(p.17)    第3章 障害者施策推進の取組みと課題 1 障害者施策推進の取組み                           (1)品川区障害者計画      区は、平成27年、「障害者基本法」第11条第3項に基づき、障害者施策全般の基本的な理念や方向性、目標について定める「品川区障害者計画」を策定しました。計画期間は平成27年から平成35年までの9年間です。    @ 計画の基本理念 “自分らしく、あなたらしく、共感と共生の社会へ” 〜人それぞれのライフステージを通し、自分らしく生きられる地域社会の実現〜 (脚注) (29) ライフステージ ライフステージとは、人の一生のうち、年代にともない変化していく段階のことです。乳幼児期、児童期、青年期、壮年期、老年期等に分けられます。 A 計画の基本方針      a.障害者のライフステージを通しての総合的・継続的な支援  一人ひとりの人生が違うように、また人生に対する価値観が違うように、障害のある方のライフスタイルや価値観、その時々のライフステージごとに求められる支援も変化していきます。障害者が自ら必要と考える支援を選択し、生活を組み立て、可能なかぎり地域で自立し、質の高い生活を送ることができるようになるためには、個々の障害特性やその時々のニーズを的確に把握すると共に、本人をとりまく家族状況や家庭環境、社会生活面を含めた生活環境全体に配慮した上で、様々な社会資源・支援サービスに適切につなぐことが重要になります。乳幼児期から就学期、成人期、高齢期へとそれぞれのライフステージごとの支援が途切れることなく、総合的・継続的になされるよう、区全体の施策を展開していきます。       b.障害者の主体性の尊重  障害者支援で大切なことは、障害者が自ら主体的に生活のあり方を選択・決定していくことを最大限尊重することです。どんなに障害が重くても、その人らしく生きていくことが本人にとっての自立を意味すると考え、自らの選択によって一人ひとりがより豊かに生活の質を高めることができるよう、様々な社会資源を整備していきます。一方、障害者が主体的に働ける社会や文化・スポーツ活動等の余暇を楽しむ社会を推進していくことも重要です。障害特性に配慮した環境整備と共に、働き方を自己選択できるような就労メニューの工夫をすることで、障害者が安心して働きつづけられるような支援を充実させていきます。文化・芸術活動、スポーツ等についても、障害者が主体的に自らのライフスタイルを豊かにできるような支援を進めます。            c.共に生きる、共に暮らす地域社会の実現   障害者基本法の改正や障害者虐待防止法の施行、障害者差別解消法の成立に至るまで、障害者の人権を守るための制度の整備が進んでいます。これらの法整備により、日本は平成26 年2 月に障害者の権利条約に批准しました。これらの制度・法整備は、障害者にとって大きな意義をもつものです。障害者基本法にもうたわれている「全ての国民が分け隔てられることなく相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現する」ためには、日常的に地域社会の中に交流の機会があることや、一般区民が利用する図書館、文化センター、体育館などの公共施設の利用が合理的配慮によりスムーズになっていくこと、児童福祉法や教育関連の施策についても障害のあるなしに関わらず地域で共に育つ・育てることを基本として捉えることが、共に生き、共に暮らしていく社会をつくっていく第一歩となります。障害者理解のための普及啓発活動の推進を図り、共に生きる社会の実現をめざします。 (脚注) (30) 社会資源 社会資源とは、利用者のニーズを充足するために活用される各種の制度・施設・機関・設備・資金・物資・法律・情報・集団・知識・技術等を総称して指すものです。 (31) ライフスタイル ライフスタイルとは、生活の様式や営み方、また、人生観や価値観、習慣等を含めた個人の生き方のことをいいます。 (32) 障害者権利条約 障害者権利条約とは、障害者の人権および基本的自由の享有を確保し、障害者固有の尊厳の尊重を促進することを目的として、障害者の権利の実現のための措置等について定める国際条約です。日本は平成19年に署名し、国内法等の整備後、平成26年に批准しました。 (33) 合理的配慮 合理的配慮とは、障害者差別解消法において、「障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない。」と定められているものです。これは、障害のある人が日常生活や社会生活を送る上で妨げとなる社会的障壁を取り除くために、状況に応じて行われる配慮のことであり、筆談による意思疎通、車いすでの移動の手助け、学校や公共施設でのバリアフリー化など、過度の負担にならない範囲で提供されるべきものです。 (34) 障害者の基礎調査 平成25年度、区内障害者および18歳未満の障害児のいる世帯を対象としたアンケート調査を実施しました。配布数5,299、有効回収数2,961、回収率55.9%。     B 重点施策      a.自立した地域生活実現のための在宅支援の強化  障害者の基礎調査結果からも、地域で独立して生活したいという希望が半数以上を占めているように、障害が重くても長く住み続けられるよう、地域支援・在宅支援を強化していく必要があります。  就労支援体制の強化により障害者の社会参加が進みつつありますが、今後は、合理的配慮の視点に立ち、障害特性を踏まえた教育体制、雇用体制等社会生活の基盤の見直しを進めることが、自立を促進していく大事な要素と考えます。その一方で、地域移行や地域定着支援の促進も含め、支援を受けながらその人らしい自立生活を地域で支えるには、多角的な視点が必要となります。  居住環境の整備や居宅介護等の障害福祉サービスによる在宅支援の強化とあわせ、地域センターや民生委員の協力といった身近な地域で日常的に支えていく環境を整えていきます。また、重度障害者が地域で暮らし続けるための保健医療部門と協働する仕組みなど、それぞれの暮らし方に合った支援が円滑に進められるよう、横断的なネットワーク体制を強化していきます。    b.重度化・高齢化への対応  障害のある方の重度化・高齢化に伴い、「老障介護」といわれるように、支える家族も高齢化しています。支える家族が少ない場合、主たる介護者に何かあった時には、突然在宅生活が成り立たなくなることもあります。こうした老障介護の現状で、「親亡き後」を見据えた支援を構築していくためには、高齢化により心身の機能が低下した方や、重度の障害のある方、常に医療的なケアが必要な方でも安心して地域で暮らせる支援体制を整備する必要があります。在宅生活の見守りや困ったときの居宅介護サービスや宿泊できる体制、日中活動の場の組み合わせ等、地域生活コーディネートを基本とした新たな仕組み「地域生活支援拠点」の構築は欠かせないものです。  また、介護保険サービスとの連携や、訪問診療・訪問看護・訪問訓練といったアウトリーチ型サービスの提供には、福祉・保健・医療等関係機関の連携が欠かせないものであり、支援体制の整備・構築を合わせて進めていきます。  相談支援を中心に据えながら、個々のライフステージごとに変化する障害の状態像、家族の介護力や社会生活の環境の変化等、節目を見据えた中長期的視点に立った継続した支援を進めます。 c.療育支援体制の充実  児童福祉法改正(平成24 年)以降、国においても、障害児支援のあり方が改めて見直され、「子どもの将来の自立にむけた発達支援」だけでなく、「ライフステージを通した一貫した支援」、「家族を含めた総合的な支援」、「できるだけ身近な地域における支援」が必要であるとうたわれています。  区においても、成長段階において切れ目のない支援のために、保健センター等医療保健部門、保育課等子育て支援部門、教育委員会等教育部門などの連携を強化し、組織横断的な支援・連携体制(ネットワーク)を構築していきます。  また、障害児の低年齢化・多様化に対応した早期からの発達相談や療育を充実させるためには、児童発達支援センターに障害特性に応じた専門職の配置が必須です。肢体不自由児も含めた療育体制をあらためて整備すると共に、障害児を育てる保護者(家族)支援を大切にし、成長段階を見守ることができる、切れ目のない支援体制の充実を図ります。 (脚注) (35) 「地域生活支援拠点」の構築 p. 32参照。 (36) アウトリーチ型サービス アウトリーチとは「手を伸ばす」という意味で、支援を必要とする人のもとへ訪問等により福祉サービスのスタッフが直接出向いて支援を行うことです。 C 施策体系 基本理念である「自分らしく、あなたらしく、共感と共生の社会へ〜人それぞれのライフステージを通し、自分らしく生きられる地域社会の実現〜」のもと、基本方針として「障害者のライフステージを通しての総合的・継続的な支援」と「障害者の主体性の尊重」「共に生きる、共に暮らす地域社会の実現」を設定しています。 基本方針「障害者のライフステージを通しての総合的・継続的な支援」に基づいた施策は次の5つです。 施策の柱1.相談支援体制の充実 施策の方向@ 障害児・者一人ひとりに合ったケアマネジメント体制の充実      A 障害の個別性に合わせた専門相談の充実      B 関係機関(保健・医療・教育等)との連携強化による相談支援体制の充実 施策の柱2.地域生活支援体制の整備 施策の方向@ 地域で自立・安心した生活を送るための拠点施設や住環境の整備      A 在宅サービスの充実      B 障害特性に応じた支援の強化 施策の柱3.子どもの成長を支える療育と家族支援体制の充実 施策の方向@ 専門性の高い相談・療育支援体制の整備      A 障害があっても地域で育てる仕組みの構築      B 障害児を育てる保護者のための子育て支援の充実 施策の柱4.安心・安全な生活基盤の確保 施策の方向@ 重度化・高齢化した障害者とその家族への支援体制の構築      A 地域の見守りと緊急時支援の取組みや対応力の強化      B 災害時における支援体制の整備 施策の柱5.人材育成 施策の方向@ 障害特性を理解し、幅広い観点から支援できる人材の育成      A 障害者支援の核となる人材の育成      B ボランティアや当事者参加による地域支援力の向上 基本方針「障害者の主体性の尊重」に基づいた施策は次の2つです。 施策の柱6.豊かな日常生活を送るためのサービスの充実 施策の方向@ 障害者一人ひとりに即した日常生活の質を高める支援の充実      A 文化・芸術活動、スポーツ等余暇活動の促進      B 地域における社会参加や社会活動への支援 施策の柱7.就労機会の拡充、就労支援体制の充実 施策の方向@ 一般就労に向けての就労支援の強化      A 福祉的就労の場におけるそれぞれの障害者の能力を活かせる多様な就労メニューの工夫      B 障害者の雇用拡大に向けた区の率先した取組みの推進 基本方針「共に生きる、共に暮らす地域社会の実現」に基づいた施策は次の2つです。 施策の柱8.権利擁護体制の構築 施策の方向@ 障害者虐待防止対策事業の強化・推進      A 成年後見制度の利用促進      B サービス向上に向けた取組みの推進 施策の柱9.障害者理解と共感のやさしいまちづくり 施策の方向@ インクルージョン(地域社会への参加・包容)に基づく、障害者にやさしいまちづくりの推進      A 合理的配慮を共通基盤とした行政サービスの整備      B 障害者理解のための普及・啓発活動の充実 (p.22) (2)障害者計画における施策の柱に対する前期(H27〜29)の事業展開     <1.相談支援体制の充実>       障害のある人が身近な地域において必要な支援を受けながら安心して日常生活や社会生活を送ることができるよう、区内に拠点相談支援事業所を4カ所(品川区障害者生活支援センター、福栄会障害者相談支援センター、グロー障害者相談支援センター、精神障害者地域生活支援センター)整備しました。障害者福祉課に設置している基幹相談支援センターが総合的な相談体制の中核としての機能を果たし、各相談支援機関に対して指導、助言、相談支援員等の人材育成を行い、相談支援の質の向上に向けた取組みを実施しています。また、発達障害や高次脳機能障害等の専門相談に取り組みました。  相談支援事業所、その他関係機関のネットワーク化が図られ、地域自立支援協議会ではケース事例を通して明確化した地域課題について検討を行いました。   前期において実施した主な取組み  障害者総合支援法における障害福祉サービス等受給者に対する計画相談導入実績は、平成29年3月時点で97.0%です。  高次脳機能障害について、積極的な周知と相談機能の充実により、相談件数は平成27年度440件から平成29年度には500件(見込み)へ増加しました。また、平成28年度より支援者養成講座を実施しています。  発達障害について、思春期から成人期にかけての各成長段階における発達特性に適した支援体制の構築を進め、成人期支援において就労系事業との連携強化を図っています。  平成29年6月、区内4カ所目の拠点相談支援事業所となるグロー障害者相談支援センターが開設されました。 (脚注) (37) 拠点相談支援事業所 拠点相談支援事業所は、地域の中核となる地域拠点相談支援センターとして位置付けられ、計画相談支援および基本相談支援等を行い、迅速かつ適切なケアマネジメント、円滑なサービス利用計画の策定等により、地域の障害者を支えています。 計画相談支援とは、ケアマネジメントプロセスにおけるインテークからアセスメント、プランニング、モニタリングまで全て行い、障害福祉サービスおよび地域相談支援を利用する場合の相談支援(個別給付の対象)で、「サービス利用支援」と「継続サービス利用支援」に分けられます。 基本相談支援とは、全ての相談支援業務の土台となるもので、障害児者等からの相談に応じて必要な情報の提供および助言を行い、あわせて市区町村および障害福祉サービス事業者等との連絡調整その他障害児者に必要な支援を総合的に供与する相談支援(個別給付の対象外)です。 (38) 基幹相談支援センター 基幹相談支援センターとは、障害者総合支援法に基づく地域における相談支援の中核的な役割を担う機関であり、障害者等の相談、相談支援事業者間の連絡調整等を行います。 (39) 発達障害 発達障害とは、脳機能の障害等により、発達の遅れやゆがみ、機能獲得の困難等の心身の状態が、主に低年齢期に現れるものをいいます。 (40) 高次脳機能障害 高次脳機能障害とは、外傷性脳損傷、脳血管障害等により、脳に損傷を受け、その後遺症等として生じた記憶、注意、遂行機能、社会的行動等の認知機能(高次脳機能)に不具合が生じた状態をいいます。     <2.地域生活支援体制の整備>       地域生活への移行を促進する上で重要な住環境の整備のため、民間事業者によるグループホーム開設への支援を行い、障害者の住まいの確保に努めてきました。グループホームでは世話人による支援を受けながら社会生活能力を高め、アパートへの転居等地域生活の次のステップを目指すことができます。  障害のある人の生活支援や介護する家族等の負担軽減のため、居宅系サービスの提供とレスパイト支援に取り組んできました。また、医療的ケアが必要な人や重症心身障害児者、その介護者への支援の充実に向けて検討を行いました。       高齢化の進行に伴う障害特性に応じた支援体制の構築のため、障害福祉サービスと高齢福祉サービス双方の適切な提供について検討しました。       障害者の地域生活を多方面から支える地域生活支援拠点について、社会資源の連携による面的整備を行いました。 前期において実施した主な取組み グループホームを開設する民間事業者向けの整備助成制度を平成27年度、創設しました。助成制度を活用し、平成28年にはグループホームふくふく(精神障害者)、平成29年にグループホーム金子山(知的障害者)が開設されました。  在宅で生活する重症心身障害児者や医療的ケア児の家族等への支援のために、平成28年度より重症心身障害児者等在宅レスパイト事業を実施しています。  平成29年度、庁内において高齢障害者への対応の検討会を設置しました。利用者にとっての最適なサービス提供に向けて、障害福祉サービス、介護保険サービス双方の柔軟な運用についての検討を進めています。  平成29年度、地域生活支援拠点を3カ所(品川区障害者生活支援センター、福栄会障害者相談支援センター、グロー障害者相談支援センター)設置しました。地域生活支援拠点コーディネーターの役割を担う拠点マネージャーを配置し、地域における社会資源の連携による支援体制の強化を図っています。 (脚注) (41) レスパイト支援 レスパイト支援とは、障害者を一時的に預かることにより、家族等の介護者が休息する時間をつくり、心身の疲れを回復させる等、介護者の負担軽減を図るものです。 (42) 重症心身障害児者 重症心身障害児者とは、重度の身体障害(肢体不自由)の他に、様々な程度の精神遅滞(知的障害)やてんかん、行動障害等を合併している方々のことで、昭和41年の旧厚生省の定義では、「身体的・精神的障害が重複し、かつ、それぞれの障害が重度である児童および満十八歳以上の者」とされています。心身障害児の大島分類という障害児施設等で使用されている分類法では、重症心身障害児は区分1〜4に該当するとされています。     <3.子どもの成長を支える療育と家族支援体制の充実>       区においては、相談機関や子育て機関で把握している障害や発達に課題のある子どもの数が増加しています。それに伴い、支給決定している障害児通所支援事業の利用児童は増加傾向にあります。平成24年度に創設された「放課後等デイサービス事業」においても、民間事業者を主体としたサービス提供が増え、利用者は大幅に増加しています。平成29年度実施の障害児実態・意向調査によると、児童発達支援の現在の利用状況について、「利用している」が80.1%、「利用していない」が17.6%、「(今後も)利用したい」は66.5%となっています。また、放課後等デイサービスの現在の利用状況については、「利用している」が53.7%、「利用していない」が42.5%、「(今後も)利用したい」が49.4%となっています。今後もニーズの増加に伴う利用者の増加が見込まれます。       区は、早い段階から障害や発達の課題に気づき、相談から早期の支援へつなげる相談支援体制の構築に努めてきました。  障害や発達に課題のある子どもが地域で健やかに成長し、成人期においても円滑な地域生活を送ることができるよう、成長段階において切れ目のない一貫した支援体制の整備に向けて、関係機関と協議を行ってきました。 前期において実施した主な取組み 通所支援施設の整備が進み、児童発達支援については平成27年度2カ所、平成29年度6カ所、放課後等デイサービスについては平成27年度1カ所、平成28年度2カ所、平成29年度4カ所開設されています。  平成29年度に重症心身障害児を支援する児童発達支援事業所および放課後等デイサービス事業所がそれぞれ1カ所設置されました。  平成27年度、医療的ケア児の受け入れ可能な児童発達支援を運営する民間事業者を対象とした助成制度を創設しました。  平成27年度に自立支援協議会に子ども支援部会を設置し、関係機関の連携強化を行い、支援体制整備・強化についての協議を進めています。  平成27年度から移動支援の対象範囲に学齢児の通学支援を含めました。  平成28年度から障害児計画相談を開始しました。  平成28年度、障害児を育てる保護者向けに、保健、福祉、保育・子育て、教育等の情報を掲載した「発達支援ガイドブック」を発行しました。  平成29年度、乳幼児期から学齢期まで途切れることなく各成長段階に応じた関係機関からの必要な支援を受けることができるよう、障害児の発達状況や生活状況、医療・福祉情報等を保護者が記録していく「しながわっこのサポートブック」を作成しました。     <4.安心・安全な生活基盤の確保>       区では、障害者の高齢化や重度化、家族の高齢化による介護力の低下に対応した、緊急時等における支援体制の整備を図ってきました。       災害時の安否確認や避難誘導を円滑かつ安全に実施できるよう、要配慮者名簿の作成、二次避難所 の立ち上げ等支援体制の整備を進めています。       障害者施設における防犯設備の整備等、防犯対策に取り組んできました。 前期において実施した主な取組み  区立施設において、緊急ショート枠1床を設定しました。  平成29年度、地域生活支援拠点を3カ所設置し、安定した地域生活のための総合的な支援に向けて、事業者連携による地域の体制づくりを進めています。  平成28年度は区立障害者入所施設等に防犯カメラ等防犯設備を設置し、平成29年度は民間障害者施設を対象に、防犯カメラ等防犯設備の設置に対する助成を実施しました。  平成28年度より、区内二次避難所の立ち上げ訓練を実施し、災害時の避難行動や、要配慮者の円滑な受け入れ体制の整備に努めています。 (脚注) (43) 二次避難所 二次避難所では、災害時において、一般的な避難所では十分な救援や救護活動が実施できずに生活に支障をきたす高齢者や障害者、妊産婦、病弱者等の受け入れを行います。     <5.人材育成>       障害特性を的確に捉えた適切なアセスメントによる支援の組み立てのために、障害者一人ひとりの特性に応じた支援を行うことのできる人材の育成に取り組んできました。 前期において実施した主な取組み  平成27年度より、障害者版福祉カレッジの障害者ケアマネジメントコースにおいて、強度行動障害の特性に応じた支援やアセスメントの向上に向けた実践的なカリキュラムを実施しています。  居宅介護における介護者の介護技術および資質の維持向上に向けて、精神障害者ホームヘルパーステップアップ研修の充実に取り組んでいます。  同行援護従業者の安全かつ適切なガイドヘルプを行うための誘導技術や情報提供等の知識・技術向上に向けて、同行援護従業者養成研修の充実に取り組んでいます。 (脚注) (44) アセスメント アセスメントとは、「評価・査定」という意味で、ここでは利用者の身体的・精神的状況だけでなく、日常生活や文化・余暇活動などの社会的生活の状況等を総合的に把握し、利用者のニーズを踏まえてその現状を評価することをいいます。 (45) 福祉カレッジ 区では、区内事業者および職員を対象に、「障害者版福祉カレッジ」として、個々の支援技術力と地域全体の支援力向上のために各種研修および講座を実施しています。 (46) 強度行動障害 強度行動障害とは、直接的な他害(噛みつき、頭づき等)や間接的な他害(同一性の保持等)、自傷行為等が通常考えられない頻度と形式で出現している状態のことをいいます。     <6.豊かな日常生活を送るためのサービスの充実>       障害者がすべてのライフステージを通じて、自立のために社会的な活動を展開できるよう、社会参加や余暇活動の促進のための取組みを進めてきました。 前期において実施した主な取組み  移動支援事業について、平成27年度より対象者に難病患者および高次脳機能障害者を含めるとともに、グループ型支援および通学支援を取り入れました。また、支給時間数を16時間から36時間に拡大しました。  平成27年度より、障害者の芸術活動支援事業(アール・ブリュット展の開催、障害者施設へのアート・ディレクター派遣)を実施しています。  平成27年度より、知的障害児者を対象として、社会参加のための外出支援事業を実施しています。  平成27年度より、障害のある人もない人も一緒に楽しめるスポーツレクリエーションイベントである「ユニバーサルスポーツ大会」を実施しています。  区立図書館では、マルチメディア・デイジー図書等の貸出、資料利用相談、区内特別支援学級への情報提供をはじめ、音声ガイドと字幕付きの「バリアフリー映画会」、手話通訳を配した「バリアフリーおはなし会」の開催等障害者への支援事業の充実に取り組んでいます。   (脚注) (47) 難病 平成25年4月より障害者総合支援法における障害者の範囲に難病等の方々が加わり、平成29年4月からは対象となる難病等は358に拡大されました。対象となる方々は、身体障害者手帳の所持の有無に関わらず、必要と認められた障害福祉サービス等の受給が可能です。 (48) グループ型支援 移動支援事業のグループ型支援とは、屋外での移動が困難な複数の障害者または障害児(グループ)に対して、余暇活動等の社会参加のための外出を一人の支援者(ガイドヘルパー)が支援するものです。 (49) アール・ブリュット アール・ブリュット(Art Brut)とは、フランス語で「生の芸術」という意味です。画家のジャン・デュビュッフェが1945年に考案した概念で、正規の美術教育を受けていない人が、社会の潮流に流されることなく、独自の発想と方法により生み出した、既存の芸術の様式・形式に影響を受けていない絵画や造形のことをいいます。     <7.就労機会の拡充、就労支援体制の充実>       障害のある人もない人も共に社会で暮らしていくことのできる共生社会の実現に向けて、障害者が当たり前に働くことのできる地域社会の実現を目指した取組みを進めてきました。      就労支援センターおよび、平成29年10月現在区内に5カ所設置されている就労移行支援事業所をはじめとする就労系事業所が障害者雇用推進への取組みを行ってきました。       品川区地域自立支援協議会における就労支援部会では、障害者の能力を活かせる多様な就労メニュー等課題の解決に向けての情報共有および効果的な取組みについての検討を行ってきました。       障害者就労支援センターを中心に、就労移行支援施設から就職した人等に対し、一人ひとりの特性に応じて、日常生活の安定のための生活相談等、総合的な就労相談支援に努めてきました。 前期において実施した主な取組み  平成27年4月以降、就労移行支援事業所が3カ所開設されました。利用者数は、就労への意欲喚起等により増加傾向にあり、一般就労への移行者数は、平成27年度16人、平成28年度23人となっています。  就労系事業所、相談支援事業所等関係機関の連携により、就労支援体制の整備・強化についての協議を進めています。  就労継続支援事業所を中心に、工賃向上に向けて商品価値を高める取組みを行ってきました。     <8.権利擁護体制の構築>       障害者権利条約の批准をはじめ、障害者虐待防止法、障害者差別解消法等の施行により、障害者の権利を擁護する気運が高まっています。       区では、障害者への理解促進を図りつつ、障害者の社会的障壁を取り除き、一人ひとりがお互いの人格と個性を尊重し合い、支え合いながら共生する社会の実現に向けて、障害者虐待の防止、成年後見制度の活用等、障害者の権利擁護の取組みを推進してきました。障害者福祉課では障害者虐待防止センターとして、虐待の通報や届出を受け付けています。       また、成年後見制度の普及を図り、法人後見の活動支援や、費用助成等の利用者支援に取り組んできました。 前期において実施した主な取組み  障害者福祉課に設置している障害者虐待防止センターにおいて、虐待通報に対して関係機関との連携等による迅速な対応を行いました。  成年後見制度の啓発と利用を促進しています。  障害者の権利擁護に係る相談について、必要な支援に向けて事業所との連携を図っています。 (脚注) (50) 社会的障壁 社会的障壁とは、障害者にとって日常生活または社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいいます。 (51) 成年後見制度 成年後見制度とは、判断能力が不十分であるため、契約等の法律行為における意思決定が困難な成年者(知的障害者、精神障害者、認知症の高齢者等)を、代理権等を付与された後見人が本人の意思を尊重しつつ保護(財産管理、身上監護等)する制度のことです。自らの意思で後見人を選任する「任意後見」と、家庭裁判所に後見人、補佐人、補助人の選任を申し立てる「法定後見」があります。     <9.障害者理解と共感のやさしいまちづくり>       平成28年4月、障害者差別解消法が施行されました。区では、障害者理解の促進とともに、国の定める基本方針等に基づき、障害当事者等の意見を取り入れながら、障害者の社会的障壁を取り除くための取組みを進めてきました。合わせて、区有施設のバリアフリー化に向けての整備計画を進めています。 前期において実施した主な取組み  平成28年4月、「品川区における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応要領」を制定しました。  区全職員向けに、障害者理解促進のための研修および講演会を実施しました。  平成28年、社会的障壁除去の視点から、区役所窓口等の改善の検証により「合理的配慮の庁内統一ルール」を作成しました。  障害者理解促進と合理的配慮の浸透に向けて、「障害者差別解消法ハンドブック」を作成し、区施設およびイベントでの配布等積極的な周知を行いました。  平成27年度より、障害者および障害をテーマとした映画祭を実施しています。なお、平成29年度は「障害者週間記念のつどい」内で開催しました。 (脚注) (52) 国の定める基本方針 基本方針は、障害を理由とする差別の解消に向けた、政府の施策の総合的かつ一体的な実施に関する基本的な考え方を示すものとして、平成27年2月24日に閣議決定されました。 (53) 品川区における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応要領 「品川区における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応要領」は、障害者差別解消法に基づき、不当な差別的取扱いの禁止および合理的配慮の提供に関して区の職員が適切に対応するために、平成28年に定めました。 (54) 合理的配慮の庁内統一ルール 「合理的配慮の庁内統一ルール」は、合理的配慮の視点から庁内における障害者への接遇応対向上のために、平成28年に定めたものです。窓口に配置すべき備品類や、車椅子利用者に負担の少ないカウンター仕様等について記載されています。 (55) 障害者週間 障害者週間とは、広く人々の間に障害者の福祉についての関心と理解を深めるとともに、障害者が社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に積極的に参加する意欲を高めることを目的に定められた週間です。障害者基本法の公布日である12月3日を起点とし、障害者の日である12月9日までの1週間と定められ、平成16年の障害者基本法改正により明記されました。 (p.29) 2 今期の福祉計画における主要テーマと今後の取組み (1)相談支援の充実と適切な情報提供     <現状と課題> 今後ますます多様化が進むと想定される障害者のニーズに適切に対応するためには、障害福祉サービス等の提供体制の確保とともに、それらサービスの適切な利用を支える相談支援体制の構築が不可欠となっています。    区においては、基幹相談支援センターが相談支援体制の中核となり、拠点相談支援事業所4カ所が地域に配置され、身近な地域でのきめ細かな相談と合わせ、計画相談を実施しています。さらなる地域全体の相談支援の充実に向けて、民間の相談支援事業所との連携等ネットワークの強化が課題となっています。       情報格差が生まれることなく、利用者が障害福祉の制度およびサービスをよりよく知ることのできる環境づくりが大切となっています。多様な事業者が提供する多くのサービスから、利用者が必要なサービスを自ら選択し、利用するためには、サービスについての適切な情報提供が重要です。     <取組みの方向性>       一人ひとりのニーズとライフステージに応じたサービス提供の実現に向けて、基幹相談支援センターが区の相談支援体制の中核となり、拠点相談支援センターを中心とする相談支援事業者間のネットワークを構築・活用し、利用者への情報提供およびニーズに適切に対応した相談等地域全体の相談支援の充実を図ります。  ホームページや「障害者福祉のしおり」等を中心に情報提供に工夫を凝らし、サービスを利用するために必要な情報を必要な人に確実に届ける仕組みづくりを進めていきます。また、情報を得ることが困難な人に対しては、個々の状態に合わせ、手話、筆記、点字、音声・文字の拡大、色使いの配慮、インターネット等適切な情報伝達方法による情報提供を行います。 ■図表3-1 品川区の相談支援体制 基幹相談支援センターである障害者福祉課では、企画・調整、自立支援協議会運営、人材育成、権利擁護対応を行っています。 拠点相談支援事業所としては次の4つの事業所が設置され、委託相談・認定調査・計画相談を実施しています。 福栄会障害者相談支援センター、グロー障害者相談支援センター、品川区障害者生活支援センター、精神障害者地域生活支援センター。 このうち、福栄会障害者相談支援センター(品川・大崎地区)、グロー障害者相談支援センター(大井地区)、品川区障害者生活支援センター(荏原地区)は拠点相談支援センターとして位置づけられ、地域生活支援拠点コーディネーターが配置されています。 また、就労相談は、障害者就労支援センター(身体障害・知的障害・精神障害)で実施しています。   (脚注) (56) 情報格差 情報格差とは、個々人の有するパソコン、インターネット等情報技術の差により生じる格差のことをいいます。情報格差から生じる格差としては、情報量・質の格差、得られる収入の格差、利用できるサービスの格差、機会の格差等があげられます。 (2)障害福祉サービスと介護保険サービスの適切な運用     <現状と課題> 障害の種別にかかわらず高齢化が進んでおり、障害特性に応じた支援の充実とともに、高齢福祉施策との連携が重要な課題となっています。障害福祉サービス利用者が介護保険の被保険者となった場合には、障害福祉サービスと介護保険サービスの併用等様々なケースが生じます。双方において同様のサービス利用が可能な場合は介護保険が優先されることとなります。サービス併用の場合においては、ケアマネージャー(介護保険員(障害福祉)との密な連携等利用者が安心して引き続き生活を送れるような支援体制の整備が求められています。     <取組みの方向性>       障害福祉サービス利用者にも計画相談支援が導入され、定着が進んでいます。サービス等利用計画に基づいた一人ひとりの生活状況を踏まえたサービス提供を行い、介護保険制度の利用開始の前後で利用者視点のサービスが大きく変化することのないよう、個々のケースに応じた柔軟な対応を行います。柔軟かつ適正なサービスの提供に向けて、高齢福祉施策との連携とともに、支援に係る者が制度等への理解を深め、適切な運用を行います。 ■ 図表3-2 障害者総合支援制度と介護保険制度の比較 給付目的 障害者総合支援制度…基本的人権を享有する個人としての尊厳にふさわしい日常生活または社会生活を営むことができるよう必要な給付を行う(障害者総合支援法第1条) 介護保険制度…尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう必要な給付を行う(介護保険法第1条) 区分 障害者総合支援制度…障害者等の障害の多様な特性その他の心身の状態に応じて必要とされる標準的な支援の度合を総合的に示すものとして定める区分(障害者総合支援法第4条第4項) 介護保険制度…日常生活における基本的な動作の全部または一部について、その介護の必要の程度に応じて定める区分(介護保険法第7条第1項) ■ 図表3-3 障害福祉サービスと介護保険サービスの関係 介護保険にないサービス…同行援護、行動援護、重度障害者等包括支援、自立訓練、療養介護、就労移行支援、就労継続支援、共同生活援助、補装具、移動支援事業 等 障害福祉にないサービス…訪問看護、居宅療養管理指導、訪問リハビリテーション、通所リハビリテーション、短期入所療養介護、小規模多機能型居宅介護、認知症対応型共同生活介護 等 両制度に共通のサービス…居宅介護(≒訪問介護)、生活介護(≒通所介護)、短期入所(≒短期入所生活介護)、日常生活用具(≒福祉用具)、訪問入浴介護 等、(上乗せ部分)介護保険の支給限度額を上回る場合 等 (脚注) (57) 介護保険 介護保険とは、市区町村が保険者となり運営を行い、被保険者(加入者、利用者等)がサービス事業者の提供する介護に関するサービスを選択して利用できる制度です。被保険者は第1号被保険者(原因を問わず所定の介護や支援が必要と認定された65歳以上の人がサービスを利用可能)と第2号被保険者(特定疾病が原因で所定の介護や支援が必要と認定された40歳以上65歳未満の医療保険加入者がサービスを利用可能)に分かれています。 (3)保健・医療との連携 <現状と課題>  障害者が地域で安心して生活していく上では、地域における保健・医療分野と福祉分野の連携による、個々の障害の状況に応じたきめ細かな支援が必要です。ライフステージや症状の変化に合わせた支援、アウトリーチ支援、通所施設や短期入所における医療ニーズの高い利用者の受け入れ体制の整備、介護する家族の負担を軽減するための支援の充実が求められています。また、障害の高齢化・重度化の進行に伴い増加する医療的ケアを必要とする障害者への支援の必要性が高まっています。 <取組みの方向性> 精神障害者を支える地域社会の実現に向けて、保健センター等関係機関間の連携のもと、相談支援の充実、地域生活安定化支援事業における精神科医・精神保健福祉士等の家庭訪問等により、地域における支援体制の充実を図ります。  医療的ケアの必要な重症心身障害児者等については、通所施設や短期入所において医療ニーズの高い利用者を安全かつ安定的に受け入れるための体制整備と、家族支援のためのレスパイト支援を進めていきます。  発達障害児については、ライフステージに応じた支援体制の充実のため、保健センター、保育園、幼稚園等関係機関と連携した早期発見・早期支援へつながる体制整備の検討を進めていきます。成人期の発達障害者については、相談支援の充実や支援の質の向上に向けての取組みを検討していきます。  意思疎通の支援等を要する失語症のある障害者や高次脳機能障害者、その家族に対する相談支援の充実により、医療機関や就労支援機関等との連携を図り、発症後の急性期治療から地域生活、就労等社会参加に至るまでの切れ目のない支援に取り組んでいきます。  平成31年度開設の(仮称)品川区立障害児者総合支援施設では、医療的ケアの必要な重症心身障害児者の受け入れを行います。また、精神科のクリニック・デイケア・訪問看護ステーションを併設し、医療連携を図ります。 (脚注) (58) 失語症 失語症とは、脳出血、脳梗塞等主に脳血管障害によって脳の言語機能の中枢に損傷を受けることにより、獲得した言語機能(「聞く」、「話す」といった音声に係る機能および「読む」、「書く」といった文字に係る機能)に支障をきたしている状態のことをいいます。 (4)地域生活支援拠点の整備     <現状と課題>    地域には障害児者を支える様々な資源があり、区においても地域生活支援のための機能の充実に継続的に取り組んできました。しかしながらそれらの間の結びつきは必ずしも十分ではなく、重症心身障害、強度行動障害等の支援が難しい障害児者への対応をはじめ、事業者間でそれぞれの機能を活かした効果的な連携を行い、地域生活を多面的に支える体制の構築が求められています。今後のさらなる障害者の重度化や高齢化、「親亡き後」を見据えると、障害児者が地域生活を続ける上では、@相談、A地域生活体験の機会・場、B緊急時の受け入れ体制・対応、C専門性、D地域の体制づくり、これら5つの視点からの機能整備が課題となっています。 ■ 図表3-4 地域生活支援拠点イメージ(面的整備型) 相談支援事業所は相談先、日中活動サービス事業所は体験の機会・場としての役割をもっています。グループホーム、障害者支援施設、基幹相談支援センターは専門性を発揮した対応を行います。また、短期入所は緊急時の受け入れに対応します。 地域生活支援コーディネーターを中心として、これらの機能を連携させた地域の体制づくりを行います。       <取組みの方向性>       区では前述の5つの視点から、障害児者の地域生活のための機能整備を進め、平成29年度には3つの地域生活支援拠点を設置しました。各拠点には、地域の社会資源の活用や相談支援事業所等関係機関との連携を行う相談拠点として、障害者相談支援センター(品川区障害者生活支援センター、福栄会障害者相談支援センター、グロー障害者相談支援センター)が置かれ、各々に地域生活支援拠点コーディネーターが配置されています。既存の施設や機能の効果的な連携を検証し、相談機能の充実をはじめ、施設およびサービス等との連携体制の強化を図ります。また、インフォーマルな支援の体制づくりについても検討していきます。合わせて、多機能拠点整備型の施設機能が果たす役割の検討を進め、平成31年4月に開設予定の(仮称)品川区立障害児者総合支援施設に障害者の地域生活を総合的に支援する機能を持たせます。      ■ 図表3-5 品川区における地域生活支援拠点(面的整備型)のイメージ これまでは、利用する支援を障害者や家族が探し、その都度窓口へのアクセスが必要でした。 これからは、地域拠点障害者相談支援センターに地域生活支援拠点コーディネーターを配置することにより、家族との窓口をコーディネーターが担い、総合的に支援を調整して提供することができるようになります。 障害児者総合支援施設(多機能型)の設置と、コーディネーターの設置(サービス情報の一元管理)により、地域連携システムによる機能の分担、適切な情報提供(サービス内容・量・時)とコーディネートが実現し、本人らしい生活や、家族・介助者の負担軽減、居宅生活への移行促進が可能になります。 コーディネーターは、地域相談支援資源の調整やサポート24との連携を行い、障害児者と家族を支援します。 また、基幹相談支援センターは、法改正や施策動向等の行政情報の発信を行います。 地域拠点相談支援センターと基幹相談支援センターを中心として、各サービス機関が支援を行います。 グループホームは、地域移行・体験の場の役割を担います。 通所事業所は、高齢化・重度化に対応し、生活介護・就労継続支援・就労移行支援・地域活動支援センター・児童発達支援センターなどのサービスを提供します。 かもめ園・かがやき園の施設入所支援をはじめとした福祉施設・短期入所は、緊急時の受け入れとしての役割を担います。 訪問看護・医療機関と連携し、重度化・医療への対応をすすめます。 このほか、訪問介護や、近隣・ボランティアなどのインフォーマルな支援とも連携します。 (脚注) (59) 多機能拠点整備型 地域生活支援拠点の構築には、各地域の抱える課題に応じて、居住支援のための5つの機能(@相談、A地域生活体験の機会・場、B緊急時の受け入れ体制・対応、C専門性、D地域の体制づくり)を集約して整備する「多機能拠点整備型」と、地域において機能を分担して担う「面的整備型」の2手法が国により示されています。 (60) インフォーマルな支援 インフォーマルな支援とは、自治体や専門機関など、フォーマル(正式)な制度に基づき提供される支援以外のことです。具体的には、家族や友人、地域住民、民生委員、ボランティア、NPOなどによる援助を指します。 (p.34) (5)社会資源の開拓と地域による偏りの解消     <現状と課題>    区内の障害者事業所の所在は地域によって偏りが見受けられ、区内全域におけるサービス提供体制のバランスに配慮した社会資源の整備を行う必要があります。特に荏原地域は区内他地域に比べ、グループホーム、通所施設ともに不足している状況にあります。サービスの担い手の開拓や同地域での事業所開設が課題となっています。      ■ 図表3-6 品川区における通所・入所施設、グループホームの設置状況(平成30年4月1日現在) 通所・入所施設、グループホームは、平成31年開設予定の総合支援施設も含め、区の東側に偏在しており、荏原地区は施設が少ない状況です。 通所施設は、生活介護、就労継続支援A型およびB型の施設を指します。 <取組みの方向性>      地域による偏りの解消に向けて、グループホーム開設助成や社会福祉法人への支援等により、荏原地域での事業所開設を推進していきます。合わせて、地域生活支援拠点および既存施設の機能強化に向けた取組みを進め、区内全域においてバランスの取れたサービス提供体制を目指します。 (p.35) (6)人材育成     <現状と課題>  身近な地域において相談支援や障害福祉サービスが提供できるよう、多様な事業者の参入を促すとともに、サービスの質の維持・向上のための人材の育成・確保が求められています。  重度の障害者の在宅や施設での安定した生活を支えるためには、たんの吸引等の医療的ケアや、重症心身障害、強度行動障害への適切な対応が必要です。多様な障害特性に応じた専門性のある支援を提供できる人材の育成が重要となっています。          <取組みの方向性>      多様な障害特性や障害者の状態像の変化に対応できる専門性を有する人材を育成し、地域の福祉人材の底上げに取り組んでいきます。 地域社会で精神障害者を支えるために不可欠な訪問介護員の養成という課題に対応するため、居宅介護のための知識や技術の習得、介護者の介護技術および資質の維持向上を目的とした精神障害者ホームヘルパーステップアップ研修を実施します。また、同行援護従業者養成研修の充実により、同行援護従業者が安全かつ適切なガイドヘルプを行うための誘導技術や情報提供等の知識・技術向上への取組みを進めます。       地域の支援力向上のための福祉カレッジの障害者ケアマネジメントコースでは、強度行動障害の特性に応じた支援やアセスメントの向上に向けた実践的なカリキュラムを実施しています。       障害の高齢化・重度化の進行に伴い増加する医療的ケアが必要な障害者や、NICU(新生児集中治療室)などから退院してくる医療的ケア児への対応の必要性が高まることを視野に入れ、在宅や障害者施設において適切にたんの吸引等の医療的ケアを行うことのできる介護職員の養成を検討していきます。       また、利用者自らがサービスを選択して利用できるよう、福祉サービス第三者評価の受審助成を行い、サービスの質の向上に向けた事業者の取組みを促進します。 (脚注) (61) 第三者評価 第三者評価とは、事業者が事業運営の問題点を把握し、サービスの質の向上に結びつけるとともに、利用者のサービス選択に役立つ情報を提供するため、事業者の提供するサービスの質を当事者以外の公正・中立な立場の第三者機関が専門的・客観的な立場から評価することです。 (p.36) 【第1期品川区障害児福祉計画】 (7)包括的な障害児支援の充実     <現状と課題>  児童福祉法には、障害のある子も等しく「児童」であることを踏まえ、「子どもの最善の利益」が実現される社会を目指すとの考え方が基本にあります。平成28年の障害者総合支援法および児童福祉法の一部改正の際は、国において障害児支援の在り方の検討がなされ、障害の有無にかかわらず児童が共に成長できるよう、インクルージョン(地域社会への参加・包容)の推進のため、障害児福祉計画と子ども・子育て支援事業計画の調和とともに、子育て支援施策との緊密な連携が示されました。保育園や幼稚園、小学校就学後の日中活動の場においては、配慮が必要な子どもが過ごす場所における合理的配慮の提供に向けた取組みが求められています。      医療的ケア児や、発達・発育に関する子どもの特性が早期発見されるケースが増えることに伴い、障害児の相談は低年齢化・多様化が進み、その件数は増加傾向にあります。区では、発育・発達に関して支援の必要な子どもに対する早期発見や早期療育につながる体制整備を進めています。  障害児の発達支援を強化していくとともに、障害児を育てる保護者支援のさらなる充実が課題となっています。     <取組みの方向性>      @ 専門性の高い相談・療育支援体制の整備        児童発達支援センターに位置付けられている品川児童学園は、平成31年度開設の(仮称)品川区立障害児者総合支援施設の持つ総合的機能を活かした運営により、医療依存度の高くない肢体不自由児の相談や療育の実施等医療面との連携を強化する仕組みを構築し、その機能と役割を拡充します。また、未就学児から引き続き学齢期の相談を実施し、子どもの成長を切れ目なく支援する相談体制の充実を図ります。        児童発達支援センターは、多様な障害特性に応じた療育の専門性を有し、障害のある子を育てる保護者支援の拠点施設としての役割を担っています。相談と療育の一体的な支援をより身近な地域で提供できるよう、児童発達支援センター1カ所の増設を目指します。        アウトリーチ型の相談支援と療育機能を併せ持つ保育所等訪問支援の利用ができる体制を構築します。療育の専門支援員が、保育園や幼稚園、学校等、障害児の基礎集団に定期的に訪問し、障害児の特性に応じた支援の工夫や適切な保育環境の整備についての助言等を行い、保育所等関係機関間における効果的な連携ができるような体制整備を進めていきます。      A 地域で育てる仕組みの構築       a.保育園・幼稚園         保育園と幼稚園は、異年齢の乳幼児が集団生活する中で子どもたちの健やかな育ちを支援する施設です。いずれの施設も配慮の必要な子どもの受け入れを行っています。  保育園については、入園を希望する子どもについて入園選考および面接を実施し、受け入れを行っています。また、集団保育を行う上で配慮が必要な子どもの適切な保育環境について専門家からの助言を得るなどして、障害の特性や年齢等個々の状況に応じた保育に取り組んでいます。         幼稚園については、区立幼稚園では入園前に面接や行動観察を行い、入園が可能かどうかを判断し、子どもに適した環境での受け入れを行っています。教諭等は配慮の必要な子どもへの接し方等について専門家からの助言を得るなどして、障害の特性や年齢等個々の状況に応じた幼児教育に取り組んでいます。私立幼稚園でも配慮が必要な子どもを受け入れており、区では、心身障害児を受け入れている私立幼稚園を対象に、教職員人件費等の補助等受け入れ環境の整備への支援を行っています。         医療的ケア児については、平成29年度より区立保育園にて受け入れを行っています。今後も子どもの状況に応じた適切な受け入れ体制や緊急時の対応等を個別に検討していきます。         今後においても関係機関の連携により、集団生活が可能な配慮を必要とする子どもの受け入れ環境の整備に向けての取組みを進めていきます。      b.放課後児童健全育成事業(すまいるスクール)         すまいるスクールは、放課後や土曜日、夏休み等の長期休業日に、小学校・義務教育学校前期課程に就学している児童に対して、学習や遊び、スポーツができる場を提供するものです。  希望する児童が自由に参加し、活動できる居場所となっており、特別支援学級の児童や特別支援学校の児童等を「特別支援児童」として受け入れています。今後も配慮を必要とする児童に適切に対応するために、職員の障害に対する理解を促進するとともに、特別支援児童の利用状況に応じた従事スタッフの加配に努めていきます。 (脚注) (62) 特別支援学校 特別支援学校とは、心身に障害のある児童・生徒に対し、幼稚園・小中学校・高等学校に準ずる教育を行い、障害による学習上または生活上の困難を克服するために必要な知識・技能などを養うことを目的とした学校です。区内には都立品川特別支援学校があります。 ■ 図表3-7 子ども・子育て支援等における障害児の利用ニーズを踏まえた見込量 保育所の利用ニーズを踏まえた必要な見込量は399人、定量的な目標(見込み)は、平成30年度322人、平成31年度354人、平成32年度399人。 認定こども園の利用ニーズを踏まえた必要な見込量は26人、定量的な目標(見込み)は、平成30年度24人、平成31年度24人、平成32年度26人。 放課後児童健全育成事業(すまいるスクール)の利用ニーズを踏まえた必要な見込量は408人、定量的な目標(見込み)は、平成30年度389人、平成31年度397人、平成32年度408人。 必要な見込量については平成32年度の見込量を設定しています。 ■ 図表3-8 医療的ケア児の保育園等希望者数 保育園希望者5人、幼稚園希望者1人、認定こども園希望者1人。 (平成29年10月1日現在、単位:人)      B 障害児を育てる保護者のための子育て支援の充実       a.日中一時支援事業や短期入所等預かり事業の充実         障害児を育てる保護者の就労率の高まりや、障害児を抱えているがゆえに兄弟姉妹への保護者の子育てに影響を与えているケース、障害児以外にも被介護者を抱えて子育て・介護負担が増しているケースが顕在化しており、預かり事業のニーズは増加しています。短期入所や日中一時支援事業等の預かり事業の充実を図ります。         平成31年度開設の(仮称)品川区立障害児者総合支援施設では、短期入所および日中一時支援事業において障害児の受け入れを行います。       b.居宅系サービスの充実         障害児を育てながら在宅生活を送る上では、子育ての難しさや成長過程の中で子どもの変化に苦労している家族が多く、子どもと向き合うための在宅支援の充実について検討していきます。社会参加を目的とした移動支援事業の対象者を小学校4年生からに拡大する等、自立に向けて、社会体験増加のための取組みを進めます。       c.障害児を育てる保護者同士のつながりの強化、親育ちのための支援         障害児を育てる保護者には、互いに寄り添うことのできる理解者の存在が重要です。同じ障害を持つ子の保護者同士のつながりや交流を通して保護者が孤立感を無くし、子育てに前向きになるケースは少なくありません。親の会等との連携を組み入れた地域で障害児を育てる体制づくりを検討していきます。