#20 蛇窪
川崎 芳明さん(正しくは山へんに竒) ∞ 齊藤 泰之さん
近年 さまざまなイベントが開催され
盛り上がりを見せている 旧蛇窪地域
『白蛇』をキーワードに
まちの歴史と魅力を発信し
地域活性化に尽力するお二人に話をうかがった
ー川崎さんにとって旧蛇窪地域とは。
川崎さん
私は(品川)区内の豊町で生まれ育ちました。この蛇窪神社が氏神様になります。小さな頃から例大祭の際には、お神輿を担いだり、山車を引いたり、盆踊りをしたりと、とても親しみのある神社でした。
ーー地域のお祭りをはじめ、さまざまな行事に尽力されている川崎さん。地域活動に関わられるようになったきっかけについてうかがった。
川崎さん
子どもができて、中延のほうに引越しをして、そちらの地元でも餅つき大会などがありました。「午前中だけちょっとお手伝いしてください」と頼まれたことがあったんですけれども、あまりにも面白くて、夜までずっと、片付けまで手伝って、そこからいろいろな友達ができるようになってきました。
ーー地域の消防団に所属され、町会では防災防火部長も担われている川崎さん。川崎さんによると、地域活動を積極的に行うことが防災力の向上につながっているという。
川崎さん
お餅つきは、並んでもらって、配って。こういったことをすることは、避難所生活に非常によく似ているんですね。餅つき大会は、ただの遊びではなくて、実は防災力を非常に高めることができる。そして地域の人たちが知り合うことによって、気に掛けるような友達関係ができるというところでは、とても良いことだと思っています。
蛇窪神社 宮司
齊藤 泰之 さん
Saitou Yasunori
ーー蛇窪神社の宮司として、まちの歴史を大切にしながら地域全体を盛り上げてこられた齊藤さん。齊藤さんが地域活性化の取り組みを始められたきっかけとは。
齊藤さん
平成25年に父の跡を継いで、蛇窪神社の宮司に就任させていただきました。仕事柄お祭りのあとに、商店街の方々や地域の方々とお会いする機会が多いので「やはりこのまちの魅力は白蛇様ですよね。旧地名も『蛇窪』ですし、当神社に祀られている白蛇様をPRしていくのが活性化につながると、私は思います」という提案をさせていただきました。そうしたら「ぜひやろう」という機運が高まりまして地域活性化の取り組みをスタートしました。
ーー旧蛇窪地域で、現在どのような取り組みをされているのかうかがった。
齊藤さん
現在では地元の商店街で合同の蛇窪市という縁日。東急大井町線の戸越公園駅は昭和11年まで蛇窪駅だったんですね。その戸越公園駅(旧蛇窪駅)から蛇窪神社までを開運参拝コースとするなど、さまざまな取り組みをしています。
ーー二葉、豊町、戸越、西大井の一部が蛇窪村と言われていたため「蛇窪」という地名を使って地域活性化に取り組む。平成27年にはご当地キャラクター『くぼっち』が誕生。その後、旧蛇窪村のPR動画やタウンマップなどを制作した。
ーー老神温泉の大蛇みこしと岩国市の天然記念物の白蛇とともに、平成28年には全国初の『しろへびサミット』を開催した。
ーーお二人の思う旧蛇窪地域の変化とは。
川崎さん
少子高齢化が進んできて、だんだん商店街が衰退しつつあるところで、いろいろな取り組みをして、蛇窪神社にまつわる商品を商店街で販売したり、そういった活性化が行われて、古いお店が閉まると、新しいお店ができるようになってきたんですよね。蛇って脱皮してどんどん大きく成長していく、まさしくこの商店街って白蛇のように脱皮を繰り返して、新しく素晴らしいまちを作っているんじゃないかなって、私は思っています。
齊藤さん
ありがたいです。若い方にお店を出していただけると嬉しいですし、やっぱり協力したくなりますよね。
ーーこれまで、お祭りをはじめとするさまざまなイベントを企画実行されてきた中で感じた達成感や、成果についてうかがった。
川崎さん
私が子どもの頃、蛇窪神社で開催されていたのは、地域の神社らしいイベントでしたが、今は巫女舞もやるし、白蛇の戦隊ヒーローショーや、くぼっちというキャラクターもいて。いろいろなところから人が来てくれるようになりましたよね。
齊藤さん
いかに楽しさを伝えるかというのは従来通りのやり方では難しくて、変えて行かなければという中で、当時小学6年生の息子に「お父さん、子どもはね、恥ずかしがり屋なんだよ。大人たちが楽しめばいいんだ。そうしたら子どもたちは入ってくるから」と言われたことで、とことん考えてイベントを企画するようになりました。すると、子どもたちがこんなにいたのかというくらい大勢やってきて、飛び跳ねて踊って。そんな姿を見て本当に嬉しかったですね。
川崎さん
そういう工夫で活性化されていって、神社も生きるし、まちも生きてきたと思います。伝統はもちろん守っていかなきゃいけないけれど、新たに加えていくことが大切ですよね。私も子どもの頃に、地域のお祭りで楽しんだ思いがずっと残っているから、今の子どもたちに楽しんでもらいたいと思うんです。
齊藤さん
そうですね。こういった取り組みをすることによって、町会、商店街、地域のボランティア、品川区といった地域の力にありがたみを感じています。このまちの地域力や歴史を、もっと住んでいる方々に知ってもらいたいんです。
ーー常に新たな視点を持ち、まちを盛り上げてきたお二人。近年、新型コロナウイルスの影響でイベントやお祭りの開催が困難な局面もあったという。そんなお二人が今後にかける想いとは。
齊藤さん
目先のことではなく、将来を見据えて努力するというところが重要だと思うので、こういうときだからこそ、みんながまとまってひとつになって、地域のありがたさ、人のぬくもり、そういったことをつないでいけるように発信しなければと感じています。小規模でも万全な対策をとって、参加される方、地域の方々の不安に配慮しながら、ある意味、見本となれるような形でイベントを行えるような形を考えていきたいです。
川崎さん
マスクの着用や、いろいろなところでアルコール消毒をお願いしたり、一方通行を徹底するなど、安全を保ちながらイベントができるというのは素晴らしいなと思います。それから、イベントのやり方を伝承していくことが非常に重要だと思います。必ずできる日がやってきますから、次の世代への伝承、引継ぎをきちんとして、この先につなげていきたいですね。
齊藤さん
これだけ大規模な新型コロナ感染症が蔓延したあとというのは、終息後、新しい時代の幕開けになると思います。
川崎さん
新しいことをやっていくことには慣れている神社だと思っていますから、きっと新しい時代の新しいお祭りができるんじゃないかなと期待しています。
白蛇様の通る 開運のまち 蛇窪
水面に広がる 波紋のように
このまちの名も 広がっていく
弁財天前を歩く お二人の姿からは
ますます発展していく 蛇窪地域の未来が見えるようだった
最後に、お二人から地域で活躍されている区民の方をご紹介いただいた。