写 品監発第27号 令和7年3月24日 品川区長 様 品川区議会議長 様 品川区教育委員会 様 品川区選挙管理委員会 様 品川区監査委員 様 品川区監査委員 コウチ ユタカ アリガ ヤスコ セオ マリ ツル シンイチロウ 令和6年度後期一般監査の結果について(報告) 地方自治法および品川区監査基準の規定に基づき実施した一般監査の結果について、下記のとおり報告する。   第1 定期監査(所管別監査)の実施 1 実施期間 令和6年9月30日(月)から令和7年2月18日(火)まで 2 対象期間 (1)令和5年度 (2)令和6年度(監査実施日まで) 3 対象部局 (1)地域振興部地域活動課 地域センター6か所 (品川第一、品川第二、大崎第一、大崎第二、荏原第三、荏原第四) (2)文化観光スポーツ振興部文化観光戦略課 文化センター1か所 (旗の台) 品川歴史館 (3)子ども未来部子ども育成課 児童センター4か所 (東品川、東大井、冨士見台、ゆたか) すまいるスクール11か所 (浅間台、城南第二、第四日野、大井第一、伊藤、鈴ケ森、京陽、延山、小山、荏原平塚、豊葉の杜) (4)子ども未来部保育施設運営課 幼保一体施設2か所 (二葉すこやか園、のびっこ園台場) (5)教育委員会事務局 小学校9校 (浅間台、城南第二、第四日野、大井第一、伊藤、鈴ケ森、京陽、延山、小山) 中学校2校 (鈴ケ森、荏原第五) 義務教育学校2校 (荏原平塚、豊葉の杜) 4 監査の主眼点 (1)地方自治法第199条第3項の規定に基づき、各事務事業が同法第2条第14項(最少の経費で最大の効果)および第15項(組織及び運営の合理化)の趣旨にのっとり執行されているかどうかに特に意を用い、以下の観点を主眼として監査を行った。 ア 収入の確保が適正に行われているか。 イ 予算が適正かつ効果的に執行されているか。 ウ 契約の締結および履行の確保が適正に行われているか。 エ 事務事業の執行および管理運営が計画的かつ合理的に行われているか。 オ 財産の管理が適正に行われているか。 カ 私費を含む現金の管理が適正に行われているか。 キ 従前の指摘事項が是正されているか。 (2)特に以下の3点に重点を置いて監査を行った。  ア 地域センターにおいては、「品川区公金等の管理に関する取扱基準」(平成20年1月28日付け会計管理者決定)に基づき、また、過去の指摘事項等を踏まえ「地域センター地域事務預金現金等取扱い要領」(平成20年4月1日付け区民生活事業部長決定)を改正し、預金や現金等の適切な管理を期しているが、同要領にのっとり現金および各種委託料や補助金等の管理が適切に行われているかを確認する。 イ 文化センター、品川歴史館、児童センター、すまいるスクールおよび幼保一体施設においては、「品川区公金等の管理に関する取扱基準」にのっとり収納金等が適切に管理されているか、また所管課ごとに作成されている私費等に係る管理手引書にのっとり現金が適切に管理されているかを確認する。  ウ 小学校、中学校および義務教育学校においては、教育委員会事務局により事務    管理指導(いわゆる自主検査)を実施しているが、当該指導が適切に行われているかを確認する。 第2 定期監査(所管別監査)の結果 監査の結果、各事務事業は概ね適正に行われていた。なお、次に述べる指摘事項については今後の事務事業の執行において十分に留意されたい。 《地域振興部地域活動課》 1 収入事務について 令和6年9月30日付けで収納した後期高齢者医療保険料30,500円について、収納の記録を収納金システムに入力する際、誤って国民健康保険料と入力したことから、金融機関に払込を行う際に使用する納付書の歳入科目に誤りが生じている。収納金システムへの入力内容および出力された納付書の内容の確認を徹底し、適正な収入事務の執行に努められたい。 (大崎第二地域センター) 2 現金管理について 令和5年度および令和6年度における区民集会所使用料の還付に係る現金出納簿について、区が指定する様式を使用していない。当該使用料は公費であることから、現金出納簿の記帳を適切に行うよう徹底されたい。 (荏原第四地域センター) 3 指定消耗品の管理について 令和6年度の郵券に係る消耗品受払簿について、地域活動課からの郵券受入時において、所長までの決裁(押印)がなされていない。適正な指定消耗品の管理に努められたい。 (荏原第三地域センター) 4 地域事務について (1)地域事務に係る金券類について、次のとおり受払事由が発生しているにもかかわらず消耗品受払簿が作成されていない。改めて適正な事務執行および指定消耗品の管理について周知徹底されたい。 ア 令和5年4月20日 郵券2,352円分購入ほか7件 イ 令和6年3月8日 収入印紙200円分購入 (ア品川第一地域センター、イ荏原第三地域センター) (2)地域事務における現金や預金は公金と同様に取り扱う必要があるが、郵券を購入する際、次のとおり職員による立替払が行われている事例が見受けられる。適正な事務執行に努められたい。 ア 令和5年11月20日付けで購入した郵券1,800円分について、職員のクレジットカードによる立替払が行われている。 イ 令和5年5月2日付けで購入した郵券84円分について、事前に地域事務に係る預り金口座から出金した金額が不足していたため、当該不足額について職員の私費による立替払が行われている。 (ア品川第一地域センター、イ大崎第一地域センター) 《文化観光スポーツ振興部文化観光戦略課》 1 契約事務について 主管課で締結した受水槽等の清掃委託契約について、契約締結時点では汚泥類の処分業者が決まっていないにもかかわらず、仕様書に処分業者名が記載されている。適正な手順による契約事務の執行を徹底されたい。 (旗の台文化センター、品川歴史館) 《子ども未来部保育施設運営課》 1 物品管理について 物品購買契約の支払について、次のとおり納品検査に係る物品出納員の確認印が押印されていない事例が見受けられる。物品管理規則にのっとり適切な事務処理に努められたい。 ア 令和6年10月17日付け請書「植木鉢他」における同月31日付け納品検査 イ 令和6年11月11日付け請書「絵本」における同月13日付け納品検査 (二葉すこやか園) 《教育委員会事務局》 1 契約事務について (1)主管課で締結した契約書の作成に当たり、次のとおり仕様書の記載事項に不備のある事例が見受けられる。仕様書の作成に際しては、現状を適切に把握した上で仕様内容や条件を正確に記載するよう徹底されたい。 ア 令和5年8月17日付け請書「屋上防水工事」495,000円ほか2件について、契約上の記載事項である契約代金の支払の時期および方法が仕様書に明記されていない。 イ 令和5年7月27日付け請書「給食用白衣セット他クリーニング」42,164円について、仕様書に誤りがあったため、仕様書および請求書間で履行数量に相違がある。 (ア浅間台小学校、イ小山小学校) (2)主管課で締結した令和6年9月30日付け請書「教育相談室用応接セット」272,800円の物品購買契約について、購入した物品のうちソファー1台112,750円においては、予算科目を備品購入費とすべきであったところ一般需用費により支払っており、また備品の登録を行っていない。新公会計におけるストック情報の正確な把握および区の適正な資産管理を行うため、備品は適切に管理されたい。                   (鈴ケ森小学校) (3)主管課で締結した契約について、事業者から提出された見積書の金額に誤りがあったものの、正しい金額の見積書を徴取しなかったため、次のとおり契約金額と添付された見積書の金額に相違がある。契約書の作成に際しては、正確な仕様内容や条件に基づいた正式な見積書を徴し、双方が合意している契約条件を明確にした上で事務処理を行うよう徹底されたい。 ア 令和6年9月10日付け請書「印刷室改修電気設備工事」 (契約金額 492,800円、見積書の金額 487,300円) イ 令和6年4月1日付け請書「新聞(学校運営用)」 (契約金額 14,700円、見積書の金額 13,200円) (ア京陽小学校、イ豊葉の杜学園) (4)主管課契約に係る契約事務について、契約書に添付すべき「個人情報を取り扱う委託契約の特記事項」が付されていない事例や改正前の同特記事項が付されている事例が散見される。最新の特記事項を添付するよう徹底されたい。 (城南第二小学校、鈴ケ森小学校、小山小学校、豊葉の杜学園) 2 指定消耗品の管理について 令和6年度の郵券に係る消耗品受払簿について、令和6年5月30日に指導課から受け入れた郵券計265枚において、消耗品受払簿の現在高と現品数が115枚分相違している。適正な指定消耗品の管理に努められたい。 (京陽小学校) 3 教材費および行事費について (1)教材費に係る会計処理について、月の収支確定後に管理職(校長・副校長)が金銭出納簿の翌月への繰越金と通帳残高が一致していることを確認することとされているが、令和6年2月2日付けで同年1月分の確認を行う際、誤って同年2月分の明細を出力し確認を行っている。適切な事務処理に努められたい。 (荏原平塚学園) (2)教材費および行事費に係る会計決算報告について、決算処理は正しく行われているものの、保護者配布用の決算報告書の残余金に誤りがある。保護者からの信頼を損なうことのないよう確認を徹底し、正確を期されたい。 (城南第二小学校、荏原平塚学園) 4 給食事務について 主管課で締結した学校給食用物資納入契約について、契約代金を支払う際、契約書で指定されている振込先口座とは異なる口座に、契約変更することなく振込を行っている。適切な事務処理に努められたい。 (延山小学校、小山小学校) 5 理科室の管理について 理科室および理科室で使用する薬品類については、理科主任研修会を開催するなど適正な管理に向けた取組を行っているものの、次のとおり、従前の指摘事項と同様の不適切な管理事例が、未だ多くの学校で見受けられる。改めて理科室薬品管理責任者(副校長)および理科室薬品管理担当者(理科主任)に対して、理科室薬品管理規定に基づく薬品類の適正な管理がなされるよう指導を徹底されたい。 ア 理科準備室への立入禁止を促す表示がなされていない。(2校) イ 薬品管理簿は試薬瓶ごとに1枚作成すべきところ、薬品の種類ごとに1枚しか作成されていない。(1校) ウ 薬品類の定期点検は4月末日および各学期末に実施することとされているが、そのうちの一部が実施されていない。(3校) エ 薬品管理一覧表に記載されている試薬瓶数と現品数が相違している。(2校) (教育総合支援センター) 6 給与事務および服務管理について (1)教育職員(栄養士)の給与について、育児休業からの復帰に伴う給与支給開始に係る事務処理を怠ったことで、令和6年4月分の給与が支給されず、同年5月に追給されている。適切な事務処理に努められたい。 (豊葉の杜学園) (2)教育職員に支給される各種手当について、次のとおり不適切な処理事例が見受けられる。多額の返納または追加支給が行われることのないよう適切な事務処理に努められたい。 ア 扶養手当について、令和3年12月に支給を停止すべきところ、事務処理を怠りそのまま支給を続けたため、同月から令和5年8月までの21か月分を返納している。 イ 扶養手当について、令和5年4月に支給を停止すべきところ、事務処理を怠りそのまま支給を続けたため、同月から令和6年7月までの16か月分を返納している。 ウ 通勤手当について、最も経済的かつ合理的と認められる通勤経路に基づき支給金額を算出すべきところ、誤って職員から届出のあった通勤経路により算出したため、令和5年4月、同年10月および令和6年4月支給分に対する差額を返納している。 エ 通勤手当について、令和5年10月1日付けの運賃改定に伴い支給金額を変更すべきところ、事務処理を怠ったことで、令和5年10月および令和6年4月支給分に対する差額を令和6年10月に追給している。 (ア伊藤小学校、イ荏原第五中学校、ウ城南第二小学校、エ延山小学校) (3)会計年度任用職員(時間講師)に係る勤務時間の振替命令簿について、次のとおり不適切な事例が見受けられる。指定様式による振替前の事務処理を徹底し、適正な服務管理に努められたい。 ア 振替事由が発生しているにもかかわらず振替命令簿が作成されておらず、振替前の事前命令が徹底されていない。 イ 振替命令簿の記載があらかじめ印字されたものとなっており、複数の命令に渡り決裁(押印)がまとめて行われている。 (ア延山小学校、イ大井第一小学校) 《意見》 最後にDX(デジタル・トランスフォーメーション)推進による業務改革について、意見を述べる。 国においては、令和3年にデジタル庁が発足するなど行政事務のデジタル化の動きを加速させており、区においても、品川区DX推進基本方針に基づき公金納付のデジタル化や電子申請サービスの利用促進等、区民の利便性向上に向けた行政事務のデジタル化を積極的に推進している。一方、行政内部においては、現在も各種規程により紙媒体で備えなければならない帳簿等が数多く存在し、従来からの管理方法から脱却しきれていない状況も確認できる。今後、事務処理の実態に即した内容になるよう規程の見直しを行うなど、デジタル変革の範囲を区の基礎的な事務にまで拡大し、業務改革の一層の推進を図ることで、職員の事務負担の軽減と更なる行政運営の効率化に努められたい。 《結びに代えて》 先般、平成27年度および令和2年度に行った教師用指導書他の買入れについて、必要な議会の議決を欠いていたことが判明し、区議会定例会で追認を求める事例があった。このことについては、第一義的には契約事務が委任されている主管部局や契約担当課において法令等に基づき適正に執行すべき事務であったといえるが、監査委員としても、定期監査において議決を経ていないことの発見には至らなかったものであり、監査手法に改善の余地があるものと自省する。 今後、区の事務執行の合規性を保証するものとしての監査機能を高めるべく、従前の手法に捉われずに新たな視点や手法を取り入れながら、職責を果たしていく所存である。 第3 随時監査の実施(フォローアップ監査) 1 実施期間 令和6年9月30日(月)から令和7年2月18日(火)まで 2 対象期間 令和5年度後期定期監査(所管別監査)に係る書面監査実施日以降の事務事業および財産管理等 3 対象部局および対象事務 (1)教育委員会事務局 後地小学校 ア 主管課契約に係る契約事務について イ 給与事務について (2)教育委員会事務局 品川学園 ア 主管課契約に係る契約事務について イ 給与事務について 4 監査の主眼点 令和5年度後期定期監査(所管別監査)における指摘事項のうち次に掲げる事例について、その指摘を踏まえた是正措置が講じられているか。 (1)常態となっている事例 (2)改善の緊急性および重要性が高い事例 第4 随時監査の結果(フォローアップ監査) 所管課において是正措置を講じた結果、各事務事業は概ね適正に行われていた。なお、次のとおり昨年度と類似する不適切な事例が見受けられたことから、各学校においては事務処理手順やチェック体制の確認を行うとともに、教育委員会事務局においては、引き続き学校事務職員へのフォローアップ体制の充実・強化を図られたい。 《教育委員会事務局》 1 契約事務について 令和6年2月15日付け請書「カーテンクリーニング」60,940円について、仕様書に記載されている数量は正しいものの、仕様書に添付されている内訳書の数量に誤りがあった。改めて仕様内容や条件を正確に記載するよう徹底されたい。 (後地小学校) 2 給与事務について 令和5年10月に教育職員(2名)に支給した通勤手当(6か月分)について、勤務実態がなかった1か月分の支給額計9,110円を返納させるべきところ、事務処理の誤りにより、支給した通勤手当の額に当該返納額を加算した額を返納させた。このため、本来返納させる必要がなかった額計206,510円を令和6年5月に当該教育職員に追給している。適切な事務処理に努められたい。 (品川学園) 第5 工事監査の実施 1 実施期間 令和6年9月30日(月)から令和7年2月18日(火)まで 2 対象工事 (仮称)八潮在宅子育て支援施設整備工事 3 監査の主眼点 (1)契約の締結および履行の確保が適正に行われているか。 (2)施工が契約内容に則して日程どおりに行われているか。 (3)契約および仕様書が規程に則して作成されているか。 (4)仕様が設置目的に適合し、かつ経済合理的なものとなっているか。 (5)設計および施工は適切に行われているか。 (6)検査は厳正に行われているか。 4 監査の実施方法 書類審査と現場調査を実施し、専門技術的事項について、一般社団法人東京技術士会に調査を依頼した。 第6 工事監査の結果 1 監査対象の概要 計画場所:品川区八潮五丁目8番41号 現場確認日:令和7年1月27日(月) 経緯: (仮称)八潮在宅子育て支援施設の設置は、乳幼児とその保護者および子育て家庭に対する支援を行う地域住民等との相互交流の促進を目的としており、旧八潮南保育園跡地を活用するものである。 今回の工事では、かねてより八潮地域で求められていたオアシスルーム(一時預かり事業)や乳幼児向けの木育をテーマとした遊び場などを設けることにより、「預かり」「遊び」「相談」「交流」をワンストップで提供する「総合的な子育て支援と地域の交流の場」としての整備を行う。 工事概要:施設用途:児童福祉施設 主要構造:鉄筋コンクリート造・耐火建築物 建物高さ:28.85m 敷地面積:2,992.09u 延床面積:749.73u 階  数:地上5階建ての1階部分 工事経費:別表のとおり <別 表> 種別 契約金額(税込) 単位:円 履行期間 委託 八潮在宅子育て支援施設整備工事実施設計業務委託 17,777,700 R5.6.28〜R6.2.29 (仮称)八潮在宅子育て支援施設整備工事監理業務委託 18,040,000 R6.7.11〜R7.3.17 工事 (仮称)八潮在宅子育て支援施設整備工事 419,650,000 R6.7.11〜R7.3.17 (仮称)八潮在宅子育て支援施設整備機械設備工事 145,200,000 R6.7.11〜R7.3.17 (仮称)八潮在宅子育て支援施設整備電気設備工事 87,885,600 R6.7.11〜R7.3.17 合計 688,553,300 2 監査の結果 計画、設計、積算、工事監理、契約等はいずれも適切な内容である。 はじめに、設計者への企画意図の明示についてである。本工事では、建設事業の計画段階において、当該施設の目的、機能、性能、完成イメージ等を明文化した建築企画書を作成し、設計者に具体的に伝達している。これにより、発注者の建築物に関する企画意図が明確化されている。 次に、外部および内部の動線計画についてである。既存の施設は保育園の間取りであるが、今回の計画は類似施設であるため、外部および内部の動線については既存の動線計画(躯体の間取り)を踏襲している。子どもたちが主に使用する各諸室は南側屋外広場に面しており、直接外部へ出ることが可能である。これは避難誘導上の観点からも安全性の確保につながるものと考えられる。 さらに、省エネルギーに配慮した計画についてである。本施設は、快適な室内環境を維持しつつ、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにする改修ZEBを目指している。また、運営時にはBEMS(ビル・エネルギー管理システム)を導入し、エネルギー使用量の見える化を図ることで省エネ化に努めるとともに、メンテナンス管理にも活用する計画である。これらの環境への配慮や地球温暖化対策への取組がなされている点も高く評価できる。 公共施設の整備に当たっては、施設需要の変化に応じて柔軟な対応を図る必要があり、今後も既存施設の用途変更や機能向上のための改修工事が見込まれる。改修に際しては、引き続き既存建築物の特徴や用途を踏まえつつ、セキュリティ強化による安全性の確保、脱炭素化の推進およびユニバーサルデザインの導入を図ることで、効率的で持続可能な公共施設の整備を推進されたい。 また、本施設では、区との交流都市および東京都多摩地域で生育した木材を室内仕上げや遊具・備品に多く使用し、親しみのわく温もりある空間を創出している。事業運営に当たっては、これらの木製遊具等の適切な維持・メンテナンスを徹底するとともに、屋外広場における既存樹木の健康状態の把握など、細やかな維持管理業務への一層の配慮が求められる。加えて、子どもとその保護者の来館機会を増やすために創意工夫を凝らした取組を積極的に推進することも重要である。これらの努力を通じて、本施設が「総合的な子育て支援と地域の交流の場」としての役割を果たすことを期待する。 なお、次に述べる意見については、今後予定されている工事において十分留意されたい。 (1)分離発注された複数の元請事業者が存在する現場における安全管理体制について 建築工事、機械設備工事および電気設備工事それぞれの元請事業者が存在する分離発注の作業所では、労働安全衛生法に基づき、作業間の連絡調整等を行う者を決める必要がある。本工事では、建築工事の元請事業者が総括安全衛生責任者として指名されているが、安全組織表は個別の元請事業者ごとに作成されており、作業所全体の安全管理体制を統括する組織表となっていない。 区から指名された元請事業者においては、作業所全体の安全衛生管理を行う義務者として、協議組織の設置により作業所全体の安全管理体制を構築し、労働災害の防止のために必要な措置を講じることが求められる。一方、区においては、これらの必要な措置が適切に行われるよう安全管理の徹底を図られたい。 (2)中長期保全計画の策定および書類の電子化(ペーパーレス化)について 建物の長寿命化を図る上で中長期保全計画の策定は重要である。竣工後速やかに計画を策定するなど、施設の効率的な保全の実施に努められたい。 また、建物保全に必要な引渡書類の多くが電子化されておらず、工事写真など一部にとどまる。現下のデジタル化の進展を踏まえ、必要となる引渡書類(竣工図、取扱説明書、保証書など)を電子化し、共有ファイルサーバーへの保存をルール化することにより、業務効率の向上、コスト削減、そして資料の検索性の改善が図られるよう将来に向けた適切な施設の維持管理に努められたい。 第7 財政援助団体等監査の実施 1 実施期間 令和6年11月29日(金)から令和7年2月18日(火)まで 2 監査対象 公の施設 区営自転車等駐車場(23か所) 指定管理者 NCD株式会社 所管課 防災まちづくり部 地域交通政策課 3 監査の主眼点 (1)指定管理者 ア 公の施設の管理は目的に沿って適切に執行されているか。 イ 管理業務等に係る会計処理は適正に行われているか。 (2)対象部課 ア 指定手続きおよび指定に関する協定等は適切か。 イ 公の施設の指定管理者に対する指導監督は適切になされているか。 4 監査の実施方法 監査対象となる公の施設の指定管理者および当該施設の所管課に係る出納事務その他の事務の執行が適正に行われているかについて、所管課から提出された書類の調査、指定管理者の事務所における書類調査および品川区営自転車等駐車場(以下「駐車場」という。)における管理状況の調査を行った。 なお、指定管理者の会計書類の調査に当たっては、公認会計士の専門的知見を活用した。 第8 財政援助団体等監査の結果 1 指定の目的 駐車場の管理運営に関し、民間事業者たるNCD株式会社のノウハウを活用しつつ駐車場の有効活用に努め、かつ利用者へのサービス向上をもって区が推進する放置自転車対策事業に寄与し、地域福祉の一層の増進を図る。 2 指定管理者の行う業務 (1)駐車場の利用の申請および承認に関すること(減額および免除に関することは除く。)。 (2)駐車場の使用料の徴収に関すること。 (3)駐車場の利用の承認の取消しならびに利用の停止および制限に関すること。 (4)駐車場の適正な利用の推進に関すること。 (5)駐車場の施設および付属設備の維持および修繕に関すること。 (6)その他区長が特に必要があると認める業務 3 指定期間 令和4年4月1日から令和9年3月31日まで 4 管理施設 番号 名称 位置 1 大井町駅東口区営自転車等駐車場 品川区東大井五丁目20番・21番・22番先 品川区東大井六丁目1番先 2 大井町駅西口区営自転車等駐車場 品川区大井一丁目7番9号 3 大井町駅西口第2区営自転車等駐車場 品川区大井四丁目3番・4番先 4 戸越公園駅第1区営自転車等駐車場 品川区戸越五丁目10番先 5 戸越公園駅第2区営自転車等駐車場 品川区戸越六丁目6番先 6 地下鉄戸越駅第1区営自転車等駐車場 品川区平塚一丁目6番先 7 地下鉄中延駅第2区営自転車等駐車場 品川区中延四丁目7番先 8 地下鉄中延駅第3区営自転車等駐車場 品川区豊町六丁目24番先 9 新馬場駅区営自転車等駐車場 品川区南品川二丁目9番先 10 旗の台駅第1区営自転車等駐車場 品川区旗の台二丁目6番先 11 旗の台駅第2区営自転車等駐車場 品川区旗の台二丁目7番先 12 五反田駅区営自転車等駐車場 品川区東五反田五丁目27番先 品川区西五反田二丁目2番・3番・4番・5番先 13 大井競馬場前駅区営自転車等駐車場 品川区勝島一丁目4番・5番先 14 下神明駅区営自転車等駐車場 品川区二葉一丁目1番先 15 戸越銀座駅区営自転車等駐車場 品川区平塚一丁目5番1号 16 天王洲アイル駅第1区営自転車等駐車場 品川区東品川二丁目5番先 17 天王洲アイル駅第2区営自転車等駐車場 品川区東品川二丁目4番先 18 品川シーサイド駅区営自転車等駐車場 品川区東品川四丁目12番先 19 大森駅水神口区営自転車等駐車場 品川区南大井六丁目15番・18番・23番先 20 西大井駅区営自転車等駐車場 品川区西大井一丁目3番・4番先 品川区二葉二丁目26番6号 21 荏原町駅区営自転車等駐車場 品川区中延五丁目1番1号 22 青物横丁駅区営自転車等駐車場 品川区南品川二丁目4番先 23 会川駅区営自転車等駐車場 品川区南大井一丁目3番1号 5 事業収支の概要(令和5年度) 単位:円 収入 指定管理料(a) 238,434,024 支出 一般管理費(b) 191,083,760 支出 設備費(c) 47,344,488 差引収支(a-b-c) 5,776 6 監査の結果 公の施設の管理およびその会計処理ならびに関連する事務事業等は、区と指定管理者との間で締結された基本協定書および年度協定書に基づき概ね適正に執行されていた。なお、物品管理に関して一部改善を要する課題が見受けられたほか、次に述べる指摘事項については、今後の事務事業の執行において十分に留意されたい。 (1)令和3年7月に公表された指定管理者募集要項において、駐車場の開設日および開設時間についての記載がなされていなかった。これらは応募者が指定期間中の収支を算定する上で必要となる情報であることから、記載漏れのないよう留意されたい。 (2)基本協定書第21条第1項によれば、業務の一部を第三者に委託する場合はあらかじめ区に協議し、承諾を受けることとされているが、事前に書面による区への協議を行っていない業務があった。第三者へ委託を行う場合は、基本協定書に基づき事前に書面による区の承諾を受けるよう改められたい。 (3)指定管理業務に係る収支決算書について、最終的な収支決算額に影響を与えるものではないが、本来とは異なる細目への計上、軽微な数値の誤り等の科目内訳に修正を要する事例が散見された。指定管理者においてはより正確な会計処理を行うとともに、所管課においては指定管理業務に費やされたコストを適切に把握し更なる区民サービスの向上につなげるため、収支状況に係る確認を徹底されたい。