○品川区公契約条例
令和6年12月6日条例第56号
品川区公契約条例
(目的)
第1条 この条例は、品川区(以下「区」という。)における公契約に関し、基本方針ならびに区および受注者の責務を定め、公契約に係る入札、契約等の適正化および労働者等の適正な労働環境の整備を推進することにより、公契約の適正な履行および良好な品質の確保を図り、もって持続可能な社会の実現、地域経済の活性化および区民の福祉の増進に寄与することを目的とする。
(定義)
第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(1) 公契約 区が締結する工事、製造その他の請負契約、業務委託契約および地方自治法(昭和22年法律第67号)第244条の2第3項に規定する公の施設の管理に関する協定(以下「指定管理協定」という。)をいう。
(2) 受注者 区と公契約を締結する者をいう。
(3) 受注関係者 次に掲げる者をいう。
ア 区以外の者から公契約に係る業務の一部を請け負い、または受託する者(次号イに掲げる者を除く。)
イ 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和60年法律第88号)第2条第3号に規定する労働者派遣事業として、受注者またはアに掲げる者に次号アに掲げる者を派遣する者
(4) 労働者等 次に掲げる者をいう。
ア 受注者または受注関係者に雇用され、専ら公契約に係る業務に従事する労働基準法(昭和22年法律第49号)第9条に規定する労働者(同居の親族のみを使用する事業または事務所に使用される者および家事使用人を除く。)
イ 受注者または受注関係者との契約により、公契約に係る業務の一部を請け負い、または受託する者であって、当該業務を他の者を使用しないで行うもの
(5) 労働報酬 公契約に係る業務の対価で、次に掲げるものをいう。
ア 前号アに掲げる者がその雇用する者から得る賃金
イ 前号イに掲げる者が同号イの契約により得る収入
(基本方針)
第3条 区における公契約に係る基本的な方針は、次のとおりとする。
(1) 公契約に係る手続の透明性を確保し、公正な競争を促進すること。
(2) 談合その他の不正行為を排除すること。
(3) 受注者において労働者等の適正な労働条件の確保その他の労働環境の整備をさせること。
(4) 区内の事業者および持続可能な社会の実現に資する取組を行う事業者の受注の機会を確保するよう努めること。
(5) 公契約の適正な履行および品質の確保を図り、良質な区民サービスの提供に寄与すること。
(区の責務)
第4条 区は、前条の基本的な方針にのっとり、公契約に関する施策を総合的かつ効果的に推進しなければならない。
(受注者の責務)
第5条 受注者は、公契約を締結した者としての責任を自覚し、法令等を遵守するとともに、前条の施策に協力するよう努めなければならない。
2 受注者は、労働者等の適正な労働条件の確保その他の労働環境の整備に努めなければならない。
(適用範囲)
第6条 次条から第13条までの規定は、次に掲げる公契約について適用する。
(1) 工事または製造の請負契約でその予定価格が1件1億8,000万円以上のもの
(2) 工事または製造以外の請負契約および業務委託契約のうち、その予定価格が1件2,000万円以上のものであって、規則で定めるもの
(3) 規則で定める指定管理協定
2 前項の規定は、公契約の受注者が次に掲げる者である場合については、適用しない。
(1) 国または他の地方公共団体
(2) 他に競争相手がないことを理由として随意契約により区と公契約を締結した者
(3) 前2号に掲げる者のほか、区長が認めるもの
(労働報酬下限額)
第7条 区は、公契約において、受注者および受注関係者が労働者等(最低賃金法(昭和34年法律第137号)第7条に規定する労働者を除く。次条第1項において同じ。)に対し、区長が定める額(以下「労働報酬下限額」という。)以上の額の労働報酬(前条第1項第2号および第3号に掲げる公契約にあっては、同法第4条第3項各号に掲げる賃金を除く。以下同じ。)を支払わなければならないことを定めるものとする。
2 労働報酬下限額は、時間によって定めるものとする。
3 労働報酬が時間以外の期間または出来高払制その他の請負制によって定められている場合における当該労働報酬の換算方法は、規則で定める。
(労働報酬下限額の算出基準等)
第8条 区長は、次の各号に掲げる労働者等の区分に応じ、当該各号に定めるものその他の事情を勘案して、労働報酬下限額を算出するための基準(以下「算出基準」という。)を定めるものとする。
(1) 第6条第1項第1号に掲げる公契約に係る業務に従事する労働者等 農林水産省および国土交通省が決定する公共工事の工事費の積算に用いるための労務の単価
2 区長は、算出基準を定めようとするときは、あらかじめ、第14条第1項の品川区公契約審議会の意見を聴かなければならない。
3 区長は、算出基準に基づき労働報酬下限額を定めたときは、これを告示するものとする。
(公契約において約定する事項)
第9条 区は、公契約において、第7条第1項に規定するもののほか、
別表に掲げる事項を定めるものとする。
(労働者等の申出)
第10条 労働者等(労働者等であった者を含む。以下この条、次条第1項ならびに別表4の項および7の項において同じ。)は、労働報酬が支払われるべき日において、支払われるべき労働報酬が支払われていない場合または支払われた労働報酬の額が労働報酬下限額を下回る場合は、区長、受注者または受注関係者(当該労働者等を雇用し、または当該労働者等と第2条第4号イの契約を締結した受注関係者に限る。)に対し、その事実を申し出ることができる。
(報告および立入調査)
第11条 区長は、前条の規定による申出があったときまたはこの条例の規定に基づき約定する事項の遵守の状況を確認するため必要があると認めるときは、受注者もしくは受注関係者に対し必要な報告を求め、またはその職員に受注者もしくは受注関係者の事業所等へ立ち入り、労働者等の労働条件が分かる書類その他の物件を調査させ、もしくは関係者に質問させることができる。
2 前項の規定により事業所等へ立ち入り、調査または質問(以下これらを「立入調査」という。)を行う職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があったときは、これを提示しなければならない。
(是正の求め)
第12条 区長は、前条第1項の報告または立入調査の結果、受注者または受注関係者が第7条第1項または第9条の規定により公契約において約定する事項に違反をしていると認めるときは、受注者に対し速やかに当該違反を是正するために必要な措置をとるべきことを求めるものとする。
(公表)
第13条 区長は、別表10の項に定めるところにより、公契約の解除(指定管理協定に係る指定管理者の指定の取消しまたは管理の業務の全部もしくは一部の停止を含む。同項において同じ。)をした場合は、次に掲げる事項を公表することができる。
(1) 当該受注者または受注関係者の氏名および住所(これらの者が法人である場合にあっては、名称、代表者の氏名および主たる事務所の所在地)
(2) 解除をした公契約の件名
(3) 解除の原因となった違反の内容
(4) 前3号に掲げるもののほか、区長が必要と認める事項
2 区長は、前項の規定により公表を行おうとする場合は、当該受注者または受注関係者に対し、意見を述べ、証拠を提示する機会を与えるものとする。
(品川区公契約審議会)
第14条 公契約に関する施策の適正な実施を確保するため、区長の附属機関として、品川区公契約審議会(以下「審議会」という。)を置く。
2 審議会は、区長の諮問に応じて、労働報酬下限額、算出基準その他の公契約に関し必要な事項について調査審議し、答申する。
3 審議会は、次に掲げる者のうちから、区長が委嘱する委員7人以内をもって組織する。
(1) 契約、労働環境等に係る識見を有する者 3人以内
(2) 事業者団体関係者 2人以内
(3) 労働者団体関係者 2人以内
4 委員の任期は2年とし、委員が欠けた場合における後任の委員の任期は、前任者の残任期間とする。ただし、再任を妨げない。
5 委員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、同様とする。
(委任)
第15条 この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。
付 則
(施行期日)
1 この条例は、令和7年4月1日から施行する。
(経過措置)
2 第6条から第13条までおよび
別表の規定は、令和8年4月1日以後に締結する公契約について、適用する。
(品川区附属機関の構成員の報酬および費用弁償に関する条例の一部改正)
(次のよう略)
別表(第9条、第10条、第13条関係)
事項 | 定める内容 |
1 労働関係法令の遵守に関する事項 | 受注者は、第2条第4号アに掲げる者に係る労働環境の整備に関し、労働基準法その他の労働関係法令の規定を遵守しなければならないこと。 |
2 労働者等との契約条件に関する事項 | 受注者は、第2条第4号イに掲げる者と請負契約または委託契約を締結しようとするときは、労働基準法その他の労働関係法令の趣旨を尊重した内容としなければならないこと。 |
3 労働者等の継続雇用 | 受注者は、継続性のある業務に関する公契約を締結するときは、当該業務に従事する労働者等の雇用の安定ならびに当該業務の質の維持および継続性の確保に配慮し、当該公契約の締結前から当該業務に従事していた労働者等のうち希望するものを雇用するよう努めること。 |
4 労働報酬に係る受注者の連帯責任に関する事項 | 受注者は、受注関係者が労働者等に対して支払うべき労働報酬を支払わないときまたは受注関係者が支払った労働報酬の額が労働報酬下限額を下回るときは、当該受注関係者と連帯して、当該労働者等に対し、当該労働報酬に相当する額またはその差額に相当する額を支払うものとすること。 |
5 区長への報告に関する事項 | 受注者は、規則で定めるところにより、労働者等に係る労働環境の整備に関する事項を区長に報告しなければならないこと。 |
6 労働者等への周知に関する事項 | 受注者は、労働報酬下限額その他規則で定める事項を作業所等の労働者等が見やすい場所に掲示し、またはこれらの事項を記載した書面を労働者等に交付しなければならないこと。 |
7 不利益取扱いの禁止等に関する事項 | 受注者および受注関係者は、第10条の規定による申出があった場合は、誠実に対応するとともに、当該申出をした労働者等について、当該申出をしたことを理由として、解雇、請負契約の解除その他不利益な取扱いをしてはならないこと。 |
8 報告および立入調査に関する事項 | 受注者および受注関係者は、第11条第1項の規定による報告の求めおよび立入調査に応じ、協力をしなければならないこと。 |
9 約定事項の違反の是正等に関する事項 | 受注者および受注関係者は、第12条の規定による是正の求めを受けた際は、速やかに是正の措置を講じ、当該措置の内容を区長に報告をしなければならないこと。 |
10 公契約の解除に関する事項 | 区は、次のいずれかに該当する場合は、当該公契約の解除をすることができること。この場合において、区は、当該公契約の解除により受注者または受注関係者に生じた損害を賠償する責任を負わないこと。 (1) 受注者または受注関係者が第11条第1項の規定による報告の求めに応じず、または虚偽の報告を行った場合 (2) 受注者または受注関係者が立入調査を拒み、妨げ、もしくは忌避し、または立入調査に虚偽の回答を行った場合 (3) 第12条の規定による是正の求めに応じず、または是正の措置の内容について虚偽の報告を行った場合 |
11 受注者の損害賠償責任に関する事項 | 受注者は、区が10の項に定めるところにより公契約の解除をした場合において、当該解除により区に損害が生じたときは、その損害を賠償しなければならないこと。 |
12 公契約の解除に係る違約金に関する事項 | 区は、10の項に定めるところにより公契約の解除をした場合は、受注者に対し違約金の支払を求めることができること。 |
13 受注者と受注関係者との契約締結に関する事項 | 受注者は、受注関係者と公契約に係る業務について契約を締結するときは、受注関係者が当該受注者の遵守すべき約定事項について遵守することとなるよう、約定しなければならないこと。 |