平成22年度施政方針 <5つの都市像の実現に向けて>

更新日:平成22年3月3日

この3つの緊急プロジェクトを平成22年度予算の重点施策と位置づけて進めるとともに、長期基本計画で掲げる各施策も先送りすることなく積極的に推進してまいります。

だれもが輝くにぎわい都市の実現に向けて

はじめに、にぎわい都市の実現についてご説明申し上げます。
地域には様々な活動があり、町会・自治会をはじめ、ボランティアやNPOなどの社会貢献活動や、商業やものづくりなどの経済活動、または文化芸術・スポーツに親しむ活動など、いずれもが地域社会の発展に貢献しております。区民の誰もが地域社会の一員として生きがいと誇りをもって活動することで、まちににぎわいが生まれます。
こうした活動がさらに拡充するよう、区民活動が抱える課題の解決を支援してまいります。

町会・自治会
第一に、町会・自治会の支援についてであります。
昨今、地域コミュニティの希薄化が指摘されておりますが、まだまだ品川区は町会・自治会の活動が地域に根付き活発であります。その一方で加入率の停滞や担い手の固定化などの課題もあり、活動を区民に周知し、加入を促進するための支援が必要であります。
この間、パンフレットの作成やホームページの開設支援のほか、町会塾として、組織運営や会計処理の講習を行うとともに、地域コミュニティ活性化の活動助成も実施してまいりました。加入促進パンフレットは全地区で展開し、ホームページは25町会で開設されます。今後はこうしたツールを有効活用して、より活発な活動が展開できるよう支援してまいります。
また、町会・自治会の活動拠点としては、会館の存在が理想ではありますが、都市部では土地の取得は非常に困難であり、最近ではマンションなどの一室を会館として取得するケースも見られます。
そこで、会館取得助成をマンションなどの土地付建物の購入まで拡大いたしまして、上限額を引き上げます。
次に、多様な区民活動を支える取り組みについてでありますが、平成20年度に創設した地域振興基金には600万円を超える寄付が集まり、区民活動への助成に活用させていただきました。
また、活動拠点についても、既存施設の有効活用として旧八潮南小学校を区民活動交流施設としてまいります。そして、荏原第三地域センター・区民集会所の改築も進めてまいります。
産業の活性化
次に、産業の活性化についてであります。
品川区が産業のまちとして発展してきたことを考えますと、商業やものづくりの活性化はまちのにぎわいに欠かせない要素であります。
現在の厳しい経済情勢を乗り切るべく、まずは緊急経済対策に全力で取り組みますが、産業振興のための基本的な施策も積極的に進めてまいります。
商業振興については、にぎわいを創出し、集客と販売促進に結び付けるために、これまでの実績を踏まえ、にぎわい創出や活性化推進、小規模商店街の活力づくり支援などを進めてまいります。
そして、武蔵小山創業支援センターは、8月にオープンいたしまして、商業・サービス業の創業や商店街活動などの支援を行ってまいります。
また、ものづくりでは、この不況の中でも創業や新製品開発などに果敢なチャレンジをする企業を支援してまいります。
新製品・新技術への開発助成では、平成20年度に創設した環境配慮型製品開発助成において、すでに6つの製品に助成し、開発を進めており、新たなビジネスチャンスでもあることから、今後も支援を続けてまいります。
一方で、販路の開拓も重要であり、専門展示会共同出展事業を新設いたしまして、国内外の展示会出展への助成に加え、品川パビリオンによる共同出展を行うとともに、バンコク市にジェトロと連携いたしまして、ビジネスサポートセンターを設置してまいります。
さらに、中小事業者のワークライフバランスを進展させるために、事業所内育児の支援を行ってまいります。
文化芸術・スポーツの振興
次に、文化芸術・スポーツの振興についてであります。 区は、平成21年度に文化芸術・スポーツ振興ビジョンを策定いたしまして、これらの活動を通して、人々のつながりを広げ、地域の活力を高めながら、輝き続けるしながわをめざしてまいります。
そのためには質の高い文化芸術に気軽に親しめることが大切であり、区民との協働で初の品川区民芸術祭を開催いたします。
また、活動場所を求める声を多くお聞きしますが、今後も施設の複合化や学校跡地を活用しながら、環境整備に努めてまいります。具体的には、10月に五反田文化センターをオープンし、平成23年2月には八潮の区民活動交流施設を開設いたします。そして、本年9月には待望の平塚小学校跡の文化芸術・スポーツ活動拠点施設の整備に着手いたします。
都市型観光の推進
次に、都市型観光の推進については、品川区の観光資源には歴史や伝統文化、活気ある商店街など多種多様なものが存在し、新しい観光名所も生まれています。
大井町に開設されます四季劇場「夏」は文化芸術の振興だけでなく、まちのにぎわいにも貢献されますとともに、大河ドラマ「龍馬伝」は品川区の新たな魅力を広く発信してくれるものと期待しております。
こうした機運の高まりを観光まちづくりに結び付け、しながわ観光協会とタイアップしつつ、観光マップの作成や案内標識の設置など、都市型観光アクションプランを推進してまいります。

未来を創る子育て・教育都市の実現に向けて

次に、子育て・教育都市の実現についてご説明申し上げます。

子育て・親育ちの支援
子どもたちの健やかな成長のためには、成長段階にあわせた支援が必要であり、妊娠期から中高生までの段階に応じた施策を体系的に推進してまいりました。
例えば、妊娠期には妊婦の健康を第一に考え、健康診査の公費助成を14回に拡大したほか、育児への不安を解消するために、すくすく赤ちゃん訪問などの相談事業や啓発講座を充実させてまいりました。
また、就労と子育ての両立支援については、延長夜間保育や短時間保育など多様な保育を提供し、在宅子育て支援にはオアシスルームの開設や地域の子育て力を活用した施策を進めてきたところであります。
学校教育では、小中一貫教育はもとより、保幼小の連携にも取り組み、時々刻々と変化する行政課題に柔軟に対応してまいりました。
子育てについては、平成22年度は、緊急待機児童解消策に最優先で取り組んでまいりますが、在宅子育て支援、保幼小の連携、小中一貫教育の推進などの重要施策も積極的に進めてまいります。
まずは、親と子が共に育つことをめざしまして、全国に先駆け、保護者の一日保育士体験を実施し、より豊かな子育て環境をつくってまいります。
また、在宅子育て支援については、乳児との外出時に授乳やおむつ交換のスペースがないという声に応えまして、地域センターや図書館などの区有施設に加え、商店街と連携し、区内30カ所に授乳スペースなどを設置いたします。
そして、子育て支援を進めていくうえでは、地域の子育て力が大切であります。その向上のために、地域スタッフの養成講座や保育ママ制度の再構築を図ってまいります。 さらに、私立幼稚園保護者補助金についても、所得制限を緩和いたしまして、支給対象者の拡大を図ってまいります。
学校教育
次に、学校教育についてご説明申し上げます。
これまで教育改革を推進し、学校経営の改善、教員の意識改革と資質の向上に努め、公教育が担う責任を果たしてまいりました。
小中一貫教育の推進をはじめ、学校選択制、小学校での英語学習、教員の独自採用などに取り組み、今後は保幼小の連携を推進いたしまして、学力の向上と人間性の育成を図る教育を進めてまいります。
先ほどもご説明いたしましたが、小中一貫校については、4校目の荏原平塚学園が開校し、9月からは新校舎での授業が始まります。
また、都内公立学校の4校に1校で起きていると言われる小1プロブレムの対策には、就学前後の接続期教育が重要であり、保幼小連携は必要不可欠であります。そこで、保幼小連携の推進に関する検討委員会を中心に、区独自のジョイント期カリキュラムを策定し、モデル実施ののちに、公立保育園・幼稚園・小学校の全てで実施いたします。
さらに、緊急待機児童解消策のひとつである小学校を活用した5歳児の保育は、保幼小連携の実践的な取り組みでもあり、小1プロブレムの解消にも効果があると期待しております。
青少年育成
青少年育成についても、各地区委員会や青少年委員との協働により健全育成に努めてまいります。
また、子どもたちの健やかな成長のためには、平和で人権が尊重される地域社会を築くことが大切であり、人権尊重都市品川宣言のいっそうの普及に努めます。
なかでも配偶者暴力は、被害者だけでなく子どもに与える影響も大きいことから、配偶者暴力対策基本計画を策定し、地域、学校、関係機関と連携しながら未然防止に取り組んでまいります。

みんなで築く健康・福祉都市の実現に向けて

次に、健康・福祉都市の実現についてご説明申し上げます。
誰もが健やかに生きがいをもって暮らし続けることができる地域社会をつくるためには、健康・福祉の施策を効果的に展開していかなければなりません。とりわけ高齢者や障害者が、住み慣れた地域で生活するためには、地域と行政が協働して支え合うことが必要であります。
また、今後団塊の世代が高齢期を迎えることを考えますと、多様な入所・入居系施設を整備しておかなければなりません。区は、特別養護老人ホームや高齢者住宅の整備をはじめ、認知症高齢者グループホームなどの地域密着型サービス施設の整備にも積極的に取り組んでまいりましたが、今後は高齢者向け優良賃貸住宅や特定施設入居者生活介護などを活用しながら、多様な施設を整備していくことが必要であります。
そこで、平成22年度はこれまでの実績をさらに進めるとともに、将来を見据えた施策も積極的に展開してまいります。

高齢者福祉
高齢者の多様な入所・入居系施設の整備については、先ほどご説明いたしました施策のほか、認知症高齢者グループホームを大井地区など2カ所で、民間事業者を支援いたしまして、開設する予定であります。
南品川シルバーセンターは、高齢者の地域活動拠点とするため、ほっとサロン、コミュニティレストラン、介護予防拠点を併設いたしまして、8月に開設いたします。
一方で、福祉の人材確保も必要であり、訪問介護員2級資格取得助成を継続するとともに、介護職員に対する看護スキルアップ研修事業を創設いたしまして、医療ニーズにも対応できるよう能力向上を図ってまいります。
障害者福祉
第二に、障害者福祉については、地域での自立生活を支えるためのしくみを、NPO法人の専門性などを活かしながら、地域との協働でつくってまいります。
その意味では、知的障害者育成会が立ち上げたNPO法人みらいとの協働で行うふれんどりー事業は、知的障害者の自立支援に大きな役割を果たすものと考えております。
さらに、グループホームの整備も必要であり、先日開設されましたグループホーム森前に続きまして、大井地区に整備してまいります。
次に、発達障害児の自立には思春期の支援も大切でありますので、思春期サポート事業を継続し、臨床発達心理士を配置するなど充実を図ってまいります。
また、誰もが快適に暮らせるように、新馬場駅にエレベーターを3基設置するなど、やさしいまちづくりを進めるとともに、地域福祉計画を改定し、地域での支え合いのしくみなどについて検討してまいります。
健康づくり
次に、健康づくりについては、自らの健康は自分でつくることを基本に、各施策を展開してまいりました。
生活習慣病に対しては、適度な運動と規則正しい生活が大切であり、地域において健康づくりに気軽に参加できる場が必要であります。健康大学しながわには予想を超える応募があり、平成22年度はリーダー育成という視点も取り入れながら、健康づくり推進協議会と連携し、地域の健康づくりを充実させてまいります。
疾病等対策には、健康診査やがん検診が効果的であり、なかでも受診者が増えている乳がん検診については、マンモグラフィ検査の対象年齢を引き下げ、検診車を活用するなど、体制を充実させてまいりました。平成22年度も継続するほか、検診機関を増やしてまいります。
また、昨年流行しました新型インフルエンザは、沈静化しつつありますが、強毒性への変異なども予想されますことから、引き続き感染症対策に努めてまいります。
さらに、感染症には予防接種が効果的であり、平成21年度のヒブワクチン予防接種への一部助成に続きまして、平成22年度は肺炎球菌ワクチンの予防接種に対しても、65歳以上の方を対象に費用の一部を助成してまいります。

次代につなぐ環境都市の実現に向けて

次に、環境都市の実現についてご説明申し上げます。

環境
環境の問題は、私たちの生活と密接な関係にあり、区民、事業者、区がそれぞれの役割を担い、協働して省エネを意識したライフスタイルや事業活動に取り組み、地球温暖化防止に努力することが大切であります。
品川区は、CO2の排出量を平成32年度までに平成18年度比で25%削減することを目標といたしまして、区が率先して行動することはもとより、区民・事業者もCO2排出量の削減に向けて行動し、区はその取り組みを支援していくこととしております。
まずはじめに、区は率先して区有施設に環境配慮機器などを導入し、CO2排出量を削減してまいります。
具体的には、公用車に電気自動車を導入し、普及へとつなげていくとともに、電動自転車の充電に太陽光発電による充電器を活用いたしまして、CO2の削減を図り、区民にも開放してまいります。
さらに、第二庁舎3階ロビーのダウンライトをLED照明器具に交換いたします。 その他にも、しながわ水族館の照明機器を省エネ型にするなど、環境にやさしい水族館としてアピールしてまいります。
次に、区民の行動としては、CO2総排出量の約4分の1を占める家庭からの排出量を削減する取り組みがあります。そのためにエネルギー変換効率の高い給湯機器の導入に対して助成を行い、排出量削減を促進してまいります。
環境共生住宅助成については、平成21年度に助成総額を倍増いたしましたが、太陽光発電への関心の高まりと実績を踏まえまして、5倍増の1,500万円といたします。
そして、事業者の行動に対しては、次世代自動車の普及促進を図り、電気自動車やプラグインハイブリッド車の購入助成を行います。また、低公害車導入促進助成を引き続き行うとともに、省エネアドバイザー派遣制度を創設いたしまして、中小事業者の省エネ診断とアドバイスを行い、浸透を図ってまいります。
水とみどり
次に、水とみどりの豊かな都市をつくるための取り組みについてであります。
品川区は、臨海部に長い水際線を有し、水辺の資源に恵まれているものの、公園や緑地は不足しており、平成16年度の緑被率は12.7%でありました。水辺とみどりの空間は区民に憩いの場を提供するだけでなく、地域コミュニティの形成や災害時の避難場所など多様な役割を担っており、区民と協働して整備を進めてまいりました。
その努力が実り、平成21年度の調査では、緑被率は15.8%に増え、さらに東急目黒線上部の第3緑道が完成いたしますと総面積約10,000平方メートルに及ぶ3つの緑道が生まれます。そして、約15,000平方メートルの面積を有する国文学研究資料館跡の公園整備に向けて実施設計に着手いたしますので、みどりはますます増えてまいります。
また、しながわ区民公園北側ゾーンの再整備の実施設計を行い、鮫洲運動公園については子どもたちのアイディアを取り入れた改修工事を進めてまいります。
水辺空間の整備についても、新東海橋の下に桟橋を設置し、天王洲運河護岸遊歩道の連続化を図り回遊性を向上させるとともに、目黒川と立会川の水質改善を引き続き行うなど、魅力ある水辺空間づくりに努めてまいります。
そして、都市景観の形成については、地域の個性を活かしたまちづくりのために、平成22年度に景観行政団体となりまして、景観計画を策定し、魅力あるまちづくりを推進してまいります。

暮らしを守る安全・安心都市の実現に向けて

次に、安全・安心都市の実現についてご説明申し上げます。
災害や犯罪から区民を守り、安全で住みよいまちをつくるためには、地域と行政の連携・協力が必要であります。

防災対策
まず、防災対策については、これまで区有施設の耐震化を進め、都営住宅などが併設された施設を除きまして、保育園、幼稚園、児童センターは完了し、地域の避難所であります学校については、平成22年度に鈴ヶ森小学校で着工し、これをもちまして、小中一貫校の母体校と改築校を除きまして、学校の耐震化を完了させます。
また、重点密集市街地を抱えることから、災害に強い都市基盤の整備は重要な課題であり、この3年間で精力的に進め8カ所の防災広場を整備いたしました。
こうした実績を踏まえ、平成22年度は公共施設の耐震化と住宅・建築物の耐震化支援を進めてまいります。
公共施設の耐震化については、学校避難所のトイレ機能を確保する必要があることから、避難所周辺の下水道管の耐震化を東京都下水道局と共同で進めてまいります。これは23区初の取り組みであります。
そして、来庁者にご不便をかけてまいりました総合庁舎の耐震化工事も平成22年度末で竣工いたします。区営住宅、地域センター、文化センターなどの区有施設についても平成26年度までに耐震補強工事を完了させる予定であります。
さらに、滝王子通りの避難道路機能の強化に向けた取り組みも地域と連携して進めてまいります。
住宅・建築物の耐震化支援については、耐震診断が改修や建替えにつながらないといった課題がありますが、未改修物件に対する個別調査を実施し、促進させてまいります。あわせて区民に安全な居住空間を提供するために、品川シェルターの設置費用の助成を拡大いたします。
また、防災には地域の力が必要であり、各地区の総合防災訓練のほか、町会・自治会や学校避難所連絡会議ごとに自主的な防災訓練が実施されていることから、これらの地域防災力をより向上させる取り組みを進めてまいります。
地域の防災リーダーを育成するための防災アドバイザー研修や災害時要援護者避難誘導訓練には、多くの方が参加され、地域の防災力は向上しましたが、さらに地域防災スクール事業を実施いたしまして、将来の地域防災を担う人材を育成してまいります。
そして、中学校へのD級ポンプの配備もこれまでの8校に加え、4校に配備して防災力を向上させてまいります。
集中豪雨による都市型水害も重要な課題であり、排水施設や貯留管、調節池の整備を積極的に進めてまいりました。
平成21年度末には目黒川右岸排水施設整備を完了させ、さらに、平成22年度には戸越幹線中流部貯留管整備を完了させまして、区内の浸水被害を大幅に軽減させてまいります。
防犯・交通安全
一方、防犯や交通安全の取り組みも進めていかなければなりません。
防犯については、近隣セキュリティシステムをはじめ、我が町パトロールなど、地域と連携しながら進めてきたこともありまして、区内の刑法犯発生件数は年々減少しており、特に少年犯罪の件数は5年前との比較では約半減し、成果を上げております。
また、交通安全についても地域や警察署などとの連携によりまして、区内交通事故の発生件数も減少傾向にあります。
このように防犯や交通安全などについては、地道な活動を継続していくことが大切であり、今後も地域、関係機関と協働しながら進めてまいります。