写 品監発第15号 令和6年9月2日 品川区長 様 品川区議会議長 様 品川区教育委員会 様 品川区選挙管理委員会 様 品川区監査委員 様 品川区監査委員  コウチ ユタカ アリガ ヤスコ セオ マリ ツル シンイチロウ 令和6年度前期一般監査の結果について(報告) 地方自治法および品川区監査基準の規定に基づき実施した一般監査の結果について、次のとおり報告する。 第1 監査の主眼点 地方自治法第199条第3項の規定に基づき、各事務事業が同法第2条第14項(最少の経費で最大の効果)および 第15項(組織及び運営の合理化)の趣旨にのっとり執行されているかどうかに特に意を用い、以下の観点を主眼として監査を行った。 1 収入の確保が適正に行われているか。 2 予算が適正かつ効果的に執行されているか。 3 契約の締結および履行の確保が適正に行われているか。 4 事務事業の執行および管理運営が計画的かつ合理的に行われているか。 5 財産の管理が適正に行われているか。 6 私費を含む現金の管理が適正に行われているか。 7 従前の指摘事項が是正されているか。 第2 定期監査(所管別監査)の実施 1 実施期間 令和6年4月5日(金)から同年8月23日(金)まで 2 対象期間 (1)令和5年度 (2)令和6年度(監査実施日まで) 3 対象部局 (1)区長部局 (2)教育委員会事務局 (3)区議会事務局 (4)選挙管理委員会事務局 (5)監査委員事務局 第3 監査委員の関与 現監査委員 コウチ ユタカは、令和6年4月5日から同年8月23日までに実施した監査に関与した。 現監査委員 アリガ ヤスコは、令和6年4月5日から同年8月23日までに実施した監査(地方自治法第199条の2の規定により除斥された事件を除く。)に関与した。 前監査委員 タカハシ ノブアキ、オオクラ タカヒロは、令和6年4月5日から同年5月26日までに実施した監査に関与した。 現監査委員 セオ マリ、ツル シンイチロウは、令和6年5月27日から同年8月23日までに実施した監査に関与した。 第4 定期監査(所管別監査)の結果 監査の結果、各事務事業は概ね適正に行われていた。 なお、次に述べる指摘事項については、今後の事務事業の執行において十分に留意されたい。 《区長部局》 1 収入事務について (1)平塚ゆうゆうプラザオアシスルームにおいて令和5年10月7日付け利用料をキャッシュレス決済により誤って500円多く徴収したが、所管課においては オアシスルームからの報告とキャッシュレス決済収納代行事業者からの報告との間の当該金額の差異に気付いたものの、原因を特定しないまま10月分の調定処理を行った。 その後再度調査した結果、原因を特定し、令和6年5月27日付けで過誤納金の還付が行われている。適正な収入事務の執行に努められたい。(子ども育成課) (2)平成29年7月付け「収入事務の手引き」によれば、「歳入の調定は、その収入に対する請求権が生じたとき、すなわち収入の発生の原因となった事実が生じたとき、そのつど直ちに行わなければならない」とされているところ、 令和5年4月1日付け土地一時貸付契約書に基づき荏原健康センターに設置する飲料用自動販売機に係る収入において、次のとおり不適切な処理事例が見受けられる。適正な収入事務の執行に努められたい。 ア 令和5年度分土地貸付料407,865円について、契約締結後直ちに調定すべきところ令和5年11月28日付けで調定している。 イ 令和5年7月分から令和6年1月分までの私用電気料計22,609円について、それぞれ翌月末までに調定すべきところ令和6年3月15日付けで一括して調定している。(健康課) 2 契約事務について (1)主管課における契約締結に当たり、単価項目に係る予算額および予定価格が記載された単価内訳書が契約書に綴じ込まれている事例が散見される。 当該内訳書は主管課において契約締結を決定する文書に添付するものであり、予算額や予定価格を契約の相手方に示すことは、次回以降の契約に際し経済性や公平性を損ねることになりかねない。 適正な契約事務の執行に努められたい。(戦略広報課、子育て応援課、環境課) (2)令和5年4月17日付け請書「(印刷)予防接種予診票(帯状疱疹生ワクチン)他」279,840円について、印刷物のうち「医療機関一覧表」および「ワクチンのお知らせ」の仕様を追加する必要性を 見積り合せの日以前に認識していたにもかかわらず、経理課への連絡を怠っていたため、契約締結後に56,100円を増額する契約変更が行われている。 契約締結請求に当たっては現状に応じ仕様内容を確定させることを徹底し、適正な契約事務の執行に努められたい。(保健予防課) 3 支出事務について (1)令和4年4月1日付け契約書「ふるさと納税(寄附)の申込受付および収納に係る業務委託(単価)」に係る令和5年1月分から3月分までの委託料13,695円の支払について、 検査検収から適法な請求を受けて支払うまでに相当の期間を要している。また、このことから、令和4年度の業務に係る委託料であるにも関わらず、令和5年度予算により支払を行っている。適正な支出事務の執行に努められたい。 (検査検収日 令和5年3月31日、支払請求日 同年7月19日、支払希望日同年8月2日)(税務課) (2)いじめ専門相談員に係る令和6年1月分の報酬について、非常勤職員の報酬および費用弁償に関する条例第3条第2項によれば、同年1月15日に支払う必要があるところ、 同年2月15日に支払が行われている。新たに非常勤職員を雇い入れる際は、事前に報酬の支払時期、方法等を確認し、適正な支出事務の執行に努められたい。(総務課) (3)単価委託契約に係る委託料の支払について、次のとおり不適切な処理事例が見受けられた。単価契約に係る支払に当たっては請求金額の確認を徹底されたい。 ア 令和5年4月1日付け契約書「在住外国人向け情報配信に係る運営業務委託(単価)」に係る同年11月分委託料91,300円の支払において、請求書に記載の金額(93,500円)が誤っているにもかかわらずそのまま支払ったことから、 令和6年5月8日に過払分2,200円の戻入処理が行われている。 イ 令和4年6月7日付け契約書「防災ラジオ配送委託(単価)」に係る同年6月分委託料3,448,940円の支払において、請求書に記載の金額(3,421,000円)が誤っているにもかかわらずそのまま支払ったことから、 令和5年7月25日に令和5年度予算により追加分27,940円の支払が行われている。(ア総務課、イ防災課) (4)令和5年4月1日付け契約書「八潮地域センター警備業務委託」に係る同年5月分委託料10,670円の支払について、同年6月6日に支払処理を行ったにもかかわらず、 その後受領した6月分の請求書を5月分の請求書と誤認し、再度支払処理を行った。このことから、同年7月14日に過払分10,670円の戻入処理が行われている。 支払時における委託業務の履行確認を徹底し、適正な支出事務の執行に努められたい。(地域活動課) (5)令和6年1月17日付け請書「折り畳みフットサルゴール」287,133円の物品購買契約について、予算科目を備品購入費とすべきであったところ、一般需用費により支払ったため、後日、備品購入費の科目設定および予算流用を行った上で、 一般需用費から備品購入費へ科目更正が行われている。平成30年4月1日付け「新財務会計システム操作マニュアル」によれば、「購入価格が10万円以上のものは備品」とされていることから、物品購入に当たっては予算科目を十分に確認し、 適正な支出事務の執行に努められたい。(地域活動課) (6)補助金の交付について、次の事例を始めとした不適切な処理事例が多数見受けられる。また、昨年度においても同様の不適切な処理事例が発生していることから、改めてシステム処理を含めた事務処理手順を確認し必要な修正を加えるなど、 執行体制等も含めた抜本的な再発防止に努められたい。 ア 令和4年度品川区私立幼稚園等入園料補助金(下半期)について、令和5年5月30日に対象者へ交付したが、保護者からの問合せにより、補助金管理 システムへの付番漏れに伴う補助金の未払いが判明し、同年6月15日に6世帯計670,000円の補助金が 追加で交付されている。 イ 令和4年度品川区認可外保育施設等に係る利用費給付第4期分(認証保育所)について、令和5年5月30日に対象者へ交付したが、保護者からの問合せにより、補助金管理システムの支払停止に誤ってチェックを入力していたことが要因で 支給がなされていない世帯が存在することが判明し、同年7月6日に3世帯計333,000円の補助金が追加で交付されている。(保育入園調整課) (7)令和5年8月分品川区定期予防接種助成金について、交付対象者2名に対し支給額を取り違えて支払を行ったことから、同年9月28日に過払分20,470円の戻入処理を行うとともに、同年10月4日に不足分20,470円の支払が行われている。 適正な支出事務の執行に努められたい。(保健予防課) (8)品川保健センター事業実施に伴う非常勤報酬等に係る令和5年8月分から同年10月分までの報償費について、本来支払うべき債権者と同姓同名である別の者に支払を行ったことから、 同年11月に誤払分41,877円の戻入および正しい債権者への支出処理が行われている。一昨年度および昨年度においても同様の不適切な処理事例が発生していることから、事務処理方法を改めて見直し、再発防止に努められたい。(品川保健センター) (9)大井保健センター事業実施に伴う非常勤報酬等に係る令和5年11月分報償費について、職種の錯誤により支出金額の算定を誤り、本来支払うべき金額よりも多く支払を行ったことから、令和6年3月26日に2名分計42,942円の戻入処理が行われている。 実績の確認とともに職種の確認を徹底し、適正な支出事務の執行に努められたい。(大井保健センター) 4 事務の執行方法について (1)令和5年11月、接種対象者の区民37,811名に対し新型コロナウイルスワクチンに係る令和5年秋開始接種の勧奨はがきを発送した。その際、令和3年4月1日から令和5年11月9日までの間の区内転入者について、 転入時点の情報により発送先データを作成したため、本来は対象外となる既に区外に転出した者、故人等498名に誤って送付していたことがその後の問い合わせにより判明した。各種勧奨等に係る郵便物の発送に当たっては、 誤送付が生じることのないよう確認を徹底されたい。(保健予防課) (2)公園児童遊園等維持修繕工事(単価)について、工事施工が先行して行われ、事業者との間で依頼決定等の書類の取り交わしが遅滞したことから、令和4年度および令和5年度上半期の工事施工に係る支出事務が滞り、次のとおり多額の未精算金が生じた。 このような事態は区への信頼を著しく損ねる行為である。本件事例に関わる部署に属する全ての職員一人ひとりが決して再発させることのないよう肝に銘じ、適正な事務事業の執行に努めるよう厳に戒められたい。 ア 令和4年度分 56件 計34,777,204円(施工事業者数 5社) イ 令和5年度分 38件 計20,523,793円(施工事業者数 6社)(公園課) 5 現金の管理について (1)令和4年度予算により令和5年3月29日付けで受領した前渡金8,400円を使用し、年度を越えた同年4月4日に郵券を購入している事例が見受けられた。会計年度独立の原則について改めて確認し、適正な前渡金の管理に努められたい。(高齢者福祉課) (2)資金前渡処理の遅れにより、次のとおり不適切な事例が見受けられる。計画的な前渡金の支出処理に努められたい。 ア 令和5年4月7日付けで受領した有料駐車場使用に係る前渡金8,000円について、受領前の同月4日に職員の私費による立替払(3回分計600円)が行われている。 イ 令和5年度関東ブロック地籍調査事業担当者講習会に出席するための旅費、宿泊費等47,800円について、前渡金支出に係る文書による意思決定は行ったものの、支出処理を失念したため、 前渡金の受領日が講習会終了後である令和5年6月5日となり、職員の私費による立替払が行われている。(ア高齢者地域支援課、イ土木管理課) 6 指定消耗品の管理について (1)区内共通商品券(62枚・計31,000円分)について、有効期限切れのため令和6年4月1日付けで廃棄している。コロナ禍の影響による事業の見直し等により使用する見込みがなくなった金券については、代替の用途への転用等活用方法を最大限検討し、 廃棄することのないよう管理を徹底されたい。(総務課)  (2)品川区物品管理規則第25条の規定によれば、物品管理者は金券等について「消耗品受払簿その他を備え、その使用状況および残高を明らかにしておかなければならない」とされているが、 令和5年度および令和6年度の郵券および収入印紙に係る消耗品受払簿において、両年度に渡る複数回の記帳漏れおよび受払欄の計算誤りにより、記帳残高と現品の間で計45枚6,615円分のかい離がある。適正な指定消耗品管理に努められたい。(福祉計画課) 《教育委員会事務局》 1 支出事務について 報償費の支払に当たり、次のとおり不適切な処理事例が見受けられる。支払時における債権者の確認を徹底し、適正な支出事務の執行に努められたい。 ア 品川地域未来塾(基礎学力向上事業)指導員謝礼に係る令和5年8月分および同年10月分の報償費の支払について、4名分の報償費計18,700円の債権者の振込先データを誤り、本来支払うべき債権者とは別の者4名に支払を行ったことから、 令和6年1月に誤払分の戻入および正しい債権者への支出処理が行われている。 イ 令和6年1月19日付け音訳資料製作謝礼の支払について、債権者の選択を誤り、本来支払うべき債権者とは別の者に支払を行ったことから、同年3月に誤払分2,909円の戻入および正しい債権者への支出処理が行われている。(ア指導課、イ品川図書館) 2 現金の管理について (1)修学旅行実地踏査に要する旅費については、事前に各学校が指導課に対して前渡金支給に係る連絡を行うべきところ、当該手続きを怠ったため、令和5年度においては3名(2校)分の旅費計121,210円の前渡金の受領日が実地踏査後となり、 学校職員の私費による立替払が行われている。改めて各学校に対し旅費の支払方法について周知徹底し、資金前渡による支払を徹底されたい。(指導課) (2)品川区会計事務規則第85条第1項第1号の規定によれば、前渡金の精算は用件終了後5日以内に行うこととされているが、令和5年7月25日付けで受領した防火・防災管理新規講習(テキスト代)に係る前渡金6,000円について、 翌日に支払を行ったにもかかわらず、同年9月4日まで精算処理が行われていない。品川区会計事務規則にのっとり速やかな精算処理に努められたい。  (学務課)   3 備品の管理について 平成30年4月1日付け「新財務会計システム操作マニュアル」によれば、「専ら児童・生徒の用に供するもので壁・床に固定されている教室用黒板については、建物の附帯設備とする」とされているが、 令和5年10月11日付け契約書「黒板」1,150,000円により購入し宮前小学校に設置された黒板を、重要物品として備品登録している。新公会計におけるストック情報の正確な把握および区の適正な資産管理を行うため、備品は適切に管理されたい。(教育総合支援センター) 《区議会事務局》 指摘すべき事項は認められない。 《選挙管理委員会事務局》 指摘すべき事項は認められない。   《監査委員事務局》 指摘すべき事項は認められない。 第5 意見 最後に、「第1 監査の主眼点」における「7 従前の指摘事項が是正されているか」の観点から意見を述べる。 昨年度に実施した定期監査(所管別監査)では、複数の対象部局に対し「資金前渡に係る現金管理」についての指摘を行ったが、今回の監査においても職員による立替払が行われている不適切な事例が散見された。 また、指摘には至っていないが、支払の遅延や現金出納簿・消耗品受払簿の作成漏れおよび記帳誤りについても、未だ発生している状況が見受けられた。 このような誤りが絶えない原因としては、第一に財務会計規程や関連マニュアルに定められているルールやその根拠法令等への認識が不十分である点と、第二に管理職を含めたチェック体制が形骸化している点があげられる。 当該現状を改善するため、職場における実務を通した事務処理スキルの継承による人材育成、実践的な事務処理マニュアルの整備等効果的な手法により、財務会計に係る事務水準の向上に取り組まれたい。 また、区政全体の事務執行が適正に行われるには、管理職を含めた職員の意識改革が不可欠である。主に若手職員や会計年度任用職員が財務会計事務を執り行う部署が増加する中、従前の指摘事項に類似した不適切な処理事例はどの部署でも起こりうることであるとの認識の下、 管理職が中心となり自らの職場におけるチェック体制について不断の見直しを図られたい。