タイトル 令和5年度各会計決算審査意見書、基金運用状況審査意見書、財政健全化審査意見書(読み上げ対応) 令和5年度品川区各会計決算審査意見書 地方自治法第233条第2項の規定に基づき、令和5年度品川区各会計歳入歳出決算書およびその関係書類を審査した結果について次のとおり意見を述べる。 令和6年9月2日 品川区監査委員 コウチユタカ 同     アリガヤスコ 同       セオマリ 同       ツルシンイチロウ 第1 審査対象 1 令和5年度品川区各会計歳入歳出決算書 2 令和5年度品川区各会計歳入歳出決算事項別明細書  3 令和5年度品川区各会計実質収支に関する調書 4 令和5年度品川区財産に関する調書 第2 審査実施の時期 令和6年7月1日から令和6年8月19日まで 第3 審査の方法 計数に誤りはないか、財政運営は健全か、予算の執行は関係法令に従って効率的になされているか、財産管理は適正かなどに主眼をおき、それぞれの関係帳簿および証拠書類との照合、説明聴取その他必要と認める審査方法により実施した。 第4 審査の結果 審査に付された各会計歳入歳出決算書等の様式は、関係法令の規定に準拠して作成されており、計数はいずれも符合し誤りのないことを確認した。 各会計の決算内容、予算執行状況および財産の管理状況については、適正かつ妥当と認められた。 なお、事業の執行状況に関する意見については付帯意見として記した。 以下、順を追って審査の概要を述べる。  1 決算の総括 金額は千円のくらいで四捨五入し、万円単位としている。パーセントは小数点第2位で四捨五入している。 各会計決算額を単純に合計した総計は、歳入額2,753億4,154万円、歳出額2,677億8,038万円で、差引残額は75億6,117万円の黒字となっており、前年度に比べ歳入額は2.3%増加し、歳出額は2.6%増加している。差引残額は9.1%減少している。 各会計歳入歳出決算の総括は、次のとおりである。 一般会計 歳入額 2005億2931万円 歳出額 1941億5557万円 差引残額 63億7374万円 国民健康保険事業会計 歳入額 369億4415万円 歳出額 365億9612万円 差引残額 3億4804万円 後期高齢者医療特別会計 歳入額 99億9530万円 歳出額 99億5703万円 差引残額 3826万円 介護保険特別会計 歳入額 278億2602万円 歳出額 270億2489万円 差引残額 8億112万円 災害復旧特別会計 歳入額 4676万円 歳出額 4676万円 差引残額 0円 総計 歳入額 2753億4154万円 歳出額 2677億8038万円 差引残額 75億6117万円 2 一般会計 (1)決算の概況  歳入総額2,005億2,931万円、歳出総額1,941億5,557万円で、形式収支(歳入歳出差引額)は63億7,374万円の黒字となっており、翌年度へ繰り越すべき財源4億7,955万円を差し引いた実質収支も58億9,419万円の黒字となっている。  歳入総額は前年度(1,959億1,638万円)に比べ46億1,293万円、2.4%増加し、歳出総額は前年度(1,893億3,839万円)に比べ48億1,718万円、2.5%増加している。  当年度実質収支58億9,419万円から前年度実質収支(62億6,078万円)を差し引いた単年度収支は3億6,659万円の赤字となっている。 (2) 歳入  調定額2,020億7,355万円、収入済額2,005億2,931万円で、調定額に対する収入率99.2%は前年度と同率である。  収入未済率は0.7%で、前年度(0.8%)に比べ0.1ポイント低下している。  予算現額、調定額および収入済額は、前年度に比べそれぞれ0.5%、2.3%、2.4%増加している。  不納欠損額および収入未済額は、前年度に比べそれぞれ22.9%、2.6%減少している。 (3)歳出  支出済額は1,941億5,557万円で、前年度(1,893億3,839万円)に比べ48億1,718万円、2.5%増加している。  主な増加額は次のとおりである。  土木費(戸越公園駅周辺地区再開発事業など)40億9,374万円、25.4%、教育費(学校改築推進経費、給食運営費など)40億60万円、19.4%  主な減少額は次のとおりである。  総務費(基金積立金など)マイナス27億9,422万円、マイナス9.2%。  予算現額に対する執行率は95.0%で、前年度(93.1%)に比べ1.9ポイント上昇している。 イ 普通会計における性質別歳出状況  各地方公共団体相互の比較をするために国が定めた統一基準による普通会計の歳出状況を見ると、決算額は1,937億9,606万円で、前年度(1,889億4,043万円)に比べ48億5,562万円、2.6%増加している。このうち、人件費、扶助費および公債費の合計である義務的経費は771億7,449万円で、前年度(748億304万円)に比べ23億7,145万円、3.2%増加している。  経常的経費は1,318億6,396万円で、前年度(1,272億90万円)に比べ46億6,306万円、3.7%増加している。 3 国民健康保険事業会計 (1)決算の概況  歳入総額369億4,415万円、歳出総額365億9,612万円で、形式収支(歳入歳出差引額)は3億4,804万円の黒字となっており、翌年度へ繰り越すべき財源(0円)を差し引いた実質収支も同額の黒字となっている。  歳入総額は前年度(364億414万円)に比べ5億4,001万円、1.5%増加し、歳出総額は前年度(359億5,059万円)に比べ6億4,553万円、1.8%増加している。  当年度実質収支3億4,804万円から前年度実質収支(4億5,355万円)を差し引いた単年度収支は1億551万円の赤字となっている。 (2)歳入  調定額383億7,497万円、収入済額369億4,415万円で、調定額に対する収入率96.3%は前年度(96.2%)に比べ0.1ポイント上昇している。  収入未済率は3.1%で、前年度(3.2%)に比べ0.1ポイント低下している。  予算現額、調定額、収入済額および不納欠損額は、前年度に比べそれぞれ2.1%、1.4%、1.5%、22.3%増加し、収入未済額は3.7%減少している。 (3)歳出  支出済額は365億9,612万円で、前年度(359億5,059万円)に比べ6億4,553万円、1.8%増加している。  主な増加額は次のとおりである。  国民健康保険事業費納付金7億5,693万円、6.1%、総務費3億3,507万円、51.5%、諸支出金8,417万円、20.2%。  減少額は次のとおりである。  保険給付費マイナス5億3,202万円、マイナス2.4%。  予算現額に対する執行率は96.7%で、前年度(97.0%)に比べ0.3ポイント低下している。 4 後期高齢者医療特別会計 (1)決算の概況  歳入総額99億9,530万円、歳出総額99億5,703万円で、形式収支(歳入歳出差引額)は3,826万円の黒字となっており、翌年度へ繰り越すべき財源(0円)を差し引いた実質収支も同額の黒字となっている。  歳入総額は前年度(97億6,463万円)に比べ2億3,067万円、2.4%増加し、歳出総額は前年度(96億9,878万円)に比べ2億5,825万円、2.7%増加している。  当年度実質収支3,826万円から前年度実質収支(6,585万円)を差し引いた単年度収支は2,758万円の赤字となっている。 (2)歳入  調定額100億8,786万円、収入済額99億9,530万円で、調定額に対する収入率99.1%は前年度と同率である。  収入未済率は0.8%で、前年度と同率である。  予算現額、調定額、収入済額、不納欠損額および収入未済額は、前年度に比べそれぞれ2.4%、2.4%、2.4%、27.9%、4.4.%増加している。 (3)歳出  支出済額は99億5,703万円で、前年度(96億9,878万円)に比べ2億5,825万円、2.7%増加している。  主な増加額は次のとおりである。  分担金及び負担金2億3,538万円、2.6%、保険給付費2,003万円、11.9%。  主な減少額は次のとおりである。  総務費マイナス559万円、マイナス2.8%。  予算現額に対する執行率は99.4%で、前年度(99.2%)に比べ0.2ポイント上昇している。 5 介護保険特別会計 (1)決算の概況  歳入総額278億2,602万円、歳出総額270億2,489万円で、形式収支(歳入歳出差引額)は8億112万円の黒字となっており、翌年度へ繰り越すべき財源(0円)を差し引いた実質収支も同額の黒字となっている。  歳入総額は前年度(271億5,814万円)に比べ6億6,788万円、2.5%増加し、歳出総額は前年度(259億4,121万円)に比べ10億8,369万円、4.2%増加している。  当年度実質収支8億112万円から前年度実質収支(12億1,693万円)を差し引いた単年度収支は4億1,580万円の赤字となっている。 (2)歳入  調定額280億3,614万円、収入済額278億2,602万円で、調定額に対する収入率99.3%は前年度(99.2%)に比べ0.1ポイント上昇している。  収入未済率は0.6%で、前年度と同率である。  予算現額、調定額、収入済額および不納欠損額は、前年度に比べそれぞれ2.2%、2.4%、2.5%、30.8%増加している。  収入未済額は、前年度に比べ8.7%減少している。 (3)歳出  支出済額は270億2,489万円で、前年度(259億4,121万円)に比べ10億8,369万円、4.2%増加している。  主な増加額は次のとおりである。  保険給付費5億3,778万円、2.3%、総務費2億9,782万円、48.5%、諸支出金1億5,930万円、54.5%。  減少額は次のとおりである。  基金積立金マイナス240万円、マイナス0.6%。  予算現額に対する執行率は94.5%で、前年度(92.7%)に比べ1.8ポイント上昇している。 6 災害復旧特別会計 (1)決算の概況  歳入総額4,676万円、歳出総額4,676万円で、形式収支(歳入歳出差引額)は0円となっており、翌年度へ繰り越すべき財源(0円)を差し引いた実質収支も同額の0円となっている。  歳入総額は前年度(0円)に比べ4,676万円皆増し、歳出総額も前年度(0円)に比べ4,676万円皆増している。  当年度実質収支(0円)から前年度実質収支(0円)を差し引いた単年度収支は0円となっている。 (2)歳入  調定額4,676万円、収入済額4,676万円で、調定額に対する収入率は100.0%である。  収入未済率は0.0%である。  予算現額は前年度と同様、調定額および収入済額は前年度に比べそれぞれ皆増している。 (3)歳出  支出済額は4,676万円で、前年度(0円)に比べ4,676万円、皆増している。  増加額は次のとおりである。  災害復旧費4,676万円、皆増。  予算現額に対する執行率は3.1%で、前年度(0.0%)に比べ3.1ポイント上昇している。 第 5 付帯意見 1 総括意見  令和5年度に実施された施策の概況について意見を述べる。  令和5年度において、その決算状況(執行率)は一般会計ベースで95.0%(令和4年度93.1%)となった。新型コロナウイルス感染症に関しては令和5年5月8日から季節性インフルエンザと同じ「5類感染症」へ移行し、徐々に日常生活が戻ってきたことにより、コロナ禍にあった3年間において中止・変更してきた事業が概ね計画どおりに実施された。また、計画と比較すると実績が伸びなかった事業はあるものの、時代に合わせた施策も積極的に展開され、高い執行実績をあげていると言える。  はじめに、重点的かつ緊急的に取り組んだ施策について述べる。  世界的なエネルギー供給の不安や円安による物価高騰への対策として、住民税非課税世帯等物価高騰対策支援給付金、省エネルギー対策設備更新助成金および子育て世帯生活支援特別給付金等の補正予算を編成し、区民生活および区内経済の安定に向けた支援を行った。  次に、令和5年度に掲げた重点政策について述べる。  まず、重点政策の一つ目「一人ひとりをささえ、伸ばす 子育て・教育で選ばれる しながわ」についてである。  はじめに、「保育・給食・医療 子育て3つの無償化」についてである。第2子保育料無償化については、令和5年4月から東京都に先駆け実施するとともに、同時に学校給食の無償化および高校生等医療費無償化を実施した。  乳児を育てる家庭へ向けた支援については、0歳児見守り・子育てサポート事業「見守りおむつ定期便」や、保育所等の空き定員を活用した未就園児定期預かりモデル事業を実施した。  在宅子育てへの支援については、八潮・勝島地域を拠点とする在宅子育て支援施設の開設に向けて設計を進めた。  次に、児童発達支援センターの整備と安全で安心な保育・教育環境の整備についてである。区内2か所目となる児童発達支援センターを戸越地区に開設するため、施設改修に向け設計を実施した。また、私立幼稚園に対し通園バス内置き去り防止機器の設置費用の助成を行った。  そして、児童相談所開設準備・ヤングケアラー支援・特別支援教育の推進についてである。区立児童相談所は令和6年度の開設に向け、人材の確保・育成、運営体制の整備などの準備を進めた。また、ヤングケアラー支援では実態把握調査を進めるとともに、コーディネーターの配置やSNS相談窓口の設置を行った。特別支援教育については、発達障害教育支援員を小学校15校に配置した。また、豊葉の杜学園には難聴通級指導学級を、宮前小学校には自閉症・情緒障害特別支援学級を令和6年4月に開設するための準備を行った。  二つ目は「高齢者も障がいのある方も 誰もが安心を実感できる しながわ」についてである。  まず、高齢者・障害者福祉施設については、小山台住宅等跡地の整備、八潮南特別養護老人ホームの増改築整備に向けた設計を実施し、さらに障害者グループホーム「出石つばさの家」の建築工事を進めた。  障害のある方への施策については、超短時間就労の基盤づくりとして関係機関との連絡会や研修、モデル実施に取り組んだ。また、令和7年のデフリンピック開催に伴い、聴覚障害の理解促進とデフスポーツの普及啓発に向け「デフスポーツ&アートフェア」を開催した。  次に、高齢者施策については、高齢者の社会参加を促し介護予防などにつなげることを目的に、補聴器購入費助成事業を開始した。  そして、健康づくりについては、アピアランスケア事業として、がん患者ウィッグ・胸部補正具の購入等費用助成を行った。また、50歳以上の区民を対象に帯状疱疹ワクチン予防接種費用の一部助成を開始した。  さらに、性的マイノリティの方への支援については、東京都パートナーシップ宣誓制度を活用し、区営住宅への入居等、行政サービスの提供を開始した。  三つ目は「歴史と伝統を未来へつなぐまちづくり 経済と環境が両立するSDGs しながわ」についてである。  まず、区の歴史と文化の発信拠点である品川歴史館については、令和6年4月の全面リニュー アルに向けた工事を進めた。また、品川の魅力発信として、「しながわシティラン2025 」の開催 に向けて、実行委員会を設置し、大会要項やコースを決定した。  水辺空間の利活用については、観光舟運イベント「しながわクルーズ」を実施した。また、水辺の拠点施設である「しながわ水族館」の全面リニューアルに向けた設計に着手した。さらに、しながわ区民公園は北側ゾーンの防災機能を強化するとともに運動施設をリニューアルした。  町会・自治会に対する支援では、専門コンサルタントを活用した伴走型支援プログラムを実施するとともに、町会・自治会の横のつながりの形成と活動の活性化を目的に交流会を実施した。  次に、災害に強い安全・安心なまちづくりについてである。東京都の新たな首都直下地震による被害想定を踏まえ「品川区地域防災計画」の大規模修正を行った。また、立会川・勝島地区のまちづくりについては、「(仮称)勝島人道橋」の設計を進め、都市再生整備計画を策定した。  次に、経済と環境が両立するSDGsしながわの実現についてである。地域経済の活性化については、中小企業に対して引き続き融資あっせんを行うとともに、プレミアム付共通商品券の発行 に必要な経費を助成するなど区内経済を下支えした。また、環境施策については、昨年度の来館者数が22万9千人を超えた「エコルとごし」において、多くの環境学習の機会を提供した。さらに、国が募集する「SDGs未来都市」「自治体SDGsモデル事業」への応募に向け、事業の検討および提案書の作成を行った。  四つ目は「区民とともに進める 新時代のしながわ」についてである。  まず、区民の意見を反映した区政についてである。全区民を対象とした区民アンケートを実施するとともに、羽田新飛行ルートに関する要望書と区民アンケート結果報告を国へ提出し、区民の負担軽減につながる取組みを実施するよう働きかけを行った。  次に、新庁舎整備では、新庁舎の基本性能を具体化するため設計の着手にあたり、区として初めてCM(コンストラクション・マネジメント)方式を導入し、民間の技術力を活用した。また、現庁舎跡地等の有効活用では、品川区庁舎跡地等活用検討委員会の設置とともに、ワークショップを開催した。  そして、行政評価の実施については、全665事業の事務事業評価とともに、区民意見を踏まえた政策評価を行い、事業の見直しによる財源確保に努めた。  さらに、DXを活用した区民サービスの向上については、区民の利便性を高めるため、電子申請サービスを活用し行政手続きのオンライン化を進めた。また、キャッシュレス決済端末を文化センター、中小企業センター等にも拡充した。  令和5年度の決算審査を通じ、次のとおり意見を述べる。  その1は、DXの推進と区民サービスのさらなる向上についてである。  区は令和4年4月に策定した品川区DX推進基本方針に基づき、行政手続のオンライン化や全庁業務のデジタル化など、DXによる業務改善に取り組んでいる。一方で財源の面では都区財政調整交付金や補助金の活用などにより、区の財政負担の最少化に努めているという。引き続き財源確保に留意するとともに、GovTech東京の活用を図るなど区民サービスの向上につながるDX の取組みをより一層推進されたい。  その2は、環境の変化に対応した柔軟な事業運営についてである。  まず、区では令和4年4月に待機児童数ゼロを達成したが、今後は少子化に伴い認可外保育園、認証保育所等の特に小規模な園において定員割れの状況が常態化し、園の経営状況が悪化していくことも予想される。経営が立ち行かなくなり突然閉園という結果を招くと、利用者に多大なる影響を及ぼすため、各園の経営状況について適切に把握されるよう努められたい。  次に、学校において突発的な修繕工事等に充てる「学校維持補修費」について、1億1千万円余の事業間流用が行われていた。コロナ禍で中止していたプール授業の再開に伴う想定以上の件数の修繕工事が原因であり、今年度も既に緊急的な工事があるという。今後も同様の事例の発生は十分に予想されるため、学校施設の現状把握を行い、児童・生徒の安全確保を図られたい。  また、後期高齢者医療保険料については、同時に徴収する介護保険料とともに増加傾向にある。そのため、特別徴収の条件である基礎年金額の2分の1の判定により、当該保険料は特別徴収の対象とならないケースが増えているという。今後、団塊の世代の全てが後期高齢者となり保険料負担率の高い高齢者の増加に伴い普通徴収の対象者が増加し、区民や職員の事務負担が増えることが懸念される。そこで、年金額の2分の1の判定条件を引き上げることで当該保険料の特別徴収対象を拡大することは、被保険者の負担能力からみても十分に可能と思われる。今後は保険料の徴収における制度の見直しなど、国等への働きかけの必要性について十分検討されたい。  その3は、妊娠・出産・育児の切れ目ない支援と子どもたちの健やかな成長についてである。  まず、区は産後ケア事業として母親の心身ケアや育児サポートの提供をしている。日帰り型や訪問型等の種類があり、東京医療保健大学産後ケア研究センターへ委託し、区の産後ケア事業の 研修を受けた助産師により実施している。一方で「すくすく赤ちゃん訪問事業」は地域の助産師と連携しており、「顔が見える」という意味においては地域の助産師も含めた活用も一つの案である。工夫を凝らし区民にとって利用しやすい事業となるよう努められたい。  次に、令和6年10月よりこれまで東京都品川児童相談所が担ってきた児童虐待に関する通報先が区立児童相談所に一本化され、地域に根差した児童相談体制の運営を区が一元的に引き受けることになる。児童虐待のケース対応時における医療機関への迅速な受診を実現するため、区内の医療機関との間で平素からの連携ネットワークを構築することは重要な課題の一つである。10月の開設まで残りわずかとなったが、着実な準備を進められたい。  また、区立学校の移動教室における介助員等の支援員の随行については、日常的に支援している支援員の随行が難しいことが多く、別の支援員を探す際も人材確保に苦慮するケースがあると聞く。経験のある支援員を確実かつ円滑に確保できるよう努められたい。  その4は、生活の基盤である住み続けられる住まいの確保についてである。  区では住居の確保に配慮が必要な高齢者や障害者等を対象に、不動産関係団体と連携し住宅情報を提供する住宅確保要配慮者入居促進事業を行っているが、障害者に対する助成件数についてはここ数年実績がない。今後は住宅部門を中心に関係部署と連携して必要な見直しを行うことにより、配慮を必要とする方々への支援につながるよう取り組まれたい。  その5は、新たな課題に対する部署間の連携についてである。  まず、商店街の街路灯の維持管理については、原則的には商店街の責任であることを理解する一方で、閉鎖後の商店街ではそれらの対処が困難になっていることも事実である。景観維持や安全面の点で地域全体に影響を及ぼすこともあることから、閉鎖後の商店街であっても、区の関係部署の協力体制の下、組織横断的に問題解決に取り組まれたい。  また、不登校支援の観点から、学校の授業時間帯に子どもが図書館を利用することについて、図書館の「居場所」としての機能を認めているという。子どもが居ることを把握した場合、職員による声掛けや学校への連絡を行っているといい、子どもが安心して過ごせる空間の一つとなっている。引き続き関係部署との緊密な連携の下、機能の充実を図られたい。  次に、一般会計のうち特別区民税収について意見を述べる。  特別区民税の収入済額は540億311万円で前年度(529億4,769万円)に比べ10億5,542万円、1.99%上昇している。現年課税分の収入率は99.37%で前年度(99.53% )に比べ0.16ポイント低下し、滞納繰越分は66.98%で前年度(58.71%)に比べ8.27ポイント上昇している。全体の収入率は 99.13%となり前年度(99.19%)に比べ0.06ポイント低下している。なお、令和3年度からの全体の収入率は、3年度99.12%、4年度99.19%、5年度99.13%と、主に納付手段の拡充効果により依然高い数値を維持している。  次に、特別会計について意見を述べる。  国民健康保険事業会計は、歳入総額は対前年度5億4,001万円増加し、歳出総額も対前年度6億 4,553万円増加し、単年度収支において1億551万円の赤字(前年度2,582万円の赤字)となっている。歳入については、主な歳入項目のうち、都支出金、国民健康保険料、繰越金は対前年度それぞれ3.2%、3.0%、5.4%減少したものの、繰入金、国庫支出金が対前年度それぞれ44.5%、227.2% 増加したため、全体として対前年度1.5%の増加となっている。  一方、歳出については、主な歳出項目のうち、保険給付費が対前年度2.4%減少したものの、国民健康保険事業費納付金、総務費、諸支出金が対前年度それぞれ6.1%、51.5%、20.2%増加したため、全体として対前年度1.8%の増加となっている。  令和5年度の保険料の対調定収納率は86.70%で前年度(87.09%)に比べ0.39ポイント低下している。このうち現年度分は92.41%で前年度(92.19%)に比べ0.22ポイント上昇し、高い収納率を達成することができた。これらは、特別区民税と同様に主に納付手段の拡充によるところが大きい。引き続き高い収納率を維持できるよう努められたい。  後期高齢者医療特別会計は、歳入総額は対前年度2億3,067万円増加、歳出総額は対前年度2億5,825万円増加し、単年度収支においては2,758万円の赤字(前年度4,914万円の赤字)となっている。歳入については、繰越金、広域連合支出金が対前年度それぞれ42.7%、52.9%減少しているが、繰入金、後期高齢者医療保険料、諸収入が対前年度それぞれ4.6%、1.5%、12.2%増加し、全体として対前年度2.4%の増加となっている。  一方、歳出については、総務費が対前年度2.8%減少しているが、支出総額の93.6%を占める分担金及び負担金が対前年度2.6%増加し、全体として2.7%の増加となっている。  令和5年度の保険料の対調定収入率(還付未済額を除く。)は98.02%で前年度(98.15%)に比べ0.13ポイント低下している。今後も、口座振替の促進等によりさらなる収納率の向上に努められたい。  介護保険特別会計は、歳入総額は対前年度6億6,788万円増加、歳出総額は対前年度10億8,369万円増加し、単年度収支においては4億1,580万円の赤字(前年度2億2,665万円の黒字)となっている。歳入については、主な歳入項目のうち保険料が対前年度0.6%減少しているが、繰越金、支払基金交付金、繰入金が対前年度それぞれ22.9%、3.1%、4.3%増加し、全体として対前年度2.5%の増加となっている。  一方、歳出については、基金積立金が対前年度0.6%減少しているが、保険給付費、総務費が対前年度それぞれ2.3%、48.5%増加し、全体として4.2%の増加となっている。  令和5年度の保険料の対調定収入率(還付未済額を除く。)は96.31%で前年度( 96.34% )に比べ0.03ポイント低下している。今後も、口座振替の促進等によりさらなる収納率の向上に努められたい。  災害復旧特別会計は、歳入総額、歳出総額それぞれ対前年度4,676万円皆増している。  平成29年度に創設された同会計は、令和5年6月2日から3日にかけての大雨に伴う対応、同年9月8日の台風に伴う対応および令和6年2月5日の大雪に伴う対応として、令和元年度以来2度目の執行がなされた。災害時における弾力的かつ迅速な執行に努められたい。  以上、令和5年度決算における事業の執行状況についての総括意見を述べた。令和5年度は、特別区税が前年度の567億円を9億円(1.6%)上回る等歳入は堅調に推移した。コロナ禍の3年間を乗り越え、高水準の賃上げや企業の高い投資意欲など、経済には前向きな動きが見られる一方、長引く円安による輸入価格の上昇を起点とする物価上昇が続き、個人消費や設備投資は依然として力強さを欠いているなど、区政を取り巻く環境は予断を許さない状況にある。今後も特別区民税や都区財政調整交付金の動向を見据えた慎重な行財政運営が求められる。  区は、本年5月、国が公募する「SDGs未来都市」と特に先導的な取組みを行う「自治体SDGsモデル事業」に選定された。今後は提案内容を具体化した「SDGs未来都市計画」を策定し、区民 一人ひとりがウェルビーイングを実感できるまちづくりを進めていくということである。誰一人取り残さないというSDGsの理念に基づき、事業の推進に向けて全力で取り組まれたい。  令和6年度においては、「新時代のしながわ」を果敢に牽引する大胆で戦略的な「ウェルビーイング予算」の編成を行った。昨年8月に実施した「全区民アンケート」の「区民ニーズ」や「幸福実感度」を分析した結果から得た、将来を見据えた真に必要な施策を展開することで、「区民の幸福(しあわせ)」の実現を目指している。時を移さずに行う区長の決断から実行までの迅速な取組みに対しては、区の内外から高い関心が寄せられているところである。  人口減少、気候変動、AIの進化は、未曽有の課題を現代社会に突き付けている。今後も優先度の高い施策を見極め、確実に展開していくために、引き続き、事務事業評価の活用など不断の行財政改革を進め、弾力性のある財政構造の確保と将来にわたる健全な財政運営の堅持を図り、持続可能なまちづくりの実現に向けて取り組んでいくことを切に期待する。 2 個別意見 (1) 主要決算数値および指標について  令和5年度普通会計(決算統計)の決算状況について、主な決算数値および指標は次のとおりである。  歳入総額2,001億6,980万円、歳出総額1,937億9,606万円で、形式収支は63億7,374万円(対前年度3.1%の減)の黒字となっており、翌年度へ繰り越すべき財源4億7,955万円を差し引いた実質収支は58億9,419万円の黒字(対前年度5.9%の減)となっている。また、単年度収支(当年度実質収支-前年度実質収支)は3億6,659万円の赤字、それに財政調整基金積立金を加えた実質単年度収支は5億5,614万円の黒字となっている。  財政運営の状況を判断する指標とされる実質収支比率は5.2%で、前年度(5.7%)に比べ0.5ポイント低下している。これは、標準財政規模が増加(約37億円)したことに加え、一般財源のうち都区財政調整交付金の減(約9億円)等により実質収支額が減少したことによるものである。  一般的に3 ~ 5%が望ましい水準とされているが、23区の平均値(6.2%、速報値)と比べると1.0ポイント下回っており、当該年度の財政規模や経済状況等に影響されるところが大きい。  財政構造の弾力性を判断する指標とされる経常収支比率は76.8%で、前年度(74.8%)に比べ2.0ポイント上昇している。これは、経常一般財源総額は、都区財政調整交付金の減(約17億円)等により、約2億円減少し、経常的経費充当一般財源は、物件費の増(約15億円)、補助費等の増(約13億円)等により約23億円増加したためである。  23区の平均値(76.5%、速報値)と比べると0.3ポイント上回っている。  経常収支比率と同様に、財政構造の弾力性を判断する指標とされる公債費負担比率は0.8%で、前年度と同率である  歳出総額に占める人件費の割合を示す人件費比率は12.8%で、前年度(13.4%)に比べ0.6ポイント低下している。これは、23区の平均値(12.9%、速報値)と比べると0.1ポイント下回っている。また、人件費の経常収支比率は19.0%で、前年度(19.8%)に比べ0.8ポイント低下している。  平成23年度以降マイナスであった自主財源人員(いわゆる財調過員)は、令和3年度以降プラスになっている。  以上、令和5年度普通会計の決算に見られる主な決算数値および指標は、いずれも適正な水準を維持していると言える 令和5年度品川区基金運用状況審査意見書 地方自治法第241条第5項の規定に基づき、令和4年度品川区基金の運用状況を審査した結果について次のとおり意見を述べる。 令和6年9月2日 品川区監査委員 コウチユタカ 同     アリガヤスコ 同       セオマリ 同       ツルシンイチロウ 第1 審査対象 1 用品基金 2 公共料金支払基金 (参考) 1 奨学金貸付基金 2 社会福祉基金 3 平和基金 4 地球環境基金 5 地域振興基金 6 公共施設整備基金 7 財政調整基金 8 減債基金 9 義務教育施設整備基金 10 介護給付費等準備基金 11 文化スポーツ振興基金 12 災害復旧基金 13 庁舎整備基金 第2 審査実施の時期 令和6年7月1日から令和6年8月19日まで 第3 審査の方法 各基金が確実かつ効率的に運用されているかなどに主眼をおき実施した。 第4 審査の結果 関係帳簿を審査した結果、別表のとおり適正に運用され計数に誤りのないことを確認した。 別表1 用品基金 令和5年度末保有状況 15000000円 令和5年度中運用状況 用品調達額 207424082円 用品払出額 207537686円 基金回転数 13.83回 運用益金 113604円 公共料金支払基金 令和5年度末保有状況 270000000円 令和5年度中運用状況 公共料金支払額 1895726677円 収入額 1896683481円 基金回転数 7.02回 運用益金 0円 別表2 用品基金 令和4年度末現在高 15000000円 令和5年度中増減 増分0円 減分0円 令和5年度末現在高 15000000円 公共料金支払基金 令和4年度末現在高 270000000円 令和5年度中増減 増分0円 減分0円 令和5年度末現在高 270000000円 合計 令和4年度末現在高 285000000円 令和5年度中増減 増分0円 減分0円 令和5年度末現在高 285000000円 令和5年度品川区財政健全化審査意見書 地方公共団体の財政の健全化に関する法律第3条第1項の規定に基づき、令和5年度決算に係る健全化判断比率およびその算定の基礎となる事項を記載した書類を審査した結果について次のとおり意見を述べる。 令和6年9月2日 品川区監査委員 コウチユタカ 同     アリガヤスコ 同       セオマリ 同       ツルシンイチロウ 第1 審査対象 実質赤字比率、連結実質赤字比率、実質公債費比率および将来負担比率(以下健全化判断比率という。)ならびにその算定の基礎となる事項を記載した書類 第2 審査実施の時期 令和6年7月1日から令和6年8月19日まで 第3 審査の方法 令和5年度決算に基づく健全化判断比率が地方公共団体の財政の健全化に関する法律(以下法という。)その他関連法令に基づいて算出され、かつ、その算定の基礎となる事項を記載した書類が適正に作成されているかに主眼をおき実施した。 第4 審査の結果 審査に付された健全化判断比率の算定の基礎となる事項を記載した書類は適正に作成されているものと認められた。また、いずれの比率も早期健全化基準を下回っており特に指摘すべき事項はない。 以下、順を追って審査の概要を述べる。 1 健全化判断比率の状況 法は、自治体の財政状況により、財政が比較的健全な自治体、早期の財政健全化が必要な自治体(早期健全化団体)、財政の再生が必要な自治体(財政再生団体)に区分する。 この区分は、(1)実質赤字比率、(2)連結実質赤字比率、(3)実質公債費比率、(4)将来負担比率の各健全化判断比率に応じて決定され、このうち、(1)から(4)の比率のいずれかが早期健全化基準以上になると早期健全化団体となり、(1)から(3)の比率のいずれかが財政再生基準以上になると財政再生団体となる。 2 各比率の状況 (1)実質赤字比率 一般会計および災害復旧特別会計を対象とした実質赤字額の標準財政規模に対する比率である実質赤字比率は、実質収支額が黒字であるため算定されない。算出比率はマイナス5.19%で、早期健全化基準の11.25%を下回っている。 (2)連結実質赤字比率 全会計を対象とした連結実質赤字額の標準財政規模に対する比率である連結実質赤字比率は、連結実質収支額が黒字であるため算定されない。算出比率はマイナス6.24%で、早期健全化基準の16.25%を下回っている。 (3)実質公債費比率 地方債に係る元利償還金および準元利償還金の標準財政規模に対する比率である実質公債費比率はマイナス3.7%で、早期健全化基準の25.0%を下回っている。 (4)将来負担比率 将来負担すべき実質的な負債の標準財政規模に対する比率である将来負担比率は、充当可能財源等の額が将来負担額を上回るため算定されない。算出比率はマイナス95.3%で、早期健全化基準の350.0%を下回っている。 さらに詳細な内容については、次の担当部署へご連絡ください。 監査委員事務局 電話 0 3 5 7 4 2 6 8 5 0 ファクシミリ 0 3 5 7 4 2 6 8 9 9