(p.1) 第1章 計画策定の概要 1 計画策定の趣旨                           近年、我が国においては長寿化が進み、障害者やその介護者の高齢化、障害の重度化・重複化という問題が顕在化している一方で、人々の価値観やライフスタイルが多様化し、また、情報化の進展により障害者を取り巻く社会環境は大きく変化しています。このような状況下で障害者の意識も変化し、社会参加や就労、地域における自立した生活への意欲が高まっています。  障害者施策において国は、共生社会の実現が明記された平成23年の「障害者基本法」の一部改正に始まり、平成24年の「障害者虐待防止法」施行、平成26年の「障害者総合支援法」の完全施行、平成28年の「障害者差別解消法」施行に至るまで、制度の集中的な改革を推進してきました。その後、「障害者総合支援法」施行3年後の見直しが行われ、平成28年には「障害者総合支援法」と「児童福祉法」が改正されました。この改正では、地域での生活を支える「自立生活援助」や「就労定着支援」等のサービス、高齢障害者が介護保険サービスを利用する場合の利用者負担軽減の仕組み等が新たに設けられました(平成30年4月施行)。加えて、障害児の多様化するニーズに対応し、計画的に支援の提供体制を整備していくための「障害児福祉計画」の策定が義務付けられました。  区では、平成20年4月に「品川区基本構想」、平成21年4月に「品川区長期基本計画」(平成26年4月改定)を策定し、5つの都市像の1つである「みんなで築く健康・福祉都市」の実現に向け、障害者基本法第11条第3項に基づく「品川区障害者計画」を平成27年に策定しました。合わせて、障害福祉サービス等の見込量や確保のための方策を定める「品川区障害福祉計画」を策定しました。  本計画は、前計画で取り組んできた施策の評価および検証を行い、今後重点的に取り組むべき課題を明確にし、国の動向にも対応しながら障害者への支援施策を総合的かつ計画的に展開していくことを目的として策定したものです。また、本計画から「品川区障害児福祉計画」を包含する計画として策定します。  計画の策定にあたっては、品川区地域自立支援協議会において、前計画の評価および検証から計画の策定まで審議を行うとともに、障害児実態・意向調査の実施、障害者団体へのヒアリング、パブリックコメントの実施等により、幅広い区民意見や要望を聴取し、計画に反映させました。 (脚注) (1) 障害者基本法 昭和45年法律第84号。障害者の自立や社会参加を支援するための施策について基本事項を定めたものです。 (2) 障害者虐待防止法 「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律」(平成23年法律第79号)。障害者に対する虐待の禁止、障害者虐待の予防および早期発見その他障害者虐待の防止等に関する国等の責務、障害者虐待を受けた障害者に対する保護等を定めたものです。 (3) 障害者総合支援法 「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」(平成17年法律第123号)。障害児者や一定の難病患者が、基本的人権を享有する個人としての尊厳にふさわしい日常生活・社会生活を営むことができるよう、必要な障害福祉サービスの給付や地域生活支援事業等の支援を総合的に行うことを定めたものです。 (4) 障害者差別解消法 「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(平成25年法律第65号)。行政機関等および事業者における障害を理由とする差別を解消するための措置等を定めたもので、不当な差別的取扱いの禁止や合理的配慮の提供を求めています。 (5) 5つの都市像 「品川区長期基本計画」は、その上位計画である「品川区基本構想」における3つの理念(1.暮らしが息づく国際都市、品川区をつくる 2.伝統と文化を育み活かす品川区をつくる 3.区民と区との協働で、「私たちのまち」品川区をつくる)を具体化するために行う施策と実現の方向を明らかにし、5つの都市像(1.だれもが輝くにぎわい都市 2.未来を創る子育て・教育都市 3.みんなで築く健康・福祉都市 4.次代につなぐ環境都市 5.暮らしを守る安全・安心都市)を掲げています。 (6) 障害者基本法第11条第3項 障害者基本法第11条第3項では、市町村は当該市町村における障害者の状況等を踏まえ、障害者の施策に関する基本的な計画を策定することが定められています。 (7) 障害福祉サービス 障害福祉サービスには、障害者総合支援法で定める介護給付と訓練等給付、地域相談支援給付、計画相談支援給付があります。利用者はサービスを選択し、市区町村に相談、支給申請を行います。その後の障害支援区分判定の結果に基づき、市区町村は支給決定を行います。障害福祉サービス受給者証交付の後、利用者はサービス提供事業者と契約を結んでサービスを利用することとなります。 (8) 障害児実態・意向調査 P.78以降参照。区内18歳以下の障害児のいる世帯(平成29年6月末日現在)を対象としたアンケート調査を実施しました。 (9) パブリックコメント 行政機関が政令や省令等を定める際に、あらかじめその案を公表し、広く公(=国民、住民等)から意見、情報を募集する手続きのことです。 (p.3) 2 計画の位置づけ                            「品川区障害福祉計画」は、障害者総合支援法第88条の規定に基づく市町村障害福祉計画として定め、平成28年の児童福祉法の改正に伴い義務付けられた「品川区障害児福祉計画」は児童福祉法第33条の20第1項 の規定に基づく市町村障害児福祉計画として定めるものです。   「第5期品川区障害福祉計画」は、「第1期品川区障害児福祉計画」と一体のものとして策定します。国が平成29年3月に策定した「障害福祉サービス等及び障害児通所支援等の円滑な実施を確保するための基本的な指針」(以下「基本指針」といいます。)に即し、年度ごとに障害福祉サービス等の提供体制の確保に係る成果目標および見込量、地域生活支援事業の実施に関する事項を定めています。   本計画は、「品川区基本構想」および基本構想が掲げている区の将来像を実現するために策定された「品川区長期基本計画」の障害者施策に関する下位計画として位置づけられています。また、社会福祉法第107条に基づく地域福祉計画である「品川区地域福祉計画」、子ども・子育て支援の取組み促進のための教育・保育施設等の整備計画である「品川区子ども・子育て支援事業計画」との調和と整合性を図っています。 (脚注) (10) 障害者総合支援法第88条 障害者総合支援法第88条では、市町村は障害福祉サービス等の提供体制の確保および円滑な実施に関する計画(市町村障害福祉計画)を策定することが定められています。 (11) 児童福祉法第33条の20第1項 児童福祉法第33条の20第1項では、市町村は障害児通所支援、障害児相談支援等の提供体制の確保と円滑な実施に関する計画(市町村障害児福祉計画)を策定することが定められています。 (12) 障害福祉サービス等及び障害児通所支援等の円滑な実施を確保するための基本的な指針 障害福祉サービス等の提供体制の確保に関する基本的事項や成果目標、障害福祉計画及び障害児福祉計画の作成に関する事項、地域生活支援事業の円滑な実施を確保するために必要な事項等を国が定めたものです。(平成18年厚生労働省告示第395号) (13) 地域生活支援事業 市区町村が地域の実情に応じて計画的かつ柔軟に実施する事業です。 (14) 社会福祉法第107条 社会福祉法第107条では、地域における福祉サービスの適切な利用の推進および社会福祉事業の健全な発達、地域福祉活動への住民参加の促進についての事項を盛り込んだ市町村地域福祉計画を策定することが定められています。 ■ 図表1-1 品川区障害福祉計画の位置づけ 品川区基本構想が最上位にあり、その下に品川区長期基本計画が位置づけられています。品川区長期基本計画は、区政運営の基本方針を定めるもので、その下には、品川区子ども・子育て支援事業計画、品川区地域福祉計画と、品川区障害者計画、品川区障害福祉計画、品川区障害児福祉計画が並行して位置づけられ、互いに関連しています。 品川区障害者計画の根拠となるのは、障害者基本法第11条第3項、障害者施策全般の方向性・目標です。 品川区障害福祉計画の根拠となるのは、障害者総合支援法第88条、障害者施策推進の具体的な目標です。 品川区障害児福祉計画の根拠となるのは、児童福祉法第33条の20、第1項、障害児施策推進の具体的な目標です。 (p.4) 3 計画期間                               本計画は、国が定める基本指針に基づき、平成30年度から平成32年度までの3年間を計画期間とします。   ■ 図表1-2 品川区障害福祉計画の計画期間 品川区長期基本計画の計画期間は、平成21年から30年までの10年間です。 品川区障害者計画の計画期間は、平成27年から35年までの9年間です。 第5期品川区障害福祉計画および第1期品川区障害児福祉計画の計画期間は、平成30年から32年までの3年間です。 品川区地域福祉計画の計画期間は、平成23年から32年までの10年間です。 品川区子ども・子育て支援事業計画の計画期間は、平成27年から31年のまでの5年間です。 (p.4) 4 計画の策定体制                           (1)品川区地域自立支援協議会   区では、障害者への支援体制の充実のために、障害者総合支援法第89条の3に基づく「品川区地域自立支援協議会」を設置しています。協議会では、「相談支援部会」、「社会資源強化推進部会」、「就労支援部会」、「子ども支援部会」、「日常生活用具検討部会」を設置し、障害者団体代表、関連機関および事業者が参画し、課題解決に向けた協議を行っています。本計画は、協議会に意見聴取をしながら策定しています。なお、協議会は傍聴が可能であるとともに、議事録等は区のホームページにて公表しています。 ■ 図表1-3 品川区地域自立支援協議会 品川区地域自立支援協議会は、全体会と専門部会からなっています。 全体会の役割は、主に次のとおりです。  障害者計画・障害福祉計画・障害児福祉計画の策定および進捗の検証  サービス支給量等の中立・公平性の確保  サービスの向上やサービスの適正化等の評価  相談支援事業等の運営評価  ネットワーク構築  権利擁護の推進 専門部会は、次の5つです。  相談支援部会(地域課題や支援困難事例の解決に向けた仕組みの検討)  社会資源強化推進部会(在宅生活支援、地域生活支援の強化の検討)  就労支援部会(社会参加促進のための就労に関する相談や支援内容等の検討)  子ども支援部会(子どもたちや家族への支援の在り方と仕組みの検討)  日常生活用具検討部会(自立と社会参加促進のための支給方法等効果的な支援の検討) (p.5) (2)品川区障害福祉計画・障害児福祉計画策定のための意見交換会等      平成29年10月〜11月にかけて障害者団体を対象としたヒアリング、11月17日に品川区障害者七団体協議会および障害者相談員を対象とした意見交換会を実施しました。 (3)パブリックコメント      平成29年12月11日から平成30年1月10日まで、広報誌を通してパブリックコメントを実施しました。 (脚注) (15) 障害者総合支援法第89条の3 障害者総合支援法第89条の3では、関係機関、関係団体、障害者等の福祉、医療、教育、雇用に関連する職務従事者等により構成される協議会の設置が求められています。 (16) 品川区障害者七団体協議会 品川区視覚障害者福祉協会、品川区肢体不自由児・者父母の会、品川区重症心身障害児(者)を守る会、品川区身体障害者友和会、品川区知的障害者育成会、品川区聴覚障害者協会、品川区精神障害者家族会(かもめ会)の七団体で構成される協議会です。 (17) 障害者相談員 区長から委嘱された相談員(任期2年、平成28年〜29年度25名)が、障害のある方の更生援護に関する相談と必要な指導・助言に応じています。 5 計画の推進に向けて                          (1)総合的な計画推進体制の強化  障害福祉施策の総合的な推進のために、計画は全庁的な取組みとして捉え、各部署における障害福祉施策を推進するとともに、福祉・保健・教育・雇用・まちづくり等、関係部署が一体的な取組みを推し進めています。また、庁内にとどまらず、福祉・保健・医療・教育・雇用関係機関等との連携を強化します。 (2)地域における連携・協力体制の活用  障害のある人の地域生活への支援や就労支援、障害への理解の醸成のために、サービス提供機関、ボランティア団体、地域の関係者・関係機関および障害者団体等と連携・協力し、障害のある人も参加した地域で支え合うまちづくりを進めていきます。 (3)計画の点検・評価      定期的に障害福祉サービス等各事業の進捗状況や目標達成状況について点検・評価を行います。施策・事業の有効性について検証を行い、効果的かつ適切な施策・事業の実施に努めます。 (p.6) (4)計画の進行管理      計画の円滑・着実な実行のためにPDCAサイクルを導入し、本計画に定める成果目標および施策の進捗状況については少なくとも1年に1回以上その実績を把握し、関連施策の動向も踏まえながら計画の中間報告として分析・評価をし、必要があると認めるときは、計画の変更や事業の見直し等を行います。  障害者総合支援法第88条第8項においては、市町村は「障害福祉計画を定め、又は変更しようとする場合において、あらかじめ、協議会の意見を聴くよう努めなければならない」とされています。  計画の進捗状況の検証・分析・評価の役割は、品川区地域自立支援協議会が担い、区として取り組むべき課題の明確化等を進めていきます。 ■ 図表1-4 PDCAサイクルのプロセス 「基本指針」として、障害福祉計画・障害児福祉計画策定にあたっての基本的考え方および成果目標、サービス提供体制に関する見込量の見込み方を提示します。 これに従って、計画(Plan)を作成します。 「基本指針」に即して成果目標を設定すると共に、障害福祉サービスの見込量の設定やその他確保方策等を定めます。 計画に従い、実行(Do)します。 計画の内容を踏まえ、事業を実施します。 実行した結果について、評価(Check)します。 成果目標等については、少なくとも1年に1回以上その実績を把握し、関連施策の動向も踏まえながら、障害福祉計画・障害児福祉計画の中間評価として分析・評価を行います。 中間評価については、自立支援協議会が行います。 計画の変更については、障害者団体等関係者からの意見聴取を行います。 評価をもとに、改善(Action)を行います。 中間評価等の結果を踏まえ、必要があると認めるときは、障害福祉計画・障害児福祉計画の見直し等を実施します。 (脚注) (18) PDCAサイクル PDCAサイクルとは、行動プロセスの枠組みの一つで、Plan(計画)、Do(実行)、Check(確認)、Action(行動)の4つで構成されているためPDCAという名称になっており、4段階の活動を繰り返し行うことで継続的にプロセスを改善していく手法のことです。Planでは目標を設定してそれを達成するための行動計画を策定し、Doでは策定した計画を実行し、Checkでは実施した結果と当初の目標を比較して問題点の洗い出し等評価・分析を行い、Actionでは評価・分析を受けてプロセスや計画の改善、実施体制の見直し等を行います。