品監収第19号 令和8年6月3日 請求人 様 品川区監査委員 コウチ ユタカ  同 アリガ ヤスコ 同 コシバ アラタ 同 ワカバヤシ ヒロキ 品川区職員措置請求(住民監査請求)に基づく 監査を実施しないことについて(通知)  令和8年5月13日付け品監収第19号で受け付けた品川区職員措置請求(住民監査請求。以下「本件請求」という。)については、請求の要件を審査した結果、下記の理由により地方自治法(昭和22年法律第67号。以下「法」という。)第242条に定める住民監査請求の要件を欠いているものと認定しました。 よって、監査を実施しないことと決定したので通知します。 記 本件請求において、請求人は、区が団体A(以下「本件団体」という。)に対して行った法第238条の4第7項の規定に基づく八潮地域センターおよび荏原平塚総合区民会館における行政財産使用許可ならびに都市公園法第5条第1項の規定に基づく天王洲公園野球場における公園施設設置許可(以下「本件許可」という。)について、本件団体が許可条件で禁止されている転貸を実質的に行っていることにつき区が是正しないことから「財産の管理を怠る事実」に当たり、また、本件許可の使用料と法第238条の4第2項の規定に基づく行政財産の貸付けにより自動販売機の設置を行った場合の貸付料に差があることをもって「公金の徴収を怠る事実」に当たるとして、本件許可を取り消し、適正な財産管理を求めるものと解される。 1 本件許可の住民監査請求の適格性について 住民監査請求の対象となる事項は、「法242条1項に定める事項、すなわち公金の支出、財産の取得・管理・処分、契約の締結・履行、債務その他の義務の負担、公金の賦課・徴収を怠る事実、財産の管理を怠る事実に限られるのであり、右事項はいずれも財務会計上の行為又は事実としての性質を有するものである」(最高裁判所第一小法廷 平成2年4月12 日判決 損害賠償(住民訴訟)請求事件参照)。したがって、財務会計上の行為または事実としての性質を有しないところの一般行政上の行為または事実は、住民訴訟の対象とはならない。 しかるところ、財産管理行為の全てが住民監査請求の対象となるのではなく、財務会計上の行為または事実としての性質を有する財産管理行為のみが住民監査請求の対象となる、言い換えれば、財産的価値に着目し、その価値の維持、保全を図る財務的処理を直接の目的とする財務会計上の財産管理行為のみが住民監査請求の対象となると解される(前掲最高裁判決参照)。 本件許可は、自動販売機を設置するために行った行政処分であり、自動販売機の設置を通じて施設を利用する者の利便に資する、または都市公園の機能の増進に資するという行政目的に加え、区の障害福祉政策の一環として、障害者団体等への継続的な財政的支援を図り、もって障害者等の自立と社会経済活動への参加を促進するという行政目的の実現のためになされたものと認められる。本件許可それ自体は、施設の財産的価値に着目し、その価値の維持、保全を図る財務的処理を直接の目的とするものではない。 したがって、本件許可は、財務会計上の財産管理行為には当たらず、住民監査請求の対象とはならないと解するのが相当である。 2 財産の管理を怠る事実に当たるとの主張について 住民監査請求を行うに当たり、請求人は、自らが問題とする財産の管理・公金の徴収を怠る事実の違法性または不当性について具体的かつ客観的に摘示する必要がある。 請求人は、本件団体が本件許可により使用を許可された財産の運用に当たり、許可条件で禁止されている転貸を実質的に行っているとして、これを区が是正しないことから「財産の管理を怠る事実」に当たると主張しているものと解される。 この主張について、請求人は、本件団体の決算報告において、本件許可に基づく自動販売機の売上が計上されていないことが転貸に当たるとの請求人の考えを述べるにとどまるものといわざるを得ず、財産の管理を怠る事実の違法性または不当性について具体的かつ客観的に示したものとは認められない。 また、本件許可を取消すべき事情があったとしても、本件許可の行政目的が直ちに損なわれるものではなく、本件請求は、財務会計上の行為に係る違法・不当について監査を求めるものとは認められない。 3 公金の徴収を怠る事実に当たるとの主張について 請求人は、本件許可の使用料と、一般競争入札を行ったうえで行政財産の貸付けにより自動販売機の設置を行った場合の貸付料に差があることをもって、「公金の徴収を怠る事実」に当たると主張しているものと解される。 自動販売機の設置に関して、法第238条の4第7項の規定に基づく行政財産使用許可または都市公園法第5条第1項の規定に基づく公園施設設置許可とするか、法第238条の4第2項の規定に基づく行政財産の貸付けにより設置するかの判断は、行政目的に応じてなされるのであり、行政の裁量に委ねられている。 請求人は、2で説示したとおり、自らが問題とする財産の管理・公金の徴収を怠る事実の違法性または不当性について具体的かつ客観的に摘示する必要があるところ、本件許可の使用料と、行政財産の貸付けにより自動販売機を設置している事例の貸付料との間に差があることを論じているにとどまり、公金の徴収を怠る事実の違法性または不当性について具体的かつ客観的に示したものとは認められない。  以上のことから、本件請求は法第242条に定める住民監査請求の要件を欠いており、不適法である。