#03 サインフットボールしながわ
植松 隼人さん ∞ 錦織さん
フットサルを通じて、子どもたちにコミュニケーションの大切さを伝え、
共生社会の実現に向けて取り組むお二人に話をうかがった
――「サインフットボールしながわ」を立ち上げたきっかけをうかがった。
植松さん
「サインフットボールしながわ」は2016年に発足し、今は幼稚部から高校生まで約50人が在籍しているスクールです。
「聴こえない子たちも聴こえる子たちも、一緒になって手話べりする空間を」というコンセプトがあります。
「聴こえない」という理由を作るのではなく、聴こえない人たちも聴こえる人たちも一緒になって、混ざり合ってできるんだよということを、僕たち大人がたくさんの経験と体験をさせてあげることで、聴こえる人たちと一緒に楽しめる空間を作っていきたいという想いがあります。
私自身がサッカーを始めたのが小学校5年生からで、それは耳が聴こえる友達からの誘いを受けて、当時は一般の学校で聴こえる人たちと一緒にサッカーをしていましたが、限界を感じたのがコミュニケーションです。
その壁にぶつかった時に、今の聴こえない子どもたちに同じような経験をさせるのは違うんじゃないかと感じて、僕の幼少期の苦しい経験が元となり「サインフットボールしながわ」を立ち上げるきっかけとなりました。
――コーチとしてメンバーに加わった錦織さんにスクールの様子をうかがった。
錦織さん
「サインフットボールしながわ」には昨年(2022年)にコーチとして加わりました。植松さんからお誘いを頂いて、本当に自分に務まるのかという心配もありましたが、子どもたちと関わりたいという強い気持ちがあったので参加しようと決めました。
今ではすごく楽しさを実感し、もしかすると子どもたちよりも自分自身が楽しんでいるかもしれないです。
私は手話のスキルはまだまだですが、子どもたちの話もようやく分かるようになってきたり、手話が分からなくてもコミュニケーションが取れることが分かったのでとても楽しいです。
―「サインフットボールしながわ」は“聴こえない子と聴こえる子も一緒に手話べりする空間を”をコンセプトにしたフットサルスクール。
――幼稚部(U-6)から高校生(U-18)まで年齢別に4つのカテゴリー分けをし フットサルコート品川にて毎週日曜日に活動を行っている。
――みんなで一緒に混ざりあって お互いの良さを認め合える環境を目指すことが活動の原動力になっている。
――スクールでのコミュニケーションついてうかがった。
錦織さん
普段のスクールの時の手話はちょっとずつ読み取れるようにはなったけれど、子ども同士のケンカが始まると、手話が早すぎて自分には読み取れないことが大変です。
植松さん
そう。普段から子どもたちは手話のスピードが早いけれど、ケンカになるとさらに早くなって、表現が分からなくなる。
錦織さん
フフッ(笑)
植松さん
ただ聴こえない子たちもケンカするし、聴こえる人たちと変わらないでいて欲しいという気持ちはある。
錦織さん
それは経験として?
植松さん
そう。やっぱり何事も経験しないと、普段から謝るだけのような対応では、お互いの解決方法が分からないままの状態に陥ってしまうので、そういう話をしながら解決できるような考える力を身に着けて欲しいなと思う。
僕たちコーチはそれを見て学ぶこともできるし、どうすればいい方向に持っていけるかなということは、僕たちコーチも勉強になるよね。
――お二人に今後の抱負をうかがった。
錦織さん
僕が感じていることは、誰もが諦めなくていい環境にしたいなと思っています。聴こえる、聴こえないということは関係なく、みんながやりたいと思うことを実現できる環境がいいなと思う。
僕はもともと聴こえていたので、聴こえづらくなった時には諦めや我慢する経験をしてきたので、子どもたちには諦めないで欲しいなと思う。
植松さん
聴こえる人と同じく、聴こえない人たちもチャレンジして欲しいんだよね。だからチャレンジしていくための環境は、僕たちコーチや大人が作っていかなければならないと思う。
2025年には、デフリンピック東京開催が決定しているので、区民のみんなを巻き込みたい。
もっとデフスポーツを知ってもらい、このデフリンピックを通して共生社会の実現に向けて、普段の生活からみんなが混ざり合ってもいいんだよって伝えたい。
ただ、どうやってコミュニケーションを取ったらいいか分からないので、僕たちはサッカーを通して一緒にやって、教えてあげて、スクールから帰っても一緒に遊べるんだよ、遊んでいいんだよということを、教えていけるような2025年、2030年と広がっていければいいなと思っている。