法的判断の検討プロセスについて 1ページ目。 相談事案に対する「不当な差別的取扱い」と「合理的配慮の提供」の該当性を判断するにあたっての法的判断のプロセスフローは次のとおりである。 なお、相談事案によっては、相談者が不当な差別的取扱いに該当すると考えている事案でも、実際には合理的配慮の提供を求めている事案や、不当な差別的取扱いに該当するか確認したうえで合理的配慮の提供について更に検討が必要となる場合もある。 不当な差別的取扱いの法的判断の検討プロセスフロー。 各問の回答(2択)により、対応内容等が分岐していく図。 問1 行政機関等または事業者の対応は、事務・事業(財・サービス、各種機会の提供等)を行うにあたり実施したものであるか。 はい、事務・事業を行うにあたり実施したもの。または、いいえ、事務・事業での対応に無関係。を選択する。 いいえの場合は、不当な差別的取扱いに該当しない。 はいの場合は、次の問いへ移る。 問2 行政機関等または事業者の対応には、障害を理由として、障害者でない人と比べて異なる扱いがあるか。 ある。または、ない。を選択する。 ないの場合は、不当な差別的取扱いに該当しない。 あるの場合は、次の問いへ移る。 問3 行政機関等または事業者の対応は、障害者、事業者、第三者の権利利益等の観点から、正当な理由によるものと判断できるか。 なお、次のどちらも満たせば「正当な理由あり」である。1.上記問2の異なる扱いは、客観的にみて正当な目的のもとに行われている。2.その目的に照らしてやむを得ないといえる。 いいえ、正当な理由なし。または、はい、正当な理由あり。を選択する。 はいの場合は、不当な差別的取扱いに該当しない。 いいえの場合は、不当な差別的取扱いに該当する。 2ページ目。 合理的配慮の提供の法的判断の検討プロセスフロー。 各問の回答(2択)により、対応内容等が分岐していく図。 問1 障害者から行政機関等または事業者に対し、事務・事業(財・サービス、各種機会の提供等)を行うにあたり社会的障壁の除去を必要とする旨の意思表明があったか。 ある、本人、家族・支援者・介助者等からの求め(本人の意思表明が困難な場合)。または、ない。 ある場合のみ、次の問いへ移る。 問2 求められている配慮は、社会的障壁の除去について「必要かつ合理的な配慮」に該当するか。 なお、次に掲げるすべてを満たせば「必要かつ合理的な配慮」である。 行政機関等または事業者の事務・事業の目的、内容、機能に照らして、1.必要とされる範囲で、本来の業務に付随するものに限られること。2.障害者でない人との比較において同等の機会の提供を受けるためのものであること。3.事務・事業の目的、内容、機能の本質的な変更に及ばないこと。 該当する、上記のすべてを満たす。または、該当しない。を選択する。 該当するの場合は、次の問いへ移る。 該当しない場合は、建設的対話による代替案を検討する。 問3 求められている配慮は「過重な負担」に該当するか。 なお、過重な負担の判断の要素等とは、1.事務・事業への影響の程度。2.実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的・体制上の制約)。3.費用・負担の程度。4.事務・事業規模。5.財政・財務状況の5つである。 はい、該当する。または、いいえ、該当しない。を選択する。 いいえの場合は、合理的配慮の提供の実施へ向かう。 はいの場合は、建設的対話による代替案を検討し、合理的配慮の提供を実施へ向かう。 3ページ目。 過重な負担の判断について。 過重な負担については、個別の事案ごとに、以下の要素等を考慮し、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要であるとされている。 また、合理的配慮の内容が過重な負担にあたると判断した場合は、障害者にその理由を丁寧に説明し、理解を得るよう努めることが望ましいものである。その際には、行政機関等または事業者と障害者の双方が、お互いに相手の立場を尊重しながら、建設的対話を通じて相互理解を図り、代替措置の選択も含めた対応を柔軟に検討することが求められる。 なお、バリアフリー化や情報保障のための機器導入を行うこと等は、「環境の整備」にあたり、合理的配慮の提供とは異なる概念である。 過重な負担の判断要素。 1.事務・事業への影響の程度。 事務・事業の目的、内容、機能を損なうか否か、当該措置を講ずることによるサービス提供への影響、その他の事業への影響の程度。 2.実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的・体制上の制約)。 施設の立地状況や所有形態等、当該措置を講ずるための機器や技術、人材の確保、設備の整備等の制約に応じた実現可能性の程度 3.費用・負担の程度 当該措置を講ずることによる費用の程度 4.事務・事業規模 当該事業等の規模に応じた負担の程度 5.財政・財務状況 当該事業所等の財政・財務状況に応じた負担の程度 合理的でない・過重な負担がある場合の一例について。 合理的配慮の提供として障害者から求められた具体的な手段のうち、合理的でないものや過重な負担があるものについては、その提供を断ることができる。 以下は、内閣府ホームページ「障害者の差別解消に向けた理解促進ポータルサイト」に掲載されている一例である。 膨大な分量の資料の全文読み上げを求められた。 筆談で十分対応できる簡潔なやり取りに手話通訳者の派遣を求められた。 必要性がないのに買い物中は、常に店員が同行することを求められた。 個人的な外出予定に沿うよう公共交通機関の時間変更を求められた。 否定されるとストレスで症状が悪化してしまうからと過度な要望であっても、否定せずに実行することを求められた。 以上。