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区長メッセージ 令和8年2月18日 令和8年度施政方針演説
更新日:令和8年2月24日
1.はじめに
令和8年第1回区議会定例会の開会にあたり、区政運営の基本方針について、私の所信と決意を申し述べ、議員各位ならびに区民の皆様のご理解とご協力をお願い申し上げます。区民の皆様から信任を受け、私が品川区長に就任してから3年余が経過しました。
この間、一貫して「区民の幸福(しあわせ)」、ウェルビーイングを掲げ、ここ品川から新たな社会モデルを構築、発信すべく、職員、そして区議会をはじめとする区民の皆様とともに区政を前へと進めてまいりました。心から感謝を申し上げます。
その成果は数字としても表れております。昨年度の世論調査では、区民の幸福度が令和5年の区民アンケートの結果と比べて、7.9ポイント上昇するなど、区民の幸福度は着実に向上しています。
また、昨年12月には、日本経済新聞社と日経BPによる「共働き子育てしやすい街ランキング」において、品川区が全国1位を獲得いたしました。この間の各種無償化施策に加え、「見守りおむつ定期便」、「朝の居場所」の設置といったアウトリーチやつながりを重視した施策など、皆様とともにつくりあげてきた施策体系が、今般、評価されたものと考えております。
もとより、子育て分野にとどまることなく、全世代型の社会保障、すなわち高齢者も障害者も、誰もが安心して暮らしていける施策の充実に今後とも取り組んでまいる所存です。

2.目指すべき社会像
私の目指している社会、それは「性別や障害の有無、家庭の状況などにより選択を阻まれることなく自分の望むように生き、幸せを感じられる日本」であります。変化のスピードが速く、先行きが不透明な時代だからこそ、区民の不安や不満といった「不」を取り除き、多様な選択肢を提供する。その根幹にあるのは、「自己責任の社会」からの転換であり、「弱者を救うのではなく、弱者を生まない社会」の構築であります。
病気や事故、突然の出来事で、介護や障害、貧困など困難に直面することは誰にでも起こりうることです。だからこそ、人間が自分らしく暮らしていくうえで不可欠な生活の基礎となる行政サービスをすべての人に提供する、その仕組みを築いていくことが非常に重要なのです。
この間、あらゆる人々の生活を保障し、将来の不安を取り除く新たな社会保障のあり方を提示すべく、強い想いをもって一石を投じてまいりました。
一方で、区長就任後の令和5年度から、全事務事業を対象とした聖域なき歳出改革にも取り組んでまいりました。中長期的な視点のもと、ゼロベースから各事業を検証し、その役割を終えた事業や費用対効果に見合わない事業の縮減や廃止を進めたことにより、これまでの累計で約60億円の財源を捻出することができました。
こうした取組により、令和6年度決算における財政健全化判断比率の各指標は、いずれも早期健全化基準および財政再生基準を下回っており、区の財政は健全な状態にあります。
これまでの3年間、今まで区が築き上げてきた財政基盤をしっかりと堅持しつつ、事務事業評価により生み出された財源を、ウェルビーイングの観点から区民が真に必要とする施策へと大胆かつ重点的に振り向けてきたのであります。
(1)子どもと子育てを全体で支える社会
まず、子ども・子育てにかかる施策についてです。OECDの調査によれば、日本の公的支出に占める教育費の割合は8%、対象の37か国の中で4番目に低い水準であり、加盟国の平均をも下回っています。子どもへの公的支出が少ない日本社会だからこそ、これまで「子育ての社会化」を掲げ、重点的に取り組んでまいりました。
とりわけ、これまでの3年間、一貫して推進してきたことが、所得制限のない無償化の取組、そしてアウトリーチ型支援の強化であります。
他自治体に先駆け、令和5年度から、保育・給食・医療の「子育て3つの無償化」について、いずれも所得制限を設けることなく実施いたしました。また、すべての0歳児家庭を対象として、毎月、おむつなどの子育て用品を配達すると同時に、育児の不安や悩みを伺う「見守りおむつ定期便」にも取り組みました。
令和6年度からは、絵の具やドリルなどの必ず授業で使う学用品、いわゆる補助教材費について、令和7年度からは、区立学校の標準服の購入費用や修学旅行にかかる費用についても、所得制限なく無償化してまいりました。
こうした区の先駆的な取組は、都内そして全国へと広がりを見せています。たとえば、給食費無償化は都内自治体へと波及し、令和7年1月からは都内すべての自治体で無償化がなされました。来年度からは、国が全国一律で保護者負担を軽減することとなります。学用品や修学旅行の無償化の動きも各地へ着実に広がりをみせています。
今後は、次なるステージとして、あらゆる子どもたちの体験格差を解消すべく、区有施設における18歳以下の「子ども料金」を所得制限によることなく無償化し、子どもたちの健全な育ちを支えてまいります。
孤独な子育てをなくしたい。子育てが社会から応援されていると感じられる日本にしていきたい。
その想いで、今後も、社会全体で子どもと子育てを支える「子育ての社会化」に取り組んでまいります。
(2)高齢者が安心して、いきいきと暮らせる社会
次に、高齢者にかかる施策についてです。人は誰しも年を重ね高齢者と呼ばれるようになります。人生100年時代にあって、年齢を重ねても安心して暮らしていくために、誰もが必要とするサービスを自己責任によることなく社会全体で支えていく、すなわち「社会保障」の考え方が不可欠なのです。
だからこそ、これまでの3年間で、高齢者インフルエンザワクチンの接種費用や、救急安否確認システム、終活支援サービスを所得制限なく無償化したほか、補聴器購入費用や入院中の紙おむつ代、家具転倒防止器具設置にかかる助成については所得制限を撤廃し、すべての高齢者の安心を支える取組を進めてまいりました。
また、認知症となっても住み慣れた地域で安心して暮らせるよう認知症高齢者グループホームの整備も進め、目標として掲げた100床増をまもなく達成する見込みです。
さらには、地域福祉を支える基盤としての介護人材も重要です。処遇改善のための「居住支援手当」の創設、また、政府の介護報酬改定による基本報酬引下げ分との差額を独自補填する仕組みを導入することで、高齢者が住み慣れた地域で安心した生活が送れるよう、国に先んじた独自の施策を進めてまいりました。
また、昨年夏には熱中症対策と見守り支援を組み合わせたアウトリーチ支援を実施し、高齢者の命と暮らしを守る取組を進めてきたところです。
今後は、すべての高齢者が安心して生活していくうえで不可欠な保健・医療サービスの分野における施策をさらに進めてまいります。
まず、がん検診につきましては、子宮頸がん、肺がん、大腸がんに加え、胃がん検診および乳がん検診も無償化いたします。
さらに、高齢期、特に女性に代表的な慢性疾患である骨粗しょう症の検診費用についても無償化し、骨折による寝たきりで要介護となる高齢者をひとりでも減らしてまいります。
また、地域包括支援センターについては、これまで区役所を拠点としつつ20か所の在宅介護支援センターとの連携を図ってまいりましたが、令和9年度からは各地域に直接センターを設置することとし、高齢者の地域での生活をより一層しっかりと支えてまいります。
さらに、介護認定についてです。高齢者がその状態に応じ、適切な介護サービスを受けられることは「権利」であります。介護を必要とする人が必要なサービスをしっかりと受けられる、そのような仕組みと運用を徹底してまいります。
いくつになっても、高齢者が住み慣れた地域で安心して日常生活が送れる品川区として、取組をさらに加速化してまいります。
(3)障害のある人もない人も、すべての人が共に暮らす社会
次に、障害者にかかる施策であります。いつ何時、病気をしたり、障害を抱えることとなる、そのような可能性は誰にでも存在します。
だからこそ、この3年間、障害のある人も、ない人も「権利」として等しくサービスが利用できる仕組みの充実を図ってまいりました。
まず、障害のある人も住み慣れた地域で安心して自分らしく暮らしていけるよう、障害者グループホームの整備を進めてきましたが、目標として掲げた100床増をまもなく達成する見込みです。
令和6年度からは、18歳未満のすべての障害児が支援を受けられるよう、補装具・日常生活用具・補聴器の購入助成について所得制限を撤廃したほか、保育園における医療的ケア児の受け入れや、すべての小学校・義務教育学校前期課程における発達障害教育支援員の配置、超短時間就労の促進による雇用創出などを進めてまいりました。
令和7年度からは、障害児通所支援事業にかかる利用者負担を所得制限なく無償化するとともに、その受け皿となる放課後等デイサービスの事業所の新規開設を促進してまいりました。
また、障害のある人が18歳となり生活介護サービス等に移行しても家族が就労を継続できるよう、他自治体に先駆けて、生活介護サービスの提供時間を延長する事業者に対し運営費を助成することで、いわゆる「18歳の壁」にも取り組んでまいりました。
今後は、これまでの障害者施策のさらなる充実を図ってまいります。まず、本年4月より、新たに障害者施策の司令塔機能を担う担当部長を設置し、取組を加速化してまいります。
その上で、「18歳の壁」への対応強化を図るべく、18歳以上の障害者を新たに受け入れる日中一時支援事業所に対する運営費の助成制度を創設し、障害者の居場所の確保と、家族等の負担軽減を図ってまいります。
また、すべての障害者の外出を支援し、地域での自立した生活や社会参加を促進するため、移動支援事業のヘルパーに対し、区独自の処遇改善や通学支援の加算制度を創設いたします。
さらに、障害を抱えていても日常生活を円滑に送れるよう、新たにスマートフォンやタブレットなどのICT技術を活用した機器を日常生活用具に追加いたします。
生活介護や相談支援など障害者の基礎的なサービスを支える拠点である品川区立心身障害者福祉会館については、建築から48年を迎え、今後その機能を強化することを含め、建替えに向けた本格的な検討に着手してまいります。
最後に、障害者等が安心して福祉サービスを受けられることは「権利」として保障されなければなりません。そうした観点から、公正かつ中立な立場の第三者機関が障害者等から相談を受け付け、福祉サービスの向上、改善を図る仕組み、いわゆる「福祉オンブズマン」制度を創設いたします。
誰もが障害者になりうるからこそ、障害があっても、安心して自分らしく暮らし続けられる品川区を目指し、施策の抜本的な拡充を図ってまいります。
(4)区民の暮らしと生活を守り抜く
次に、現下の様々な危機への不安から区民の暮らしと生活を守る施策についてです。○防災区民憲章の制定
初めに、防災についてです。能登半島地震から2年が経過しましたが、その後も大きな地震が後を絶ちません。あらためて、行政のみならずすべての区民が、いつ発生するかわからない災害への対応や備えを自分事として受け止め、考えていかなければなりません。
これまで区では、自助・共助の重要性について区民の意識向上を図るべく、携帯トイレの全区民配布やエレベーター用防災チェアの無償配布、さらには被災時に深刻化するトイレ問題解決のためのトイレトラックの導入など様々な施策に取り組んでまいりました。
また、昨年9月の豪雨災害では、被災された区民の皆様の生活を一日でも早く取り戻せるよう、発災直後から見舞金の支給や浸水した家屋などの消毒、災害ごみの無償回収などの支援を迅速に実施し、さらには止水板設置助成の拡充など豪雨対策の強化も進めてまいりました。
一方、昨年私は、災害時相互援助協定を結ぶ岩手県宮古市を訪れ、津波被害が大きかった田老地区で、当時を知る「学ぶ防災」のガイドの方からお話を伺いました。「最後は、ハードではなく、『人々の意識が大事だ』、それを伝えていくのが、生き残った自分の使命だ」、と強いまなざしで語られていたのがとても印象的でありました。
本年3月11日、東日本大震災から15年を迎えます。あらためて過去の震災からの教訓に学び、区民一人ひとりの防災意識を高め、公助の取組とあわせ、自助・共助の重要性を再認識し、次世代へと引き継いでいく決意について区民とともに共有すべく、「備える」「あいさつする」「伝える」「行動する」を柱に据えた「しながわ防災区民憲章」を制定してまいります。
○暑熱対策都市戦略 「シェードポリシー」の策定
次に、気候危機への対応です。深刻化する気候変動によってもたらされる自然災害は、明らかにその様相が変わりつつあり、その一つが命を脅かすほどの気温上昇であります。気候変動は世界規模で進行し、世界気象機関の報告書によれば、2024年の世界の気温は175年間の観測記録の中で過去最高を記録しました。
一方で、世界の諸都市では暑熱への対策が進んでいます。夏の気温が40度を超えるスペインのセビリアでは、都市の屋外環境を涼しく、市民が通りを快適に利用できるようにするため、シェードポリシー、いわゆる「日陰戦略」を策定し、街路への日よけの設置や植樹の推進などの対策を体系的に進めています。また、ニューヨークやシドニーでは、樹冠被覆率の拡大を数値目標に掲げ、樹木を増やす取組が進んでいます。
こうした中、東京においても気温上昇、災害級の猛暑に対応すべく都市のあり方自体を抜本的に見直していく必要があると考えます。そこで、これまでの気候変動対策とあわせて、世界の他都市の取組も参考としながら、猛暑の時代に即した新たな都市モデルを構築し、社会に発信すべく、暑熱対策都市戦略、「シェードポリシー」を策定することといたします。
○物価高騰対策
次に、物価高騰対策です。この数年にわたる物価高騰により、お米などの食料品はもとより、電気、ガスなど日常生活に必要なすべての価格が高止まっています。上がり続ける物価は、区民生活や地域経済に深刻な影響を及ぼしており、区民に最も身近な自治体として、物価高騰対策が喫緊の課題であることは論を俟ちません。
区では、昨年12月の補正予算において、国の物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金を活用し、さらに区の独自財源を上乗せし、すべての区民に対し1人当たり5,000円のギフトカードを配布することといたしました。
加えて令和8年度は、プレミアム付区内共通商品券について、紙とデジタルをそれぞれ年2回、プレミアム率20%として発行いたします。過去最大となる総額24億円の商品券を発行することにより、物価高騰に苦しむ区民を支援するとともに、地域経済を強力に下支えしてまいります。
また、区内の住宅価格高騰も大きな課題です。子育て世帯が区内での転居を断念することなく、住み慣れた地域で暮らし続けられるよう、新たに転居にかかる費用の助成制度を創設いたします。
生活保護世帯をはじめとして、物価高騰の影響を最も受けやすい住民税非課税世帯等に対しては、生命に危機が及ぶ猛暑の中でもエアコンの設置を躊躇なく行うことができるよう、購入費用および設置費用の助成を新たに開始いたします。
このほか、自治体連携についても、一言申し上げます。
昨今、いわゆる「東京一極集中」が盛んに言われております。しかしながら、東京と地方が限られたパイを奪い合うのではなく、各自治体が有するそれぞれの強みを活かし、補いあいながら、ともに発展・成長していくことが重要なのであり、人口減少下にある日本全体の地域社会の持続可能性を高めることにつながると考えます。
そうした考えの下、区長就任以降、災害時相互援助協定の締結はもとより、多くの連携自治体を自ら訪問するなど、積極的に全国自治体との連携・交流を推し進めてまいりました。
今後は、区民が連携都市へ訪問し、交流を図るための仕組みを創設するなど、都市と地方とが共に栄える、新たな自治体連携モデルを構築してまいります。
最後に、子どもたちの意見を施策に反映する取組についてです。
16歳以下の若者が、Z世代の次の「α(アルファ)世代」と呼ばれていることをご存じでしょうか。幼少期からデジタル機器に囲まれ、AIとともに育った彼らの特徴は、様々な知識や世界との接点が多い環境で育ったことから多様な価値観をもち共感力が強く、客観的に物事を捉える志向が強い傾向であるとされています。その一方で、日本経済新聞が実施したα世代へのアンケートによると、「2050年の未来の社会」について、「明るい」と答えた人が51%、一方で「暗い」と答えた人が49%と、拮抗しているという衝撃的な結果が明らかになりました。
次代を担う世代が未来に希望を持てる、そんな社会をつくるのは私たち大人の責任でもあります。だからこそ区では、「こども会議」や「中高生リバースメンター事業」において、子どもたちの柔軟な発想を大切にし、多様な意見やアイデアを集め、意見交換しながら政策へと磨き上げる取組を進めてまいりました。
令和8年度におきましては、こうした子どもたちの提言を積極的に事業化してまいります。加えて、未来を担う子どもたちが権利の主体として尊重される、そして自らの意見を表明し、自己決定できる、こうした社会を実現すべく、「こどもの権利条例」の制定に向け取り組んでまいります。

3.しなやかな社会をつくる
今からおよそ100年前の関東大震災から、第二次世界大戦の敗戦、オイルショックやバブル崩壊といった経済難、甚大な被害をもたらした東日本大震災や、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行など、我が国は幾多の国難からその都度、しなやかに立ち上がってきました。さらに戦後80年、我が国は対話を重ねながら、一貫して平和国家としての歩みを続け、唯一の被爆国としての経験を踏まえ、世界平和に貢献をしてまいりました。
紛争が絶えない不安定な国際情勢。地球の持続可能性すら危ぶまれる深刻な気候変動。生活を直撃し続ける物価高騰。先が見通しにくい、変化の激しいこの世界にあって、そんな日本だからこそ構築できる社会があるのではないでしょうか。
人生100年時代、子どもも高齢者も障害者も、誰もが将来の不安から解放され、安心して暮らしていける。
次代を担う若者も含め、今を生きるすべての人々が、将来への不安や恐怖ではなく、ここで生きていきたいと未来へ希望を抱くことができる持続可能な社会保障や経済、政治のシステムを築く。
いつ起こるか分からない自然災害への備えを着実に進めていく。
緊迫した国際情勢、唯一の正解がない時代の中で、平和国家として築いてきた国際的な信頼により世界平和に貢献する。
こうした「しなやかな社会と日本」を、今こそ未来に向けてここ品川からつくってまいりましょう。
以上、私の所信と決意を申し述べました。議員各位ならびに区民の皆様のご理解とご協力を重ねてお願い申し上げ、発言を終わります。

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