令和7年度予算の執行について(依命通達) 内閣府が昨年末に公表した試算によれば、令和7年度の名目賃金上昇率が前年度比2.8%増となり、物価上昇率の2.0%増を上回ると予測されている。 33年ぶりの高水準となった昨年の春季労使交渉に引き続き、本年も賃金上昇のモメンタム定着が期待される一方、 円安に伴う原材料価格やエネルギー価格の上昇等による物価高騰が続いており、個人消費は改善に一部足踏みが見られるなど、 政府によるデフレ脱却宣言が留保される中、経済の先行きに不透明感が残っている。 また、我が国は「2040年問題」と称すべき重大な課題に直面している。 国立社会保障・人口問題研究所による最新の人口推計結果によると、世界でも類を見ないほどのスピードで人口減少と少子高齢化が同時進行することにより、 団塊ジュニア世代が高齢者となる2040年の日本においては、生産年齢人口の減少による労働力不足や高齢化による医療・介護などの社会保障給付費の増大など、 現行の社会システムの持続可能性が危ぶまれる深刻な局面に陥ることが懸念される。 一方、国外に目を向けると、アメリカの政策動向やウクライナ、中東地域をめぐる情勢には十分に注意しておく必要があり、 区民生活および区内経済への影響を見定めていかなければならない。 不安や閉塞感が増大し、将来の予測が極めて困難な時代へと突入していく中で、住民に最も身近な基礎自治体である区としては、 切迫した社会課題に対し、区民の不安や不満などの「不」を解消し、区民生活および区内経済の持続可能性を向上させていくことが必要不可欠である。 そこで、令和7年度予算では、令和6年度に編成したウェルビーイング予算を「人」を基軸として次元の異なる形で磨き上げ、 ライフステージに応じて、すべての区民が幸福(しあわせ)や未来への希望を実感することができる予算、「ウェルビーイング予算2.0」を編成したところである。 各事業の実施にあたっては、区民の不安や不満などの「不」を解消し、区民の幸福(しあわせ)の向上を図るため、 区民が抱えている問題の背景・本質について深く考察することが求められる。 そのためには、区民が抱えている事情を本人の責任に帰結せず、地域社会全体で解決していく必要があることをまず理解しなければならない。 あわせて、日本社会が大きな転換期にあるという認識の下、従来の実施手法にとらわれることなく、日々の業務において絶えず高い視座と深い見識を持ち、 事業の執行過程において業務改善や創意工夫を重ねることで、将来的な労働力人口減少への適応や財源の捻出に向けて、今から最大限取り組んでいかなければならない。 よって、各部局においては、 第一に、事務事業評価にて顕在化した課題に対し、積極的に事業の見直しやスクラップを進め、施策の新陳代謝(アップデート)を促すことにより、効果的に事業を実施すること。 第二に、「性別や障がいの有無、家庭の状況などにより選択を阻まれることなく自分の望むように生き、幸せを感じられる社会」を念頭に、 各事業の実施が区として目指す社会像の実現に貢献するよう取り組むこと。 第三に、「子どもとともにつくるウェルビーイングシティしながわ」を掲げるSDGs未来都市として、 各事業がSDGsの17のゴールと169のターゲットに及ぼす効果・影響を意識したうえで、持続可能な社会の達成に向けた取り組みを戦略的に加速させていくこと。 第四に、将来的な生産年齢人口の減少とそれに伴う労働力不足を見据え、日常的な業務や定型的な作業については、 AIなどのデジタル技術を活用して業務時間の短縮や手法の効率化に取り組むこと。 また、DXの推進により確保できた時間は、データ分析結果の調査・検証、それらに基づく新規事業の創出や既存事業の見直しなど職員が真に実施すべき業務に振り向けること。 以上を踏まえ、下記事項に留意して令和7年度の予算執行にあたられたい。 この旨、命によって通達する。 第一 全般的事項 1 予算執行については、予算事務規則、会計事務規則、契約事務規則等に基づき、適正に処理すること。 2 国および都の動向や社会情勢を注視し、年度途中であっても補正予算の計上が必要となる事業については、施策実施に向けた検討を積極的に行うこと。 3 歳入は、予算計上額の確保が歳出予算執行の前提となることに留意すること。 (1) 前年度以上の収入額(率)を達成するよう努め、前年度同月比で低下しているものについては、原因等の分析を行い、適切な措置を講じること。 (2) 新規事業に対する国・都支出金については、積極的に情報収集を行い、対象となる歳入を確保すること。 4 歳出は、最少の経費で最大の効果をあげるため、次の点に留意すること。 (1) 行政評価を踏まえて、事業に対する公費負担のあり方や費用対効果を検証し、無駄を無くす取組みを徹底するとともに、より効果的かつ効率的に事業を執行すること。 (2) 新規事業については、関係各課および関係機関との情報交換や協議等を十分に行い、周到な事業計画を作成し、適時、進行管理を行いながら、早期着手、適正な執行に努めること。 (3) 予算執行は、各部局に配当された予算に即して適正に行うこと。なお、補正予算の計上が必要となる事業の事前執行は、厳に避けること。 (4) 不測の事態により緊急の対応が必要となった場合は、速やかに財政課と協議すること。 (5) 目的に応じてウェブサイトやSNSなど、デジタル媒体を積極的に活用すること。また「誰に何の情報を届けるか」等ターゲットを意識した効果的な情報発信を行うこと。 (6) 区有施設における光熱水費の使用については、引き続き物価高騰の状況等を踏まえ、節電等の対策を徹底することにより、使用量の縮減に努めること。 (7) 各種会議等における資料作成や業務プロセス等についてはゼロベースで見直すとともに、新しい働き方を取り入れた業務改善に努めること。 5 会計管理室における資金繰りを円滑に進めていくため、特に次のことに留意すること。 (1) 国・都支出金は、関係機関との連絡を密にして、早期収納に努めること。 (2) 収支予定を綿密に積算し、収入日と執行日を明確にするとともに、収入に応じた支出を図るよう努めること。 6 公会計制度の運用については、「品川区新公会計制度基本方針」に基づき適正な処理に努めること。 7 子ども・若者、高齢者・障害者など、「人」を基軸とする施策の実施にあたっては、広く当事者の意見を聞き、施策に反映させること。 8 誰もが自分らしく生きられる社会の実現を目指すとともに、多様な生き方の選択、平等な参画機会の確保等の推進に取り組むこと。 9 新規事業計画時には、紙や手作業ではなく、デジタル処理を前提とした業務設計を行い、既存業務でもデジタル技術を活用したプロセス再構築を推進すること。 また、職員自らがデジタルツール(RPAやChat GPT等)を効果的に活用し、システム開発の内製化を積極的に進め、費用削減を図ること。 10 区民が行う手続きについては、電子申請やキャッシュレス決済等を積極的に導入し、区民の利便性向上を推進すること。 11 区民意見や地域ニーズの収集においては、デジタルプラットフォームを積極的に活用することで、政策立案につなげ、デジタル民主主義の実現を図ること。 第二 歳入について 1 特別区民税は、歳入の根幹であり、区財政に大きな影響を与えるものである。ついては、課税対象を的確に把握するとともに、 負担の公平性の観点からも滞納整理を促進し、一層の徴収率向上に努めること。 2 各特別会計における保険料は、保険制度の基盤をなすものであるので、 制度の趣旨普及等を通じて特段の徴収努力を行い、徴収率の向上に努め、 一般会計による負担の縮減を図ること。 3 国・都支出金については、補助制度の創設、組替えなどの動向に注意を払い、積極的な活用を図るなど、一層の収入確保に努めること。 (1) 補助金等の申請にあたっては、事業計画を綿密に立て、早期に行うこと。 (2) 補助基準との単価差・対象差等により生じる区の超過負担の解消について、関係機関に積極的に働きかけること。 4 当初見込んでいた補助金・交付金等に減収のおそれがあるときは、速やかに財政課と協議し、支出抑制等の措置を講じること。 5 各施設使用料については、施設利用のPR等に努めるとともに、利用形態や納付方法等を見直し、増収を図ること。また、受益者負担の考えを踏まえ、使用料の適正化について検討すること。 6 負担の公平を図るため、自己負担金、各種貸付金返還金、保育園保育料、区営・区民住宅使用料等の未納分・滞納分の徴収については、特段の努力をすること。 7 新たな寄附金収入については、速やかに予算化し、寄附者の意向を踏まえ執行すること。 8 基金の運用については、経済動向を踏まえ、安全性を最重要視するとともに、効率性も考慮すること。 9 クラウドファンディングの活用を含めたふるさと納税については、今まで以上に情報発信を行う等、積極的な財源確保の取組みを強化すること。 また、広告収入や各種団体が行っている助成制度を積極的に活用し、税外収入の確保に努めること。 第三 歳出について 1 契約にあたっては、議決を経る必要がある契約(変更を含む。)かどうかを必ず確認し、議決を要する契約締結を行う事業については、議案提出時期を含め経理課との緊密な調整を行うこと。 なお、翌年度への予算の繰越しが発生するおそれがある場合は、速やかに財政課へ報告し、関係機関との調整を図ること。 2 地域経済対策の観点から、工事の発注や物品購入等については、区内業者への受注機会の確保に努めること。 3 債務負担行為を設定している事業については、工事出来高等の状況に注意を払い、債務負担行為の変更・追加が見込まれる場合には、速やかに財政課へ協議すること。 4 委託等の業務全般については、職員・組織の中で、ノウハウや経験を蓄積していくことを念頭に、特に次のことに留意すること。 (1) 仕様内容が適正なものであるかを必ず確認し、改めて、真に職員が実施すべき企画立案などのコア業務と、 委託することがふさわしい業務とを精査のうえ不断の見直しを行い、必要最小限のものとすること。 (2) 調査研究等の委託(主にコンサルティング会社への委託)については、高度な専門的知識を必要とする場合や、大きな効果が見込まれる場合に限ること。 以上の見直しの成果を踏まえ、委託業務のあり方についての再検証を行うこと。 5 各種計画の策定にあたっては、真に必要なものであるか見極めるとともに、策定委員会の委員数の適正化および構成に留意し実施すること。 なお引き続き、会議・審議会等における女性委員の登用を推進(委員構成を男女いずれの性も40%以上を目標)すること。 6 事業の進捗に大きな影響を与える各種の調査・設計委託等については、翌年度の予算編成に支障が生じないよう関係各課と十分な調整を図り、計画的に進めること。 7 「ゼロカーボンシティしながわ宣言」の達成に向け品川区環境基本計画および職員環境行動計画(しながわ職員エコアクト)に基づき、これまで以上に環境負荷の軽減を図ること。 8 各種啓発物品等の作製・購入にあたっては、費用対効果など必要性を精査し、効果的な執行に努めること。なお、新たな都市ブランドデザインを積極的に活用すること。 9 情報システムに係る経費については、情報システム調達ガイドラインに基づき標準化および効率化を図り、適正な調達プロセスを経ること。 第四 予算執行計画について   各部局の長は、経営的視点に立ち、自主的な判断と責任により着実な事業執行を図ることを目標に、予算事務規則第14条に基づき、予算執行計画を策定すること。 また、やむを得ず計画を変更する場合は最小限にとどめること。 第五 執行手続について         1 予算流用について 予算の執行上やむを得ない事由がある場合は、一定の範囲内において各部局の長の権限で流用を行えるものとするが、事前に財政課と調整すること。 2 執行委任について 執行委任は、委任する側と受任する側との間で綿密な意思の疎通を図り、適切な時期を考慮して行うこと。 3 不用額の処理について 予算執行につき生じた差額(見積差、契約落差等)は、その要因を明確に区分し、減額補正または決算上の不用額とすること。 4 進行管理について 施策の目的が効果的・効率的に達成できるよう、執行状況を的確に把握し、執行実績の客観的な分析・評価を行うこと。 (1) 予算執行は、執行計画において、事業別・四半期ごとに定めた執行計画額の範囲内で行い、予算を超過しないよう厳に注意すること。 (2) 予算執行にあたり、次の事項については別途企画経営部長より通知する。 ① 区長報告案件 ② 進行管理対象事業 ③ 企画課・財政課協議事業 ④ パブリックコメント対象事業 (3) 予算事務規則第24条第2項に基づく収支状況報告および実績報告は、次のとおり行うこと。 ①  収支状況報告は、各四半期の執行計画における執行率が80%未満の事業について、各四半期終了後15日以内に執行残額説明書を財政課に提出して行うこと。 また、同説明書指示事項欄には、各部局の長の指示を必ず記入すること。 ② 「特に区長が指定する事業」に係る実績報告は、前号①区長報告案件②進行管理対象事業の報告をもって充てる。 第六 その他 1 監査結果における注意事項   定期監査において、例年指摘されている支払遅延や契約手続の不備等のほか、DX化に伴う各処理については、 従来の紙による処理や手続き等と同様に留意し、予算の執行にあたっては、関係法令等に特段の注意を払うこと。 2 公共施設等の整備・管理計画について 「品川区公共施設等総合計画」および各課において策定している「個別施設計画」に基づき、各施設の維持管理にかかる経費について適切に把握し、 より効率的な運営に努めるとともに、施設の複合化や集約化、民間活力の導入について積極的な検討を行うこと。 3 令和8年度予算編成に向けて   ウェルビーイングの視点を基軸に据え、「誰もが生きがいを感じ、自分らしく暮らしていけるしながわ」の実現に向けた施策を年度当初より積極的に検討すること。   なお、検討にあたっては、事務事業評価シートを活用し、各事業や政策の不断の検証や見直し・改善を行うとともに、 廃止・中止等と判断した事業については、その道筋をつけること。 4 条例制定等における注意事項   条例の制定・改廃にあたっては、事前に企画課および総務課に協議すること。