タイトル 令和2年度各会計決算審査意見書、基金運用状況審査意見書、財政健全化審査意見書(読み上げ対応) 令和2年度品川区各会計決算審査意見書 地方自治法第233条第2項の規定に基づき、令和2年度品川区各会計歳入歳出決算書およびその関係書類を審査した結果について次のとおり意見を述べる。 令和3年9月3日 品川区監査委員 島田コウタロウ 同     森井じゅん 同       鈴木マスミ 同       横山ユカリ 第1 審査対象 1 令和2年度品川区各会計歳入歳出決算書 2 令和2年度品川区各会計歳入歳出決算事項別明細書  3 令和2年度品川区各会計実質収支に関する調書 4 令和2年度品川区財産に関する調書 第2 審査実施の時期 令和3年7月1日から令和3年8月20日まで 第3 審査の方法 計数に誤りはないか、財政運営は健全か、予算の執行は関係法令に従って効率的になされているか、財産管理は適正かなどに主眼をおき、それぞれの関係帳簿および証拠書類との照合、説明聴取その他必要と認める審査方法により実施した。 第4 審査の結果 審査に付された各会計歳入歳出決算書等の様式は、関係法令の規定に準拠して作成されており、計数はいずれも符合し誤りのないことを確認した。 各会計の決算内容、予算執行状況および財産の管理状況については、適正かつ妥当と認められた。 なお、事業の執行状況に関する意見については付帯意見として記した。 以下、順を追って審査の概要を述べる。  1 決算の総括 金額は千円のくらいで四捨五入し、万円単位としている。パーセントは小数点第2位で四捨五入している。 各会計決算額を単純に合計した総計は、歳入額3100億2350万円、歳出額3049億1641万円で、差引残額は51億709万円の黒字となっており、前年度に比べ歳入額は21.8%増加し、歳出額は22.5%増加している。差引残額は10.9%減少している。 各会計歳入歳出決算の総括は、次のとおりである。 一般会計 歳入額 2399億7867万円 歳出額 2363億1670万円 差引残額 36億6197万円 国民健康保険事業会計 歳入額 355億1218万円 歳出額 345億9036万円 差引残額 9億2182万円 後期高齢者医療特別会計 歳入額 88億2918万円 歳出額 87億4648万円 差引残額 8270万円 介護保険特別会計 歳入額 257億347万円 歳出額 252億6288万円 差引残額 4億4059万円 災害復旧特別会計 歳入額 0円 歳出額 0円 差引残額 0円 総計 歳入額 3100億2350万円 歳出額 3049億1641万円 差引残額 51億709万円 2 一般会計 (1)決算の概況 歳入総額2399億7867万円、歳出総額2363億1670万円で、形式収支(歳入歳出差引額)は36億6197万円の黒字となっており、翌年度へ繰り越すべき財源1億5649万円を差し引いた実質収支も35億548万円の黒字となっている。 歳入総額は前年度(1841億5706万円)に比べ558億2161万円、30.3%、歳出総額は前年度(1790億4435万円)に比べ572億7235万円、32.0%増加している。 当年度実質収支35億548万円から前年度実質収支(50億7509万円)を差し引いた単年度収支は15億6960万円の赤字となっている。 (2)歳入 調定額2415億4451万円、収入済額2399億7867万円で、調定額に対する収入率99.4%は前年度(99.2%)に比べ0.2ポイント上昇している。 収入未済率は0.6%で、前年度(0.8%)に比べ0.2ポイント低下している。 予算現額、調定額、収入済額、不納欠損額および収入未済額は、前年度に比べそれぞれ32.0%、30.1%、30.3%、23.0%、1.5%増加している。 (3)歳出 支出済額は2363億1670万円で、前年度(1790億4435万円)に比べ572億7235万円、32.0%増加している。 主な増加額は次のとおりである。 民生費(特別定額給付金、区内私立保育園経費など)443億8612万円、52.3%、総務費(しながわ活力応援給付金、基金積立金など)178億2191万円、80.0%。 主な減少額は次のとおりである。 土木費(武蔵小山駅周辺地区再開発事業、補助163号線整備事業など)マイナス66億4382万円、マイナス23.4%。 予算現額に対する執行率は94.7%で、前年度と同様である。 イ 普通会計における性質別歳出状況  各地方公共団体相互の比較をするために国が定めた統一基準による普通会計の歳出状況を見ると、決算額は2359億329万円で、前年度(1786億6702万円)に比べ572億3627万円、32.0%増加している。 このうち、人件費、扶助費および公債費の合計である義務的経費は705億6904万円で、前年度(676億3730万円)に比べ29億3174万円、4.3%増加している。 経常的経費は1204億3385万円で、前年度(1170億6556万円)に比べ33億6829万円、2.9%増加している。 財政構造の弾力性を判断する指標とされる経常収支比率は、義務的性格の経常的経費に充当された経常一般財源を経常一般財源総額で除して算定されるが、77.8%で、前年度(75.7%)に比べ、2.1ポイント上昇している。 経常的経費に充当された経常一般財源は826億4853万円で、前年度(812億8742万円)に比べ13億6112万円、1.7%増加している。 普通建設事業費など経常的経費以外の経費に充当された経常一般財源は236億1544万円で、前年度(260億5612万円)に比べ24億4069万円、9.4%減少している。 3 国民健康保険事業会計 (1)決算の概況 歳入総額355億1218万円、歳出総額345億9036万円で、形式収支(歳入歳出差引額)は9億2182万円の黒字となっており、翌年度へ繰り越すべき財源(0円)を差し引いた実質収支も同額の黒字となっている。 歳入総額は前年度(365億2605万円)に比べ10億1387万円、2.8%減少し、歳出総額は前年度(360億3385万円)に比べ14億4349万円、4.0%減少している。 当年度実質収支9億2182万円から前年度実質収支(4億9221万円)を差し引いた単年度収支は4億2961万円の黒字となっている。 (2)歳入 調定額369億8489万円、収入済額355億1218万円で、調定額に対する収入率96.0%は前年度(96.3%)に比べ0.3ポイント低下している。 収入未済率は3.3%で、前年度(3.2%)に比べ0.1ポイント上昇している。 予算現額、調定額、収入済額および収入未済額は、前年度に比べそれぞれ3.0%、2.5%、2.8%、1.8%減少し、不納欠損額は43.2%増加している。 (3)歳出 支出済額は345億9036万円で、前年度(360億3385万円)に比べ14億4349万円、4.0%減少している。 主な減少額は次のとおりである。 保険給付費マイナス12億5281万円、マイナス5.6%、国民健康保険事業費納付金マイナス1億9043万円、マイナス1.5%、総務費マイナス7,348万円、マイナス9.2%。 増加額は次のとおりである。 諸支出金1億2158万円、60.5%。 予算現額に対する執行率は96.7%で、前年度(97.7%)に比べ1.0ポイント低下している。 4 後期高齢者医療特別会計 (1)決算の概況 歳入総額88億2918万円、歳出総額87億4648万円で、形式収支(歳入歳出差引額)は8270万円の黒字となっており、翌年度へ繰り越すべき財源(0円)を差し引いた実質収支も同額の黒字となっている。 歳入総額は前年度(87億720万円)に比べ1億2198万円、1.4%、歳出総額は前年度(86億1748万円)に比べ1億2899万円、1.5%増加している。 当年度実質収支8270万円から前年度実質収支(8972万円)を差し引いた単年度収支は701万円の赤字となっている。 (2)歳入 調定額89億974万円、収入済額88億2918万円で、調定額に対する収入率99.1%は前年度と同様である。 収入未済率は0.7%で、前年度(0.9%)と比べ0.2ポイント低下している。 予算現額、調定額、収入済額および不納欠損額は、前年度に比べそれぞれ1.3%、1.4%、1.4%、136.2%増加している。 収入未済額は、前年度に比べ20.7%減少している。 (3)歳出 支出済額は87億4648万円で、前年度(86億1748万円)に比べ1億2899万円、1.5%増加している。 主な増加額は次のとおりである。 分担金及び負担金1億2403万円、1.5%、保険給付費1728万円、11.7%。 減少額は次のとおりである。 保健事業費マイナス1525万円、マイナス6.7%。 予算現額に対する執行率は98.7%で、前年度(98.5%)に比べ0.2ポイント上昇している。 5 介護保険特別会計 (1)決算の概況 歳入総額257億347万円、歳出総額252億6288万円で、形式収支(歳入歳出差引額)は4億4059万円の黒字となっており、翌年度へ繰り越すべき財源(0円)を差し引いた実質収支も同額の黒字となっている。 歳入総額は前年度(251億6274万円)に比べ5億4073万円、2.1%、歳出総額は前年度(251億2815万円)に比べ1億3473万円、0.5%増加している。 当年度実質収支4億4059万円から前年度実質収支(3459万円)を差し引いた単年度収支は4億600万円の黒字となっている。 (2)歳入 調定額259億2375万円、収入済額257億347万円で、調定額に対する収入率99.2%は前年度(99.0%)に比べ0.2ポイント上昇している。 収入未済率は0.7%で、前年度と同様である。 予算現額、調定額および収入済額は、前年度に比べそれぞれ2.5%、2.0%、2.1%増加している。  不納欠損額および収入未済額は、前年度に比べそれぞれ22.1%、8.6%減少している。 (3)歳出 支出済額は252億6288万円で、前年度(251億2815万円)に比べ1億3473万円、0.5%増加している。  主な増加額は次のとおりである。 保険給付費2億3092万円、1.0%。  主な減少額は次のとおりである。 地域支援事業費マイナス1億2265万円、マイナス7.8%。  予算現額に対する執行率は96.2%で、前年度(98.1%)に比べ1.9ポイント低下している。 6 災害復旧特別会計 (1)決算の概況 歳入総額0円、歳出総額0円で、形式収支(歳入歳出差引額)は0円となっており、翌年度へ繰り越すべき財源(0円)を差し引いた実質収支も同額の0円となっている。 歳入総額は前年度(1074万円)に比べ1074万円、歳出総額も前年度(1074万円)に比べ1074万円皆減している。 当年度実質収支(0円)から前年度実質収支(0円)を差し引いた単年度収支は0円となっている。 (2)歳入 調定額および収入済額はいずれも0円である。 調定額および収入済額は前年度に比べそれぞれ皆減している。 (3)歳出 支出済額は0円で、前年度(1074万円)に比べ1074万円皆減している。 減少額は次のとおりである。 災害復旧費の皆減マイナス1074万円。 予算現額に対する執行率は0.0%で、前年度(0.7%)に比べ0.7ポイント低下している。 第5 付帯意見 1 総括意見 令和2年度に実施された施策の概況について意見を述べる。 令和2年度において、その決算状況(執行率)は一般会計ベースで94.7%(元年度と同様)となった。新型コロナウイルス感染症の影響に伴う事業の中止・変更により、計画どおりに執行できなかった事業も多く見受けられるが、過去最高額となる620億円余の補正予算を編成し、感染症対策および区民生活や地域経済を支援する事業を展開し、概ね高い執行実績をあげている。 まず、はじめに、新型コロナウイルス感染症対策と1年延期となった東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会について触れる。 猛威を振るう新型コロナウイルス感染症対策として、計7回にも及ぶ補正予算の編成により、電話相談センターの開設やPCR検査センターを設置するとともに、特別定額給付金や区独自の「しながわ活力応援給付金」の支給により、区民生活全般の下支えを行った。 また、区の特色の一つである商店街や中小企業等を中心とした区内経済活動への影響を最小限に食い止めるため、中小企業事業資金融資あっせんの拡充や30%プレミアム付区内共通商品券の発行助成等を行った。 そして、オリンピック・パラリンピック開催周知事業については、新型コロナウイルス感染症の影響により、ホスピタリティハウスや聖火リレーは事業の見直しを余儀なくされたものの、「品川区オリンピック・パラリンピック準備課1年前どうしようか会議」のオンライン配信や、ホッケーのオンライン教室を行うなど、コロナ禍における機運醸成のあり方を模索しながら準備を進めた。 次に、令和2年度に掲げた重要施策について述べる。 その1は、「長期基本計画」における「4つの視点と3つの政策分野」についてである。 まず、第1は、超長寿社会に対応する視点である。 はじめに、健康づくりについては、受動喫煙防止に関する普及啓発を行うとともに、大崎駅新西口歩道橋したに加熱式たばこ専用の喫煙所を整備した。 次に、がん対策については、夜間相談窓口事業を開始した。また、区立学校8年生を対象に外部講師によるがん教育を行った。さらに、インフルエンザの予防接種については、費用の助成を重症化しやすい幼児まで拡大した。 そして、障害者福祉については、グループホームの整備に向け、西大井三丁目の国有地を取得し、施設の基本設計を行った。 第2は、多文化・多様な生き方を尊重する視点である。 まず、多文化共生については、外国人との交流促進に向けたケーブルテレビ番組を制作した。 次に、多様な生き方を認め合う視点での施策については、性自認・性的指向のあり方や多様性を認め合い、偏見をなくせるよう交流事業「みんなのひろば」を開催した。 さらに、障害者スポーツの普及・推進を支援したほか、義務教育学校2校において、特別支援学級を新たに開設した。 第3は、強靭で魅力あるまちを未来につなぐ視点である。 まず、災害対策については、令和元年の大型台風の教訓を生かし、大規模停電時の電源確保のため長時間稼働発電機を避難所に配備した。さらに、パーテーション資材や簡易ベッドの導入、要配慮者の避難体制充実のための福祉避難所の体制整備も進めた。また、被災状況を迅速に把握するためにドローンを本格導入したほか、防災タブレットをリニューアルした。 次に、ハード面での強靭なまちづくりである。令和2年度をもって終了予定だったもくみつ地域不燃化10年プロジェクトについては、新たな地域を加え、不燃化特区支援制度として事業を5年間延伸した。 第4は、先端技術を活用して課題解決と発展を図る視点である。 まず、教育分野におけるICTの活用については、区立学校において、タブレット端末貸与や、AIを活用した教材の導入のほか、コミュニケーションロボットを活用したプログラミング教育を実施した。 次に、税や国民健康保険料については、スマートフォンによる収納サービスを、また住民票の写し等の交付手数料については、交通系ICカードによる収納サービスを始めた。 第5は、3つの政策分野 「地域」「人」「安全」である。 まず、「地域」の分野についてである。区の歴史と文化の発信拠点である品川歴史館については、施設改修および展示実施設計を進めている。また、水辺においては、目黒川や天王洲運河に架かるアイルばしなど5きょうのLED照明によるライトアップ設備を新たに整備した。 次に、「人」の分野についてである。 まず、児童虐待については、未然防止、早期発見・対応を図るため、「子ども家庭支援センター」を設置した。また、保育施設の拡充については、新たに認可保育園10園を開設した。 そして、区立学校については、就学人口の増加や老朽化等へ対応するため、城南第二小学校および源氏前小学校の改修計画の検討を行った。 さらに、「安全」の分野についてである。 まず、土地利用状況が大きく変化している立会川・勝島地区は、都市再生整備計画の策定について検討を進めている。また、住宅確保要配慮者への支援については、不動産関係団体や居住支援団体と連携した居住支援協議会において、支援策の検討を行った。 次に、戸越公園内に計画している環境学習交流施設については、公園での立地を活かした体験型の施設として整備を進めている。 そして、鉄道駅可動式ホーム柵設置については、東急目黒線の区内全駅において、車両編成増に伴う追加設置工事に対する助成を行った。コミュニティバスについては、地域公共交通会議を開催し、その導入について検討を進めている。 その2は、「変化に対応する持続可能な区政運営」についてである。 まず、区が推進する職員の働き方改革「シナガワーク」については、職員向けの業務効率化研修を実施し、業務改善に繋がるBPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)の手法を全庁展開した。 そして、新庁舎については、庁舎機能の検討を本格化させた。 令和2年度の決算審査を通じ、次のとおり意見を述べる。 その1は、これからの品川を支える施設運営についてである。 まず、令和2年9月に児童発達支援、障害者生活支援、地域活動支援などの機能を備えて開設した障害児者総合支援施設「ぐるっぽ」については、令和4年10月1日から指定管理者を変更しサービス提供と建物管理を一体的に行うとのことである。これまで培ってきたサービスの質が低下することのないよう利用者の立場に寄り添った施設運営を心掛け、障害のある人もいきいきと暮らせる環境づくりに努めてほしい。 次に、児童相談所については、令和6年度の開設に向けハード面の整備のほか、人材確保と研修を中心に人材育成を進めているとのことである。開設にあたっては、他自治体の先行事例を参考にしつつ、都等との連携を深めて綿密な準備と手厚い人員配置をお願いしたい。 新庁舎については、令和9年度の移転に向け、新庁舎整備基本構想・基本計画を策定するとのことであるが、新庁舎が区民生活を支える上で必要な機能を備えた身近で便利な庁舎となるよう引き続き検討されたい。 その2は、予算執行についてである。 コロナ禍における各部局の予算執行にあたっては、「新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえた当面の区政運営について」(令和2年6月1日付け副区長依命通達)を踏まえ、感染拡大の防止、区民の生活と経済を支える取組みについて万全を期するため、補正予算および予備費充用などによる弾力的な執行が行われたが、その一方で、利用料収入の減少分を補填するための健康センター指定管理料など、1億円を超える事業間流用も見受けられた。 予算流用は、予算執行上やむを得ない事由がある場合、必要最小限で行えるものであることは理解できるものの、予算の不足が見込まれる場合にはその規模によって補正予算を編成するなど、基本に留意した予算執行に努められたい その3は、情報伝達のあり方についてである。 まず、広報紙は、新型コロナウイルス感染拡大防止による事業中止等により急遽掲載を取りやめる一方で、感染症対策の紙面発行に追われるなど、紙媒体ゆえの宿命との闘いを余儀なくされた。一般紙の発行部数が減少している中、多様な広報発信手段を拡充する試みを継続されたい。 次に、情報の周知についてである。コロナ禍による家計の急変に伴い奨学金貸付制度を必要とする世帯などに対して十分な周知、広報活動を行うことで、申請する世帯がさらに増えることが考えられる。また、戸籍証明書等の申請時に来庁できない方に対し、無料で郵送受付を行っているというが実績は伸びていない。区では機会を捉えて区民サービスや支援内容の周知を行っているが、いずれも必要とする人まで情報が伝わるよう、さらなる工夫をお願いしたい。 その4は、コロナ禍において着実に進めるべき取組みについてである。 まず、働き方改革については、業務改善への取組みを進めているが、これまで職員間で蓄積したスキルと知見が失われることがないよう必要な部署への職員の配置は引き続きお願いしたい。 次に、介護人材については、人材不足の要因の一つとして、賃金が低いため、介護の仕事に魅力を感じられないことが挙げられる。介護人材を呼び込むためにも、国や都へ予算に対する要望を行いつつ、事業法人と連携して待遇面の強化を検討されたい。 さらに、職員研修については、予算執行率が低く、参加実績も落ち込んでいる。多様化するニーズや職場環境の変化への対応など役割に応じた能力が求められていることから、オンラインによる研修等実施方法を工夫し、職員が研修へ参加できる機会を設けてほしい。 その5は、コロナ禍により中止となった事業の継続についてである。 国際友好都市交流事業、日光および磐梯高原移動教室事業はコロナ禍により中止となったが、海外交流都市とのオンライン交流や屋形船事業を行うなど形を変えて行った事業も一部見受けられた。いずれも人生を左右するような体験も期待しうるものであり、心待ちにしていた児童生徒を思うと残念でならない。 コロナ禍だからこそ見えてきた今後の事業のあり方や新しい形が必ずあるはずである。職員一人ひとりの知恵を絞り事業の執行につなげてほしい。 その6は、東京2020大会のレガシーについてである。大会は1年延期となり無観客での開催となったが、区内開催・応援競技の3競技等を通じて、様々な経験と人々との繋がりを持つことができたと考える。 その中で、区の独自ボランティアとして活躍した「しな助」に参加した方々は、ボランティア活動への継続意欲も高く、今回培った経験やネットワーク力を今後も生かすことができるので、区が引き続き、地域社会での活躍の場を提供していくなどの支援を検討されたい。 次に、川と海などの水辺についてである。大会に向けて整備された水辺などは区にとって最も貴重な財産の一つであることを今一度認識してほしい。観光にとどまらず水辺をより一層活用した事業展開を期待したい。川と海そして街道は、人とまち、今と未来を結んでいる。 次に、一般会計のうち特別区民税収について意見を述べる。 特別区民税の収入済額は497億9950万円で前年度(477億7788万円)に比べ20億2162万円、4.23%上昇している。現年課税分の収入率は99.32%で前年度(99.08%)に比べ0.24ポイント上昇し、滞納繰越分は58.22%で前年度(64.48%)に比べ6.26ポイント低下している。その結果、全体の収入率は98.86%となり前年度(98.77%)に比べ0.09 ポイント上昇している。なお、30 年度からの全体の収入率は、30年度98.98%、元年度98.77%、2年度98.86%と、納税義務者の増加および納付手段の拡充により依然高い数値を維持している。 次に、特別会計について意見を述べる。  国民健康保険事業会計は、歳入総額は対前年度10億1387万円減少し、歳出総額も対前年度14億4349万円減少し、単年度収支において4億2961万円の黒字(前年度6934万円の赤字)となっている。歳入については、主な歳入項目のうち、繰入金、諸収入は対前年度それぞれ1.9%、65.8%増加、また、国庫支出金は、新型コロナウイルス感染症対応分に伴い869.8%増加したものの、都支出金、国民健康保険料が対前年度それぞれ4.7%、2.6%減少したため、全体として対前年度2.8%の減少となっている。 一方、歳出については、主な歳出項目のうち、諸支出金が対前年度60.5%と増加したものの、保険給付費、国民健康保険事業費納付金が対前年度それぞれ5.6%、1.5%と減少したため、全体として対前年度4.0%の減少となっている。 令和2年度の保険料の対調定収納率は86.61%で前年度(87.36%)に比べ0.75 ポイント低下している。このうち現年度分は93.15%で前年度(92.08%)に比べ1.07ポイント上昇し、高い収納率を達成することができた。これらは、特別区民税と同様に納付手段の拡充とともに、口座振替新規申込みキャンペーン等、職員の創意工夫によるところである。 後期高齢者医療特別会計は、歳入総額は対前年度1億2198万円増加、歳出総額は対前年度1億2899万円増加し、単年度収支においては701万円の赤字(前年度3328万円の黒字)となっている。歳入については、繰入金が対前年度1.5%減少しているが、後期高齢者医療保険料、繰越金が対前年度それぞれ3.2%、59.0%増加し、全体として対前年度1.4%の増加となっている。 一方、歳出については、保健事業費が対前年度6.7%減少しているが、支出総額の93.5%を占める分担金及び負担金が対前年度1.5%増加し、全体として1.5%の増加となっている。 令和2年度の保険料の対調定収入率(還付未済額を除く)は98.07%で前年度(97.94%)に比べ0.13ポイント上昇している。今後も、口座振替の促進等によりさらなる収納率の向上に努められたい。 介護保険特別会計は、歳入総額は対前年度5億4073万円増加、歳出総額は対前年度1億3473万円増加し、単年度収支においては4億600万円の黒字(前年度2億3221万円の赤字)となっている。歳入については、繰越金、保険料が対前年度それぞれ87.0%、1.7%減少しているが、都支出金、繰入金、国庫支出金が対前年度それぞれ13.9%、3.8%、2.6%増加し、全体として対前年度2.1%の増加となっている。 一方、歳出については、地域支援事業費が対前年度7.8%減少しているが、支出総額の91.1%を占める保険給付費が対前年度1.0%増加し、全体として0.5%の増加となっている。 令和2年度の保険料の対調定収入率(還付未済額を除く)は95.90%で前年度(95.42%)に比べ0.48ポイント上昇している。今後も、口座振替の促進等によりさらなる収納率の向上に努められたい。 以上、令和2年度決算における事業の執行状況についての総括意見を述べた。2年度は、特別区税が前年度の513億円を17億円(3.4%)上回るなど歳入は堅調に推移したが、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化する中、日本銀行の金融政策や持続化給付金等による国の財政政策により景気を支えているものの、度重なる緊急事態宣言の発出等により飲食業を中心に地域経済の本格的な回復までには程遠い状況にある。今後も特別区民税や都区財政調整交付金の動向を注視し、より慎重で着実な行財政運営が求められる。 区は昨年度策定した長期基本計画の実現に向けて、総合実施計画の策定作業を再開した。新型コロナウイルス感染拡大防止に伴い浸透した新しい生活様式の実践をはじめ、それぞれの生き方や社会のあり方の見直しが求められる中、感染症の影響下で得られた様々な知見を十分に生かし、総合実施計画が社会の変化を捉えたものになることを要望する。 2年目となる新型コロナウイルス感染症への対策として、今年度はワクチン接種が実施されている。保健所職員を中心に現在も感染防止の対応のため並々ならぬ努力と忍耐の毎日を過ごしていること、そして、ワクチン接種等への対応にあたっては各部局の職員も応援従事していることに対し敬意と感謝の意を表するとともに、1日も早く希望者全員が接種できるようにお願いしたい。 コロナ禍の収束の見通しが立たず、閉塞感が漂う今だからこそ職員はさらに力を合わせて、安全で安心できる区民生活を取り戻すため、品川区職員としての矜持を持って職務に精励されたい。そして、この逆境を越えた先の変化を見据えた新たな課題への対処に備え、職員一人ひとりが倦まず撓まず地道な努力を続けてほしい。 コロナ禍の影響により千変万化する状況であっても、区は、区民の不安が払拭されるよう常に万全な体制をとることに努め、真に必要な施策がさらに展開されることを期待する。 2 個別意見 (1)主要決算数値および指標について 令和2年度普通会計(決算統計)の決算状況について、主な決算数値および指標は次のとおりである。 歳入総額2395億6527万円、歳出総額2359億329万円で、形式収支は36億6198万円(対前年度28.4%の減)の黒字となっており、翌年度へ繰り越すべき財源1億5649万円を差し引いた実質収支は35億549万円の黒字(対前年度30.9%の減)となっている。また、当年度実質収支から前年度実質収支を差し引いた単年度収支は15億6960万円の赤字、それに財政調整基金積立金を加え、さらに財政調整基金取崩額を差し引いた実質単年度収支も111億7668万円の赤字となっている。 財政運営の状況を判断する指標とされる実質収支比率は3.4%で、前年度(4.9%)に比べ1.5ポイント低下している。 23区の平均値(7.0%、速報値)と比べると3.6ポイント下回っているが、一般的に3から5%が望ましい水準とされている。   財政構造の弾力性を判断する指標とされる経常収支比率は77.8%で、前年度(75.7%)に比べ2.1ポイント上昇している。 23区の平均値(81.9%、速報値)と比べると4.1ポイント下回っている。  経常収支比率と同様に、財政構造の弾力性を判断する指標とされる公債費負担比率は0.9%で、前年度(1.1%)に比べ0.2ポイント低下している。 歳出総額に占める人件費の割合を示す人件費比率は10.6%で、前年度(13.6%)に比べ3.0ポイント低下している。これは、23区の平均値(12.6%、速報値)と比べると2.0ポイント下回っている。 また、人件費の経常収支比率は21.3%で、前年度(20.2%)に比べ1.1ポイント上昇している。 平成14年度以降マイナスであった自主財源人員(いわゆる、ざいちょうかいん)は、平成22年度はプラスになったが、平成23年度からはふたたびマイナスとなっている。  以上、令和2年度普通会計の決算に見られる主な決算数値および指標は、いずれも適正な水準を維持していると言える。 令和2年度品川区基金運用状況審査意見書 地方自治法第241条第5項の規定に基づき、令和2年度品川区基金の運用状況を審査した結果について次のとおり意見を述べる。 令和3年9月3日 品川区監査委員 島田コウタロウ 同     森井じゅん 同       鈴木マスミ 同       横山ユカリ 第1 審査対象 1 用品基金 2 公共料金支払基金 (参考) 1 奨学金貸付基金 2 社会福祉基金 3 平和基金 4 地球環境基金 5 地域振興基金 6 公共施設整備基金 7 財政調整基金 8 減債基金 9 義務教育施設整備基金 10 介護給付費等準備基金 11 文化スポーツ振興基金 12 災害復旧基金 第2 審査実施の時期 令和3年7月1日から令和3年8月20日まで 第3 審査の方法 各基金が確実かつ効率的に運用されているかなどに主眼をおき実施した。 第4 審査の結果 関係帳簿を審査した結果、別表のとおり適正に運用され計数に誤りのないことを確認した。 別表1 用品基金 令和2年度末保有状況 15,000,000円 令和2年度中運用状況 用品調達額 240,775,141円  用品払出額 240,936,773円 基金回転数 16.05回 運用益金 161,632円  公共料金支払基金 令和2年度末保有状況 270,000,000円 令和2年度中運用状況 公共料金支払額 1,323,129,986円  収入額 1,322,646,972円 基金回転数 4.90回 運用益金 0円  別表2 用品基金 令和元年度末現在高 15,000,000円 令和2年度中増減 増分0円 減分0円 令和2年度末現在高 15,000,000円 公共料金支払基金 令和元年度末現在高 270,000,000円 令和2年度中増減 増分0円 減分0円 令和2年度末現在高 270,000,000円 合計 令和元年度末現在高 285,000,000円 令和2年度中増減 増分0円 減分0円 令和2年度末現在高 285,000,000円 令和2年度品川区財政健全化審査意見書  地方公共団体の財政の健全化に関する法律第3条第1項の規定に基づき、令和2年度決算に係る健全化判断比率およびその算定の基礎となる事項を記載した書類を審査した結果について次のとおり意見を述べる。 令和3年9月3日 品川区監査委員 島田コウタロウ 同     森井じゅん 同       鈴木マスミ 同       横山ユカリ 第1 審査対象 実質赤字比率、連結実質赤字比率、実質公債費比率および将来負担比率(以下健全化判断比率という。)ならびにその算定の基礎となる事項を記載した書類 第2 審査実施の時期 令和3年7月1日から令和3年8月20日まで 第3 審査の方法 令和2年度決算に基づく健全化判断比率が地方公共団体の財政の健全化に関する法律(以下法という。)その他関連法令に基づいて算出され、かつ、その算定の基礎となる事項を記載した書類が適正に作成されているかに主眼をおき実施した。 第4 審査の結果 審査に付された健全化判断比率の算定の基礎となる事項を記載した書類は適正に作成されているものと認められた。また、いずれの比率も早期健全化基準を下回っており特に指摘すべき事項はない。 以下、順を追って審査の概要を述べる。 1 健全化判断比率の状況 法は、自治体の財政状況により、財政が比較的健全な自治体、早期の財政健全化が必要な自治体(早期健全化団体)、財政の再生が必要な自治体(財政再生団体)に区分する。 この区分は、( 1 )実質赤字比率、( 2 )連結実質赤字比率、( 3 )実質公債費比率、( 4 )将来負担比率の各健全化判断比率に応じて決定され、このうち、( 1 )から( 4 )の比率のいずれかが早期健全化基準以上になると早期健全化団体となり、( 1 )から( 3 )の比率のいずれかが財政再生基準以上になると財政再生団体となる。 2 各比率の状況 (1)実質赤字比率 一般会計および災害復旧特別会計を対象とした実質赤字額の標準財政規模に対する比率である実質赤字比率は、実質収支額が黒字であるため算定されない。算出比率はマイナス3.43%で、早期健全化基準の11.25%を下回っている。 (2)連結実質赤字比率 全会計を対象とした連結実質赤字額の標準財政規模に対する比率である連結実質赤字比率は、連結実質収支額が黒字であるため算定されない。算出比率はマイナス4.85%で、早期健全化基準の16.25%を下回っている。 (3)実質公債費比率 地方債に係る元利償還金および準元利償還金の標準財政規模に対する比率である実質公債費比率はマイナス4.5%で、早期健全化基準の25.0%を下回っている。 (4)将来負担比率 将来負担すべき実質的な負債の標準財政規模に対する比率である将来負担比率は、充当可能財源等の額が将来負担額を上回るため算定されない。算出比率はマイナス105.3%で、早期健全化基準の350.0%を下回っている。 さらに詳細な内容については、次の担当部署へご連絡ください。 監査委員事務局 電話 0 3 5 7 4 2 6 8 5 0 ファクシミリ 0 3 5 7 4 2 6 8 9 9