品川区職員措置請求監査結果 (品川区障害者団体補助金交付要綱に基づく補助金の交付に関する住民監査請求) 令和8年5月22日 品川区監査委員 地方自治法第242条第5項の規定に基づき、住民監査請求に係る監査の結果を次のとおり通知する。 令和8年5月22日 品川区監査委員 コウチ ユタカ 同 アリガ ヤスコ 同 コシバ アラタ 同 アクツ ヒロオ 第1 請求の受付 1 請求人 (略) 2 請求の受付日 令和8年4月8日 3 請求書の内容(団体名を除き原文のまま) 品川区長及び障害者支援課長に関する措置請求の要旨 1 請求の要旨 (1) 請求の対象:品川区長及び障害者支援課長 (2)品川区障害者団体補助金交付要綱によると、補助金の交付対象(第2条)は、登録障害者団体が約 15 あるにもかかわらず、(1)品川区手をつなぐ育成会(2)品川区肢体不自由児・者父母の会(3)品川区重症心身障害児(者)を守る会(4)品川区視覚障害者福祉協会(5)品川区聴覚障害者協会(6)品川区身体障害者友和会(7)品川区精神保健福祉家族会(かもめ会)の7団体に限定して交付されており、公金の使用方法として、平等原則に違反している。 (3)同要綱によると、交付額(第3条)は「補助事業者の実施する事業の前年度の実績を勘案し、福祉部長が別に定める。」となっており、20〜60万円と様々で、会員数による差とは読み取られず、算定根拠が不明瞭であり、何ら合理性があるとは思えない。以下は、現時点で把握できている数字であり、確定ではない。 ・品川区知的障害者育成会 60万円(会員数約291人) ・品川区肢体不自由児・者父母の会 40万円(会員数約 90人) ・品川区重症心身障害児(者)を守る会 40万円(会員数約 36人) ・品川区視覚障害者福祉協会 40万円(会員数約41人) ・品川区聴覚障害者協会 30万円(会員数約 140人) ・品川区身体障害者友和会 20万円(会員数約 30人) ・品川区精神障害者家族会(かもめ会) 20万円(会員数約80人) (4)同要綱によると、交付の対象となる事業は、「補助事業者の実施する事業」となっており、暖昧である。さらに当該補助金の目的は「会員の福祉向上および会の発展のため実施する事業の拡充強化を図り、もって区内の障害者(児)の福祉の向上に寄与すること」としているが、交付されている団体の会員数は約 700人で、区内の全障害者(概ね 15,000 人)のわずか 5%にも満たない。当該補助金の目的の会員の福祉向上とすると、会に属していない区民には何の恩恵もない。これらの会は、障害種別によって、入会資格を決めており、障害者の障害の種別も複合的あり、多様になっているため、対象とならない障害者が多くおり、不平等と言わざるを得ない。 (5)上記7つの団体のうち、団体Aの障害者団体補助金40万円の交付についての決裁文書(資料@)を見ると、補助事業は、全国大会や関東甲信越ブロック大会への参加、会報の発行、新年会である。会員以外の参加の事業は、SNSやチラシを配布していないため、把握できない。また、札幌1泊2日の全国大会へのわずか2人の参加で、通常のツアーであれば、 1人5万円で行くことができるところ、 48 万円もかかっており、妥当な金額とは言えない。私の属する団体は、全て個人負担である。 (6)さらに、補助金交付団体でありながら、繰越金が 100 万円以上あり、特別会計 150 万円を計上し、内部留保している。なお、この積立金の使途はどこにも記載がない。団体Aはこの内部留保から事業費を支出するべきであり、剰余金は返還すべきである。このような任意団体の経理は不適切な行為であり、過大な内部留保がある団体への補助金の交付は、行政の裁量を逸脱した不当な支出である。 (7)地方自治法第232 条の 2 において、「普通地方公共団体は、その公益上必要がある場合においては、寄附又は補助をすることができる」となっている。公益上必要があるか否かは、その自治体の長及び議会が個々の事例に即して認定されるが、これは全くの自由裁量行為ではなく、客観的に公益上必要があると認められなければならないという裁判の判決がある。 (8)当該補助金は特定の会員のみが享受する利益に対して不当に公金を支出している。よって、団体Aに対し、令和7年度補助金40万円の全額の返還を請求するよう求める。もし返還がなされない場合、不当な支出を決定した品川区長及び障害者支援課長に対して、団体Aの補助金40万円を賠償するよう求める。 なお、品川区障害者団体補助金交付要綱について、特定の7団体のみに交付するのではなく、広く対象を広げるとともに、補助対象事業を公益に資するような活動に限定し、補助金額の算定方法を明確にし、障害のある区民が公平公正に利益を享受できるような交付要綱に改善することを求める。 4 補正書の受領 令和8年4月15日に、請求人より補正書の提出があったため受領した。 5 請求の要件審査 本件請求は、地方自治法(昭和22年法律第67号。以下「法」という。)第242条所定の要件を備えているものと認め、監査を実施した。 第2 監査の実施 1 監査対象事項 令和7年度の品川区障害者団体補助金交付要綱(以下「要綱」という。)に基づく団体A(以下「本件団体」という。)に対する補助金(以下「本件補助金」という。)の支出が適正に行われているかについて監査対象とする。 2 監査対象部局 福祉部を監査対象とした。 3 証拠の提出および陳述 法第242条第7項の規定に基づき、新たな証拠の提出および陳述の機会を設けた。監査委員は令和8年5月13日に請求人の陳述の聴取を行った。 4 監査対象部局の資料の提出および説明 監査対象部局に対して資料の提出および説明を求めた。監査対象部局は、弁明書および証拠書類を提出し、監査委員は令和8年5月13日に監査対象部局の陳述の聴取を行った。 陳述の出席者 福祉部障害者施策推進担当部長 福祉部障害者支援課長 福祉部障害者支援課職員2名 第3 監査の結果および理由 1 根拠規定の確認 ? 品川区障害者団体補助金交付要綱(昭和53年7月14日制定) (補助金の目的) 第1条 品川区障害者団体補助金(以下「補助金」という。)は、品川区内の障害者団体(以下「補助事業者」という。)が会員の福祉向上および会の発展のため実施する事業の拡充強化を図り、もって区内の障害者(児)の福祉の向上に寄与することを目的とする。 (補助金の交付対象) 第2条 補助金は、次に掲げる補助事業者が当該年度において実施する事業に要する経費のうち、区長が必要かつ適当と認めたものに相当する額の範囲内で交付する。 (1)品川区手をつなぐ育成会 (2)品川区肢体不自由児・者父母の会 (3)品川区重症心身障害児(者)を守る会 (4)品川区視覚障害者福祉協会 (5)品川区聴覚障害者協会 (6)品川区身体障害者友和会 (7)品川区精神保健福祉家族会(かもめ会) (補助金の交付額) 第3条 前条に規定する補助金の交付額は、補助事業者の実施する事業の前年度の実績を勘案し、福祉部長が別に定める。 (交付予定額の通知) 第4条 年度当初において、区長は、補助事業者に対し別記第1号様式により補助金の交付予定額を通知する。 (補助金の交付申請) 第5条 補助事業者は、前条に規定する交付予定額の通知を受けたときは、別に定める期限までに、別記第2号様式による補助金交付申請書を区長に提出しなければならない。 (補助金の交付決定) 第6条 区長は、前条の規定による申請を受理した場合は、これを審査し、交付するものと決定したときは、補助金交付決定通知書を補助事業者に送付するものとする。 (申請の撤回) 第7条 (略) (請求書の提出) 第8条 補助事業者は、第6条に規定する補助金の交付決定通知を受けたときは、区長が別に定める期限までに別記第3号様式による請求書を区長に提出しなければならない。 (交付決定通知の取消等) 第9条 区長は、補助金の交付を決定した後、当該補助事業がその後の事情の変更により特別の必要が生じたときは、補助金の交付決定の全部もしくは一部を取り消し、またはその条件の内容もしくはこれに付した条件を変更することがある。 (変更の承認) 第10条 補助事業者が、次の各号の一に該当する場合は、事前に区長の承認を得なければならない。ただし、第1号および第2号に掲げる事項のうち軽微なものについては、この限りでない。 (1)補助対象事業に要する経費の配分の変更をしようとするとき。 (2)補助対象事業の内容に変更を加えようとするとき。 (3)補助対象事業の全部または一部を中止もしくは廃止しようとするとき。 (事故報告) 第11条 (略) (遂行状況報告) 第12条 (略) (補助事業の遂行命令等) 第13条 (略) (実績報告書の提出) 第14条 補助事業者は、補助対象事業終了後(または会計年度終了後)すみやかに別記第4号様式により補助対象事業実績報告書および収支決算書を区長に提出しなければならない。 (検査等) 第15条 (略) (補助金の経理等) 第16条 (略) (決定の取消) 第17条 次の各号の一に該当する場合は、交付決定の全部または一部を取り消すことがある。 (1)いつわりその他不正の手段により交付を受けたとき。 (2)他の用途に使用したとき。 (3)交付決定の内容またはこれに付した条件に違反したとき。 (補助金の返還) 第18条区長は、補助金の交付の決定を取り消した場合において、その事業の取り消しにかかる部分に関し、すでに補助金が交付されているときは、期限を定めてその返還を命ずる。 (違約金) 第19条 (略) ? 品川区障害者団体補助金交付要領(令和元年7月18日決定)  (趣旨) 第1条 この要領は、品川区障害者団体補助金交付要綱(以下「要綱」という。)の適用に関し必要な事項を定めるものとする。  (補助金の交付額) 第2条 要綱第3条に規定する品川区障害者団体補助金(以下「補助金」という。)の交付額の算定は、前年度の活動事業実績により次の各号に掲げる対象事業の区分に応じ、当該各号に定める割合を上限として予算の範囲内で助成するものとする。  ? 会報または機関紙の発行 100分の50  ? 講習会、学習会等の開催 100分の50  ? 福祉施設の見学等による研修会の実施 100分の50  ? 前各号に掲げるもののほか福祉部長が必要と認めるもの 福祉部長が必要と認める事業および福祉部長が定める割合 2 前項第4号に規定する福祉施設の見学等による研修会の実施に関する費用を算定するに際しては、研修会の参加費、傷害保険料、交通費、バス借上げ料その他運営に係る諸経費を含むものとする。 3 補助金の交付額は、前2項により算定した補助金の算出額と、前年度決算額の100分の30に相当する金額を比較し、いずれか少ない額とする。 4 前項の規定にかかわらず、補助金の交付額は、品川区社会福祉協議会からの助成金の交付額と合わせて、前年度の団体の年間収入額の100分の50を超えない範囲とする。 5 前4項の規定にかかわらず、各団体において周年行事を予定する場合は、周年行事に係る必要経費の100分の50を上限として予算の範囲内で補助を行うことができる。なお、周年行事は10周年を単位とする。 6 第1項から第4項までの規定により算定した補助金の交付額では、団体の運営に明らかに支障をきたすと福祉部長が認める場合の補助金の交付額は、団体の活動実績、団体活動の趣旨・目的等を総合的に考慮し、福祉部長が別に定めるものとする。 7 補助金の交付額の算定に当たっては、算出額の1,000円未満を四捨五入するものとする。  (委任) 第3条 この要領の適用について必要な事項は、福祉部長が別に定める。 2 事実関係の確認  関係書類等を調査した結果、次の事実を確認した。 ? 本件請求に係る補助金の交付の経過等 決定日等 内容 令和7年4月1日 令和7年度の品川区障害者団体補助事業(以下「本件補助事業」という。)の実施を決定。 令和7年5月9日 本件団体に対して、補助金算出書の提出を依頼。 令和7年5月20日 本件団体より、補助金算出書(算出額:29万円)を受領。 令和7年6月30日 補助金の交付予定額(40万円)を決定し、本件団体に対して通知。 令和7年7月29日 本件団体より、補助金交付申請書(40万円)を受領。 令和7年8月6日 補助金の交付(40万円)を決定し、本件団体に対して通知。 令和7年8月26日 本件団体より、補助金請求書を受領し、同日付けで支出命令書を起票。 令和7年9月9日 本件団体に対して、補助金(40万円)を支出。 令和8年3月27日 本件団体に対して、実績報告書の提出を依頼。 令和8年5月8日 本件団体より、実績報告書を受領。 令和8年5月8日 実績報告書の内容を確認し、補助金の交付額(40万円)を確定。 3 監査対象部局の説明  監査対象部局から提出された資料または説明を受けた内容は次のとおりである。 ? 交付対象である7団体について 区の障害者福祉団体の登録数は、令和8年3月31日現在、22団体である。交付対象である7団体については、昭和30年代から50年代にかけて発足し、身体・知的・精神といった、すべての障害種別を包括する団体であり、またこのうち6団体については全国規模の組織の地方支部・分会として活動するなど、長い歴史と活動実績のある団体である。 当該7団体に補助金を交付することは、全国大会の参加などの会員の活動を通じて、障害者施策の動向や他自治体の取り組みなどについて見識を深め、それらを会報等で発信共有することにより、結果として、区内の障害者福祉の向上に寄与することに繋がるものである。 これは、法第232条の2における「公益上の必要」に該当するものであって、合理的な理由のない差別には当たらず、平等原則に違反しているものではない。 ? 補助金額の算出・決定について 補助金額については、団体により20万円から60万円で決定しているが、要綱および品川区障害者団体補助金交付要領(以下「要領」という。)に基づき、これまでの活動実績や全体の決算額等を考慮して予算の範囲内で決定しているものであり、合理性を欠くものではない。 令和7年度の本件団体に対する補助金については、「補助金算出書」を使い算出したところ29万円であったが、これは、要領第2条で定める各経費がそれぞれ事業費の50%以内であること、前年度の団体の決算額の30%と比較し少ない方を採用すること、本件補助金と社会福祉協議会からの助成金を合わせて年間収入の50%を超えないことなど、複数の条件を組み合わせて機械的に算出したものである。この金額では団体の資金が不足することが見込まれたため、要領第2条第6項の規定により、区議会で議決された予算の上限額である40万円で福祉部長決定したものである。 ? 補助金の対象経費の認定について 各経費に対する補助の割合については、要領第2条第1項において、「? 会報または機関紙の発行 100分の50」、「? 講習会、学習会等の開催 100分の50」、「? 福祉施設の見学等による研修会の実施 100分の50」をそれぞれ上限として補助することを定めている。これに当たらない「大会費」、「総会費」、「会議費」、「新年交流会」については、団体の運営上必要不可欠と認められることから、同項第4号の規定に基づき、福祉部長決定により、経費の全額を補助対象として認めている。 各経費のうち、請求人が不当であると主張する以下の個別の費用については、いずれもその目的、使途および金額を総合的に勘案した結果、その使途や金額は社会通念上妥当性を欠くものではなく、適正である。 ・大会費における参加費、宿泊費、交通費、手伝手当 ・会議費における活動費、会場費 ・研修会における活動費 ・会報費におけるコピー代 ・新年交流会における会場費、飲食代、土産代 ・学習会における会場費、飲食代 ・研修旅行における飲食代 ・施設見学における飲食代 ・総会費における土産代 ? 団体資金の内部留保について 請求人が主張する本件団体の内部留保については、本件団体の令和6年度全体の決算に関することである。要綱および要領は、補助対象団体の繰越金の保有を補助金の不交付や取消し要件としていない。任意団体が将来の活動継続のために一定の特別会計や繰越金を保有することは合理的な理由と認められ、そのことをもって本件補助金が行政の裁量を逸脱した不当な支出となるとはいえない。 なお、本件団体は、令和8年度に創立60周年を迎えるため、60周年記念式典を挙行するための経費として、特別会計を計上しているものと認識している。 ? 本件補助事業が公益上必要であることについて 法第232条の2では、「普通地方公共団体は、その公益上必要がある場合においては、寄附又は補助をすることができる。」と定めている。 交付対象である各団体が行う研修、相談支援、情報共有、啓発活動など、会員に対する支援は、そのまま地域の障害者施策全体の底上げにつながるという構造を有しており、ひいては、会員以外の障害者やその家族、さらには地域の支援者にも効果をもたらすものである。よって、特定の会員のみが利益を享受する事実はなく、客観的に公益上必要が認められるものである。 4 監査委員の判断 本件請求は、要綱に基づき、本件団体に対して交付した補助金40万円について、交付対象を特定の団体に限定していることから平等原則に反し、また補助金額の算定根拠が不明瞭であり合理性があるとはいえないことなどから、「違法・不当な公金の支出」に当たるとして、本件団体に対して補助金の返還請求を行い、または区長および障害者支援課長に対する賠償請求を求めるものと解される。 確認した事実関係および監査対象部局の説明等に基づき、次のように判断する。 ? 交付対象を7団体に限定していることについて 請求人は、法第232条の2に基づく補助について、全くの自由裁量行為ではなく、客観的に公益上必要があると認められなければならないものであり、補助金の交付対象を区の障害者福祉団体に登録する団体のうち7つの団体に限定していることについて、違法または不当である旨を主張している。 法第232条の2は「普通地方公共団体は、その公益上必要がある場合においては、寄附又は補助をすることができる。」と規定しており、公益上の必要の有無は、普通地方公共団体の長が第一義的に判断し、次いで議会が予算審議を通じて判断をすることになる。 一般に、障害者の福祉の向上等を目的とする団体に対して必要な補助金を交付することについては、公益上必要があるものと認められる。 これを本件補助事業について見ると、本件補助事業は「品川区内の障害者団体が会員の福祉向上および会の発展のため実施する事業の拡充強化を図り、もって区内の障害者(児)の福祉の向上に寄与することを目的」に実施しているものであるところ、要綱で対象として掲げている7つの団体については、それぞれ知的障害児者、肢体不自由児者と多重障害児者、重症心身障害児者、視覚障害者、聴覚障害者、身体障害者、精神障害者の福祉の向上等を目的として設立されたものと認められ、またこれらの団体の多くが昭和30年代から50年代にかけて設立された全国規模の組織の下部組織であることから、要綱の制定当初、これらの団体を補助対象とした区長の判断について、裁量権の逸脱、濫用は認められない。 区の障害者福祉団体の登録については、品川区障害者福祉団体登録要綱によれば、「施設利用等における利便と経済的負担の軽減を図り、障害者の福祉向上に資することを目的」としているのであり、つまり、障害者福祉団体として登録した団体が区有施設を利用するに当たり、その使用料の減免等を受けるための制度であるところ、団体登録の有無と本件補助事業の対象団体との間に関連は見られない。 また、本件補助事業については、長年、区議会の予算審議において、7つの団体名および予算金額を明記したうえで審議、可決されており、その公益性については区議会においても認められているものである。 ? 補助金額の算定について 請求人は、補助金額が団体により20万円から60万円の間で決定されていることにつき、不明瞭であり合理性がない旨を主張している。このことについて、監査対象部局の説明によれば、「要綱および要領に基づき、これまでの活動実績や全体の決算額等を考慮して予算の範囲内で決定している」ものであり、補助金額の決定に当たり要綱または要領の違反は見受けられず、著しく合理性を欠くものとは認められない。 ? 団体に補助することの効果について 請求人は、交付されている7つの団体の会員数は約700人で、区内の障害者の5%にも満たず、本件補助事業が会員の福祉の向上を目的としているのであれば、会に属さない区民に何ら恩恵がない旨を主張している。 このことについて、?で説示したとおり、本件補助事業は団体への補助を通じて「区内の障害者(児)の福祉の向上に寄与する」ことを目的としているのであり、その事業効果は団体に属する会員のみならず、会員以外の障害者やその家族、地域の支援者を対象としたものと認められる。 なお、請求人は区内の障害者の人数に対して団体に所属する会員数が少ないことを指摘している。一般に、団体の会員となるには会費などの負担が生じるのであり、すべての障害者が団体に所属するのは困難とみられ、様々な障害種別の障害者の福祉の向上等を目的として活動する団体に対して支援を行い、もって「区内の障害者(児)の福祉の向上に寄与する」ことについては、合理性が認められる。 ? 補助金の対象経費の算定について 請求人は、団体が補助金の交付申請をする際、札幌市で開催される全国大会の参加費・宿泊費・交通費を2名で48万円計上していることが過大である旨を主張している。このことについて、実際にかかった経費は3名で参加費9,000円(1名当たり3,000円)、宿泊費66,000円(1名当たり22,000円)、交通費220,515円(1名当たり73,505円)の計295,515円(1名当たり98,505円)として実績報告されている。 これを各経費の1名当たりの金額の妥当性について見ると、参加費3,000円については、全国大会の運営事務局から示されている金額と同額を計上しており、妥当である。宿泊費22,000円については、全国大会の運営事務局から示されている17か所の会場周辺のホテルの宿泊費のうち、シングルの料金は最高額が40,000円、最低額が14,500円であり、およそ中間の金額を計上していることから妥当なものと認められる。交通費73,505円については、このうち羽田空港から新千歳空港までの往復の航空券代が65,385円、それ以外の電車およびタクシー代が8,120円であり、不当に高額といえる事情は確認できず、妥当なものと認められる。 以上のことから、全国大会の参加費・宿泊費・交通費の計上について、違法または不当と認められる事情はない。 ? 内部留保がある団体への補助金の交付について 請求人は、過大な内部留保がある団体への補助金の交付は、行政の裁量を逸脱した不当な支出である旨を主張している。団体が安定的に運営を行うため、資金を翌年度に繰り越すことは、通常の会計実務において広く認められているものであり、団体に内部留保があることをもって、団体に補助を行うことが直ちに違法または不当であると認めることはできない。 請求人が主張する令和7年度に繰り越された内部留保の額は、団体から提出された収支報告書をみると、一般会計が833,137円、特別会計が1,500,000円の計2,333,137円であると解される。令和7年度における団体の収支差額は△266,892円であることから、令和8年度に繰り越された内部留保の額のうち一般会計は566,245円に減じている。 特別会計の1,500,000円については、監査対象部局の説明によれば、令和8年度に実施する周年行事に要する経費として計上しているという。監査実施時点では令和8年度に係る補助金の申請前であるため、周年行事に係る経費の額は確認できないものの、令和7年度に本件団体から提出された資料によれば、令和7年度に、令和8年度の創立60周年に向けて準備を行うとの記述が確認でき、周年行事に向けて特別会計を計上しているとの説明に矛盾はない。 また、要綱第14条に基づき団体から提出された補助対象事業実績報告書および収支決算書についてみると、交付した補助金40万円についてはすべて執行されていることが確認でき、本件補助金を繰り越していることが疑われる事情は認められない。 以上のことから、公金が不当に団体に留保されている事実は認められず、補助事業を直ちに中止するような著しく合理性を欠く事情は認められない。 5 結論 以上のとおり、本件補助金の交付について、裁量権を逸脱し、違法・不当があったものとは認められず、区に損害をもたらすものではない。 よって、違法または不当に支出した補助金の返還等を求める請求人の主張には理由がない。 6 意見 本件に関する判断は以上のとおりであるが、付言して監査委員の意見を述べる。 補助金は、反対給付を受けない給付金であり、法令に従い公正かつ有効に使用されるよう努めなければならないことに加え、社会経済情勢の変化や補助効果などの観点から、その必要性や手法等については適時適切に検証を行うことが必要である。 検証に当たっては、公益性が認められるか、期待する効果をあげているか、交付を受ける機会が公平なものとなっているか、補助対象経費や補助率、補助金額は妥当なものであるか、交付先団体の財務状況等を把握したうえで必要な補助であるか、補助に代わる手法や類似事業はないかなどの複数の視点から総合的に判断を行う必要がある。 補助事業の実施に当たり、区長には裁量権が認められるものの、本件補助事業については「区内の障害者(児)の福祉の向上」を目的とする以上、その手法として、区内に多数ある団体のうち特定の団体のみに補助を行うこと、要綱または要領で明記されていない経費を福祉部長の裁量により対象経費として認定していること、補助金算出書で算出された補助金額を超える金額を福祉部長の裁量により交付決定していることについて、公平性や透明性の観点から、改善の余地があるとの印象が否めない。 改善に当たっては、例えば、要綱に交付対象の団体を列挙するのではなく、補助対象となる事業や経費を明確化し、補助金の支出方法についても、実績報告書の受領後に精算処理を行うことで、補助対象事業・経費の適正な執行を確保するなどの対応が考えられる。 区独自の補助事業は一般財源により賄われることが多く、区民から徴収した税金その他の貴重な財源をもとに実施するものである。監査対象部局においては、広く区民の理解を得るため、不断の検証や改善を行い、より一層の公正性・透明性の確保に努められたい。