令和9年度予算編成に関する基本方針について(依命通達) 我が国の経済は、雇用・所得環境の改善等を背景として、全体としては緩やかな回復基調を維持しているものの、 中東情勢の緊迫化に伴う原油価格やサプライチェーンへの影響、各国の通商政策や金融市場の変動など、 国内外の諸要因が重なり、先行きの不確実性は一段と高まっている。賃金上昇の流れは見られるものの、 物価高騰の影響はなお区民生活に重くのしかかっており、とりわけ食料品、エネルギー、日用品等の価格上昇 は区民生活に直接的な影響を及ぼしている。 このように社会経済は厳しい状況であるものの、区財政を見ると、令和7年度一般会計決算は歳入・歳出ともに2,300 億円を超え、特に歳入総額は特別区民税および特別区交付金の伸び等により対前年14.6%の増で、そのうち使途の制限されない一般財源は対前年10.6%の増となった。しかしながら、ふるさと納税による特別区民税の流出額は令和8年度約65 億円に達するとされ、また、国において、特別区の土地に係る固定資産税を対象とした新たな税源偏在是正措置が検討されるなど、特別区の貴重な財源に影響を及ぼしかねない動きも見られることから、直近の決算状況をもって今後の財政運営を楽観視することはできない。 区は、これまでの不断の行財政改革により健全財政を堅持し、この財政基盤を基に様々な先進的な施策に取り組んできた。今後も、この強みを活かしながら、社会経済情勢の変化に的確に対応し、必要な施策をたゆまず推進していくことが重要である。 一方で、中長期的には、少子高齢化の進展と生産年齢人口の減少による深刻な労働力不足や社会保障関係経費の増加、公共施設の老朽化に伴う更新需要の増加、気候変動に伴う猛暑や豪雨への対応、さらには首都直下地震等の大規模災害への備えなど、複合的 かつ構造的な課題が見込まれており、今後の財政需要を着実に押し上げる要因となっている。そのため、将来に向けて、今から十分に備えていく必要がある。 こうした状況を踏まえ、区においては、人口動向に基づく行政需要の変化に的確に対応するとともに、新庁舎への移転を契機としたDXの推進等により業務プロセスの効率化を進め、行政サービスの質と業務の生産性を持続的に向上させていくことが一層重要となっている。単に当面の課題に対症療法的に対応するのではなく、中長期的な視点に立って、財政の持続可能性を意識した、将来世代に責任ある行財政運営を展開していくことが求められる。 先行き不透明な時代だからこそ、区は、区民のウェルビーイング向上を基軸に据え、区民の不安や不満といった「不」を解消し、誰もが将来に希望を持ち、安心して住み続けられる社会の実現を目指さなくてはならない。そのためにも、限られた財源を漫然と消費するのではなく、施策の重点化と財源配分の最適化による「選択」と「集中」を徹底し、真に必要な分野へ重点的かつ効果的に投資することで、「質の高い行政サービス」を実現していく必要がある。 よって、令和9年度予算の編成にあたっては、 第一に、物価高騰や国際情勢の影響を受ける区民生活と地域経済を支えるため、子ども・子育て、教育、福祉、医療、防災など、日常生活を支える基礎的行政サービスの安定的かつ的確な提供を基本に据えること。 第二に、DXの推進による業務の効率性と生産性の向上、防災力強化、ファシリティ・マネジメントなど、少子高齢化の進展や生産年齢人口の減少を見据え、将来的な自治体としての持続可能性を高めるための戦略的投資を進めること。特に、ファシリティ・マ ネジメントについては、区有施設の老朽化等により投資的経費の膨大な需要が見込まれる中、人口動向や将来需要を踏まえ、区有施設の必要性やあり方についてゼロベースの視点から見直すこと。 第三に、各部局長の管理・責任において、事務事業評価によるスクラップ・アンド・ビルドを徹底するとともに、EBPMに基づく適正規模の事業設計と財源確保に一体的に取り組むこと。それにより、既存事業の不断の見直しと施策の新陳代謝を推進し、持 続可能な区政運営の基盤を強化すること。 各部局においては、現下の社会経済情勢に対する即応性と将来を見据えた先見性の双方を備え、部局横断的な連携のもと、区民ニーズと費用対効果を的確に見極めながら、真に必要な施策を厳選し、下記事項に留意して令和9年度予算編成にあたられたい。 この旨、命により通達する。 1 全般的事項 予算編成にあたっては、年間予算を的確に見積もり、限られた財源の中で区民のウェルビーイング向上を意識し、かつ区長の指示事項を踏まえ、既存事業の内容・実施方法などの見直しを徹底する等、各部局ひいては職員一人ひとりが主体性と経営的 視点をもって取り組むこと。 ⑴ 基本方針について 前文に掲げる3つの基本方針に基づき、真に必要な施策を見極め、積極的な予算要求を行うこと。 ⑵ 指摘・要望事項について これまでの議会審議における意見、監査の指摘事項および区民要望に十分留意すること。特に、子ども・若者、高齢者・障害者施策については、広く当事者の意見を聞き、これらを踏まえた予算要求を行うこと。 ⑶ 新庁舎移転に向けた業務改善と意識改革について 新庁舎移転を契機に、従来の働き方を変革する意識を持ち、「品川区DX推進基本方針」に基づくDXの推進、行政サービスの質と効率性の向上、および業務プロセスの最適化による生産性の向上を図ること。また、これらの取り組みを推進できるDX人材の育成を図ること。 とりわけ、「来庁しなくても手続きできる区役所」を目指し、利用者の視点から手続き全体を捉え直すサービスデザインの手法を通じて、窓口DXによる区民の利便性向上と業務改善を図ること。 また、文書削減や電子化等によるペーパーレス化のさらなる推進、不要物品の整理・削減を進め、新庁舎への円滑な業務移行および職員が働きやすい執務環境の整備を進めること。 ⑷ 職員定数適正化、長時間労働の抑制および持続可能な執行体制確保について 特別区職員の採用環境が一層厳しさを増す中、職員数の増加を前提とした行政運営には限界があることを十分認識し、以下の方針に基づき、職員定数の適正化、持続可能な執行体制の確保および長時間労働の抑制を図るとともに、新規事業および 既存事業の拡充に対応すること。 ① 事業のスクラップ・アンド・ビルド、業務改革および執行体制の見直しを推進し、職員が真に担うべき業務を明確にするとともに、業務の効率化および生産性の向上を図り、人的資源の最適配置および長時間労働の抑制に努めること。 ② 新規・拡充事業の実施に伴う業務量の増加への対応にあたっては、既存事業の見直しおよび業務の優先順位付けを徹底し、人的資源の再配分ならびに執行体制の再構築により対応することを原則とする。なお、増員が真に必要な場合は、その必要性および既存の人的資源による対応が困難である理由を、具体的なデータに基づき明示すること。 ⑸ 障害者活躍の推進について ① 「品川区における障害者就労施設等からの物品等の調達方針」に基づき、障害者が就労する施設等が供給する物品や役務の活用を検討すること。 ② 「品川区職員障害者活躍推進計画」に基づき障害者活躍の推進を図るため、各課等で行っている印刷・封入等の軽作業について、積極的に「業務支援室」を活用すること。 ⑹ ジェンダー平等の視点に基づいた施策推進について ① 「品川区ジェンダー平等と性の多様性を尊重し合う社会を実現するための条例」に掲げる基本理念を踏まえ、ジェンダー平等と性の多様性を尊重し合う社会の実現を目指すための施策を展開すること。 ② 性別等にかかわりなく、区民一人ひとりがそれぞれの個性・能力を発揮して、あらゆる分野での参画・活躍を一層推進していくための施策を展開すること。 ③ 会議・審議会等における女性委員の登用を推進(委員構成について、一つの性別が50%を上回らないことを目標)し、立案・決定過程への多様な参画の促進を 図っていくこと。 ⑺ 包括的連携協定等を活かした官民共創の推進について 行政課題や地域課題が複雑化・多様化している一方、区の財源や人的資源には限りがあるため、企業・地域団体の持つ技術やノウハウの活用により、当該課題の解決に取り組んでいく必要がある。区と企業・地域団体が多様な分野での相互連携および協働により、様々な課題に対して積極果敢にチャレンジし、区民サービスの向上と地域の活性化を推進すること。また、多岐にわたる分野への取り組みにあたっては、部局を超えた密な連携を図ること。 ⑻ ファシリティ・マネジメントの重点実施について 各部局において、人口動向等に基づき、区有施設の必要性・意義についてゼロベースの視点から見直し、以下の点に留意したうえで、関係部局と協議し、ファシリティ・マネジメントを実施していくこと。 ① 公有財産管理規則を踏まえて施設の現状(財産情報・施設管理体制・老朽化・利用状況等)を見える化し、今後の施設のあり方について、統合・廃止・縮小・民営化等を含めた具体的な方針を検討すること。 ② 単独建替えを前提にしない更新手法(統合・複合化)も検討すること。 ③ 改修に向けたステップを中長期的な視点に立って検討し、施設整備コストの最小化に努めること。 ④ 区民サービス提供の観点から各区有施設の提供水準を見極め、将来需要を踏まえた施設配置や規模の適正化を検討すること。 ⑤ 庁舎や区有施設の効率的な管理運営を行うため、施設ごとに利用状況やエネルギー使用量の実態、運用コストの全体像の把握と最適化に努めること。また、委託内容の定期的な見直し等による業務の効率化、利用者満足度の向上、さらには不要な資産の処分や用途変更の検討を行い、資産活用の最適化に取り組むこと。 ⑥ 施設運営については、コストの最小化に努めるとともに、節電をはじめとする省エネに配慮した工夫を心がけること。 ⑼ 議会の議決が必要となる契約について 予算要求にあたっては、議決対象となる契約かを必ず確認し、議決対象となるものは、提案時期および執行時期を十分に検討のうえ、関係各課と調整を行うこと。 ⑽ 経常的事務事業について 経常的経費については、引き続き部局編成枠方式による編成とし、各部局長は、事業執行の効率化の観点から、自主的な工夫を反映させること。また、既存事務事業の見直しを徹底するとともに、これまで以上に部内の調整を図ること。 2 歳入に関する事項 ⑴ 区税収入について 一般財源に占める重要性を認識のうえ、社会経済情勢や税制改正等を十分に見極め、的確な年間収入額を見込むこと。 ⑵ 国・都支出金について ① 補助制度を最大限に活用することはもとより、補助制度の創設や組替えなど国・都の動向に十分留意すること。また、新規・既存事業問わず、補助制度について関係部局と情報を共有することで、財源確保に努めること。 ② 超過負担の原因となっている補助基準(単価・規模等)の改善を要望するなど、積極的な財源確保に努めること。 ⑶ 基金について 積極的な施策展開を行う事業については、充当可能な基金の活用を図ること。 ⑷ 起債について 区債発行については、将来負担等を勘案し、慎重に行うこと。 ⑸ 使用料および手数料について 各施設使用料等については、施設使用に係る受益と負担のバランスも検証しつつ、現下の社会経済情勢を踏まえ適正化について検討すること。なお、区民・区内団体以外に係る料金については、民間を含めた類似施設の料金水準等も踏まえつつ、実 態に即した設定となるよう留意すること。 ⑹ 税外収入について 各種団体が行っている助成制度の情報収集に努め、積極的に活用するとともに、クラウドファンディングを含めたふるさと納税等を検討し、より一層の税外収入の確保に努めること。 3 歳出に関する事項 ⑴ 事務事業のスクラップ・アンド・ビルドについて 事務事業評価による見直しを徹底し、今一度、限りある財源および人的資源を意識したうえで、ゼロベースの視点から縮減・廃止を検討すること。その際は、費用対効果に見合わない事業や社会経済情勢の変化に適合しない事業についてスクラップを進めること。また、新規事業を実施する際は、必ず成果指標を設定したうえで数値実績に基づいて客観的に評価できるように立案し、終期(見直しの時期)についても検討すること。 ⑵ 各種委託経費の適正化について 委託業務については、仕様内容が適正なものであるかを再度確認し、改めて、真に職員が実施すべき企画立案などのコア業務を委託することのないよう精査のうえ、生成AIやデジタルツール等の積極的な活用により、委託の範囲を必要最小限とすること。 ⑶ 区民(区内事業者等を含む)に対する補助金等の精査について 区民(区内事業者等を含む)に対する補助金等については、事業の目的・効果を十分に検証し、真に必要とされる事業内容および適正規模に精査していくこと。また、区独自の補助金を創設する場合は、長期にわたる補助を前提とせず、補助すべ き効果的な時期を見極めたうえで、終期を設定すること。 ⑷ 啓発物品・啓発動画・印刷経費の適正化について 啓発物品・印刷物の作製・購入にあたっては、費用対効果など必要性を精査し、最小限のものとすること。また、都市ブランディングの観点から、「しあわせ多彩区」をメッセージとする品川区都市ブランドデザインを積極的に活用すること。SNSを活用した啓発動画等の作成にあたっては、「誰に」「何の情報を届けるのか」を明確にしたうえで、ターゲットを意識した効果的な情報発信を行うこと。その際は、ターゲットの属性や利用傾向を踏まえ、適切なSNS媒体を選定・活用すること。 印刷物は日常業務についても、紙である必然性がない事務についてはペーパーレスを前提とすること。 ⑸ 合理的配慮(障害者差別解消法)について 障害のある人への合理的配慮の提供にあたり、現状の運用や実施手法等を再検討し、サービスの見直し・向上を図ること。 ⑹ ゼロカーボンシティしながわ宣言の実現に向けて 2030 年度のカーボンハーフ、2050 年度のゼロカーボン達成に向けて、「品川区環境基本計画」および「品川区職員環境行動計画」に基づき、低炭素電力会社への切り替えや施設・設備の省エネルギー化、会議・イベント等における環境配慮製品の 積極的な活用による使い捨てプラスチック製品の使用削減等を図り、二酸化炭素排出量の削減に取り組むこと。 また、「品川区公共建築物等における木材利用推進方針」に基づき、多摩産材および協定締結自治体の産材を効果的に利用し、木材利用の推進に努めること。 ⑺ 施設・設備の大規模改修について 「品川区公共施設等総合計画」、個別施設計画および定期点検の結果を踏まえ、老朽度や耐震性、安全性等の状況を的確に把握するとともに、区民・利用者への影響や利便性の向上を考慮し、時機を逸することなく必要な経費を要求すること。その 際、二重投資とならないよう注意するとともに、建物で消費するエネルギーを大幅に削減したネット・ゼロ・エネルギー・ビル(以下、ZEBという。)化を推進すること。 ⑻ 施設の新築、改築について 「品川区公共施設等総合計画」および個別施設計画を踏まえ、機能・維持管理の効率性および省エネに留意し、コストの低減を図るため標準的な仕様として過大な投資を避けるとともに、民間の資金・ノウハウを活用し、整備後の運営経費についても十分に検討すること。なお、その際は、ZEB化を推進すること。また、施設の廃止に伴う跡地の利用計画は、早期に検討を進めること。 ⑼ 公共工事設計労務単価等の積算について 設計・工事費の積算にあたっては、適切な工期を設定し、労務単価の改定を適切に反映すること。また、工事案件等については、出来高見込額を算出すること。 ⑽ 用地取得について ① 公示価格、基準地標準価格、売買実例等を参考に、土地利用計画、取得時期、借上げ等を含め十分に検討して要求すること。 ② 事業に必要な用地においては、適地が出るのを待つのではなく、民有地も含めて積極的に情報収集を行うこと。 ⑾ 熱中症対策について 熱中症予防の普及啓発・注意喚起に努めるとともに、事業実施にあたっては、実施時期について十分検討を行うこと。また、国・都における暑さ指数の発表状況を注視し、事業や施設管理等における熱中症対策に取り組むこと。