写 品監発第14号 令和5年9月8日 品川区長 様 品川区議会議長 様 品川区教育委員会 様 品川区選挙管理委員会 様 品川区監査委員 様 品川区監査委員 コウチ ユタカ    モリイ ジュン   タカハシ ノブアキ オオクラ タカヒロ    令和5年度前期一般監査の結果について(報告) 地方自治法および品川区監査基準の規定に基づき実施した一般監査の結果について、次のとおり報告する。 第1 監査の主眼点 地方自治法第199条第3項の規定に基づき、各事務事業が同法第2条第14項(最少の経費で最大の効果)および 第15項(組織及び運営の合理化)の趣旨に則り執行されているかどうかに特に意を用い、以下の観点を主眼として監査を行った。 1 収入の確保が適正に行われているか。 2 予算が適正かつ効果的に執行されているか。 3 契約の締結および履行の確保が適正に行われているか。 4 事務事業の執行および管理運営が計画的かつ合理的に行われているか。 5 財産の管理が適正に行われているか。 6 私費を含む現金の管理が適正に行われているか。 7 従前の指摘事項が是正されているか。 第2 定期監査(所管別監査)の実施 1 実施期間 令和5年4月7日(金)から同年8月25日(金)まで 2 対象期間 (1)令和4年度 (2)令和5年度(監査実施日まで) 3 対象部局 (1)区長部局 (2)教育委員会事務局 (3)区議会事務局 (4)選挙管理委員会事務局 (5)監査委員事務局 第3 監査委員の関与 前監査委員 島田 幸太郎は、令和5年4月7日から同年6月30日までに実施した監査に関与した。 現監査委員 河内 豊は、令和5年7月1日から同年8月25日までに実施した監査に関与した。 現監査委員 森井 じゅんは、令和5年4月7日から同年8月25日までに実施した全ての監査に関与した。 前監査委員 渡辺 裕一、こんの 孝子は、令和5年4月7日から同年4月30日までに実施した監査に関与した。 現監査委員 高橋 伸明、大倉 たかひろは、令和5年5月26日から同年8月25日までに実施した監査に関与した。 第4 定期監査(所管別監査)の結果 監査の結果、新型コロナウイルス感染拡大による事業の見直し等の影響を受けつつも、各事務事業は概ね適正に行われていた。 なお、次に述べる指摘事項については、今後の事務事業の執行において十分に留意されたい。加えて、一部の対象部局においては、 監査の実施について事前に通知していたにもかかわらず、監査対象書類の十分な準備がなされていない事例が見受けられたことから、 監査に際しては、必要書類の準備および確認を確実に行われたい。 《対象部局共通》 1 電子決裁に係る財務会計処理について 主管課契約に係る電子上の財務会計処理において、全庁的な電子決裁の推進に伴い、次のとおり、対象部局のうち13課において不適切な処理事例が見受けられた。 各所管課においては、令和4年11月2日付け会計管理者通知「決裁電子化のさらなる推進にあたっての会計関連文書の取扱いについて」等を改めて確認し、 適切な会計処理に努められたい。また、会計管理室においては、関連部署と連携・協力し、財務会計システムによる事務処理が正確に行われるよう、 支出負担行為等に係る必要な添付書類やその注意点をより具体的に事務処理マニュアルに記載する等、各所管課への周知および指導を徹底されたい。 (1)2者以上から見積書を徴収し見積合せを行っているものの、当該見積書が支出負担行為に係る電子決裁に添付されていない。 (2)2者による見積合せを行い、そのうちの1者が辞退届を提出していたが、当該辞退届が支出負担行為に係る電子決裁に添付されていない。 (3)業者推薦により特定の事業者と契約を締結しているが、当該業者推薦書が電子決裁に添付されていない。 (4)見積合せにより徴収した見積書が契約締結請求に係る電子決裁に添付されていることから、品川区契約事務規則第74条に基づく契約締結の請求に係る 意思決定がなされる前に、2者以上による見積合せが行われている。 (5)契約締結日より後の日付の見積書が電子決裁に添付されている。 《区長部局》 1 収入事務について (1)平成29年7月付「収入事務の手引き」によれば、「歳入の調定は、その収入に対する請求権が生じたとき、すなわち収入の発生の原因となった事実が生じたとき、 そのつど直ちに行わなければならない」とされているところ、ふるさと納税寄付金において、次のとおり寄付金額が確定してから調定を行うまでに相当の期間を要している。 適正な収入事務の執行に努められたい。 ア 令和4年4月7日収納分37,000円 調定日:同年5月12日 イ 令和4年5月1日~同年5月31日マルチペイメント収納分20,000円 調定日:同年6月30日 ウ 令和5年1月1日~同年1月31日クレジット収納分10,000円 調定日:同年3月1日 エ 令和5年1月1日~同年1月31日マルチペイメント収納分10,000円 調定日:同年3月1日(税務課) (2)キャッシュレス収納に係る収入事務について、次のとおり不適切な処理事例が見受けられた。改めてキャッシュレス決済の処理方法や手順を確認するとともに、 窓口業務の受託事業者への周知・指導等を徹底し、適正な収入事務の執行に努められたい。 ア 令和4年10月14日収納分の住民基本台帳証明手数料計900円について、受託事業者の社員が、キャッシュレス決済による徴収ができていなかったものと誤認し、 自らが用意した現金により二重で収納を行ったため、令和5年1月18日に当該事業者へ過誤納金計900円の還付が行われている。 イ 令和4年7月8日収納分の住民基本台帳証明手数料計600円について、受託事業者の社員が、キャッシュレス決済による徴収ができていなかったものと誤認し、 再度キャッシュレス決済を行ったため二重徴収となり、同年9月21日に過誤納金計600円の還付が行われている。(戸籍住民課) 2 契約事務について (1)令和5年3月24日付け請書「パズル他」295,542円および同月27日付け請書「ディスクカッター他」220,921円の物品購買契約について、同種の物品であるにもかかわらず、 近接した時期に同一の事業者と分割して契約が締結されている。計画的に一括契約を行い、納期までの期間を十分に確保するとともに、事務の効率化と一層の経費削減に努められたい。(保育課) (2)月刊書籍の定期購読について、令和4年度は購読期間ごとの計4回に分けて契約締結を行っているが、すべての契約が各購読期間終了後に締結されている。適正な契約事務の執行に努められたい。(福祉計画課) (3)令和4年4月1日付け運送契約書「検体等運搬」4,258,980円について、仕様書では検体等の送付は区が指定する年70日行うこととなっているが、履行実績は年48日となっている。適宜履行状況を把握し、 必要に応じて契約変更を行う等、適正な契約事務の執行に努められたい。(生活衛生課) (4)主管課契約における令和5年1月5日付け「品川区避難支援個別計画作成名簿更新に係る調査票等封入作業委託」550,543円について、契約書を作成すべきところ、 請書により契約締結が行われている。令和2年4月改訂版「契約事務の手引」等を改めて確認し、適正な契約事務の執行に努められたい。(防災課) 3 支出事務について (1)令和5年3月3日付け請書「プロジェクター」198,000円の物品購買契約において、平成30年4月1日付け会計管理室発行「新財務会計システム操作マニュアル」によれば、 「購入価格が10万円以上のものは備品」とされていることから、予算科目を備品購入費とすべきであったところ、一般需用費により支払ったため、後日、備品購入費の科目設定および 予算流用を行ったうえで、一般需用費から備品購入費へ科目更正が行われている。物品購入にあたっては予算科目を十分に確認し、適正な支出事務の執行に努められたい。(人事課) (2)令和3年4月に発注した名刺の代金計2,970円について、同月20日に納品後の検査を行っていたにもかかわらず、支払に係る事務処理を失念し、翌年度である令和4年11月18日に 請求書を収受し、同年12月2日に支払が行われている。支出事務の進行管理は適切に行い、速やかな支出を徹底されたい。(子ども家庭支援センター) (3)単価委託契約に係る委託料の支払について、次のとおり不適切な処理事例が見受けられた。単価契約に係る支払にあたっては履行実績の確認を徹底し、適正な支出事務の執行に努められたい。 ア 令和4年4月1日付け単価委託契約書「保育園定期利用保育実施業務委託(単価)」に係る同年4月分から令和5年3月分までの委託料(延長保育分)について、 利用実績がないにもかかわらず事業者からの請求どおりに支払を行ったため、令和5年4月28日に過払分計24,300円の戻入処理が行われている。 イ 令和4年4月1日付け単価委託契約書「保育園一時保育実施業務委託(単価)」に係る同年4月分委託料について、利用実績があるにもかかわらず 事業者から請求がなかったことから、利用実績がないものと誤認し支出事務を行わなかったため、令和5年5月22日に未払分計19,800円の支払が行われている。(保育課) (4)保育園仮設園舎に係る令和4年11月分電話利用料4,249円について、支払期限である同年11月30日を超えて、同年12月20日に支払を行ったことから、延滞利息6円が支払われている。 請求書受領後の速やかな支払を徹底し、支払期限は厳守されたい。(保育課) (5)令和4年度品川区私立幼稚園等保育料補助金(上半期)について、令和4年11月30日に対象者(計3,218世帯)へ交付していたが、後日保護者からの問合せにより、 補助金管理システムへの税情報の取込み漏れに伴う補助金の未払いが判明し、同年12月20日に全446世帯計9,769,050円の補助金が追加で交付されている。 改めてシステム処理を含めた事務処理手順を確認し必要な修正を加える等、適正な助成事務の執行に努められたい。(保育支援課) (6)令和2年12月分の共同生活援助(都加算)について、支払後に請求金額(43,203円)の誤りが判明し事業者より正しい金額(33,203円)の請求書を受領した際に、 本来であれば差額分(10,000円)の戻入処理を行うべきであったところ、新規の請求であると誤認しそのまま支払ったため過払が生じた。その後、事業者からの連絡を機に、 令和4年6月14日に過年度の過払分43,203円に係る調定処理が行われている。請求金額および内容を十分に確認するとともに、支払事務の進行管理を徹底し、 適正な支出事務の執行に努められたい。(障害者支援課) (7)品川保健センター事業実施に伴う非常勤報酬等に係る令和4年8月分および9月分の報償費について、本来支払うべき債権者と同姓同名である別の者に支払を行ったことから、 同年10月17日に誤払分48,857円の戻入および正しい債権者への支出処理が行われている。昨年度においても同様の不適切な処理事例が発生していることから、 従前からの事務処理方法の見直しを行う等、支払時における債権者の確認を徹底し、再発防止に努められたい。(品川保健センター) (8)確定払による健診等従事者の報償費について、次のとおり支出金額の算定を誤り、本来支払うべき金額よりも多く支払を行ったことから、過払分の戻入処理が行われている。 従事された実績の確認は正確に行い、適正な支出事務の執行に努められたい。 ア 栄養士に係る令和4年5月20日、同年7月15日および同年9月16日従事分の報償費について、同年11月28日に過払分計1,164円の戻入処理が行われている。 イ 保育士に係る令和4年9月2日、同年9月20日および同年9月30日従事分の報償費について、令和5年4月24日に過払分計16,964円の戻入処理が行われている。(荏原保健センター) 4 事務の執行方法について 令和4年10月16日実施の保育・児童系職種に係る主任職昇任選考について、選考実施後、受験者からの問合せにより、事前に通知した出題範囲と選考で出題された範囲とが異なっている ことが判明したため、全30題のうち誤って出題された6題分を採点の対象外とする取扱いがなされている。各種選考等に係る事務処理については万全を期されたい。(人事課) 5 現金の管理について 庁有車使用時における有料駐車場利用のための資金前渡について、精算命令書に添付された領収書を確認したところ、令和4年5月31日分駐車場利用料金330円においては、 他課職員のICカードによる支払が行われている。平成30年6月改定「支出事務の手引」によれば、資金前渡とは将来の経費について会計管理者が資金前渡受者に資金を交付して 現金支払をさせる制度であるとされていることから、改めて全庁的な注意喚起を行う等、資金前渡による支払を徹底されたい。(経理課) 6 指定消耗品の管理について 保管する郵券を用いて葉書等を購入し、後日、使用した券種と同じ券種の郵券を追加で購入した事例が見受けられた。郵券交換による支払には手数料を負担することとなるため 必要最小限に抑えるとともに、指定消耗品の計画的な購入および適正な管理に努められたい。(環境課) 《教育委員会事務局》 1 契約事務について 令和4年10月20日付け請書「小型風力発電機保守点検委託」272,800円について、点検作業に要する設備が故障していたにもかかわらず、契約締結時における当該設備に係る 現況確認等を怠ったことから、令和5年2月に受託事業者より当該設備の修理が完了せず、履行期限までに保守点検を実施できない旨の連絡を受け、同年3月31日付けで契約解除が 行われている。契約締結にあたっては契約の目的を確実に達成できるよう、履行確保のための必要な調査および確認を徹底する等、適正な契約事務の執行に努められたい。(学務課) 2 支出事務について (1)武蔵小山図書取次施設が属する武蔵小山ビル管理協議会の分担金について、令和3年度までは地域活動課が負担し、令和4年度からは品川図書館が負担することとなっていたが、 支出事務を失念したことにより、令和4年4月分から8月分までの同分担金計103,300円が同年11月2日に支払われている。事務引継ぎを確実に行う等、適正な支出事務の執行に 努められたい。(品川図書館) (2)令和4年4月1日付け単価委託契約書「武蔵小山図書取次施設運営業務委託(単価)」に係る同年4月分委託料1,070,400円について、契約書の単価内訳書においては 「1回あたり」の契約金額が記載されているところ、単価内訳書には記載がない「0.5回」単位での支払が含まれている。契約内容に準拠した適切な事務処理を行い、 適正な支出事務の執行に努められたい。(品川図書館) 3 現金の管理について (1)各学校におけるクラブ活動に係る大会参加費については、事前に学務課から前渡金を預かった上で支払うこととされているが、令和4年度においては、4大会分の参加費 計24,500円が前渡金によらず学校職員の私費による立替払が行われている。改めて各学校に対し参加費の支払方法について周知徹底する等、資金前渡による支払を徹底されたい。(学務課) (2)令和4年6月10日分有料駐車場使用料金200円に係る前渡金の精算について、精算命令書に添付された領収書を確認したところ、職員の取違いにより、現に発行された領収書とは 別の領収書が添付されている。支払証明書類の確認を徹底し、適正な現金管理に努められたい。(品川図書館) (3)品川区会計事務規則第85条第1項第1号の規定によれば、前渡金の精算は支払期間経過後5日以内に行うこととされているが、令和4年4月分から同年6月分までの前渡金に 係る精算が行われていなかったことから、同年8月分における一部の有料駐車場利用料金(4回分計2,100円)について、前渡金が不足し職員の私費による立替払が行われている。 同規則に則り精算処理を確実に行い、資金前渡による支払を徹底されたい。(品川図書館) 4 指定消耗品の管理について 令和4年7月から同年10月までの間において使用した郵券(84円)計112枚について、当該郵券に係る受払簿が作成されておらず、また職員の私費による立替払が行われていたことが 判明したため、同年11月4日に当該立替分の郵券を職員に返却している。受払時の記帳(決裁)および購入時の資金前渡による支払を徹底し、指定消耗品の適正な管理に努められたい。(教育総合支援センター) 《区議会事務局》 指摘すべき事項は認められない。 《選挙管理委員会事務局》 指摘すべき事項は認められない。   《監査委員事務局》 指摘すべき事項は認められない。 第5 意見 最後に、「第4 定期監査(所管別監査)の結果」における「≪対象部局共通≫1 電子決裁に係る財務会計処理」について、補足して意見を述べる。 区民の利便性向上と業務効率化による生産性向上を図るため、「品川区DX推進基本方針」に基づき、ICTをはじめとするデジタル技術を積極的に活用し、 あらゆる行政分野において様々なデジタル化の取組を進めてきていることは高く評価できるものである。その一方で、電子決裁に係る会計関連文書の取扱いについて、 従来の紙による決裁時には見受けられない不適切な処理事例が数多く発生している状況も確認できた。 これは、業務のデジタル化の進展に伴い、職員の適正な事務処理に係る意識の低下により高度な事務水準の維持が困難となるリスクが顕在化したものと危惧している。 更なるデジタル化の取組の展開にあたっては、各種マニュアルやシステムの最適化に加え実務に即した研修を充実させる等、重層的な対応を実践することにより、 デジタル変革の実践者である職員がその恩恵を享受し、意欲的かつ能動的に業務改革に取り組んでいけるよう、業務環境の整備に努められたい。