することがふさわしい業務とを精査のうえ不断の見直しを行い、生成AIやデジタルツール等の積極的な活用により、委託の範囲を必要最小限とすること。 (3) 啓発物品・印刷経費の適正化について   啓発物品・印刷物の作製・購入にあたっては、費用対効果など必要性を精査し、最小限のものとすること。印刷物については目的に応じてWEBサイトやSNSなどデジタル媒体を活用し、SDGsの観点からも紙媒体の縮減を図ること。また、「誰に何の情報を届けるか」等ターゲットを意識すること。 加えて、都市ブランディング推進のため、令和6年度中に新たに制作される都市ブランドデザインを積極的に使用すること。 (4) 合理的配慮(障害者差別解消法)について   障害のある人への合理的配慮の提供にあたり、現状の運用や実施手法等を再検討し、サービスの見直し・向上を図ること。 (5) ゼロカーボンシティしながわ宣言の実現に向けて 2030年度のカーボンハーフ、2050年度のゼロカーボン達成に向けて、「品川区環境基本計画」および「品川区職員環境行動計画」に基づき、低炭素電力会社への切り替えや施設・設備の省エネルギー化、使い捨てプラスチック製品の使用削減等を図り、二酸化炭素排出量の削減に取り組むこと。 また、「品川区公共建築物等における木材利用推進方針」に基づき、多摩産材および協定締結自治体の産材を積極的に利用し、木材利用の推進に努めること。 (6) 施設・設備の大規模改修について 「品川区公共施設等総合計画」および個別施設計画を踏まえ、老朽度や耐震性、安全性等の状況を的確に把握するとともに、区民・利用者への影響や利便性の向上を考慮し、時機を逸することなく必要な経費を要求すること。その際、二重投資とならないよう注意するとともに、建物で消費するエネルギーを大幅に削減したネット・ゼロ・エネルギー・ビル(以下、ZEBという。)化を推進すること。 (7) 施設の新築、改築について  「品川区公共施設等総合計画」および個別施設計画を踏まえ、機能・維持管理の効率性および省エネに留意し、コストの低減を図るため標準的な仕様として過大な投資を避けるとともに、民間の資金、ノウハウを活用し、整備後の運営経費についても十分に検討すること。なお、整備する際は、ZEB化を推進すること。 また、施設の廃止に伴う跡地の利用計画は、早期に検討を進めること。 (8) 公共工事設計労務単価について   設計・工事費の積算にあたっては、適切な工期を設定し、労務単価の改定を適切に反映すること。  (9) 用地取得について @ 公示価格、基準地標準価格、売買実例等を参考に、土地利用計画、取得時期、借上げ等を含め十分に検討して要求すること。 A 事業に必要な用地においては、適地が出るのを待つのではなく、民有地も含めて積極的に情報収集を行うこと。 (10) 各種団体等に対する補助金について 補助基準の明確化を図るとともに、補助の必要性および効果を十分に検証し、効果が薄れたものは、積極的に整理縮小に努めること。