令和8年度予算の執行について(依命通達) 直近の月例経済報告では、消費者物価は「このところ緩やかに上昇している」とされたものの、中東情勢の緊迫化により、原油価格の高騰が交易条件の悪化を通じ、日本経済や企業収益に対する大きな下押し圧力をもたらすことが懸念される。 さらに中長期的には、我が国の構造的課題として、高齢化の進展に伴う社会保障費の増加と少子化による納税人口の減少に伴う歳入減が不可避となっている。同時に、少子化が招く労働力不足により、産業基盤の脆弱化や地域経済活力の低下が懸念される。この財政と人口の負のスパイラルに対し、現在においていかに備え、対応していくか、まさに今が区財政の持続可能性を 左右する重要な岐路となっている。 加えて、高度経済成長期前後に整備された公共施設が老朽化を迎え、大規模修繕・更新のための予算需要が急増する時期に入っている。 また、猛暑や豪雨などの気候変動、首都直下地震などの災害への備えと対応も急務である。 こうした先行きが不透明な時代だからこそ、区民のウェルビーイング向上の観点から、区民の「不」を取り除き、すべての区民が「性別や障害の有無、家庭の状況などにより選択を阻まれることなく自分の望むように生き、幸せ を感じられる」社会の実現に向けて、取組を加速させていかなければならない。 そのため、区の目指すべき社会像と区を取り巻く危機的要因とのギャップを的確に認識したうえで、「選択」と「集中」により限られた財源を有効活用し、「質の高い行政サービス」と「財政の持続可能性」の両立を図るべく、戦略的に予算を執行していくことが求められている。 よって、各部局においては、第一に、事業の実施にあたっては、明確な目標と効果指標を設定するとともに、事務事業評価によるPDCAサイクルを促進し、事業の見直しやスクラップを積極的に進め、それらを礎として施策の新陳代謝(アップデート) を図ること。 その際は、ゼロベースの視点から事業の目的・意義を厳しく検証し、役割を終えた事業や費用対効果に見合わない事業の終期や今後の方向性について検討すること。 第二に、DXの推進により、①区民の利便性の向上、②ヒューマンエラーの防止、③職員の業務効率の向上を一体的に実現していくこと。 そのために、まず現状の業務プロセスを可視化し、ボトルネックや非効率なタスクを洗い出したうえで、作業の標準化や効率化を進めるとともに、機械的な処理やチェックは自動化し、正確でスピーディーな業務を実現すること。 さらに、データドリブンな施策展開に向け、情報の収集や入力の段階からデジタルを基本とし、機械が読み取れる形で整理・蓄積する仕組みを整えること。蓄積したデータは、政策の立案や効果検証に活かすとともに、生成AIなどの最新技術と組み合わせることで、業務の高度化や意思決定の迅速化を図り、区民サービスの質の向上と行政運営のさらなる効率化を実現すること。 第三に、すべての区民が等しく行政サービスを利用できるよう、アクセス環境の改善や情報提供時の多言語化・わかりやすさ、デジタル・デバイドの解消に取り組むこと。 特に、障害や疾病、経済的事情、性の多様性など、様々な背景・状況にある区民に寄り添い、行政サービスの執行にあたること。 以上を踏まえ、下記事項に留意して令和8年度の予算執行にあたられたい。 この旨、命によって通達する。 第一 全般的事項 1 予算執行については、予算事務規則、会計事務規則、契約事務規則等に基づき、適正に処理すること。なお、定期監査において、例年指摘されている支払遅延・過誤や契約手続の不備等に留意するとともに、業務マニュアル等の内容確認や見直しなど、同様の指摘が繰り返されることのないよう、職員の意識向上と知識の定着に向けた取組みを行うこと。 2 予算執行段階においても目的・背景を意識しながら効果的手法やコストダウンの検討を随時行うこと。 3 国および都の動向や社会情勢を注視し、年度途中であっても補正予算の計上が必要となる事業については、施策実施に向けた検討を積極的に行うこと。 各部局に配当された予算は、予算編成時に定めた事業の目的・内容に則って適切に執行すること。 なお、状況の変化等により、事業の目的・内容が異なる予算執行を必要とする場合は必ず事前に財政課に協議すること。 4 会計管理室における資金繰りを円滑に進めていくため、特に次のことに留意すること。 ⑴ 国・都支出金は、関係機関との連絡を密にして、早期収納に努めること。 ⑵ 収支予定を綿密に積算し、収入日と執行日を明確にするとともに、収入に応じた支出を図るよう努めること。 5 公会計制度の運用については、「品川区新公会計制度基本方針」に基づき適正な処理に努めること。 6 子ども・若者、高齢者・障害者など、「人」を基軸とする施策の実施にあたっては、広く当事者の意見を聞き、施策に反映させること。 7 誰もが自分らしく生きられる社会の実現を目指すとともに、多様な生き方の選択、平等な参画機会の確保等の推進に取り組むこと。 8 新規事業計画時には、紙や手作業ではなく、デジタル処理を前提とした業務設計を行い、既存業務でもデジタル技術を活用したプロセス再構築を推進すること。また、職員自らがデジタルツール(RPAやChat GPT等)を効果的に活用し、システム開発の内製化を積極的に進め、費用削減を図ること。 9 区民が行う手続きについては、電子申請やキャッシュレス決済等を積極的に導入し、区民の利便性向上を推進すること。 10 デジタルプラットフォームに寄せられた区民意見や地域ニーズを政策立案につなげ、デジタル民主主義の実現を図ること。 11 新庁舎への移転を契機に、各所管でこれまで懸念・課題としていた事項を見直すこと。特に、区民の利便性および業務の効率性を向上させるため、以下の項目に重点的に取り組むこと。 ⑴ 申請書の廃止・統合等による区民・職員負担の軽減 ⑵ 業務フローの見直しによるバックオフィス業務の効率化 ⑶ 文書削減・電子化によるペーパーレス化の推進 12 区の方針や計画など区政運営に関わる重要案件については、事業スケジュール等を精査のうえ、適切な時期に区政運営会議等へ付議すること。既存事業について方向性を大きく転換する場合も、同様とする。なお、付議にあたっては将来コストや財源についても広く検討を行うこと。 第二 歳入について 1 予算計上額の確保が歳出予算執行の前提となることに留意すること。 2 前年度以上の収入額(率)を達成するよう努め、前年度同月比で低下しているものについては、原因等の分析を行い、適切な措置を講じること。 3 特別区民税は、歳入の根幹であり、区財政に大きな影響を与えるものである。ついては、課税対象を的確に把握するとともに、負担の公平性の観点からも滞納整理を促進し、一層の徴収率向上に努めること。 4 各特別会計における保険料は、保険制度の基盤をなすものであるので、制度の趣旨普及等を通じて特段の徴収努力を行い、徴収率の向上に努め、一般会計による負担の縮減を図ること。 5 国・都支出金については、補助制度の創設、組替えなどの動向に注意を払い、積極的な活用を図るなど、一層の収入確保に努めること。 ⑴ 補助金等の申請にあたっては、事業計画を綿密に立て、早期に行うこと。 ⑵ 補助基準との単価差・対象差等により生じる区の超過負担の解消について、関係機関に積極的に働きかけること。 6 当初見込んでいた補助金・交付金等に減収のおそれがあるときは、速やかに財政課と協議し、支出抑制等の措置を講じること。 7 各施設使用料については、施設利用のPR等に努めるとともに、利用形態や納付方法等を見直し、増収を図ること。また、受益者負担の考えを踏まえ、使用料の適正化について検討すること。 8 負担の公平を図るため、自己負担金、各種貸付金返還金、保育園保育料、区営・区民住宅使用料等の未納分・滞納分の徴収については、特段の努力をすること。 9 新たな寄附金収入については、速やかに予算化し、寄附者の意向を踏まえ執行すること。 10 基金の運用については、経済動向を踏まえ、安全性を最重要視するとともに、効率性も考慮すること。 11 クラウドファンディングの活用を含めたふるさと納税については、今まで以上に情報発信を行う等、積極的な財源確保の取組みを強化すること。 また、各種団体が行っている助成制度を積極的に活用し、税外収入の確保に努めること。 第三 歳出について 1 歳出は、最少の経費で最大の効果をあげるため、次の点に留意すること。 ⑴ 行政評価を踏まえて、事業に対する公費負担のあり方や費用対効果を 検証し、無駄を無くす取組みを徹底するとともに、より効果的かつ効率的に事業を執行すること。 ⑵ 新規事業については、関係各課および関係機関との情報交換や協議等を十分に行い、周到な事業計画を作成し、適時、進行管理を行いながら、早期着手、適正な執行に努めること。 ⑶ 予算執行は、各部局に配当された予算に即して適正に行うこと。なお、補正予算の計上が必要となる事業の事前執行は、厳に避けること。 ⑷ 不測の事態により緊急の対応が必要となった場合は、速やかに財政課と協議すること。 ⑸ 目的に応じてWEBサイトやSNSなど、デジタル媒体を積極的に活用すること。また「誰に何の情報を届けるか」等ターゲットを意識した効果的な情報発信を行うこと。なお、秋頃予定されているホームページ全面リニューアルを契機に、区民にとって理解しやすい表現に改めるなど、情報へのアクセス性向上を図ること。 ⑹ 区有施設における光熱水費の使用については、引き続き物価高騰の状況等を踏まえ、節電等の対策を徹底することにより、使用量の縮減に努めること。また、契約プランの最適化についても随時検討を行うこと。 ⑺ 資料作成・共有にはMicrosoft365 を活用し、業務効率化を図ること。 会議ではリモート・対面を問わず、Teams の画面共有を積極的に活用しペーパーレスを原則とすること。 2 契約にあたっては、議決を経る必要がある契約(変更を含む。)かどうかを必ず確認し、議決を要する契約締結を行う事業については、議案提出時期を含め経理課との緊密な調整を行うこと。なお、翌年度への予算の繰越しが発生するおそれがある場合は、速やかに財政課へ報告し、関係機関との調整を図ること。 3 地域経済対策の観点から、工事の発注や物品購入等については、区内業者への受注機会の確保に努めること。 4 工事の発注にあたっては、近年、資材価格の上昇や働き方改革の影響等により、入札不調や工期の遅延等が増えていることから、事業の計画的な実施に努めること。 5 債務負担行為を設定している事業については、工事出来高等の状況に注意を払い、債務負担行為の変更・追加が見込まれる場合には、速やかに財政課へ協議すること。 6 委託等の業務全般については、職員・組織の中で、ノウハウや経験を蓄積していくことを念頭に、特に次のことに留意すること。 ⑴ 仕様内容が適正なものであるかを必ず確認し、改めて、真に職員が実施すべき企画立案などのコア業務と、委託することがふさわしい業務とを精査のうえ不断の見直しを行い、必要最小限のものとすること。 ⑵ 調査研究等の委託(主にコンサルティング会社への委託)については、高度な専門的知識を必要とする場合や、大きな効果が見込まれる場合に限ること。 以上の見直しの成果を踏まえ、委託業務のあり方についての再検証を行うこと。 7 区民に対する補助金等については、計上された予算の範囲内での執行を原則とすること。また、当該補助制度が予算の範囲内で運用されるものであることを区民等に対してわかりやすく適切に周知すること。 8 各種計画の策定にあたっては、真に必要なものであるか見極めるとともに、策定委員会の委員数の適正化および構成に留意し実施すること。なお引き続き、会議・審議会等における女性委員の登用を推進(委員構成を男女いずれの性も40%以上を目標)すること。 9 事業の進捗に大きな影響を与える各種の調査・設計委託等については、翌年度の予算編成に支障が生じないよう関係各課と十分な調整を図り、計画的に進めること。 10 「ゼロカーボンシティしながわ宣言」の達成に向け品川区環境基本計画および職員環境行動計画(しながわ職員エコアクト)に基づき、これまで以上に環境負荷の軽減を図ること。 11 各種啓発物品等の作製・購入にあたっては、費用対効果など必要性を精査し、効果的な執行に努めること。また、都市ブランドデザインおよびブランドメッセージ「しあわせ多彩区」を積極的に活用し、区の統一的なイメージ形成を図ること。 12 情報システムに係る経費については、情報システム調達ガイドラインに基づき標準化および効率化を図り、適正な調達プロセスを経ること。 第四 予算執行計画について 各部局の長は、経営的視点に立ち、自主的な判断と責任により着実な事業執行を図ることを目標に、予算事務規則第14 条に基づき、予算執行計画を策定すること。また、やむを得ず計画を変更する場合は最小限にとどめること。 第五 執行手続について 1 予算流用について 予算の執行上やむを得ない事由がある場合は、一定の範囲内において各部局の長の権限で流用を行えるものとするが、事前に財政課と調整すること。 2 執行委任について 執行委任は、委任する側と受任する側との間で綿密な意思の疎通を図り、適切な時期を考慮して行うこと。 3 不用額の処理について 予算執行につき生じた差額(見積差、契約落差等)は、その要因を明確に区分し、減額補正または決算上の不用額とすること。 4 進行管理について 施策の目的が効果的・効率的に達成できるよう、執行状況を的確に把握し、執行実績の客観的な分析・評価を行うこと。 ⑴ 予算執行は、執行計画において、事業別・四半期ごとに定めた執行計画額の範囲内で行い、予算を超過しないよう厳に注意すること。 ⑵ 予算執行にあたり、次の事項については別途企画経営部長より通知する。 ① 区長報告案件 ② 進行管理対象事業 ③ 企画課・財政課協議事業 ④ パブリックコメント対象事業 ⑶ 予算事務規則第2 4条第2項に基づく収支状況報告および実績報告は、 次のとおり行うこと。 ① 収支状況報告は、各四半期の執行計画における執行率が8 0%未満の事業について、各四半期終了後1 5日以内に執行残額説明書を財政課に提出して行うこと。また、同説明書指示事項欄には、各部局の長の指示を必ず記入すること。 ② 「特に区長が指定する事業」に係る実績報告は、前号①区長報告案件②進行管理対象事業の報告をもって充てる。 第六 その他 1 会計関連文書の電子化における注意事項 電子化に伴う各処理については、従来の紙による処理や手続き等と同様に留意し、予算の執行にあたっては、関係法令等に特段の注意を払うこと。 2 公共施設等の整備・管理計画について 「品川区公共施設等総合計画」および各課において策定している「個別施設計画」に基づき、各施設の維持管理にかかる経費について適切に把握し、より効率的な運営に努めるとともに、施設の複合化や集約化、民間活力の導入について積極的な検討を行うこと。 3 令和9年度予算編成に向けて 令和8年度は区長選挙実施予定につき、予算編成日程が前倒しになることをあらかじめ留意すること。また、社会情勢の変化を適切にとらえ、区民の幸せにつながる施策を年度当初より積極的に検討すること。その際には事業の背景や区民ニーズの把握、現在の執行状況、今後の事業費など幅広く検討を行うこと。 なお、検討にあたっては、事務事業評価シートを活用し、各事業や政策の不断の検証や見直し・改善を行うとともに、廃止・中止等と判断した事業については、その終期や方向性を定めること。 4 条例制定等における注意事項 条例の制定・改廃にあたっては、事前に企画課および総務課に協議すること。