#01 東海道品川宿
「旧東海道品川宿周辺まちづくり協議会」堀江新三さん ∞ 「ゲストハウス品川宿」渡邊崇志さん
堀江新三さん
Horie Shinzo
──「東海道の歴史性を活かしたまちづくり」を活動のテーマに掲げ、地元に根付いたまちづくりを実践する先駆者、「旧東海道品川宿周辺まちづくり協議会」会長であり、まちのキーマン。現在でも若手からの信望が厚い。
──昭和63(1988)年に品川宿周辺の町会、商店街、商店会が協力して設立した同協議会は、これまで地域の歴史や文化を現代に伝える活動を数多く行ってきている。平成7(1995)年には同協議会が主体となって「東海道品川宿周辺まちづくり計画書」を策定。この計画書では、人々の活動などのソフト面から、良好なまち並みの形成などのハード面までが丁寧に検討されており、当時の地域が主体となったまちづくりの取り組みとしては、完成度が高く先進的なものだった。
──平成21(2009)~25(2013)年度には、石畳舗装や電線類地中化などを実施。平成24(2012)~28(2016)年度には、旧東海道にふさわしいまち並みづくりに貢献する建築物の外観、看板、のれんなどの景観の整備を行うなど、地域が主体となって「東海道品川宿」のまちの歴史と伝統を、未来へとつないでいる。
堀江さん
(地域密着の)スーパーっていう商売だったんで、やっぱり地域で商売している、事業している人は、地域に責任があるということを青年会議所に徹底的に言われてきた。そういうことが、まちづくりの活動に入る1番のキッカケかなと思います。
──江戸時代に創業した「スーパー平野屋」でオーナーを務めていた堀江さん。 青物横丁の旧東海道沿いに位置し、常ににぎわいの中心として長年にわたり地域から親しまれていたが、平成30(2018)年に惜しまれつつも閉店。 渡邊さんが堀江さんと出会い、事業が波に乗るまでの数カ月間、アルバイトをしていたのもこの「スーパー平野屋」だ。
──平成29(2017)年、品川区が主催した「全国シティプロモーションサミット2017 in Shinagawa」では、「人・地域・世代をつなぐまちづくり 東海道品川宿」をテーマにしたセミナーを開催し、渡邊さんらとともに登壇した。
渡邊崇志さん
Watanabe Takayuki
──東海道品川宿を拠点にゲストハウスを中心とする”地域融合型”の宿泊施設「ゲストハウス品川宿」の企画・運営を行う。品川駅・羽田空港へのアクセスもよく、国内はもとより外国人旅行客にも人気の宿。国際交流と下町の風情を一緒に味わえるのが魅力で、もちつき・流しそうめんなどの季節イベントや外国人向けの日本文化体験なども開催している。
──宿場町だったこの地に宿がないことに気づき、ゲストハウスを思いついたという渡邊さん。「この地でやることで何かの意味が生まれ、発信できるはず」という思いから、宿泊業だけではなくそのノウハウを生かし、ゲストハウス開業支援や、地域に根差したおもてなしができる人材の育成も行っている。地元への熱い思いのある若者が品川に集うことで、外から見た品川の魅力・価値を再認識できるとともに、その若者たちが地元に戻り、品川の魅力・価値をつないでくれる。ゲストハウス品川宿は、コミュニケーターとしての機能も果たしているようだ。
渡邊さん
地域と融合するというコンセプトを持っていて、宿泊はシンプルにして、地域のコンテンツ(商店街・銭湯・お祭りなど)を含めて、お客様が魅力と思ってもらうような仕掛けを作る。というような感じ、地域融合ですね。
──平成29(2017)年、品川区が主催した「全国シティプロモーションサミット2017 in Shinagawa」では、「人・地域・世代をつなぐまちづくり 東海道品川宿」をテーマにしたセミナーを開催し、堀江さんらとともに登壇した。
──お互いを一言で表現すると、どのような存在か。
渡邊さん
使い倒すべき父親みたいな像ですね。
僕以外にも、”堀江チルドレン”と呼ばれている若造がいるんですが、僕は長男ラインなんですね。
みんなが狙ってるのは堀江さんの電話帳の電話番号で、(まちのキーマンに会いたいときは堀江さんに)1回目のアポをとってもらいます(笑)
あとは自分たちで頑張り、たまに報告をして、ごはんを食べて、汗を流して返す、という親父的な感じです。
かつ、一緒に遊ぶ相手でもあるので、半分友達、半分親父みたいな関係性を使い倒させていただいてます(笑)
堀江さん
そう言われたから言うんじゃないけど(笑)
前からずっと思っていたんだけど、こういう感じの息子が欲しいなぁって。
まぁちょっと、いい加減だけど(笑)
──お互いを「親父」と「息子」と表現したとおり、世代が離れている二人が出会ったきっかけとは。
渡邊さん
アメリカ留学のあと1年ほど外資系ホテルや浅草での外国人旅館の修業から帰ってきて、ゲストハウスをやる物件を探しているときに、知り合いの方と一回飲みに行ったんですよ。その時に「堀江君に会いに行けばいいんじゃないか~とりあえず」みたいになって、物件を探しながらとりあえず歩いてみようとした時のファーストデイがここ(品川宿交流館 本宿お休み処)で会った日なんですよ。
堀江さん
あ、そうなの? なんか準備万端で来たみたいな。すごい印象的だったよ、入ってきた時。ちゃんとネクタイして。
どっかの企業の人だなぁって思ったよ。新規ビジネスでゲストハウスを考えてるのかなと。ちょっと偉そうにさ、ビデオとか見せられて。
渡邊さん
(笑)
堀江さん
うまくいくとは思わなかったけどね(笑)
渡邊さん
(笑)
堀江さん
まぁ運もよかったけど、よく頑張ったよ、渡邊君は。
堀江さん
ゲストハウスはね、昔から品川でやりたいなぁって。
渡邊さん
あ、そうそう。なんか書いてありましたよ、「まちづくり計画書」に。
堀江さん
そうそう。
堀江さん・渡邊さん
誰がやるんだ?って(笑)
堀江さん
だから、そういう意味で、すごくゲストハウスっていうのはこのまちに…
渡邊さん
タイミングが良かったんですよね。
堀江さん
よかったよね。
──現在はそれぞれの立場で活躍されているが、活動の拠点でもあり、生活の拠点でもあるここ「品川宿」とは、二人にとってどのようなところなのだろう。
渡邊さん
僕が新しく入ってみたときの品川宿は、今までのストーリーをそのまま継続して、未来のストーリーまできれいに描けるまちづくりができる場所だと思ったんです。
宿場町だし、どんどん外国人が僕は絶対増えていくと思ったし、あとやっぱり歴史が無いところでまちづくりをやっても、絶対上手く行かないですよね。それで人とか活気が残っていて、利便性もよくて、総合的に世界で、世界中のハブとなるようなまちってそういう傾向があるんですよね。
何か、道と道が合体するところに、必ず何かこうにぎわった形跡があって、それがあんまり滞留するよりも流れていった方が面白いですよね。いろんな人が。
堀江さん
僕はね、ホント今でも驚くんだけど、こんな何にもないこのまちに、何しろ品川が好きな人が本当に多いんだよね。
渡邊さん
あっ、それは間違いない。
堀江さん
根っから好きで、なおかつ自慢してんだよね。 これ、何なんだか分からないけど、品川のことが本当に好きで、その品川が最高だと本当に心の底から思ってる人が。
渡邊さん
多いですよね、確かに。
堀江さん
すごい多い。
堀江さん
今日もここに来るまでに5人くらいの人に挨拶されて、なんか幸せなまちだなぁって思いながらここまで来たけど。
渡邊さん
確かに。
──江戸時代当時の道幅を残す東海道は、旧東海道品川宿周辺まちづくり協議会の取り組みによって趣のある景観も整備され、まちを訪れる人々に「品川宿」の歴史や魅力を伝えている。最近は、外国人も多く目にするようになった。二人が思い描くこれからのまちの姿とは。
渡邊さん
誰もやっていない変な事をするような人が来やすい土壌にしたいですよね。そういう人たちが住みやすいアパートメントとか、そういう人たちが店舗を借りやすい状況とかを作りたいなと。
堀江さん
若い子たちがいろいろやりたいことをね。あとはね、もうリタイアした人の趣味でも、釣り竿だったら釣り竿にすごい凝ってる人とか。
渡邊さん
あー、それはすごくいいですね。
堀江さん
自慢する場所みたいな。そういう人たちがたくさん来てくれる場所とか。
渡邊さん
あー、それも良いですね!
──様々な取り組みをする中で、多くの困難があったことだろう。そのような物事がうまく進まない状況をどのように克服してきたのかうかがった。
堀江さん
笑っちゃうじゃないけど…。
渡邊さん
笑っちゃうしかないですよ。
堀江さん
いつもそうだけど、みんなゲラゲラ笑ってるよなぁ。
渡邊さん
笑ってますよね。
堀江さん
個人的にどうしようもない時は、寝ちゃうね。
渡邊さん
何やってもしょうがないです。笑う、寝る、食う…ですね(笑)
道と人が交わる「東海道品川宿」
このまちは 道幅だけではなく 新しい人を受け入れる人情までも江戸時代から受け継がれている
堀江チルドレンの渡邊さんが外国人や次代のプレーヤーを受け入れ 品川の魅力を全国へとつなぐ
人のつながりがまちの元気を生み出しているのかもしれない
強い思いと温かい笑顔を持ち合わせたお二人
身近な人を大切にするからこそ 新たに入ってくる人も大切に出来るのではないだろうか
旧東海道を話しながら歩くお二人の間には このまちの未来への夢があふれていた
最後にお二人から地域で活躍されている区民の方をご紹介いただいた