区長メッセージ 第88号 平成31年2月20日 平成31年度施政方針演説

更新日:令和元年8月15日

1.はじめに    品川区長  濱野 健

 平成31年第1回区議会定例会の開会にあたり、区政運営の基本方針及び施策について、所信と決意を申し述べ、議員各位ならびに区民の皆さまのご理解とご協力をお願い申し上げます。

平成31年度施政方針演説


2.平成31年度 区政運営の基本方針

 平成31年度は、改元も予定され、新たな時代の幕開けとも言える年であります。東京2020オリンピック・パラリンピックの開催を1年後に控え、インフラ整備や新たな事業展開など、区を取り巻く社会経済環境が、新時代に向け大きく変動する年となります。

 区は、これまで様々な変化の中で、長期基本計画の着実な実現と、その時々ごとの課題に対応した施策を実行して、区民の不幸せを減らし、幸せを増やす努力を常に続けて、成果をあげてきたところであります。

 しかしながら、全国各地における震災や風水害からの新たな教訓をはじめ、災害級とも言われる猛暑、AIなどに代表される急速な技術革新、様々な場面で問われる多様性など、これまでの計画では想定しえない課題も見出すことになりました。

 また、国政に目を向けますと、働き方改革や幼児教育の無償化など、区政に関わる施策への対応が急がれます。特に、消費税の税率改定は、区民生活に直接影響を及ぼすものであり、地域経済の状況を見ながら適確な対応が必要であります。

 東京都では、気候変動による自然災害への対応や経済力の向上など、新たな施策を掲げており、区政への影響を見極めつつ、連携しながら施策の展開をはかる必要があります。

 こうした変化を捉え、平成31年度は新たな長期基本計画を策定し、この激動の中における品川区の発展に向けた、未来への礎といたします。
 そして、新年度予算は、その先駆けとなるものとして、「にぎわい」「防災」「福祉・健康」「子育て・教育」の4分野を重点施策と位置付け強化し、区がさらに一歩前に踏み出す予算といたします。

議場内 正面 全体の様子

 

3.平成31年度予算 4つの重点施策

 それでは、4つの重点施策の主な事業についてご説明申し上げます。

(1)にぎわいの拡充 ~ 東京2020大会とそのレガシーに向けて ~

 東京2020オリンピック・パラリンピック開催まで、あと500日余りとなりました。都や組織委員会は、これまで計画してきたことを実行していく段階として、開催1年前のテストイベントの実施など、大会の開催を実感できる時期となってまいります。

 区はこれまでも「子どもたちへの夢のバトンタッチ」、「まちのにぎわいと発展」という目標を掲げ、他区に先駆けて施策展開をしてまいりました。引き続き、この好機を活かしチャレンジし続けることで、品川区の発展と後世へのレガシーにつなげてまいります。

 そのため、第一の重点施策は、東京2020大会開催を契機とした、にぎわいのさらなる拡充といたします。

 はじめに、東京2020大会の機運醸成であります。31年度は、1年前テストイベントの参加をはじめ、区や地域でのイベントも関連事業に位置付け、機運を高めてまいります。また、区の3競技応援キャラクターと観光大使シナモロールとのコラボレーションにより、その機運を一層盛り上げてまいります。パラリンピックにおきましては、区内に大使館のあるコロンビア国のボッチャ競技など、その選手団を事前キャンプに誘致いたします。さらに、区の魅力を世界にアピールし、様々な国の方々と交流できる、ホスピタリティハウスについても整備を進めてまいります。

 次に、こうした機会に、多くの方に来訪していただくためにも、観光面での魅力向上は欠かすことができません。
 特に、品川区の水辺は大きな観光資源であり、これまでも重点的に整備を行ってまいりました。31年度は、より一層スピード感を持って取り組んでまいります。具体的には、目黒川や京浜運河での橋梁や周辺のライトアップをはじめ、天王洲エリア等の桟橋のリニューアルなどを進め、水辺の魅力を来訪者に存分に楽しんでいただけるようにいたします。
 また、品川区の魅力には、歴史や文化の息吹もございます。中でも、大森貝塚は日本考古学発祥の地として名を馳せており、その発掘を行ったモース博士の用いた言葉から、「縄文」という名称が生まれたとのエピソードもございます。
 こうしたことを広くアピールするため、大森貝塚遺跡庭園の新たな活用や品川歴史館との連携事業により、多くの方に品川の歴史ロマンを感じていただきたいと思います。

 次に、地域や区民活動への支援であります。
 地域において様々な活動をしている町会・自治会は、区民に最も身近な、にぎわいの担い手でもあります。そうした町会・自治会が新たな事業を行う際に、区として助成を行い支援してまいりました。地域で新たに生まれた事業が、継続して実施されるよう、活動定着化事業補助を新設し、支援を拡充してまいります。

 次に、地域経済についてであります。
 今や産業界は、AIやIoTなど、情報通信業を中心として技術革新が進み、第四次産業革命とも言われるほど、様々な業種に影響を与えております。品川区には、そうした情報通信業が集積しており、区を代表する業態の一つになりつつあります。
 そこで、今後さらに成長が見込まれる情報通信業に対して、世界を牽引する技術に育つよう、支援を強化してまいります。具体的には、五反田バレーにおける企業連携のためのネットワーク支援をはじめ、情報通信業活性化資金の創設、ITエンジニア確保のための支援事業などを、新規に行ってまいります。
 次に、消費税の税率改定への対応であります。実施された場合は、区内中小企業や商店街ヘは直接的な影響が見込まれ、区としてもその対策が求められます。そうしたことから、商店街に対しましては、これまで実施してきているプレミアム付区内共通商品券の発行を、秋の分については3億円を5億円に増額し、さらなる消費喚起につなげてまいります。
 また、中小企業事業者には、税率改定に伴い、経営に変化が現れた場合の、対策資金融資を新設し、事業運営を支援してまいります。

施政方針演説する濱野区長


(2)防災対策 ~ 新たな課題への対応 ~

 昨年も全国各地で自然災害が猛威を振るいました。大阪や北海道での地震をはじめ、北陸地方での豪雪、西日本での豪雨や台風など、多くの被害が出たことは、まだ記憶に新しいところであります。区は、災害協定に基づく支援を行う一方、これまでの災害を教訓に、スタンドパイプの配備や帰宅困難者対策など、様々な防災対策に取り組んでまいりました。しかし、地震発生後の大規模停電やコンクリートブロック塀の倒壊など、新たに緊急対応しなければならない課題も見えてまいりました。

 そこで、第二の重点施策は防災対策とし、こうした新たな課題の解決に取り組んでまいります。

 はじめに、ブラックアウトと言われる大規模停電への対応であります。北海道胆振東部地震では、停電により、インフラが一時、機能停止の状態となりました。特に、情報入手手段である携帯電話やスマートフォンが充電できず、公共機関に充電のための長蛇の列ができるという事態となりました。
 これを教訓に、庁舎や地域センターなどの区施設や避難所等に、非常用電源の確保と携帯電話の充電器などを配備し、災害時の初動態勢の強化と情報入手手段の確保に努めてまいります。
 また、大阪府北部地震では、コンクリートブロック塀の倒壊による痛ましい事故がございました。このことから区は、施設の緊急点検を行ったほか、民間が所有する道路沿いの塀の調査や、安全化支援について、昨年補正予算のご提案をいたしました。31年度も引き続き塀の除却、軽量フェンス等の新設助成を行い、区民の安全確保に努めてまいります。
 また、地震時に通電を自動で遮断し、復電時の火災を防ぐ、感震ブレーカーでありますが、高齢者や障害者の世帯には、その補助率を上げ、設置しやすいものといたします。さらに、コンセントを差し込むだけの簡易タイプにつきましても、その機能の向上が見られることから、新たに補助対象として、普及に努めてまいります。
 一方、豪雨や台風による被害も各地で猛威を振るっております。品川区も街中を河川が流れておりますので、その対策は特に重要なことと捉えております。31年度は、立会川の老朽化した護岸パネルの改修と、溢れ出る水を遮断する防水板を下流部に新設し、浸水に備えてまいります。

(3)福祉と健康の充実 ~ 安らぎといきがいのあるまち ~

 品川区の人口は、今年1月1日現在で、総人口394,700人、うち65歳以上の高齢者は81,680人であり、高齢化率は20.7%であります。区の最新の人口推計では、20年後の2039年には、総人口が446,000人を超え、高齢者は10万人超で高齢化率も24.4%になると予想され、約4人に1人が高齢者となります。こうした将来の状況を見据え、誰もが健康でいきがいを持って、住み続けられるまちにすることが、今の私たちの使命であります。

 そこで、第三の重点施策は、福祉と健康の充実といたします。

 はじめに、いつまでも安心して住み続けるための施設整備であります。
 現在、品川児童学園を改築して、今年10月のオープンを目指し、新たに整備中の障害児者総合支援施設でありますが、この施設は、児童発達支援、障害者生活支援、地域活動支援など複数の機能を兼ね備え、障害者のライフステージに応じ、総合的、継続的に支援する施設としてまいります。
 高齢者の施設では、4月に南品川四丁目に定員81人の特別養護老人ホームを、また、11月には大井七丁目にグループホームなどの複合施設を、いずれもその開設に向け、民間事業者への支援を行ってまいります。
 その他、国家公務員宿舎・旧小山台住宅等の跡地も一部取得し、地域のにぎわいや防災機能の向上と合わせ、福祉の充実にも寄与する複合施設を検討してまいります。

 次に、高齢者の住まいについてであります。
 安心して住み続けるためには、まず住まいの確保が重要であります。特に単身高齢者は、民間賃貸住宅の入居を拒まれることもあることから、30年度より社会福祉協議会と連携して、高齢者住宅生活支援サービスを開始いたしました。31年度は、所得制限の撤廃など対象要件を拡大し、より利用しやすい事業としてまいります。
 さらに、居住支援協議会を設立し、高齢者のみならず、ひとり親の子育て世帯など、住宅確保が難しい方々の支援を、不動産事業者等の協力を得て行ってまいります。

 次に、障害者福祉であります。
 31年度は障害児者総合支援施設の開設をはじめ、その他施設や各種給付を拡充し、全体として強化を図ってまいります。特に、心身障害者福祉会館は、荏原地区の生活支援施設として位置付け、重症心身障害者の受入れ体制の充実や、新たに訪問リハビリを実施するなど、その機能の拡充を図ってまいります。
 また、相談体制の強化として、障害者の計画相談を在宅介護支援センターで行うとともに、民間事業所の増設に向けての支援も行ってまいります。

 次に、健康についてであります。
 人は、健康であってこそ活力ある生活を送ることができます。今後増々進展する高齢社会において、健康長寿であることが、活力あるまちを持続させる上で大変重要なこととなります。そのため、30年度より実施し好評をいただいております、健康ポイント事業におきまして、募集人員の拡大や計測器の増設など、事業の拡充を図ってまいります。
 また、区民が健康に生活していくためには、様々な疾病から身を守ることが大切であります。こうした観点から31年度は、検診や予防接種の充実を図り、健康面での安全と安心を強化してまいります。
 まず、今年も猛威を振るっているインフルエンザであります。これまでも高齢者に予防接種の費用を助成してまいりましたが、31年度は、学校の学級閉鎖などに見られる感染の拡大を防ぐため、小、中学生を対象に費用助成を開始いたします。また、流行性耳下腺炎につきましても、罹患による難聴など合併症を防ぐために、予防接種の費用助成をこれまでの1回から2回に拡充いたします。
 次に、風疹でありますが、これまで妊娠を希望する女性とその同居者を対象として、検査と予防接種を品川区独自で行ってまいりました。今般、国が39歳から56歳までの男性で、抗体価が低い方を対象に、3年間の定期接種化を表明したことから、区といたしましても、いち早い対応をしてまいります。
 その他、眼科検診の開始や、新生児聴覚検査の一部助成、後期高齢者を対象とした歯科健診を歯科医師会の協力のもと、フレイルチェックと合わせて実施してまいります。こうしたことにより、様々な疾病に対する予防対策を一層強化してまいります。

議場内 左側から

(4)子育て支援と教育の推進 ~ 安心の子育て・教育環境 ~

 品川区の子育て・教育施策は、これまでも他自治体に先駆けた取り組みを行い、国の制度も動かすことになった9年間の一貫教育などにより「子育てするなら品川区」などの評価もいただくようになりました。
 統計で見ましても、平成20年から9年連続で年間3,000人を超える出生数であります。また、合計特殊出生率を見ても、平成20年の0.97から平成29年には1.23となるなど、多くの方々が品川区で子を生み育てていることがわかり、これまでの施策が功を奏したものと捉えております。
 しかしながら、他自治体での痛ましい虐待の事例や経済的な事情による子育ての困難性など、この分野においても次なる課題がございます。

 こうしたことから、第四の重点施策を子育て・教育の推進として、安心して生み育てられるまちの確立を目指します。

 はじめに待機児童対策であります。
 平成22年度から緊急対策として進めてきており、平成30年度には実質的な待機児童解消を果たしたところであります。しかし、人口の増加や国の幼児教育の無償化など、今後も保育を希望する方々は益々増えるものと見込んでおり、31年4月には938人の受入拡大を行います。さらに、32年度は私立認可保育園10園の開設など、760人の受入拡大を行い、今後も保育を希望するニーズに引き続き応えてまいります。
 一方で、こうした施設が増加することで、従事職員の不足が顕在化し、職員の処遇改善が求められ、私立保育園等に関しては、その改善を図ってきたところであります。
 さらに、人材の育成にあたりましては、専門性の向上を図るため、体系的な研修制度を創設し、職員の育成を進めてまいります。
 また、区の放課後児童健全育成事業である、すまいるスクールに勤務する従事者につきましても、処遇改善に向けた具体的な対応を行うなど、事業の安定化と充実を図ってまいります。

 次に、児童相談所についてであります。
 品川区もその設置に向け、職員の採用・研修や、子供の森公園内での施設整備など、着実に準備を進めているところであります。また、児童相談の体制について、その機能の再構築と強化を進めてまいります。

 次に、子ども食堂の支援であります。
 子どもの居場所づくりや孤食対策として開設支援を行っておりますが、開催頻度や開設数などから、必要な人すべてに対応しきれていない状況でもあります。そこで、フードバンクや企業と連携し、そうした家庭に食品等を調達し、配布する「しあわせ食卓事業」を構築してまいります。この事業は、ふるさと納税やクラウドファンディングも活用しながら、困難を抱えた家庭の支援を行ってまいります。
 また、子どもすこやか医療費助成につきましては、助成範囲を高校生等の入院費も対象とすることとし、子育て世帯の医療費負担軽減につなげてまいります。

 次に、教育環境についてでありますが、学校の老朽化や就学人口の増加への対応として、現在、芳水小学校、城南小学校および幼稚園、後地小学校、鮫浜小学校、浜川小学校および幼稚園、第四日野小学校の改築を順次進めているところであります。31年度は、新たな改築に向けた調査を行ってまいります。

議場内 右側から



4.各施策を貫く基本施策と基盤整備

 これまでご紹介した重点施策を着実に実現するため、それぞれの施策を貫く基本施策と基盤整備等についてご説明申し上げます。

 はじめに、平和と人権であります。
 平成31年度は、「非核平和都市品川宣言」の35周年にあたります。平和の祭典でもあるオリンピック・パラリンピックの開催前であり、オリンピアン等にも参加いただく記念事業とし、非核平和のさらなる普及、啓発を行ってまいります。
 人権三法と言われる「部落差別解消推進法」「ヘイトスピーチ解消法」「障害者差別解消法」の施行を受け、31年度の「人権に関する意識調査」では、新たな人権課題についても取り上げ、施策に生かしてまいります。
 
 次に、協働についてであります。
 区は、基本構想において、施策を実行する上での基本理念のひとつとして「協働」ということを掲げてまいりました。これまで、区の協働の相手方である区民や大学などの団体が、地域活動を行う際の支援として、地域振興基金を活用した助成や活動拠点づくりなど、様々に取り組んでまいりました。
 新たな長期基本計画でも、協働は事業推進に向けての基本的な考えとして進めてまいります。31年度の新たな取り組みとして、各団体の活動内容を、冊子にまとめ公開をいたします。これにより、区と団体、また団体間においても、情報共有やネットワーク化がさらに進み、新たな協働が創出されていくものと期待しております。
 
 次に、基盤整備についてであります。
 区民の方々が安全で安心した生活を営むために、確実な、そして後世にも残る基盤整備を行っていくことが重要であります。

 はじめに、猛暑への対応であります。
 昨年夏の暑さは、災害級とも言われ、区としましても猛暑への備えは、急務であると考えております。そこで、特に災害時避難所となる学校体育館につきまして、全校を対象にエアコンの設置を計画的に実施し、暑さ対策を進めてまいります。
 一方、屋外での対応として、オリンピックのホッケー会場付近をはじめ、区庁舎、しながわ中央公園や大崎駅西口バスターミナルなどに、ミストの発生装置を設置し、涼しさを提供してまいります。また、民間等でミスト発生装置を設置する場合に、その補助を行い、普及も行ってまいります。

 次に、大井町のまちづくりについてであります。
 大井町は区の中心核であり、行政機能や商業エリアとして発展してまいりました。そうしたエリアの中に、広大な旧JR広町社宅跡地がございます。この活用につきまして、JRと精力的に協議を進めることで、区の中心核として相応しい新たなまちの形成が行えるよう、隣接する区有地も含め検討を進めてまいります。
 次に、区民のやすらぎと活動の場となる公園であります。その中でも、子どもたちのアイデアを生かした公園は、大変に人気が高く親しまれております。31年度は、新たなアイデアを子どもたちから得るべく、ワークショップなどを行ってまいります。
 また、おもてなしトイレ計画につきましても、大井町駅前や西大井駅、京急線駅周辺など、交通機関周辺も新たに行っていくほか、京陽公園など荏原地区の拡充も進めてまいります。

 次に、鉄道駅可動式ホーム柵の設置でありますが、現在は東急大井町線を中心に行われております。痛ましい事故が繰り返されないよう、事業の迅速化に向け鉄道事業者との連携を強めてまいります。また、区内には、延40の駅があるなど鉄道網が発達しているとともに、路線バスも充実しておりますが、一部交通機関が利用しづらいエリアもございます。こうしたエリアへの対応等のため、コミュニティバスの導入について検討を進めてまいります。
 
 次に、環境課題への対応であります。
 昨年度より、その検討を進めてまいりました体験型環境学習施設でありますが、戸越公園内に設置を予定し、環境意識の啓発や情報発信拠点として、地域とともにある施設として検討してまいります。

 次に、暮らしの安全と安心についてであります。
 地域の見守り活動において、町会・自治会や商店街が設置しております防犯カメラは、犯罪抑止の効果が非常に高いものであります。これまで区は、設置および維持管理の補助を実施してまいりましたが、設置後の故障対応は、設置主体が自ら負担しておりました。そのため、その効果を考慮して31年度から、区も新たに修理の補助を実施し、町会・自治会などの負担軽減を図ってまいります。

議場内 正面から

5.行財政改革のさらなる推進

 次に、これまでご説明申し上げました事業を進める上で、区の施策の基本的姿勢について申し上げます。

 区は、スクラップ・アンド・ビルドを基本とした、事業の見直しを行うことで、不断の行財政改革を進めてまいりました。こうした取り組みを継続することが、健全財政の維持につながっており、新規事業の立上げや必要な事業を持続的に行えるのも、この成果であると捉えております。
 長期基本計画を策定していく段階でも、ゼロベースでの視点を持ち、必要とする施策を計画化してまいります。こうした改革を進める上で、業務改善は重要な要素となります。
 区は、職員の働き方改革「しながわ~く」を行っておりますが、30年度に職員による全庁的なプロジェクトを立ち上げ、会議の進め方や事業の引き継ぎ方法、スクラップ・アンド・ビルドの共通基準といった、改善の方策をまとめております。31年度はこれらを基に実践することで、効果として示してまいります。さらに、長時間労働抑制のため、職員各自が業務の終了時間を設定した宣言カードを提示し、勤務に対する意識を高めてまいります。
 また、区立学校におきましても、スクール・サポート・スタッフの全校配置をはじめとした、教員の負担軽減に向けた取り組みを進めてまいります。加えて、AIを活用した道路の自動点検やロボットの技術を活用したRPAを導入し、自動化による業務改善も行ってまいります。
 一方で、戸籍住民課の窓口は、年々利用者が増加しており、お客さまにお待ちいただく場面もございます。そうしたことから、証明書交付窓口のリニューアルを行い、申請書作成支援システムなども導入し、混雑緩和と利便性の向上につなげてまいります。
 さらに、このようなことも背景の一つとして、老朽化して、建物の機能が時代に合わなくなってきている、区役所庁舎のあり方につきまして検討をはじめてまいります。

 次に、偏在税制についてであります。
 この課題は、法人住民税の一部国税化やふるさと納税など、区財政の根幹に関わる問題であります。区は、こうしたことに対して、区長会と歩調を合わせ、そのあるべき姿について主張をしてまいります。
 特に、ふるさと納税につきましては、区の実態や影響について、区民にわかりやすく周知するとともに、区を応援しやすい寄付の手法について、検討してまいります。
 また、地方との連携をより進め、共存共栄を図ることが、こうした課題の払拭につながるものと考えております。特別区全国連携プロジェクトをはじめ、これまでの交流都市や近年交流をはじめた、高知県や福井県坂井市などとも連携を深めてまいります。

6.平成31年度予算の概要

 このようなことから、平成31年度予算は、新たな長期基本計画の策定を前に、次なる一歩を踏み出すための、未来を見据えた積極予算といたしました。編成にあたりましては、業務執行体制を中心に、事業の委託化など内容を深く精査しながら行ったものであります。
 そして、これまで培ってまいりました基金などの財政力を十分に活用し、一般会計予算を前年度比プラス7.5%となる1,877億5,400万円と過去最大のものとし、必要な施策には積極果敢に取り組むものであります。

7.終わりに

 以上、平成31年度における施政方針を申し述べました。議員ならびに区民の皆さまのご理解とご協力を重ねてお願い申し上げ、発言を終わります。ありがとうございました。

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