品監収第49号 令和8年2月27日 請求人 様 品川区監査委員 コウチ ユタカ 同 アリガ ヤスコ 同 コシバ アラタ 同 アクツ ヒロオ 品川区職員措置請求(住民監査請求)に基づく 監査を実施しないことについて(通知)  令和8年1月7日付け品監収第49号で受け付けた品川区職員措置請求(住民監査請求)については、請求の要件を審査した結果、下記の理由により地方自治法(昭和22年法律第67号。以下「法」という。)第242条に定める住民監査請求の要件を欠いているものと認定しました。 よって、監査を実施しないことと決定しましたので通知します。 記  法第242条に定める住民監査請求とは、地方公共団体の執行機関または職員について、違法・不当な財産の取得・管理・処分、契約の締結・履行等の財務会計行為または怠る事実があると認めるとき、これらを証する書面を添え、監査委員に対し、監査を求め、当該違法・不当な財務会計行為を防止・是正し、地方公共団体の被った損害を補填するために必要な措置を講ずべきことを請求することができる制度である。  本件請求において、請求人は、区が法第238条の4の規定に基づき団体Aに対して行った八潮地域センターにおける行政財産使用許可(以下「本件使用許可」という。)について、本件使用許可が法第234条の適用を受けるものとして、同条の規定に基づく一般競争入札の手続を経ていないことなどから、本件使用許可が違法・不当な財産の管理または契約の締結に当たると主張し、また、本件使用許可に付随してなされた使用料の免除処分(以下「本件免除」という。)についても、違法・不当であると主張しているものと解される。 まず、いかなる行為が住民監査請求の対象となるのかについては、住民監査請求が住民訴訟の前置手続であるところ、最高裁判決は「法二四二条の二に定める住民訴訟は、地方財務行政の適正な運営を確保することを目的とし、その対象とされる事項は法二四二条一項に定める事項、すなわち公金の支出、財産の取得・管理・処分、契約の締結・履行、債務その他の義務の負担、公金の賦課・徴収を怠る事実、財産の管理を怠る事実に限られるのであり、右事項はいずれも財務会計上の行為又は事実としての性質を有するものである。」とし、「住民による住民訴訟が適法といえるためには、上告人らの行為が『財務会計上の行為』としての財産管理行為に当たる場合でなければならない。」と判示している。そのうえで、「財務会計上の行為としての財産管理行為」について、「財産的価値に着目し、その価値の維持、保全を図る財務的処理を直接の目的とする財務会計上の財産管理行為」と定義したうえ、「上告人らの右行為は、市道予定地を道路状の形状にすることにより道路整備計画の円滑な遂行・実現を図るという道路建設行政の見地からする道路行政担当者としての行為(判断)であって、本件土地の森林(保安林)としての財産的価値に着目し、その価値の維持、保全を図る財務的処理を直接の目的とする財務会計上の財産管理行為には当たらないと解するのが相当である。」として住民による住民訴訟の提起を不適法であるとして却下している。(最高裁判所第一小法廷 平成2年4月12日判決 損害賠償(住民訴訟)請求事件参照) 上記の最高裁判決に照らせば、住民による住民監査請求が適法といえるためには、請求の対象とする行為が「財務会計上の行為としての財産管理行為」に当たる場合でなければならず、言い換えれば、「財産的価値に着目し、その価値の維持、保全を図る財務的処理を直接の目的とする財務会計上の財産管理行為」に当たる場合でなければならない。  これを本件請求について見ると、本件使用許可は、八潮地域センターの建物の一部において飲料の自動販売機2台を設置するため、法第238条の4の規定に基づき行政財産本来の用途または目的を妨げない限度において団体Aが使用することを許可した行政処分であり、自動販売機の設置を通じて八潮地域センターを利用する者の利便に資するという行政目的に加え、区の障害福祉政策の一環として、障害者団体等への継続的な財政的支援を図り、もって障害者等の自立と社会経済活動への参加を促進するという行政目的の実現のためになされたものと認められる。したがって、本件使用許可は、「財産的価値に着目し、その価値の維持、保全を図る財務的処理を直接の目的とする財務会計上の財産管理行為」には当たらないと考えるのが相当である。  次に、本件免除は、本件使用許可に付随する行政処分であり、上記のとおり本件使用許可が住民監査請求の対象にならないのであれば、それに付随して本件免除も住民監査請求の対象から外れると考えるのが相当である。言い換えれば、免除処分の前提として使用料の賦課処分があり、使用料の賦課処分を前提として免除処分があるという関係にあるため、本件免除だけを独立に論ずることができず、本件使用許可が住民監査請求の対象から外れると、本件免除も住民監査請求の対象から外れると考えるのが相当である。なお、本件使用許可においては月額2,050円の使用料を納付することを許可条件として付しており、使用料を免除している事実はないものと認められる。  次に、本件使用許可は法第238条の4の規定に基づく行政処分であることから、法第234条の規定の適用を受ける契約に該当しないことは明らかであり、法第242条第1項に定める契約の締結に係る財務会計上の行為には当たらない。  以上のことから、本件請求は法第242条に定める住民監査請求としては不適法である。