区長メッセージ 第4号 令和6年2月20日 令和6年度施政方針演説

更新日:令和6年2月20日

1. はじめに

 令和6年第1回区議会定例会の開会にあたり、区政運営の基本方針および施策について、所信と決意を申し述べ、議員各位ならびに区民の皆さまのご理解とご協力をお願い申し上げます。

 本年1月1日に発生した能登半島地震は、多くの方の生命や財産を一瞬にして奪い、甚大な被害をもたらしました。いまなお不自由な生活を余儀なくされる方も数多くおられます。犠牲になられた方々に深く哀悼の意を表するとともに、被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。

 品川区では、今般の震災にあたり直ちに「被災地支援本部」を立ち上げ、義援金の募集や4度にわたる輪島市への救援物資の搬送、り災証明書発行支援や被災宅地危険度判定従事のための職員派遣、被災者の公営住宅への受入等も開始したところです。今後も区民の皆さまのご協力のもと、一日も早い復興に向けて、全力で被災地への支援に取り組んでまいります。また、義援金については、「被災地に届けて欲しい」とすでに区民、そして多くの区内団体様からもお預かりしています。ありがとうございます。

区長があいさつしている様子の写真

2. 令和6年度 区政運営の基本方針

 「今日と同じ明日が来ることは当たり前ではない」能登半島地震は、私たちに多くの教訓と課題を突き付けました。首都直下地震のリスクが現実のものとして危惧される中、強い危機意識をもって、実効性のある防災対策を進めていく必要があります。

 一方、現下の社会情勢に目を向ければ、2025年には日本の人口の5人に1人が75歳以上、後期高齢者になり、介護・医療ニーズのさらなる急増が想定されます。私たちは、超高齢社会の到来を直視し、介護の担い手不足や健康寿命の延伸など、喫緊の課題に迅速に対応していかなければなりません。

 また、自殺や孤立死などを含めた社会的孤立、精神的不安を抱える人たちへの対策も重要です。

 「自らの生活に満足しているか」を問う世界幸福度調査によると、日本の幸福度は世界47位と依然として低い状況にあります。指標のひとつである「一人当たりのGDP」などは相対的に高い水準にあるものの、「人生の選択の自由度」や「寛容さ」といった指標が幸福度を押し下げています。

 誰もが生きづらさを感じたり、選択を阻まれることなく、自分の望むように生き、幸せを感じることができる社会。人がつながり、支え合うことができるやさしく寛容な社会。そうした社会をつくるために、人々の抱える不安を少しでも取り除き、未来に希望が持てる、そうした政策を打ち出していくことこそが政治や行政の責任であると考えます。

 まさに、区民一人ひとりの思いに寄り添い、「区民の幸福(しあわせ)」、すなわちウェルビーイングの視点から施策を展開していくことが求められているのです。

 世界に目を向けると、ニュージーランドでは、2019年、子どもの幸福の向上、メンタルヘルス、経済の転換などを柱とした世界初となる「ウェルビーイング予算」が編成されました。イギリスやフランス、イタリアでは「満足度・生活の質を表す指標群」、いわゆるウェルビーイングダッシュボードが政策立案に生かされるなど、ウェルビーイングを基軸とする政策展開は、既にグローバルスタンダードとなりつつあり、SDGsの次なるグローバルゴールとも言われています。

 人々の不安や不満などの「不」を解消すること。多様なニーズに応じた多様な選択肢を提示すること。それによって区民のウェルビーイングを実現したいと、私は考えています。

 「幸福(しあわせ)」を予算に。

 今般、「しながわウェルビーイング予算」を編成いたしました。

議長と区長の写真

3.令和6年度予算

(1)ウェルビーイング予算の編成について

 まず、ウェルビーイング予算の編成についてご説明いたします。

 今年度、中長期的な視点からの施策の不断の検証・見直しやアップデートを図るべく、区政の全665事業を対象とした事務事業評価を実施いたしました。事業のスクラップ・アンド・ビルドや無駄の削減を行った結果、区長選でお示しした「一般会計予算の1%、20億円」の財源を捻出することができたところです。

 この事務事業評価によって捻出された果実を「区民の幸福(しあわせ)」につながる事業に振り向ける。そのために、従前の予算編成プロセスとは別に、区民のウェルビーイング向上の観点から新たな施策等を構築すべく、編成作業を進めました。

 施策の企画立案に際しては、昨年8月に実施した全区民アンケートの調査結果を分析し、区民が「自分らしく幸せに暮らしていくために重要だと考える」、優先度の高い政策課題を「安全・安心を守る」、「社会全体で子どもと子育てを支える」、「生きづらさをなくし住み続けられるやさしい社会をつくる」、「未来に希望の持てるサステナブルな社会をつくる」の4つの領域に整理した上で、予算配分したところです。

タウンミーティングの様子の写真 タウンミーティングの資料の写真

(2)ウェルビーイングの視点からの施策展開

[1]安全・安心を守る
 まず「安全・安心を守る」です。

 区民生活の不安に直結する地震や水害などの自然災害はもとより、近年、頻発する高齢者等を狙った凶悪犯罪などから区民の命と生活を守るため、防災、防犯、感染症対策等の重点的な強化を図ってまいります。

 防災対策ですが、まず減災の取り組みとして、木造住宅の耐震診断助成の補助率を10分の10に引き上げるとともに、非木造住宅の耐震診断・補強設計の助成額についても拡充を図ることで、住宅の耐震化を加速させてまいります。さらに、小山2丁目、中延4丁目地区を整備地域不燃化加速事業の実施エリアとし、不燃化を推進してまいります。

 加えて、地震時の電気火災を予防する区独自の感震ブレーカーの設置助成および旧耐震木造住宅の除却助成の対象エリアを区内全域に拡大いたします。

 災害に備えた自助・共助の取り組み強化も肝要です。能登半島地震で顕在化したさまざまな課題を捉え、自助・共助を促す観点から、まず断水時に必須となる携帯トイレを防災ハンドブックとともに全世帯に無償配布いたします。また、マンション防災の観点から、エレベーターの閉じ込め対策として希望する共同住宅に飲料水や食料、非常用トイレ等を備えたエレベーター用防災チェアの無償提供を行います。あわせて、区としても、飲料水や食料、生活必需品の備蓄はもとより、女性視点での備蓄や避難所運営の見直し、ペット同行避難を前提とした資器材などの備蓄の強化に取り組んでまいります。また、発災時に迅速・適切に医療提供体制を構築すべく、平時より医師会など関係機関との連携強化を図ってまいります。

 加えて、地域防災力の向上に向け、幅広い世代や事業者、NPOなど多様な主体が参加する新たな共助の枠組づくりを進めてまいります。

 他方で、犯罪等のリスクから区民を守るため、住まいの防犯対策として、個人住宅への防犯カメラ・録画機能付ドアホンの設置にかかる費用助成を新たに開始いたします。

 健康の面からは、新型コロナウイルス感染症対応の検証を踏まえ、健康危機管理体制を構築すべく、健康推進部に新組織を設置いたします。また、65歳以上の高齢者のインフルエンザワクチンについて接種費用を無償化し、感染症からの不安を解消できるよう支援いたします。さらに、地域のコンビニエンスストアと連携し、AED設置場所の大幅拡充を図るなど、多角的な視点から、区民の安全・安心を守ってまいります。

病院と訓練している様子の写真 備蓄品を見学している様子の写真 AEDを使用している様子の写真
[2]社会全体で子どもと子育てを支える
 二つ目に、「社会全体で子どもと子育てを支える」についてです。

 まず、本年10月、子どもや子育てを支援する最前線の拠点として区立の児童相談所を開設すべく、その準備を加速させてまいります。地域の子どもたちを地域全体で守り育てていく。地域社会とつながり、子どもや子育てを支えていくパートナーとして、区民の皆さまのご理解、ご協力をお願いする次第です。

 また、品川区では昨年4月より、他自治体に先駆け学校給食費の無償化を実施したところですが、義務教育にかかる経済的負担の軽減を図る観点から、来年度、新たに、書道用具や絵の具、ドリルなどの副読本等、必ず授業で使う学用品、いわゆる補助教材費についても所得制限のない完全無償化を実施します。これは都内初となる取り組みであり、「子育て・教育で選ばれるしながわ」に向けた施策を加速してまいります。

 次に、保育料の負担軽減についてです。品川区では昨年4月より東京都に先駆け第2子の保育料無償化を実施したところです。来年度は、認証保育所、認可外保育施設、企業主導型保育事業についても、所得制限なしの一律給付に制度を改正し、子育て家庭の負担軽減を図ります。

 次に、乳児を育てる家庭への支援です。産後に体調不良や不安を抱える方はもとよりすべての方が心身のケアや育児サポートを受けられるよう、「産後ケア事業」の対象者や利用回数を拡充するとともに、ケアメニューの充実や自己負担を軽減します。また、他自治体に先駆けモデル実施している「未就園児の定期預かり事業」を、来年度は22施設に拡大して本格実施いたします。他児と遊ぶ経験から子どもの育ちを促すとともに、育児疲れを抱える保護者の負担軽減につなげてまいります。

 すまいるスクールにおける長期休暇中の昼食については今年度、仕出し弁当の導入につき夏休み期間中にモデル実施を行い、課題の検証を行いました。来年度は、全すまいるスクール37カ所で夏休み期間内の仕出し弁当配達を実施し、保護者の負担軽減を図ってまいります。

 次に、子どもの健康づくりについてですが、インフルエンザワクチンの接種費用助成について対象者を拡大いたします。HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンについては、女性の接種率向上に向け確実に勧奨を進めます。また、新たに男性の任意接種への助成を実施し、集団免疫の向上などを図るべく促進していきます。

 加えて、子どもを産み育てたいと望む人たちへの経済面での不安を軽減できるよう、不妊治療にかかる区独自の助成制度を新設し、安心して子どもを産み育てられる社会の実現を目指します。

子ども直動フォーラムの様子の写真 産後相談している様子の写真 子どもたちが遊んでいる様子の写真
[3]生きづらさをなくし住み続けられるやさしい社会をつくる
 三つ目に、「生きづらさをなくし住み続けられるやさしい社会をつくる」です。

 誰もが自分らしく生き生きと暮らすことができる社会を構築するため、それぞれの人が抱える「生きづらさ」を解消する取り組みを推進します。

 まず、ひとり暮らし高齢者や障害がある方の見守りを支える観点から、デジタルを活用し緊急時に事業者が駆けつける救急安否確認システムを、希望する対象区民へ所得によらず無償でサービス提供いたします。

 中等度難聴の高齢者および児童の補聴器購入費助成につきましても、所得制限を撤廃し、「聞こえ」を支援してまいります。また、18歳未満の障害児の補装具・日常生活用具の購入助成についても、国に先駆け所得制限を撤廃いたします。

 次に、福祉を支える人材の確保についてです。介護を担う職員の収入が他の業種と比較して低いこと等から人材不足が顕著となり、処遇の改善が喫緊の課題となっております。来年度、東京都が創設する予定の「介護職員等居住支援特別手当」と合わせ、介護職員・障害福祉サービス職員等に対し、区独自の手当を創設します。

 認知症施策に関しては、その早期発見を図るべく、「あたまの元気度チェック」の対象年齢を50歳に引き下げるとともに、認知症の疑いがある方への相談機能を強化すべく、新たに伴走型支援拠点を整備いたします。

 障害等により長時間の就労が難しく、働く意欲があっても就労に結びつかない方を対象とした超短時間就労の雇用の創出に向けては、来年度は就労希望者と区内企業とのマッチングを行うなど、取り組みを加速させてまいります。また、2025年のデフリンピック開催に向け、引き続きデフスポーツの啓発イベントや手話講座等を実施いたします。さらに聞こえる、聞こえないに関わらず誰もが繋がることができるよう、デジタル技術を活用して言語を「見える化」する音声翻訳表示ディスプレイを本庁舎の総合窓口に設置いたします。さまざまな取り組みを通じて共生社会の実現を目指してまいります。

 医療的ケアが必要な児童への支援としては、医療的ケア児等コーディネーターが、NICUからの在宅移行や福祉サービスの利用など、ライフステージを通じた切れ目のない支援を提供できるよう、体制整備を進めます。

 次に、子どもが抱える課題についてですが、現在の学校現場では、特別支援学級に在籍する児童生徒の増加、いじめや不登校児童生徒の増加など、多くの課題に直面しております。これらの課題に対処すべく、新たに各種施策を展開してまいります。

 文部科学省が2022年12月に発表した調査によると、通常学級に在籍する小中学生の8.8%に、学習面または行動面で著しい困難を示す発達障害の可能性があることが明らかになりました。こうした発達障害児への支援の充実に向け、来年度より全ての小学校と義務教育学校前期課程に発達障害教育支援員の配置を行います。

 次に、不登校についてですが、来年度より全区立学校に校内別室指導支援員を配置するとともに、不登校になった際の居場所や相談機関等の情報を網羅したポータルサイトの開設、メタバースを活用した不登校支援を新たに実施いたします。

 いじめ防止・対応強化の取り組みですが、まず学校においては、全児童生徒を対象とした「いじめ予防授業」や一人一台端末を活用した心の健康状態等の調査を実施いたします。また教職員向けの専門研修を、全教員向け、学校管理職およびリーダー教員向け、専門的な立場の教育者向けにそれぞれ行います。教育委員会においては、いじめに関する相談、対処が可能な法律専門家を招へいするなど体制強化を図ります。

 加えて、区長部局に設置した新組織に、新たに弁護士を配置するなど、いじめによる被害者の支援や相談体制を構築してまいります。このように、教育委員会と区長部局がそれぞれ体制強化を図りつつ有機的に連携し、いじめ防止対策に全力で取り組んでまいります。

 ストレス社会にあってその重要度を増しているメンタルヘルスに関しては、認知行動療法などに基づき心身のセルフケアの方法を習得する、こころのセルフコントロール講習を新たに実施し、心の健康増進につなげてまいります。

 また、孤独・孤立対策については、今年度、内閣府の地方版孤独・孤立対策官民連携プラットフォームの推進事業に都内初で採択され、区内の実態調査などに取り組みました。来年度は、孤独・孤立に悩む人を誰ひとり取り残さない社会の構築に向け、関係機関による協議会を設置し、区民の理解と周知を進めるためのシンポジウムを開催するなど取り組みを進めます。さらに社会的課題となっているヤングケアラーについては、今年度、コーディネーターの配置やピアサポートの実施、アンケート調査やSNSによる相談を実施しました。来年度は、新たに配食サービスや日本語が苦手な親の通院などへの通訳者の同行、学習支援やキャリア相談等の支援拡充を図ります。

 なお、誰もが自分らしく生きられる社会の実現に向け、今定例会に「品川区ジェンダー平等と性の多様性を尊重し合う社会を実現するための条例案」を提案させていただきます。来年度は、同条例の周知・啓発等を進め、多様な生き方の選択、平等な参画機会の確保等の推進に取り組んでまいります。

植松監督のこうぎの様子の写真 ジェンダー制服の様子の写真 ケアラーの様子の写真
[4]未来に希望の持てるサステナブルな社会をつくる
 四つ目は、「未来に希望の持てるサステナブルな社会をつくる」です。

 国連の研究機関が予測する100年後の地球は海面の上昇により膨大な陸地が水没し、干ばつや大雨などの災害の増大、食糧危機などにより、私たちの暮らしが根底から崩れるとされています。未来の世代が希望を持てる持続可能な社会の構築は、今を生きる私たちの使命です。

 まず、SDGsの推進に向けた取り組みです。区ではこの間も「経済」「環境」「社会」などの分野においてSDGsに関連する事業を個別に展開してきました。来年度は、産学官が連携する形で、新たにウェルビーイング・SDGs推進ファンドを創設し、ウェルビーイング・SDGsに資する地域課題の解決に向けた事業への助成を行ってまいります。

 また、今年度からモデル実施している製品プラスチックの回収については、来年度、区内全域での本格実施をスタートさせ、さらなる資源化を促進してまいります。使い捨てプラスチックの削減については、マイボトル給水スポット増設に向けた助成制度の創設やステッカー掲出による普及啓発の強化に取り組みます。さらに、屋上やベランダ等で野菜を育てる材料費等の助成を開始するとともに、3カ所目となるマイガーデンの整備など、グリーンインフラの整備に積極的に取り組んでいきます。

 人・社会・地域・環境に配慮した消費行動であるエシカル消費については、啓発イベントを開催するとともに、区内企業や団体などと連携した普及啓発を進めてまいります。

 次に、交通の脱炭素化と地域交通機能の充実についてですが、新たな交通インフラである「グリーンスローモビリティ」や「AIオンデマンド」の導入について、防災まちづくり部に新組織を設置し、区民のさらなる利便性の向上を図るべく、実証実験を進めてまいります。

 次に、地域経済の活性化についてです。東京商工リサーチの統計によると、全国の倒産件数は令和6年1月まで22カ月連続で増加し、事業継続の厳しさが増している状況にあります。中小企業に対しては、引き続き融資あっせんを行うとともに、物価高騰等の経営環境の変化に対応できるよう、販路拡大の促進や従業員の能力向上、働きがいの創出につながる人材スキルアップ支援等を行います。

 また、女性起業家にテストマーケティングの機会を提供するとともに、小中学生を対象とした起業家マインドやアントレプレナーシップを育むイベントを実施するなど、スタートアップ支援にも注力してまいります。さらに、今後の中小企業支援策について、先進自治体等の取り組みを研究するなど、中小企業センターのあり方も含め検討してまいります。

 品川の顔であり、活力の源でもある商店街に関しては、プレミアム付区内共通商品券を発行し、区内経済と消費を喚起していきます。とりわけ年度をまたいだ切れ目のない経済対策として、令和5年12月臨時会で議決いただいた「春季プレミアム付区内共通商品券」および「キャッシュレス決済を活用したポイント還元事業」も来年度の当初より実施することで、区内経済を強力に後押ししてまいります。

 次に、スポーツの力を生かしたまちの魅力発信です。令和7年3月の「しながわシティラン」開催に向け、着実に準備を進めてまいります。地域の絆を深め、品川のまちの魅力を発信するためにも、「オール品川」の力を結集し、さらに品川区を飛躍させる大会をつくりあげてまいります。女子日本代表「さくらジャパン」のパリ2024オリンピックへの出場が決定したホッケー競技に関しては、この間の区の取り組みが評価され、昨年11月、日本ホッケー協会より、「公式ホッケータウン」に認定されました。来年度は、昨年に国際友好都市30周年を迎えたオークランド市を通じてニュージーランドとのホッケー交流事業や区民参加型イベント等を開催し、ホッケーを通じたまちづくりを進めてまいります。また、区民にとって一番身近なコミュニティである町会・自治会も、まちのにぎわい向上や地域課題の解決に不可欠な存在です。町会・自治会がNPOなどの団体と協働して行う取り組みへの後押しとして、「地域力連携促進補助金」を新たに創設いたします。

 次に、人と動物が共生できる環境づくりについてです。地域猫については、これまでの町会・自治会モデル事業に加え、個人グループ単位での活動を可能とする活動協力員制度の創設や各種助成の増額を図ります。また、ドッグランについては、区内大規模公園におけるイベントでの検証事業を実施いたします。地域と行政、ボランティアなど、多様な主体の協働により、動物との共生社会づくりを進めてまいります。

 次に、品川の有する大きなポテンシャルの一つである水辺空間の利活用についてです。昨年、試行実施した舟運イベントについては、本年6月からの通年運航を目指し、東京都が実施する舟運事業などとも連携しながら、水辺の魅力向上、にぎわい創出に努めてまいります。

 ふるさと納税による区の減収額は毎年増えております。国に対して制度の抜本的な見直しを継続的に行うとともに、財源確保の観点から、地元企業等と連携し、地域資源等を活用した体験型の返礼品の開発や、多くの方から理解・共感を得られる応援プロジェクト型の事業への寄附募集等を積極的に推進してまいります。

給水スポットの様子の写真 ホッケーしている様子の写真 屋形船の様子の写真

(3)職員のアイデアや発想を活かした予算編成

 今年度、区民ニーズに近く、現場に通じる若手職員等のアイデアや柔軟な発想、自身の体験等を踏まえたアイデアを施策に生かすべく、新たに職員提案制度を創設しました。提案を行った職員自らによるプレゼンテーションを踏まえ、9事業を新たに予算化し、来年度の施策としてカタチにしていくことで、区民ニーズの具現化はもとより、職員や区組織の政策形成能力の向上を推進します。

 まず、子育て支援です。子育て家庭の育児負担の軽減と施設の利便性向上のため、乳幼児を連れた親子の利用の多い児童センター等に、液体ミルクや紙おむつ等の自販機、おむつの真空パック装置を設置します。庁舎内には、親の孤独感を軽減し、リフレッシュに繋げるため、親子で気軽に休憩できるスペースを設置いたします。また、専門のカウンセラーに相談する不妊相談事業についても、実現を図ります。

 次に、ゼロカーボンへの対応です。クリーンエネルギー自動車の利用によって地球温暖化や大気汚染の原因となる自動車の有害な排出ガスの排出量低減のため、EV庁有車シェアリングを実施いたします。

 次に、庁舎で待たせないなどの窓口サービス向上の取り組みです。区民からの問い合わせ等に的確に回答し、利用者満足度の向上を図るため、簡単なお問い合わせに答えられるようFAQやAIチャットボットの整備に向けた準備、また、コールセンター設置等の検討を組織横断的に進めます。

 次に、税外収入の確保についてです。庁舎内への有料広告の掲載、区のキャラクターのグッズ販売など、新たな発想からの税外収入確保に向けた取り組みに着手します。

 一方、建設技能者数の減少が懸念されていますが、次代の担い手である小中学生等を対象に、ゲームソフトの「マインクラフト」による区の街並みや建築物を再現する作品コンテストを開催し、建設業に興味をもつ機会を創出していきます。

 引き続き、職員の創意工夫を生かした施策展開や組織の活性化を図り、行政運営の効率化および行政サービスの向上に努めてまいります。

4.令和6年度予算の概要

 こうした新たな施策を力強く推し進めるべく、令和6年度予算は、「『区民の幸福(しあわせ)』すなわちウェルビーイングの観点から、新時代の品川を果敢に牽引する予算」として、未来を見据えた積極予算といたしました。これまで築き上げてきた財政基盤をしっかりと維持しつつ、「攻め」と「守り」のバランスを図る視点から強固で弾力的な財政運営を行い、必要な事業に大胆かつ重点的に配分を行う戦略的な予算編成を行ったところです。その結果、一般会計で前年度比プラス2.4%の2,036億5,600万円と、過去最大の当初予算案といたしました。
 
議会の様子の写真

5.おわりに

 2019年、世界初のウェルビーイング予算を編成したニュージーランドのアーダーン前首相は、「思いやり、共感、幸福という視点のもと、未来を見据えた抜本的な取り組みが重要」と世界に向けて発信しました。こうしたウェルビーイングに対する思いは、まさに、私の区政運営の目指すところでもあります。

 先行き不透明な時代にあるからこそ、一人ひとりが生きがいを感じ自分らしく暮らしていける、人としての幸せを実感できる、そんな未来をつくりたい。

 「誰もが生きがいを感じ、自分らしく暮らしていけるしながわ」の実現に向け、引き続き、全力で区政の舵取りをしてまいります。希望の持てる社会を、未来を、共につくってまいりましょう。

 以上、令和6年度における施政方針を申し述べました。議員各位ならびに区民の皆さまのご理解とご協力を重ねてお願い申し上げ、私の発言を終わります。
 ご清聴ありがとうございました。

区長と議長と局長の写真
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