#13 屋形船
船清 伊東 堅さん ∞ 伊東 優さん
江戸の風情を後世に伝えながら
東京湾に彩りをそえる 屋形船
そんな屋形船を中心に さまざまな取り組みで
水辺の観光事業を担う お二人に話をうかがった
ーー東京の観光名所のひとつと言われる屋形船。堅さんが屋形船事業を始められたきっかけとは。
堅さん
船清は、本業として屋形船をずっとやっています。私の親父のときに品川浦で海苔の養殖をはじめ、釣り船を兼業としてやったりしていました。その後、釣り船から事業転換をして屋形船を長く経営している状態です。
ーー先代は品川海苔の養殖業を営んでいたが、東京オリンピックに向けたインフラ整備の影響もあり、1960(昭和35)年頃に釣り船業に移行した。
ーー釣り船業に移行後、いち早く強化プラスチックの高速船を導入し、その後の「釣りブーム」の先駆けとなった。釣りブームも陰りが見えた1987(昭和62)年に屋形船業へ移行。屋形船にも強化プラスチックを採用して屋形船業を牽引。
ーー時代の流れに翻弄されながらも、伊東社長の決断力とアイデアに加え、広告業での経験を生かした女将の広報活動により、苦難を乗り越えてきた。
ーー船清の代表として、事業を牽引されている堅さん。堅さんには、海と川、水辺と地域をつなげて観光事業を盛り立てていきたいという想いがあるそうだ。そんな想いから生まれた「運河クルーズ ドリーム号」についてうかがった。
堅さん
“平船”というのはフルオープンの船ですが、そういう船を利用して「運河クルーズ」をやっています。周遊する時間が約45分間で、京浜運河、勝島運河、その周辺を回ってお客さまに楽しんでいただいています。
ーー夏季・秋季限定で毎週土曜日と日曜日の11:30~17:30に天王洲発着にて1日7便運航している船清の平船「ドリーム号」。「レインボーブリッジ&運河めぐり」と題して、京浜運河などを、天王洲⇒芝浦⇒レインボーブリッジと巡るクルーズが楽しめる。およそ45分間のクルーズでは、川や海から望む街並みと景色、また大迫力のレインボーブリッジなどを存分に堪能できる。
ーー東京都で初めて、消防団によって結成された品川消防団水上特殊技能班。その発足に携わられた堅さん。水辺の災害対策にかける想いとは。
堅さん
災害や水難事故に備え、品川消防団の中で水上特殊技能班を立ち上げました。災害時における船を利用した帰宅困難者の受け入れや、水難事故からの人命救助など、品川消防署、品川消防団と一丸となって訓練を行なっています。災害時には、陸上の消火栓が使えないなど、想定外の事態も起きると予想されますので、船を利用した海水での消火活動など、さまざまな訓練を行なっております。水辺に関わる災害を各所と連携を取りながら、品川のまちを、地域を守っていけたらと思っております。
ーー船清の取締役を担いながら、ご自身の斬新なアイデアを生かして屋形船のデザインを担当し、お客様の過ごしやすい環境づくりに尽力されている優さん。優さんが取り組まれている新たな試みとは。
優さん
新しい試みとして、屋形船の発着口にミストを焚いてライトを点ければ、幻想的な雰囲気もあり、日本古来の「雲流」と言いますか、雲が薄く掛かったような状態の上に船を置くというイメージで、ミスト照明を設備させていただきました。
ーー新型コロナウイルスの影響を受け、日本中が不安と悲しみを抱える中、東京湾に浮かんだ「アリガトウ」の文字。この文字に励まされた人々が多くいたはずだ。この取り組みの仕掛け人である優さんに、想いをうかがった。
優さん
緊急事態宣言の最中ではありましたが、やはり何かしたいなという想いがありました。船がいくら密になっても人間は密ではないので、その部分でメッセージを送ることはできないか?と考えたときに作り上げたのが、あの「アリガトウ」という医療従事者へのメッセージですね。
ーー「“頑張れ”よりも、まず感謝の気持ちを伝えたい」新型コロナウイルスと闘う医療従事者へ感謝のメッセージをと、近くの豊洲大橋から女将が無線で指示を出しながら、屋形船など10隻で東京湾に「アリガトウ」の文字を浮かべた。
ーーそのほかにも、新型コロナウイルスの影響を受けて、優さんが行った取り組みについてうかがった。
優さん
それから、Light up togetherという、海辺から光を出して元気をあげようというイベントを行いました。新型コロナウイルスの影響で、結婚式を挙げられなかった新郎・新婦に乗船していただいて、光を灯してお祝いしようという企画のイベントをオンラインでやらせていただきました。
ーー頑張る人へ向けて力強くエールを贈り、水辺から日本、そして世界を明るく灯すイベント「Light up together!~希望の光を灯そう~」。舟運、イベント、飲食事業者など有志による取り組みで、オンラインによるクルーズやウェディングなどを実施している。
堅さん
新しい方法に取り組めるのは次の世代だと思うので、地域のために貢献して観光産業に取り組んでもらいたい。
優さん
IoTみたいな感じで船舶にGPSを取り付けて、そのGPSに連動させて、観光案内が外国語で出てこないかということに、今チャレンジしているんですよ。それが出来上がれば、いつでもお客さまが、観光案内が英語で聴けるという状態に持っていけるのかなと思っているんです。
ーー新型コロナウイルスの影響を受け、風評被害に悩まされた船清。そんな中、多くのお客さま方にクラウドファンディングで支えられたという。
優さん
クラウドファンディングを応援していただいた皆さま、ありがとうございました!「頑張って欲しい」「継続して欲しい」というお言葉をいただきまして、その想いに応える義務・責務がもちろんあるので、事業を続けていけるように頑張っていきたいと思います。これからも応援をよろしくお願いします。
堅さん
やっぱり、こういうふうに応援していただけるというのは力になるんですよ。皆さまに伝えていただいた言葉を、これからの事業に反映していきたいと思います。本当に、誠にありがとうございました。
時代の波を 新しいことを取り入れて乗り越えていく
水面に映る屋形船の明かりのように
色褪せない想いが そこにはあった
これからも水辺とまちをつなぐ 観光の架け橋となってほしい
最後にお二人から地域で活躍されている区民の方をご紹介いただいた。