タイトル 令和3年度各会計決算審査意見書、基金運用状況審査意見書、財政健全化審査意見書(読み上げ対応) 令和3年度品川区各会計決算審査意見書 地方自治法第233条第2項の規定に基づき、令和3年度品川区各会計歳入歳出決算書およびその関係書類を審査した結果について次のとおり意見を述べる。 令和4年9月1日 品川区監査委員 シマダコウタロウ 同     モリイジュン 同       ワタナベユウイチ 同       コンノタカコ 第1 審査対象 1 令和3年度品川区各会計歳入歳出決算書 2 令和3年度品川区各会計歳入歳出決算事項別明細書  3 令和3年度品川区各会計実質収支に関する調書 4 令和3年度品川区財産に関する調書 第2 審査実施の時期 令和4年7月1日から令和4年8月19日まで 第3 審査の方法 計数に誤りはないか、財政運営は健全か、予算の執行は関係法令に従って効率的になされているか、財産管理は適正かなどに主眼をおき、それぞれの関係帳簿および証拠書類との照合、説明聴取その他必要と認める審査方法により実施した。 第4 審査の結果 審査に付された各会計歳入歳出決算書等の様式は、関係法令の規定に準拠して作成されており、計数はいずれも符合し誤りのないことを確認した。 各会計の決算内容、予算執行状況および財産の管理状況については、適正かつ妥当と認められた。 なお、事業の執行状況に関する意見については付帯意見として記した。 以下、順を追って審査の概要を述べる。  1 決算の総括 金額は千円のくらいで四捨五入し、万円単位としている。パーセントは小数点第2位で四捨五入している。 各会計決算額を単純に合計した総計は、歳入額2659億7288万円、歳出額2573億8308万円で、差引残額は85億8980万円の黒字となっており、前年度に比べ歳入額は14.2%減少し、歳出額は15.6%減少している。差引残額は68.2%増加している。 各会計歳入歳出決算の総括は、次のとおりである。 一般会計 歳入額 1938億6108万円 歳出額 1868億5591万円 差引残額 70億517万円 国民健康保険事業会計 歳入額 367億2752万円 歳出額 362億4816万円 差引残額 4億7937万円 後期高齢者医療特別会計 歳入額 87億9827万円 歳出額 86億8329万円 差引残額 1億1498万円 介護保険特別会計 歳入額 265億8599万円 歳出額 255億9572万円 差引残額 9億9028万円 災害復旧特別会計 歳入額 0円 歳出額 0円 差引残額 0円 総計 歳入額 2659億7288万円 歳出額 2573億8308万円 差引残額 85億8980万円 2 一般会計 (1)決算の概況 歳入総額1938億6108万円、歳出総額1868億5591万円で、形式収支(歳入歳出差引額)は70億517万円の黒字となっており、翌年度へ繰り越すべき財源6136万円を差し引いた実質収支も69億4381万円の黒字となっている。 歳入総額は前年度(2399億7867万円)に比べ461億1759万円、19.2%、歳出総額は前年度(2363億1670万円)に比べ494億6078万円、20.9%減少している。 当年度実質収支69億4381万円から前年度実質収支(35億548万円)を差し引いた単年度収支は34億3832万円の黒字となっている。 (2)歳入 調定額1962億8518万円、収入済額1938億6108万円で、調定額に対する収入率98.8%は前年度(99.4%)に比べ0.6ポイント低下している。 収入未済率は1.2%で、前年度(0.6%)に比べ0.6ポイント上昇している。 不納欠損額および収入未済額は、前年度に比べそれぞれ29.4%、55.6%増加している。 予算現額、調定額および収入済額は、前年度に比べそれぞれ18.3%、18.7%、19.2%減少している。 (3)歳出 支出済額は1,868 億5,591万円で、前年度(2363億1670万円)に比べ494 億6,078 万円、20.9%減少している。 主な減少額は次のとおりである。 民生費(特別定額給付金など) マイナス354 億4,273 万円、マイナス27.4%、総務費(しながわ活力応援給付金など)マイナス 94 億7,952 万円、マイナス23.6%。 増加額は次のとおりである。 衛生費(予防接種費、しながわ環境未来事業など)51 億9,274 万円、37.2%。 予算現額に対する執行率は91.6%で、前年度(94.7%)に比べ、3.1ポイント低下している。 イ 普通会計における性質別歳出状況  各地方公共団体相互の比較をするために国が定めた統一基準による普通会計の歳出状況を見ると、決算額は1864億5918万円で、前年度(2359億329万円)に比べ494億4411万円、21.0%減少している。 このうち、人件費、扶助費および公債費の合計である義務的経費は792億5712万円で、前年度(705億6904万円)に比べ86億8808万円、12.3%増加している。 経常的経費は1240億1811万円で、前年度(1204億3385万円)に比べ35億8426万円、3.0%増加している。 財政構造の弾力性を判断する指標とされる経常収支比率は、義務的性格の経常的経費に充当された経常一般財源を経常一般財源総額で除して算定されるが、74.8%で、前年度(77.8%)に比べ、3.0ポイント低下している。 経常的経費に充当された経常一般財源は860億1411万円で、前年度(826億4853万円)に比べ33億6558万円、4.1%増加している。 普通建設事業費など経常的経費以外の経費に充当された経常一般財源は289億2109万円で、前年度(236億1544万円)に比べ53億565万円、22.5%増加している。    3 国民健康保険事業会計 (1)決算の概況 歳入総額367億2752万円、歳出総額362億4816万円で、形式収支(歳入歳出差引額)は4億7937万円の黒字となっており、翌年度へ繰り越すべき財源(0円)を差し引いた実質収支も同額の黒字となっている。 歳入総額は前年度(355億1218万円)に比べ12億1534万円、3.4%増加し、歳出総額は前年度(345億9036万円)に比べ16億5780万円、4.8%増加している。 当年度実質収支4億7937万円から前年度実質収支(9億2182万円)を差し引いた単年度収支は4億4246万円の赤字となっている。 (2)歳入 調定額381億4276万円、収入済額367億2752万円で、調定額に対する収入率96.3%は前年度(96.0%)に比べ0.3ポイント上昇している。 収入未済率は2.9%で、前年度(3.3%)に比べ0.4ポイント低下している。 予算現額、調定額、収入済額および不納欠損額は、前年度に比べそれぞれ4.4%、3.1%、3.4%、 22.1%増加し、収入未済額は9.8%減少している。 (3)歳出 支出済額は362 億4,816 万円で、前年度(345億9036万円)に比べ16 億5,780 万円、4.8%増加している。 増加額は次のとおりである。 保険給付費17 億9,905 万円、8.5%、保健事業費1,982 万円、7.7%。 減少額は次のとおりである。  国民健康保険事業費納付金マイナス1億952万円、マイナス0.9%、総務費マイナス3,971万円、マイナス5.5%、諸支出金マイナス 1,185 万円、マイナス 3.7%。予算現額に対する執行率は97.1%で、前年度( 96.7%)に比べ0.4 ポイント上昇している。 4 後期高齢者医療特別会計 (1)決算の概況 歳入総額87億9,827万円、歳出総額86億8,329万円で、形式収支(歳入歳出差引額)は1億1,498 万円の黒字となっており、翌年度へ繰り越すべき財源( 0 円)を差し引いた実質収支も同額の黒字となっている。 歳入総額は前年度(88 億2,918 万円)に比べ3,091 万円、0.4%、歳出総額は前年度( 87億4,648万円)に比べ6,318 万円、0.7%減少している。 当年度実質収支1億1,498万円から前年度実質収支( 8,270万円)を差し引いた単年度収支は3,228 万円の黒字となっている。 (2)歳入  調定額88億6,837万円、収入済額87億9,827万円で、調定額に対する収入率99.2%は前年度( 99.1%)に比べ0.1 ポイント上昇している。 収入未済率は0.7%で、前年度と同様である。 予算現額、調定額、収入済額、不納欠損額および収入未済額は、前年度に比べそれぞれ1.0%、0.5%、0.4%、14.8%、9.0%減少している。 (3)歳出  支出済額は86 億8329 万円で、前年度( 87 億4648 万円)に比べ6318 万円、0.7%減少している。 主な減少額は次のとおりである。 分担金及び負担金マイナス7620万円、マイナス0.9%、総務費マイナス423 万円、マイナス2.3%。  増加額は次のとおりである。  保健事業費1112万円、5.2%、保険給付費793 万円、4.8%。 予算現額に対する執行率は99.0%で、前年度( 98.7%)に比べ0.3 ポイント上昇している。 5 介護保険特別会計 (1)決算の概況 歳入総額265 億8,599 万円、歳出総額255 億9,572 万円で、形式収支(歳入歳出差引額)は9 億9,028 万円の黒字となっており、翌年度へ繰り越すべき財源( 0 円)を差し引いた実質収支も同額の黒字となっている。 歳入総額は前年度( 257億347万円)に比べ8 億8,253 万円、3.4%、歳出総額は前年度( 252億6,288 万円)に比べ3 億3,284 万円、1.3%増加している。 当年度実質収支9 億9,028 万円から前年度実質収支( 4 億4,059 万円)を差し引いた単年度収支は5 億4,969 万円の黒字となっている。 (2)歳入 調定額267億9,368万円、収入済額265億8,599万円で、調定額に対する収入率99.2%は前年度と同様である。 収入未済率は0.6%で、前年度( 0.7% )に比べ0.1 ポイント低下している。 予算現額、調定額および収入済額は、前年度に比べそれぞれ3.0%、3.4%、3.4%増加している。  不納欠損額および収入未済額は、前年度に比べそれぞれ12.3%、2.5%減少している。 (3)歳出 支出済額は255 億9,572 万円で、前年度( 252 億6,288 万円)に比べ3 億3,284 万円、1.3%増加している。 主な増加額は次のとおりである。 保険給付費1 億5,247 万円、0.7%、地域支援事業費1 億3,866 万円、9.6%。 減少額は次のとおりである。 総務費△ 1,203 万円、△ 2.0%、基金積立金△ 517 万円、△ 7.6%。 予算現額に対する執行率は94.6%で、前年度( 96.2%)に比べ1.6 ポイント低下している。 6 災害復旧特別会計 (1)決算の概況 歳入総額、歳出総額および形式収支(歳入歳出差引額)はいずれも0 円で、翌年度へ繰り越すべき財源( 0 円)を差し引いた実質収支および単年度収支も同額の0 円となっている。 (2)歳入 調定額および収入済額はいずれも0円である。 (3)歳出 支出済額は0円である。 第5 付帯意見 1 総括意見 令和3 年度に実施された施策の概況について意見を述べる。  令和3 年度の決算状況(執行率)は、一般会計ベースで91.6%と前年度( 94.7%)に比べ3.1 ポイント低下した。 引き続く新型コロナウイルス感染症の影響による事業の中止・変更により、当初の計画どおり執行できなかった事業がある一方で、区民生活を支援する事業を始め、新型コロナワクチン接種などの前例のない事業に挑戦するなど、全体としての実績は評価できるものである。  令和3 年度は引き続くコロナ禍において、新型コロナウイルス感染拡大防止と地域経済の回復、そして東京2020 大会とそのレガシーの継承が重要な課題であった。  新型コロナワクチン接種については、1・2回目接種に加え、3回目接種や小児接種についても迅速に体制を整え、接種率の向上を図った。 一方、感染拡大により打撃を受けた区内経済の回復へ向け、感染拡大防止対策経費助成、融資あっせん緊急資金「経営変化対策資金2021 」の実施等により、区内中小企業の経済活動を下支えした。 また、区のにぎわいに欠かせない商店街への支援としては、プレミアム付き区内共通商品券発行やキャッシュレスポイント還元事業を展開した。 次に、東京2020大会についてである。東京2020大会会場と同様に、区内で実施したオリンピック聖火リレー式典やパブリックビューイングは残念ながら無観客での実施となったが、競技体験等を通じた区民参加型文化イベント「しながわホッケーファンゾーン」をオンライン配信するなど、コロナ禍における交流の方法を創意工夫し、多くの区民にスポーツを「見る・支える」楽しみを広げた。 そして、令和4年度においても大井ふ頭中央海浜公園ホッケー競技場においてホッケー体験教室が開催されるなど、着実にそのレガシーが継承されている。  さらに、令和3 年度に掲げた重要施策について述べる。  まず、重要施策のその1「長期基本計画」における「4 つの視点と3 つの政策分野」からの検討であり、その視点の第1 は、「超長寿社会に対応する視点」である。  はじめに、高齢者福祉についてである。 最先端のトレーニングマシーンを使用した運動系介護予防事業「カラダ見える化トレーニング」のクラスを拡充した。 施設の整備としては、八潮南特別養護老人ホームの増改築に向けた検討を具体化させた。  次に、健康づくりについてである。受動喫煙防止対策として、大崎駅東口コンテナ型喫煙所設置に向け準備を進めた。  また、がん対策として、がんに関する検診・予防・相談など様々な情報を一元化し発信する「品川区がん情報」ホームページを開設するとともに、健康寿命の延伸を図ることを目的とする後期高齢者歯科健康診査において対象年齢を拡大した。  第2 の視点は、「多文化・多様な生き方を尊重する視点」である。  まず、人権尊重の啓発である。憲法週間講演会「STOPインターネット、SNS での人権侵害」をオンライン配信するなど、学校教育や区の職員・教職員向け研修も含め人権意識啓発に取り組んだ。  多文化共生の啓発としては、区内在住外国人を紹介する番組をケーブルテレビ品川で放映した。 また、聴覚障害への理解を深めるため品川区手話言語条例を制定し手話の理解促進を図った。  多様な生き方を認めあう視点の施策としては、性的マイノリティへの理解促進と支援のため、啓発講座や交流事業「みんなのひろば」を開催した。  第3 の視点は、「強靭で魅力あるまちを未来につなぐ視点」である。  災害に強いまちづくりを進めるため品川区強靭化計画を策定し、不燃化の促進や治水対策に引き続き取り組むとともに、災害時の早期復旧に資する品川区災害廃棄物処理計画の策定を進めた。 令和4年度からの防災ラジオのデジタル化に向けては、デジタル波による緊急情報発信に連動して自動起動する防災ラジオを導入した。  また、魅力あるまちづくりを具体的に進展させるため品川区まちづくりマスタープランの改定に着手した。  第4 の視点は、「先端技術を活用して課題解決と発展を図る視点」である。  まず、教育分野におけるICTの活用である。児童生徒に配備されているタブレット端末がさらに効果的に指導に活用されるよう、各学校へのICT支援員の配置を進めた。 行政サービスの分野では、パソコン等で電子書籍が閲覧できる「しながわ電子図書館」サービスを導入するなど、電子化を進めた。  次に、3 つの政策分野「地域」「人」「安全」についてである。  まず、「地域」の分野についてである。  区内有数の観光拠点であるしながわ水族館について令和9年度のリニューアルオープンに向けて検討を進めた。 大井坂下公園は、区内の小学生のアイデアを取り入れユニバーサルデザインに配慮した公園として改修工事を完了した。 また、水辺の魅力を高めるため、東海橋船着場・東品川海上公園船着場の改修や整備を行った。  次に、「人」の分野である。  区民住宅ファミーユ西品川の空室を活用し、ひきこもり、生活困窮など社会生活上生きづらさを持つ子ども・若者向けに居場所や学習指導の場を提供する施設と、区内介護サービス事業所の外国人技能実習生等向けのシェアハウス住居を整備した。  また、大原児童センターの一角にインクルーシブひろばベルをオープンし、医療的ケア児と保護者が安心して過ごせる環境と地域の仲間づくりの場を創設した。  児童虐待に関しては、虐待のリスク等がみられる家庭の児童を区内児童養護施設で養育する要支援ショートステイ事業を開始した。  区立学校については、就学人口の増加や老朽化等に対応するため、鮫浜小学校、浜川小学校および浜川幼稚園、第四日野小学校の改築を進めた。  さらに、「安全」の分野である。  まちづくりについては、広町地区において大井町駅周辺地域まちづくり方針に基づき都市計画を定める手続きを進めた。 また、立会川・勝島地区において都市再生整備計画による(仮称)勝島人道橋等の整備検討を進めた。  住宅確保要配慮者への支援については、住まいを提供した賃貸人等に区より協力金を支払う入居促進事業を開始した。  交通の安全対策としては、りんかい線品川シーサイド駅の鉄道可動式ホーム柵設置工事に対し助成を行った。 コミュニティバスについては、西大井駅から大森駅区間において試行運行を開始した。  次に、重要施策のその2「変化に対応する区政運営」からの検討である。  多様な行政課題に対応できる組織づくりの一環として外部人材の登用に向けて採用活動を実施し、職員の働き方改革「しながわ~く」に関しては保育園の入園選考事務にAI マッチングシステムを導入し、業務の効率化を図った。  そして、新庁舎整備に関しては基本構想の策定・基本計画の検討とともに、新たなワークスタイルの実現に向け、職員向けに研修を行った。  令和3 年度の決算審査を通じ、次のとおり意見を述べる。  その1 は、ウィズコロナ・アフターコロナ時代の区政運営についてである。  コロナ禍による行動制限は心理的な影響も大きく、企業経営をはじめ、学業やスポーツなど地域のあらゆる活動に暗い影を落とした。 感染症の流行状況を見極めつつ、コロナ禍以前と同等、もしくはそれ以上のプラスアルファの活動が行えるよう支援する体制を意識した予算編成に努められたい。  ポートランド市を始めとした姉妹・友好都市とは今もって実地での相互交流が行えない状況ではあるが、地域での国際平和意識の啓発がこれまで以上に重要性を増している中、公益財団法人品川区国際友好協会と協力しながら青少年を中心とした交流を継続してほしい。  一方、テレワーク等の普及により配偶者暴力、いわゆるDVの増加が懸念されている。被害を受けている方が速やかに適切な支援先につながる相談体制の構築と個々のケースに応じた最善の対応をお願いしたい。  その2 は、時代の変化に即した新たな事業展開についてである。  まず、町会・自治会の活動支援である。高齢化や経済状況の悪化など課題が山積している中、その活動がまちの安全・発展や地域住民の生きがいにつながるよう、従来の機能に加え、例えば国際化への対応など時代に合った機能を模索できるよう積極的な支援をお願いしたい。  次に、中小企業支援である。区内中小企業の後継者不足は喫緊の課題であり、親族承継のみならず、譲渡側と譲受側のマッチングも視野に入れた施策展開を期待したい。 また、新型コロナウイルス感染症対応特別助成は、販路拡大に取り組む事業者に対し多くの実績を上げておりニーズが高いことが窺える。 今後も続くことが予測される物価高騰に対応した施策とするなど、身近で使い勝手の良い支援事業として積極的に展開されたい。  さらに、全国自治体との連携事業である。都市・地方間での人の繋がりは、災害時の連携協定を始め、イベントでの集客など短期的効果のみならず、人口減少時代においても地方から品川区を目指して人材が集まるなど中長期的効果も見込まれる。 今後もより多くの自治体と連携を深めてほしい。  その3 は、未来を担う子どもに関する施策についてである。  まず、子育て支援施策についてである。産後ケア事業については、事業評価の分析結果に応じ、よりきめ細かな配慮に基づいた母子サポート事業として磨き上げ、他の施策と併せて妊娠・出産・育児の切れ目のない支援体制をさらに充実されたい。  また、全児童放課後等対策事業すまいるスクールの運営については、児童数の増加によるスペースの不足や利用にあたり配慮の必要な児童の受入れが課題となっている。 すまいるスクールが、児童にとって安全で安心な場所であるよう業務量に応じた適切な運営体制をお願いしたい。  次に、しながわ水族館と教育の連携についてである。水族館のリニューアルオープンに当たりソフト面での充実策として、命の尊さを学ぶ教育の場としての積極的な活用を検討されたい。  さらに、令和6年度に開設予定の児童相談所についてである。 令和3年度においては都や他区の児童相談所・一時保護所への職員派遣により業務経験の蓄積を図った。全国でも虐待により子どもの命が失われる痛ましいニュースが後を絶たない昨今、職員一丸となって児童相談所業務を支えるという機運醸成を図るとともに、子どもに関する様々な相談に対応できる豊富な経験と研修を積んだ人員を手厚く配置することにより、万全の体制で開設を迎えてほしい。  その4 は、区民がやすらぎと愛着を感じられる安全・安心なまちについてである。  まず、公園の防犯カメラについては人の通行量が多い場所を中心に整備を進め、皆が安心して利用できる公園の実現にさらに努めてほしい。 災害時消えない街路灯は地震等による停電時の安心につながることから、今後も広域避難場所周辺を中心とした適地での整備を進められたい。  また、コンテナ型喫煙所の設置は、たばこを吸う人にも吸わない人にも快適なまちづくりのために効果的な手法の一つであり、設置場所の確保に当たっては粘り強く交渉に尽力されたい。  さらに、歩きやすさを意識したまちづくりである。 水辺の景色に恵まれた品川区の魅力をさらに高めるために、区内各所におけるイルミネーション設置は有効な手法であり、来訪した方が地元の商店や施設も同時に利用するといった相乗効果も期待できる。 また、環境学習交流施設エコルとごしは、細川家下屋敷跡に造られた区の歴史を彩る戸越公園内に設置され、予想を大幅に上回る入場者数を記録している。 本施設を含めた戸越公園一帯、地域の商店街、東海道といった回遊性を意識したまちづくりを進めることで、自然と歴史を感じられる地域の交流拠点となることを期待する。  次に、一般会計のうち特別区民税収について意見を述べる。  特別区民税の収入済額は504億6,136万円で前年度( 497億9,950万円)に比べ6 億6,187 万円、1.33%上昇している。 現年課税分の収入率は99.56%で前年度( 99.32%)に比べ0.24 ポイント上昇し、滞納繰越分は59.29%で前年度( 58.22%)に比べ1.07 ポイント上昇している。 その結果、全体の収入率は99.12%となり前年度( 98.86%)に比べ0.26 ポイント上昇している。 なお、令和元年度からの全体の収入率は、元年度98.77%、2年度98.86%、3年度99.12%と、主に納付手段の拡充効果により依然高い数値を維持している。  次に、特別会計について意見を述べる。   国民健康保険事業会計は、歳入総額は対前年度12億1,534万円増加し、歳出総額も対前年度16億5,780 万円増加し、単年度収支において4 億4,246 万円の赤字(前年度4 億2,961 万円の黒字)となっている。 歳入については、主な歳入項目のうち、繰入金、国庫支出金は、対前年度それぞれ19.7%、77.5%減少したものの、都支出金、繰越金が対前年度それぞれ7.7%、87.3%増加したため、 全体として対前年度3.4%の増加となっている。  一方、歳出については、主な歳出項目のうち、国民健康保険事業費納付金、総務費が対前年度それぞれ0.9%、5.5%減少したものの、保険給付費が8.5%増加したため、全体として対前年度4.8%の増加となっている。  令和3 年度の保険料の対調定収納率は87.06%で前年度( 86.61%)に比べ0.45 ポイント上昇している。 このうち現年度分は93.02%で前年度( 93.15%)に比べ0.13 ポイント低下したものの、依然として高い収納率を達成することができた。 これは、納付手段の拡充、全期一括振替を導入したことなどの成果といえる。今後も高い収納率を維持できるよう努めてほしい。  後期高齢者医療特別会計は、歳入総額は対前年度3,091 万円減少、歳出総額は対前年度6,318 万円減少し、単年度収支においては3,228 万円の黒字(前年度701 万円の赤字)となっている。 歳入については、後期高齢者医療保険料、広域連合支出金が対前年度それぞれ0.9%、22.7%増加しているが、繰入金、諸収入、繰越金が対前年度それぞれ1.6%、3.3%、7.8%減少し、全体として対前年度0.4%の減少となっている。  一方、歳出については、保健事業費が対前年度5.2%増加しているが、支出総額の93.3%を占める分担金及び負担金が対前年度0.9%減少し、全体として0.7%の減少となっている。  令和3 年度の保険料の対調定収入率(還付未済額を除く。)は98.28%で前年度( 98.07%)に比べ0.21ポイント上昇している。 今後も、口座振替の促進等によりさらなる収納率の向上に努められたい。  介護保険特別会計は、歳入総額は対前年度8億8,253万円増加、歳出総額は対前年度3 億3,284万円増加し、単年度収支においては5 億4,969 万円の黒字(前年度4 億600 万円の黒字)となっている。 歳入については、主な歳入項目のうち、都支出金、繰入金が対前年度それぞれ4.1%、2.6%減少しているが、保険料、繰越金、国庫支出金が対前年度それぞれ8.8%、1,173.9%、3.2%増加し、全体として対前年度3.4%の増加となっている。  一方、歳出については、総務費、基金積立金が対前年度それぞれ2.0%、7.6%減少しているが、支出総額の約9割を占める保険給付費が対前年度0.7%増加し、全体として1.3%の増加となっている。  令和3 年度の保険料の対調定収入率(還付未済額を除く。)は96.40%で前年度( 95.90%)に比べ0.50ポイント上昇している。 今後も、口座振替の促進等によりさらなる収納率の向上に努められたい。  以上、令和3年度決算における事業の執行状況についての総括意見を述べた。 令和3年度は、特別区税が前年度の530 億円を9 億円( 1.7%)上回る等歳入は堅調に推移したが、区政を取り巻く環境は、引き続くコロナ禍に加え、ロシアのウクライナ侵攻等による原油価格や食糧価格の高騰、急速に進む円安など依然として混迷を極めており、今後も特別区民税や都区財政調整交付金の動向を見据えた慎重な行財政運営が求められる。  区は新たな長期基本計画のもと、令和3年度に総合実施計画の策定作業を完了させた。社会変化に応じ柔軟に軌道修正しつつ総合実施計画を着実に執行することを要望する。  結びに代えて、現在の品川区基本構想が制定された平成20年前後から今日までを振り返りたい。 「輝く笑顔 住み続けたいまち しながわ」を目指して、福祉、まちづくり、教育など様々な行政課題に進取果敢に取り組んできた16年間であったといえよう。 特に健全な財政基盤の維持・強化には力を注ぎ、不断の行財政改革によりリーマン・ショックや東日本大震災などの度重なる深刻な経済状況下にあっても財政の健全性を堅持してきた。 人口に目を向けても、令和元年7月には昭和41年以来となる40万人を超えるなど、先進的な施策が奏功し、区の発展とともに増加してきた。 また、区の財政規模については、一般会計当初予算は、平成19年度1,345億円余から令和3 年度1,824 億円余に増加するなど、複雑・高度化する区民ニーズに的確かつ柔軟に対応するため堅調に拡大してきた。  「一所懸命」とは、鎌倉時代の武士が領主から賜った1 か所の土地を命がけで守ろうとすることをいった言葉である。 近世になり全力で物事に取り組む意に転じ、一般的には「一生懸命」と表記されるようになった。 平成から令和へとつながる今日まで、一生懸命に日々の仕事に向き合い、区民の幸せを最大に、不幸を最小にするべく、小さな区役所から大きな区民サービスを提供する区政を展開してきたことに最大限の敬意を表する。 区民が幸せに、豊かに住み続けられる品川を目指す姿勢が継承され、持続可能な品川の未来が紡がれていくことを期待する。 2 個別意見 (1) 主要決算数値および指標について  令和3 年度普通会計(決算統計)の決算状況について、主な決算数値および指標は次のとおりである。  歳入総額1,934 億6,435 万円、歳出総額1,864 億5,918 万円で、形式収支は70 億517 万円(対前年度91.3%の増)の黒字となっており、翌年度へ繰り越すべき財源6,136 万円を差し引いた実質収支は69 億4,381 万円の黒字(対前年度98.1%の増)となっている。 また、当年度実質収支から前年度実質収支を差し引いた単年度収支は34億3,832万円の黒字、それに財政調整基金積立金を加えた実質単年度収支は90 億8,850 万円の黒字となっている。 財政運営の状況を判断する指標とされる実質収支比率は6.4%で、前年度( 3.4% )に比べ3.0 ポイント上昇している。 これは、一般財源のうち特別区交付金(普通交付金)の増(約60 億円)、地方消費税交付金の増(約10 億円)、特別区税の増(約9 億円)等により実質収支額が増加したことによるものである。  23 区の平均値( 8.6%、速報値)と比べると2.2 ポイント下回っており、一般的に3 ~ 5%が望ましい水準とされているが、当該年度の財政規模や経済状況等に影響されるところが大きい。 財政構造の弾力性を判断する指標とされる経常収支比率は74.8%で、前年度( 77.8%)に比べ3.0ポイント低下している。 23 区の平均値( 78.6%、速報値)と比べると3.8 ポイント下回っている。    経常収支比率と同様に、財政構造の弾力性を判断する指標とされる公債費負担比率は0.9%で、前年度と同率である。 歳出総額に占める人件費の割合を示す人件費比率は13.5%で、前年度( 10.6%)に比べ2.9ポイント上昇している。これは、23 区の平均値( 13.9%、速報値)と比べると0.4 ポイント下回っている。  また、人件費の経常収支比率は20.0%で、前年度( 21.3%)に比べ1.3 ポイント低下している。  平成23 年度以降マイナスであった自主財源人員(いわゆる財調過員)は、令和3 年度はプラスになっている。 以上、令和3年度普通会計の決算に見られる主な決算数値および指標は、いずれも適正な水準を維持していると言える。 令和3年度品川区基金運用状況審査意見書 地方自治法第241条第5項の規定に基づき、令和3年度品川区基金の運用状況を審査した結果について次のとおり意見を述べる。 令和4年9月1日 品川区監査委員 シマダコウタロウ 同     モリイジュン 同       ワタナベユウイチ 同       コンノタカコ 第1 審査対象 1 用品基金 2 公共料金支払基金 (参考) 1 奨学金貸付基金 2 社会福祉基金 3 平和基金 4 地球環境基金 5 地域振興基金 6 公共施設整備基金 7 財政調整基金 8 減債基金 9 義務教育施設整備基金 10 介護給付費等準備基金 11 文化スポーツ振興基金 12 災害復旧基金 13 庁舎整備基金 第2 審査実施の時期 令和4年7月1日から令和4年8月19日まで 第3 審査の方法 各基金が確実かつ効率的に運用されているかなどに主眼をおき実施した。 第4 審査の結果 関係帳簿を審査した結果、別表のとおり適正に運用され計数に誤りのないことを確認した。 別表1 用品基金 令和3年度末保有状況 15,000,000円 令和3年度中運用状況 用品調達額 211,869,673円  用品払出額 212,016,474円 基金回転数 14.12回 運用益金 146,801円  公共料金支払基金 令和3年度末保有状況 270,000,000円 令和3年度中運用状況 公共料金支払額 1,692,282,543円  収入額 1,691,684,250円 基金回転数 6.27回 運用益金 0円  別表2 用品基金 令和2年度末現在高 15,000,000円 令和3年度中増減 増分0円 減分0円 令和3年度末現在高 15,000,000円 公共料金支払基金 令和2年度末現在高 270,000,000円 令和3年度中増減 増分0円 減分0円 令和3年度末現在高 270,000,000円 合計 令和2年度末現在高 285,000,000円 令和3年度中増減 増分0円 減分0円 令和3年度末現在高 285,000,000円 令和3年度品川区財政健全化審査意見書  地方公共団体の財政の健全化に関する法律第3条第1項の規定に基づき、令和3年度決算に係る健全化判断比率およびその算定の基礎となる事項を記載した書類を審査した結果について次のとおり意見を述べる。 令和4年9月1日 品川区監査委員 シマダコウタロウ 同     モリイジュン 同       ワタナベユウイチ 同       コンノタカコ 第1 審査対象 実質赤字比率、連結実質赤字比率、実質公債費比率および将来負担比率(以下健全化判断比率という。)ならびにその算定の基礎となる事項を記載した書類 第2 審査実施の時期 令和4年7月1日から令和3年8月19日まで 第3 審査の方法 令和3年度決算に基づく健全化判断比率が地方公共団体の財政の健全化に関する法律(以下法という。)その他関連法令に基づいて算出され、かつ、その算定の基礎となる事項を記載した書類が適正に作成されているかに主眼をおき実施した。 第4 審査の結果 審査に付された健全化判断比率の算定の基礎となる事項を記載した書類は適正に作成されているものと認められた。また、いずれの比率も早期健全化基準を下回っており特に指摘すべき事項はない。 以下、順を追って審査の概要を述べる。 1 健全化判断比率の状況 法は、自治体の財政状況により、財政が比較的健全な自治体、早期の財政健全化が必要な自治体(早期健全化団体)、財政の再生が必要な自治体(財政再生団体)に区分する。 この区分は、( 1 )実質赤字比率、( 2 )連結実質赤字比率、( 3 )実質公債費比率、( 4 )将来負担比率の各健全化判断比率に応じて決定され、このうち、( 1 )から( 4 )の比率のいずれかが早期健全化基準以上になると早期健全化団体となり、( 1 )から( 3 )の比率のいずれかが財政再生基準以上になると財政再生団体となる。 2 各比率の状況 (1)実質赤字比率 一般会計および災害復旧特別会計を対象とした実質赤字額の標準財政規模に対する比率である実質赤字比率は、実質収支額が黒字であるため算定されない。算出比率はマイナス6.43%で、早期健全化基準の11.25%を下回っている。 (2)連結実質赤字比率 全会計を対象とした連結実質赤字額の標準財政規模に対する比率である連結実質赤字比率は、連結実質収支額が黒字であるため算定されない。算出比率はマイナス7.90%で、早期健全化基準の16.25%を下回っている。 (3)実質公債費比率 地方債に係る元利償還金および準元利償還金の標準財政規模に対する比率である実質公債費比率はマイナス4.4%で、早期健全化基準の25.0%を下回っている。 (4)将来負担比率 将来負担すべき実質的な負債の標準財政規模に対する比率である将来負担比率は、充当可能財源等の額が将来負担額を上回るため算定されない。算出比率はマイナス105.8%で、早期健全化基準の350.0%を下回っている。 さらに詳細な内容については、次の担当部署へご連絡ください。 監査委員事務局 電話 0 3 5 7 4 2 6 8 5 0 ファクシミリ 0 3 5 7 4 2 6 8 9 9