品監収第61号 令和8年3月25日 請求人 様 品川区監査委員 コウチ ユタカ 同 アリガ ヤスコ 同 コシバ アラタ 同 アクツ ヒロオ                         品川区職員措置請求(住民監査請求)に基づく 監査を実施しないことについて(通知)  令和8年3月3日付け品監収第61号で受け付けた品川区職員措置請求(住民監査請求。以下「本件請求」という。)については、請求の要件を審査した結果、下記の理由により地方自治法(昭和22年法律第67号。以下「法」という。)第242条に定める住民監査請求の要件を欠いているものと認定しました。 よって、監査を実施しないことと決定したので通知します。 記 本件請求において、請求人は、区が法第238条の4第7項の規定に基づき団体Aに対して行った荏原平塚総合区民会館における行政財産使用許可(以下「本件使用許可」という。)について、特定の団体(略)に使用許可を与えることが「違法・不当な財産の管理」に当たり、また、法が定める財産の誠実な管理義務に違反していることをもって「財産の管理を怠る事実」に当たると主張しているものと解される。 1 違法・不当な財産の管理に当たるとの主張について 住民監査請求の対象となる事項は、「法242条1項に定める事項、すなわち公金の支出、財産の取得・管理・処分、契約の締結・履行、債務その他の義務の負担、公金の賦課・徴収を怠る事実、財産の管理を怠る事実に限られるのであり、右事項はいずれも財務会計上の行為又は事実としての性質を有するものである」(最高裁判所第一小法廷 平成2年4月12 日判決 損害賠償(住民訴訟)請求事件参照)。したがって、財務会計上の行為または事実としての性質を有しないところの一般行政上の行為または事実は、住民訴訟の対象とはならない。 請求人は、本件使用許可は行政の平等原則に反する違法・不当な財産の管理に当たると主張しているものと解される。 しかるところ、財産管理行為の全てが住民監査請求の対象となるのではなく、財務会計上の行為または事実としての性質を有する財産管理行為のみが住民監査請求の対象となる、言い換えれば、財産的価値に着目し、その価値の維持、保全を図る財務的処理を直接の目的とする財務会計上の財産管理行為のみが住民監査請求の対象となると解される(前掲最高裁判決参照)。 本件使用許可は、荏原平塚総合区民会館の建物の一部において飲料の自動販売機を設置するため、法第238条の4第7項の規定に基づき行政財産本来の用途または目的を妨げない限度において団体Aが使用することを許可した行政処分であり、自動販売機の設置を通じて荏原平塚総合区民会館を利用する者の利便に資するという行政目的に加え、区の障害福祉政策の一環として、障害者団体等への継続的な財政的支援を図り、もって障害者等の自立と社会経済活動への参加を促進するという行政目的の実現のためになされたものと認められる。本件使用許可それ自体は、荏原平塚総合区民会館の建物の財産的価値に着目し、その価値の維持、保全を図る財務的処理を直接の目的とするものではない。 したがって、本件使用許可は、財務会計上の財産管理行為には当たらず、住民監査請求の対象とはならないと解するのが相当である。 2 財産の管理を怠る事実に当たるとの主張について 請求人は、法が定める「財産の誠実な管理義務」に違反していることをもって「怠る事実」に当たると主張しているものと解される。 しかるところ、法第242条に定める「財産の管理を怠る事実」とは、財務的処理を直接の目的とする財務会計上の財産管理行為を怠ることを意味する。 しかるに、上記1において説示したところによれば、本件使用許可は、財務的処理を直接の目的とする財務会計上の行為としての財産管理行為を怠る事実には当たらないと解されるのであるから、本件請求のうち、本件使用許可が「財産の管理を怠る事実」に当たるとしてなされている部分は、法第242条に定める住民監査請求の要件を欠いており、不適法である。  以上のことから、本件請求は法第242条に定める住民監査請求としては不適法である。