タイトル 令和4年度各会計決算審査意見書、基金運用状況審査意見書、財政健全化審査意見書(読み上げ対応) 令和4年度品川区各会計決算審査意見書 地方自治法第233条第2項の規定に基づき、令和4年度品川区各会計歳入歳出決算書およびその関係書類を審査した結果について次のとおり意見を述べる。 令和5年9月8日 品川区監査委員 コウチユタカ 同     モリイジュン 同       タカハシノブアキ 同       オオクラタカヒロ 第1 審査対象 1 令和4年度品川区各会計歳入歳出決算書 2 令和4年度品川区各会計歳入歳出決算事項別明細書  3 令和4年度品川区各会計実質収支に関する調書 4 令和4年度品川区財産に関する調書 第2 審査実施の時期 令和5年7月3日から令和5年8月18日まで 第3 審査の方法 計数に誤りはないか、財政運営は健全か、予算の執行は関係法令に従って効率的になされているか、財産管理は適正かなどに主眼をおき、それぞれの関係帳簿および証拠書類との照合、説明聴取その他必要と認める審査方法により実施した。 第4 審査の結果 審査に付された各会計歳入歳出決算書等の様式は、関係法令の規定に準拠して作成されており、計数はいずれも符合し誤りのないことを確認した。 各会計の決算内容、予算執行状況および財産の管理状況については、適正かつ妥当と認められた。 なお、事業の執行状況に関する意見については付帯意見として記した。 以下、順を追って審査の概要を述べる。  1 決算の総括 金額は千円のくらいで四捨五入し、万円単位としている。パーセントは小数点第2位で四捨五入している。 各会計決算額を単純に合計した総計は、歳入額2,692億4,328万円、歳出額2,609億2,897万 円で、差引残額は83億1,431万円の黒字となっており、前年度に比べ歳入額は1.2%増加し、 歳出額は1.4%増加している。差引残額は3.2%減少している。 各会計歳入歳出決算の総括は、次のとおりである。 一般会計 歳入額 1959億1638万円 歳出額 1893億3839万円 差引残額 65億7798万円 国民健康保険事業会計 歳入額 364億414万円 歳出額 359億5059万円 差引残額 4億5355万円 後期高齢者医療特別会計 歳入額 97億6463万円 歳出額 96億9878万円 差引残額 6585万円 介護保険特別会計 歳入額 271億5814万円 歳出額 259億4121万円 差引残額 12億1693万円 災害復旧特別会計 歳入額 0円 歳出額 0円 差引残額 0円 総計 歳入額 2692億4328万円 歳出額 2609億2897万円 差引残額 83億1431万円 2 一般会計 (1)決算の概況  歳入総額1,959億1,638万円、歳出総額1,893億3,839万円で、形式収支(歳入歳出差引額)は 65億7,798万円の黒字となっており、翌年度へ繰り越すべき財源3億1,720万円を差し引いた実質収支も62億6,078万円の黒字となっている。  歳入総額は前年度(1,938億6,108万円)に比べ20億5,529万円、1.1%、歳出総額は前年度(1,868 億5,591万円)に比べ24億8,248万円、1.3%増加している。  当年度実質収支62億6,078万円から前年度実質収支( 69億4,381万円)を差し引いた単年度収支は6億8,302万円の赤字となっている。 (2)歳入  調定額1,975億2,608万円、収入済額1,959億1,638万円で、調定額に対する収入率99.2%は前 年度(98.8%)に比べ0.4ポイント上昇している。  収入未済率は0.8%で、前年度(1.2%)に比べ0.4ポイント低下している。  調定額、収入済額および不納欠損額は、前年度に比べそれぞれ0.6%、1.1%、12.9%増加している。  予算現額および収入未済額は、前年度に比べそれぞれ0.3%、35.3%減少している。 (3)歳出 支出済額は1,893億3,839万円で、前年度( 1,868億5,591万円)に比べ24億8,248万円、1.3% 増加している。 主な増加額は次のとおりである。 民生費(高齢者福祉施設整備費、児童相談所移管推進事業など)42億2,319万円、4.5%。 主な減少額は次のとおりである。 土木費(排水施設建設事業など)マイナス12億8,925万円、マイナス7.4%。  予算現額に対する執行率は93.1%で、前年度(91.6%)に比べ1.5ポイント上昇している。 イ 普通会計における性質別歳出状況  各地方公共団体相互の比較をするために国が定めた統一基準による普通会計の歳出状況を見 ると、決算額は1,889億4,043万円で、前年度( 1,864億5,918万円)に比べ24億8,126万円、1.3 %増加している。このうち、人件費、扶助費および公債費の合計である義務的経費は748億304万円で、前年 度(792億5,712万円)に比べ44億5,408万円、5.6%減少している。  経常的経費は1,272億90万円で、前年度(1,240億1,811万円)に比べ31億8,279万円、2.6%増加している    3 国民健康保険事業会計 (1)決算の概況 歳入総額364億414万円、歳出総額359億5,059万円で、形式収支(歳入歳出差引額)は4億 5,355万円の黒字となっており、翌年度へ繰り越すべき財源( 0円)を差し引いた実質収支も同額の黒字となっている。 歳入総額は前年度(367億2,752万円)に比べ3億2,338万円、0.9%減少し、歳出総額は前年度 (362億4,816万円)に比べ2億9,757万円、0.8%減少している。 当年度実質収支4億5,355万円から前年度実質収支( 4億7,937万円)を差し引いた単年度収支 は2,582万円の赤字となっている。 (2)歳入 調定額378億3,350万円、収入済額364億414万円で、調定額に対する収入率96.2%は前年度 (96.3%)に比べ0.1ポイント低下している。 収入未済率は3.2%で、前年度(2.9%)に比べ0.3ポイント上昇している。 予算現額、調定額、収入済額および不納欠損額は、前年度に比べそれぞれ0.8%、0.8%、0.9%、 33.4%減少し、収入未済額は11.6%増加している (3)歳出 支出済額は359億5,059万円で、前年度( 362億4,816万円)に比べ2億9,757万円、0.8%減少 している。 減少額は次のとおりである。 保険給付費マイナス7億441万円、マイナス3.1%、総務費マイナス3,147万円、マイナス4.6%、保健事業費マイナス555万円、マイナス2.0%。 増加額は次のとおりである。  国民健康保険事業費納付金3億3,758万円、2.8%、諸支出金1億628万円、34.2%。 予算現額に対する執行率は97.0%で、前年度(97.1%)に比べ0.1ポイント低下している。 4 後期高齢者医療特別会計 (1)決算の概況  歳入総額97億6,463万円、歳出総額96億9,878万円で、形式収支(歳入歳出差引額)は6,585万円の黒字となっており、翌年度へ繰り越すべき財源(0円)を差し引いた実質収支も同額の黒字となっている。  歳入総額は前年度(87億9,827万円)に比べ9億6,635万円、11.0%、歳出総額は前年度(86億8,329万円)に比べ10億1,549万円、11.7%増加している。  当年度実質収支6,585万円から前年度実質収支( 1億1,498万円)を差し引いた単年度収支は 4,914万円の赤字となっている。 (2)歳入  調定額98億4,973万円、収入済額97億6,463万円で、調定額に対する収入率99.1%は前年度 (99.2%)に比べ0.1ポイント低下している。  収入未済率は0.8%で、前年度(0.7%)と比べ0.1ポイント上昇している。  予算現額、調定額、収入済額および収入未済額は、前年度に比べそれぞれ11.5%、11.1%、 11.0%、32.2%増加している。  不納欠損額は、前年度に比べ13.6%減少している。 (3)歳出   支出済額は96億9,878万円で、前年度( 86億8,329万円)に比べ10億1,549万円、 11.7%増加 している。主な増加額は次のとおりである。分担金及び負担金9億8,575万円、12.2%、保健事業費1,634万円、7.3%、総務費1,587万円、8.8%。減少額は次のとおりである。保険給付費マイナス365万円、マイナス2.1%。  予算現額に対する執行率は99.2%で、前年度(99.0%)に比べ0.2ポイント上昇している。 5 介護保険特別会計 (1)決算の概況 歳入総額271億5,814万円、歳出総額259億4,121万円で、形式収支(歳入歳出差引額)は12億 1,693万円の黒字となっており、翌年度へ繰り越すべき財源( 0円)を差し引いた実質収支も同 額の黒字となっている。 歳入総額は前年度( 265億8,599万円)に比べ5億7,214万円、2.2%、 歳出総額は前年度( 255 億9,572万円)に比べ3億4,549万円、 1.3%増加している。 当年度実質収支12億1,693万円から前年度実質収支( 9億9,028万円)を差し引いた単年度収支は2億2,665万円の黒字となっている。 (2)歳入 調定額273億6,838万円、収入済額271億5,814万円で、調定額に対する収入率99.2%は前年度と同率である。 収入未済率は0.6%で、前年度と同率である。 予算現額、調定額、収入済額および収入未済額は、前年度に比べそれぞれ3.5%、2.1%、2.2%、 2.9%増加している。  不納欠損額は、前年度に比べ2.7%減少している。 (3)歳出 支出済額は259億4,121万円で、前年度( 255億9,572万円)に比べ3億4,549万円、1.3%増加 している。   主な増加額は次のとおりである。 基金積立金3億5,718万円、570.5%、諸支出金1億2,327万円、73.0%。減少額は次のとおりである。 保険給付費マイナス1億9,407万円、マイナス0.8%。 予算現額に対する執行率は92.7%で、前年度(94.6%)に比べ1.9ポイント低下している。 6 災害復旧特別会計 (1)決算の概況 歳入総額、歳出総額および形式収支(歳入歳出差引額)はいずれも0 円で、翌年度へ繰り越すべき財源( 0 円)を差し引いた実質収支および単年度収支も同額の0 円となっている。 (2)歳入 調定額および収入済額はいずれも0円である。 (3)歳出 支出済額は0円である。 第 5 付帯意見   1 総括意見  令和4年度に実施された施策の概況について意見を述べる。令和4年度において、その決算状況(執行率)は一般会計ベースで93.1%(令和3年度91.6% )と なった。計画と比較すると実績が伸びなかった事業もあるが、概ね高い執行実績をあげていると 言える。 はじめに、令和4年度の区政運営の基本方針について述べる。まず、最優先かつ最重要課題である新型コロナウイルス感染拡大防止については、ICTツール 等の活用や自宅療養体制の整備により保健所の機能を強化するとともに、オミクロン株対応ワクチンの接種体制を迅速に整えるなど、全庁一丸となって取り組んだ。  次に、地域経済の回復へ向けては、新規市場展開・業態転換支援助成、融資あっせん緊急資金「借換専用資金」の新設等により、感染拡大の影響で打撃を受けた区内中小企業への支援を積極的に 行った。 次に東京2020大会のレガシーの発展についてである。プロスポーツ選手による小学生向けス ポーツ教室の実施とともに、しながわ中央公園へのボルダリングウォールの設置などハード面で の整備を進め、これまでの機運醸成の取り組みをさらに進化させた。一方、脱炭素社会の実現に向け、区民の環境意識の向上と自主的な環境保全活動を促すことを 目的とした環境学習交流施設「エコルとごし」を開設した。さらに、令和4年度に掲げた重要施策について述べる。まず、重要施策のその1「長期基本計画」における「4つの視点と3つの政策分野」からの検討であり、その視点の第1は、「超長寿社会に対応する視点」についてである。はじめに、施設整備についてである。八潮南特別養護老人ホームの増改築については基本設計 を完了し、小山台住宅跡地の特別養護老人ホーム整備については国有地の取得を進めるとともに 基本設計に着手した。次に、認知症対策については、都内で初めて認知症を抱えた本人と家族を一体的に支援する「認知症ミーティングセンター」への運営支援を開始した。そして、健康づくりである。がん対策としては、令和2年度に策定した「品川区がん対策推進 計画」に基づき総合的ながん対策を推進するとともに、キャッチアップ接種も含め、子宮頸がん 予防接種の積極的な勧奨を再開した。また、受動喫煙防止対策として、大崎駅東口にコンテナ型 喫煙所を開設した。第2の視点は、「多文化・多様な生き方を尊重する視点」である。まず、人権尊重の啓発に関しては、性の多様性への理解に向けた啓発講演会を実施するととも に、区内小学校の教員や区内義務教育学校の生徒を対象に出前講座を実施した。障害のある方が地域で豊かな生活を送ることができるよう、生涯学習講座「しながわ学びの杜」 に知的障害がある方を対象とした講座を新設した。また、手話を必要とする方が安心して生活できる地域社会の実現を目指し、子ども・企業向けの手話講座を開催するなど理解促進に取り組んだ。第3の視点は、「強靭で魅力あるまちを未来につなぐ視点」である。まず、まちづくりである。区で実施している老朽家屋の除却や建替に対する助成制度の一層の周知を図るため、建物倒壊危険度や火災危険度の高い地域において、専門家による戸別訪問を実 施した。策定から約10年が経過した品川区まちづくりマスタープランについては、これまでの まちづくりの進展状況の検証を行いつつ、最新の社会情勢に対応する新たなまちづくりの方針と して改定を行った。次に、防災についてである。45年ぶりとなる東京都との合同総合防災訓練を実施し、区民の 防災意識の向上および災害時の区・都・防災関係機関の連携強化を図った。また、地域の防災力向 上を目的として実施している「しながわ防災学校」に福祉関係者向け講座を新設した。第4の視点は、「先端技術を活用して課題解決と発展を図る視点」である。区民の利便性の向上と業務効率化を目的とし、品川区電子申請サービスを利用した行政手続き のオンライン化を進めた。また、地域社会のデジタル化を促進するため、区内中小企業者のIT 化推進に対して助成等を行った。一方、情報弱者への支援として「はじめてのスマホ体験教室」 を実施するなど高齢者のデジタルデバイドの解消を図った。次に、3つの政策分野「地域」「人」「安全」についてである。 第1は「地域」の分野についてである。  まず、地域社会の支え合いの中心である町会および自治会の活動を活性化させるため、コンサ ルタントの派遣、ICT機器の活用に係る補助制度など支援メニューを拡充した。 次に、地域のにぎわい回復を目指し、区の観光資源である目黒川や運河沿いの水辺エリアでの 「しながわ水辺の観光フェスタ2022 」や荏原地域での都市型カルチャーフェスティバル「あつま れ!えばら」など、地域の魅力を発信するイベントを実施した。区内有数の集客施設であるしな がわ水族館については、令和4年5月に公表した基本構想に基づき、令和9年度のリニューアル オープンに向けた調査を行った。さらに、しながわ区民公園の北側ゾーンについては、防災機能 の強化やスポーツ施設の更新に向け工事を進めた。  そして、区の歴史と文化の発信拠点である品川歴史館は、令和6年度のリニューアルに向け改 修工事に着手した。地域の情報拠点である品川図書館においては所蔵する貴重な資料をデジタル 化し、インターネット上に公開するサービスを開始した。  第2は「人」の分野である。 まず、子どもへの支援である。児童相談所は令和6年10月の開設予定に向け工事を完了した。 ヤングケアラーについては、支援体制の強化を目的とした実態調査と関係機関職員の研修を行った。区立保育園については東大井保育園、三ツ木保育園、一本橋保育園の、また、区立学校等に ついては鮫浜小学校、浜川小学校および幼稚園、浜川中学校、第四日野小学校の改築を進めた。 次に、障害者施策である。戸越地区児童発達支援センターの整備について基本計画を策定した。 また、障害者グループホームの整備に向け小山七丁目の土地を購入した。  第3は「安全」の分野である。まず、まちづくりである。広町地区については土地区画整理事業がスタートし、民間事業者と 連携して、にぎわいのあるまちづくりに向けて検討を進めた。また、立会川・勝島地区のまちづ くりに関しては(仮称)勝島人道橋の詳細設計を完了し、都市再生整備計画の手続きを進めた。次に、交通安全対策である。自転車活用推進計画の策定に向けアンケートを実施し、検討を進めた。コミュニティバスについては西大井駅から大森駅区間の試行運行を前年度に引き続き実施 した。次に、重要施策のその2「変化に対応する区政運営」からの検討である。  ICTなど先端技術の活用をさらに推進するため、専門的な知見を有する外部人材を採用した。 そして、新庁舎整備に関しては基本構想を踏まえ、現在の庁舎に隣接した広町地区への移転に向 け基本計画を作成した。令和4年度の決算審査を通じ、次のとおり意見を述べる。その1は、機動的な予算編成と健全財政の堅持についてである。令和4年度は重点施策の確実な執行に加え、エネルギー価格など物価高騰による影響を受けて いる区民・事業所への支援のため、機動的に補正予算を組み区民生活と地域経済を下支えした。 一方、実質収支は普通会計ベースで昭和53年度から45年連続の黒字を記録し、健全財政を堅持 する結果となっている。今後も確固たる財政基盤の維持に留意しつつ、高度に複雑化する行政ニ ーズに的確に対応する積極果敢な施策展開を期待したい。その2は、区民生活を支える安全安心な住まいについてである。令和4年5月、東京都は東日本大震災を踏まえ策定した「首都直下地震等による東京の被害想 定」を10年ぶりに見直したが、その新たな報告書によると品川区での被害想定は減少しているも のの、マグニチュード7クラスの首都直下地震が発生する確率は今後30年以内で70%とされて いる。区では、この間住宅の耐震化や不燃化などの安全安心なまちを実現する取組みを着実に推 進してきたが、令和4年度においては木造住宅を対象とした戸別訪問を約550件実施するととも に、不燃化特区内でも約2,600戸を訪問し、区で行っている助成事業等、多岐にわたる支援メニ ューの周知啓発を図った。また、区では空き家の発生予防や空き家の適正管理にも取り組んでいるが、中には相続人が数 十人に及ぶ空き家が存在するという。区民の生命と財産を災害から守る対策は一朝一夕でなし遂 げられるものではない。一人でも多くの区民が納得して制度を利用できるよう、地道な取組みを 粘り強く継続されたい。なお、住宅に困窮する方に低廉な家賃で住まいを提供する区営住宅については、その大半が築 年数40年を超えている。住宅は生活の根幹をなすものであり、時機を捉えた維持修繕等により適切に管理されたい。その3は、区民の声を聴く区政についてである。  区では、生後1歳までの乳児を育児中の母親に対し、家事・育児サービスを提供するヘルパー である産後ドゥーラの利用経費を助成する事業を実施している。令和5年度からは、利用者のア ンケート調査結果に基づき父親を対象に加えるとともに、区と提携している産後ドゥーラとマッ チングしやすいシステムの導入について検討するということである。日本全体に目を向けると、 コロナ禍等の影響もあり令和4年の出生者数が政府の想定より11年早く年間80万人を割るなど 急速な少子化が進んでいる状況であり、少子化対策は喫緊の課題となっている。利用者の声をい ち早く施策に反映させる姿勢を評価したい。その4は、区役所を支える職員の育成についてである。職員研修の受講実績に関しては、若干改善しているとはいえ新型コロナウイルス感染症の影響 もあり依然として低迷している。今後一層多様化する区民ニーズに応えていくため職員の能力開 発は必要不可欠であり、研修への参加意欲の醸成も含め人材育成について積極的に取り組まれたい。特に、区の行政サービスのデジタル化をより一層推し進めるため、研修の実施により職員のデ ジタルスキルを引き上げるとともに、情報システムや基盤の整備に係るコストの最適化を図られ たい。 なお、令和6年度に開設を予定している児童相談所の人員体制に関しては、所長として課長級 職員を任期付きで採用するとともにスーパーバイザーの確保も進めているという。児童相談所に 寄せられる相談件数が年々伸び続ける中、その運営には豊富な経験と知識に裏付けられた人材の 力が絶対的に必要であり、計画的な採用および若手職員の育成について配慮されたい。その5は、新庁舎計画についてである。令和9年度に移転を予定している新庁舎の整備に関しては、先進事例である長崎県庁等への視 察や基本計画の策定を完了し、現在は基本設計の段階に入っている。区役所を訪れる様々な人に とって最適なアクセシビリティ、そして職員が働きやすいオフィス環境の実現に向け着実に事業 を執行されたい。  次に、一般会計のうち特別区民税収について意見を述べる。 特別区民税の収入済額は529億4,769万円で前年度( 504億6,136万円)に比べ24億8,632万円、 4.93%上昇している。現年課税分の収入率は99.53%で前年度( 99.56% )に比べ0.03ポイント低下 し、滞納繰越分は58.71%で前年度(59.29%)に比べ0.58ポイント低下している。現年課税分の収 入済額の増加により、結果としては全体の収入率は99.19%となり前年度(99.12%)に比べ0.07ポ イント上昇している。なお、令和2年度からの全体の収入率は、2年度98.86%、3年度99.12%、4 年度99.19%と、主に納付手段の拡充効果により依然高い数値を維持している。次に、特別会計について意見を述べる。国民健康保険事業会計は、歳入総額は対前年度3億2,338万円減少し、歳出総額も対前年度2億 9,757万円減少し、単年度収支において2,582万円の赤字(前年度4億4,246万円の赤字)となって いる。歳入については、主な歳入項目のうち、繰入金、国民健康保険料は対前年度それぞれ 28.3%、0.5%増加したものの、都支出金、繰越金が対前年度それぞれ2.7%、48.0%減少したため、 全体として対前年度0.9%の減少となっている。一方、歳出については、主な歳出項目のうち、国民健康保険事業費納付金、諸支出金が対前年 度それぞれ2.8%、34.2%と増加したものの、保険給付費、総務費が対前年度それぞれ3.1%、4.6% 減少したため、全体として対前年度0.8%の減少となっている。令和4年度の保険料の対調定収納率は87.09%で前年度( 87.06% )に比べ0.03ポイント上昇して いる。このうち現年度分は92.19%で前年度(93.02%)に比べ0.83ポイント低下したものの、依然 として高い収納率を達成することができた。これらは、特別区民税と同様に主に納付手段の拡充 によるところが大きい。引き続き高い収納率を維持できるよう努められたい。後期高齢者医療特別会計は、歳入総額は対前年度9億6,635万円増加、歳出総額は対前年度10 億1,549万円増加し、単年度収支においては4,914万円の赤字(前年度3,228万円の黒字)となって いる。歳入については、後期高齢者医療保険料、繰入金が対前年度それぞれ11.8%、9.4%増加し、 全体として対前年度11.0%の増加となっている。 一方、歳出については、保険給付費が対前年度2.1%減少しているが、支出総額の93.7%を占め る分担金及び負担金が対前年度12.2%増加し、全体として11.7%の増加となっている。 令和4年度の保険料の対調定収入率(還付未済額を除く。)は98.15%で前年度( 98.28% )に比べ 0.13ポイント低下している。今後も、口座振替の促進等によりさらなる収納率の向上に努められ たい。介護保険特別会計は、歳入総額は対前年度5億7,214万円増加、歳出総額は対前年度3億4,549 万円増加し、単年度収支においては2億2,665万円の黒字(前年度5億4,969万円の黒字)となって いる。歳入については、主な歳入項目のうち支払基金交付金が対前年度1.8%減少しているが、 繰越金、国庫支出金が対前年度それぞれ124.8%、2.1%増加し、全体として対前年度2.2%の増加 となっている。一方、歳出については、保険給付費が対前年度0.8%減少しているが、基金積立金、諸支出金 が対前年度それぞれ570.5%、73.0%増加し、全体として1.3%の増加となっている。令和4年度の保険料の対調定収入率(還付未済額を除く。)は96.34%で前年度( 96.40% )に比べ 0.06ポイント低下している。今後も、口座振替の促進等によりさらなる収納率の向上に努められ たい。以上、令和4年度決算における事業の執行状況についての総括意見を述べた。令和4年度は、 特別区税が前年度の539億円を28億円( 5.1% )上回る等歳入は堅調に推移した。コロナ禍からの 社会経済活動の正常化が進み、緩やかな持ち直しが続く一方、世界的なエネルギー・食料価格の 高騰や欧米各国の金融引締め等による世界的な景気後退懸念など、区政を取り巻く環境には厳しさが増しており、今後も特別区民税や都区財政調整交付金の動向を見据えた慎重な行財政運営が 求められる。ここで、新型コロナウイルス感染症への対応について意見を述べる。 3年余り未曽有の試練を人類に与え続けた新型コロナウイルス感染症は、令和5年5月より5類 感染症へと移行し、新型コロナ対策も新たな局面を迎えている。感染拡大防止のために最前線で 対応に当たってきた保健所職員を始めとして、コロナ禍におけるさまざまな困難を克服するべく 尽力してきた区職員一人ひとりに心より敬意を表する。品川区は国際的な表玄関に位置している こともあり、海外からの人の往来がこれからますます活発化していくことが予想される。この3 年間で培った感染症対策の知見を、健康危機管理体制の再構築のために役立ててほしい。  令和4年度は、新たな長期基本計画のもと策定された総合実施計画の初年度であった。区では 新体制による行政運営がスタートし、これまでの施策を引き継ぎつつ、さらに発展させていく姿勢が明らかにされたところである。まさに、区民とともに創り上げる「新時代のしながわ」の幕 開けである。区民の幸福への飽くなき追求は、必ずや品川区の発展につながるであろう。ポストコロナにおいて「誰もが生きがいを感じ、自分らしく暮らしていける品川」の実現に向け、効果的かつ弾力的な区政運営により区民が真に必要とする施策が着実に推進されることを期待する。 2 個別意見 (1) 主要決算数値および指標について  令和4年度普通会計(決算統計)の決算状況について、主な決算数値および指標は次のとおりで ある。 歳入総額1,955億1,842万円、歳出総額1,889億4,043万円で、形式収支は65億7,798万円の黒字 (対前年度6.1%の減)となっており、翌年度へ繰り越すべき財源3億1,720万円を差し引いた実質 収支は62億6,078万円の黒字(対前年度9.8%の減)となっている。また、単年度収支(当年度実質 収支-前年度実質収支)は6億8,303万円の赤字、それに財政調整基金積立金を加えた実質単年度収支は16億4,990万円の黒字となっている。  財政運営の状況を判断する指標とされる実質収支比率は5.7%で、前年度(6.4%)に比べ0.7ポイ ント低下している。これは、標準財政規模が増加(約19億円)したことに加え、一般財源のうち 都区財政調整交付金の減(約9億円)等により実質収支額が減少したことによるものである(93頁、 表2参照)。 一般的に3 ~ 5%が望ましい水準とされているが、23区の平均値( 7.2%、速報値)と比べると 1.5ポイント下回っており、当該年度の財政規模や経済状況等に影響されるところが大きい。  財政構造の弾力性を判断する指標とされる経常収支比率は74.8%で、前年度と同率である。こ れは、経常的経費充当一般財源は、物件費の増(約15億円)、繰出金の増(約6億円)等により約 23億円増加し、経常一般財源総額は、特別区税の増(約28億円)、地方消費税交付金の増(約10 億円)等により約31億円増加したためである。23区の平均値(76.7%、速報値)と比べると1.9ポイント下回っている。    経常収支比率と同様に、財政構造の弾力性を判断する指標とされる公債費負担比率は0.8%で、前年度(0.9%)に比べ0.1ポイント低下している。 歳出総額に占める人件費の割合を示す人件費比率は13.4%で、前年度( 13.5%)に比べ0.1ポイ ント低下している。これは、23区の平均値(13.7%、速報値)と比べると0.3ポイント下回っている。 また、人件費の経常収支比率は19.8%で、前年度(20.0%)に比べ0.2ポイント低下している(図4・ 97頁、表3参照)。 平成23年度以降マイナスであった自主財源人員(いわゆる財調過員)は、令和3年度以降プラス になっている 以上、令和4年度普通会計の決算に見られる主な決算数値および指標は、いずれも適正な水準を維持していると言える。 令和4年度品川区基金運用状況審査意見書 地方自治法第241条第5項の規定に基づき、令和4年度品川区基金の運用状況を審査した結果について次のとおり意見を述べる。 令和5年9月8日 品川区監査委員 コウチユタカ 同     モリイジュン 同       タカハシノブアキ 同       オオクラタカヒロ 第1 審査対象 1 用品基金 2 公共料金支払基金 (参考) 1 奨学金貸付基金 2 社会福祉基金 3 平和基金 4 地球環境基金 5 地域振興基金 6 公共施設整備基金 7 財政調整基金 8 減債基金 9 義務教育施設整備基金 10 介護給付費等準備基金 11 文化スポーツ振興基金 12 災害復旧基金 13 庁舎整備基金 第2 審査実施の時期 令和5年7月3日から令和5年8月18日まで 第3 審査の方法 各基金が確実かつ効率的に運用されているかなどに主眼をおき実施した。 第4 審査の結果 関係帳簿を審査した結果、別表のとおり適正に運用され計数に誤りのないことを確認した。 別表1 用品基金 令和4年度末保有状況 15,000,000円 令和4年度中運用状況 用品調達額 207,679,066円  用品払出額 207,815,697円 基金回転数 13.85回 運用益金 136,631円 公共料金支払基金 令和4年度末保有状況 270,000,000円 令和4年度中運用状況 公共料金支払額 2,142,315,455円 収入額 2,142,582,801円 基金回転数 7.93回 運用益金 0円 別表2 用品基金 令和3年度末現在高 15,000,000円 令和4年度中増減 増分0円 減分0円 令和4年度末現在高 15,000,000円 公共料金支払基金 令和3年度末現在高 270,000,000円 令和4年度中増減 増分0円 減分0円 令和4年度末現在高 270,000,000円 合計 令和3年度末現在高 285,000,000円 令和4年度中増減 増分0円 減分0円 令和4年度末現在高 285,000,000円 令和4年度品川区財政健全化審査意見書  地方公共団体の財政の健全化に関する法律第3条第1項の規定に基づき、令和4年度決算に係る健全化判断比率およびその算定の基礎となる事項を記載した書類を審査した結果について次のとおり意見を述べる。 令和5年9月8日 品川区監査委員 コウチユタカ 同     モリイジュン 同       タカハシノブアキ 同       オオクラタカヒロ 第1 審査対象 実質赤字比率、連結実質赤字比率、実質公債費比率および将来負担比率(以下健全化判断比率という。)ならびにその算定の基礎となる事項を記載した書類 第2 審査実施の時期 令和5年7月3日から令和5年8月18日まで 第3 審査の方法 令和4年度決算に基づく健全化判断比率が地方公共団体の財政の健全化に関する法律(以下法という。)その他関連法令に基づいて算出され、かつ、その算定の基礎となる事項を記載した書類が適正に作成されているかに主眼をおき実施した。 第4 審査の結果 審査に付された健全化判断比率の算定の基礎となる事項を記載した書類は適正に作成されているものと認められた。また、いずれの比率も早期健全化基準を下回っており特に指摘すべき事項はない。 以下、順を追って審査の概要を述べる。 1 健全化判断比率の状況 法は、自治体の財政状況により、財政が比較的健全な自治体、早期の財政健全化が必要な自治体(早期健全化団体)、財政の再生が必要な自治体(財政再生団体)に区分する。 この区分は、( 1 )実質赤字比率、( 2 )連結実質赤字比率、( 3 )実質公債費比率、( 4 )将来負担比率の各健全化判断比率に応じて決定され、このうち、( 1 )から( 4 )の比率のいずれかが早期健全化基準以上になると早期健全化団体となり、( 1 )から( 3 )の比率のいずれかが財政再生基準以上になると財政再生団体となる。 2 各比率の状況 (1)実質赤字比率 一般会計および災害復旧特別会計を対象とした実質赤字額の標準財政規模に対する比率である実質赤字比率は、実質収支額が黒字であるため算定されない。算出比率はマイナス5.70%で、早期健全化基準の11.25%を下回っている。 (2)連結実質赤字比率 全会計を対象とした連結実質赤字額の標準財政規模に対する比率である連結実質赤字比率は、連結実質収支額が黒字であるため算定されない。算出比率はマイナス7.28%で、早期健全化基準の16.25%を下回っている。 (3)実質公債費比率 地方債に係る元利償還金および準元利償還金の標準財政規模に対する比率である実質公債費比率はマイナス4.2%で、早期健全化基準の25.0%を下回っている。 (4)将来負担比率 将来負担すべき実質的な負債の標準財政規模に対する比率である将来負担比率は、充当可能財源等の額が将来負担額を上回るため算定されない。算出比率はマイナス105.7%で、早期健全化基準の350.0%を下回っている。 さらに詳細な内容については、次の担当部署へご連絡ください。 監査委員事務局 電話 0 3 5 7 4 2 6 8 5 0 ファクシミリ 0 3 5 7 4 2 6 8 9 9