区長メッセージ 第56号 平成24年2月22日 平成24年度施政方針演説

更新日:平成24年2月22日

はじめに    品川区長  濱野 健

平成24年第1回区議会定例会の開会にあたり、区政運営の基本方針および施策について、所信と決意を申し述べ、議員各位ならびに区民の皆様のご理解とご協力をお願い申し上げます。

 昨年3月11日に発生した東日本大震災は想像を絶する被害をもたらしました。多くの方の生命や財産を一瞬にして奪い、いまなお不自由な生活を余儀なくされる方も数多くおられます。この大震災で被災された皆様方に心よりお見舞い申し上げます。

 このたびの大震災による様々な事態に対し、品川区は迅速かつ的確に対処してまいりました。これも区議会をはじめ、町会、自治会、商店街などの各種団体、企業、そして区民一人ひとりのご理解とご協力によるものと深く感謝いたしております。

 さらに、タイ王国、山北町、早川町、その他多くの方々から、被災地支援にご助力を賜り、心から感謝申し上げます。
24年度施政方針演説1

平成24年度  区政運営の基本的な考え方

さて、東日本大震災は、私たちに多くの教訓と課題を残しました。
 巨大津波による壊滅的な被害は、沿岸部に位置する品川区にとりましても深刻であり、液状化現象による建物やライフラインへの影響も見過ごすことはできません。

 福島第一原子力発電所事故を原因とする電力供給不足は日常生活や経済活動に大きな影響を及ぼし、放射性物質の拡散は人々の暮らしに不安を与えました。また、交通機関のストップにより多くの方が帰宅困難となり、さらに物流ネットワークの途絶により物資の供給が停止するなど、その被害は広範かつ甚大でありました。

 現在、首都直下地震に加え、東海、東南海、南海連動地震の発生も危惧されており、あらゆる事態を想定した対応が必要であります。今回の大震災で発生した事態をそれぞれ検証し、この教訓を今後の防災対策に活かしていくことが大変重要であります。これまでの防災対策を抜本的に見直し、区民の生命と財産を守るために、実効性ある対策の構築に全力で取り組んでまいります。

 一方で、区政を取り巻く社会経済情勢は大変厳しい状況にあります。
 長期化する景気の低迷に加え、東日本大震災は、工場や倉庫の損壊、電力不足による操業停止など、様々な面で企業活動に多大なる影響を及ぼし、わが国の経済に大きな打撃を与えました。
 また、歴史的な円高は産業の空洞化の引き金になるとの指摘もあります。ものづくりと中小企業のまちである品川区としては、このような問題にもしっかりと取り組んでいかなければなりません。

 こうした社会経済情勢のもとで、区財政を取り巻く環境はますます厳しくなり、特別区民税は平成22年度の急激な落ち込み以降、平成24年度も低水準での推移と予測しており、財政調整交付金は対前年度比較で16億円の大幅減と見込んでおります。
 そこで、私は新たな視点から施策や事業を見直し、さらに行財政改革を徹底してまいります。

 平成24年度は防災対策の強化を最重点施策として、災害に強いまちづくりに全力を注ぐとともに、この3年間積極的に取り組んできました3つの緊急課題への対応を引き続き推進し、さらに長期基本計画で掲げる施策を着実に実現させてまいります。

 今後も効果的、効率的な区政運営に努め、健全財政を堅持しながら、区民が真に必要とする施策を迅速かつ的確に推進し、「輝く笑顔 住み続けたいまち しながわ」をめざし、不断の努力を重ねてまいる決意であります。
24年度施政方針演説2

平成24年度予算の最重点施策 【防災対策の強化 災害に強いまちづくり】

初めに、平成24年度の最重点施策であります防災対策の強化について、ご説明いたします。

 この大震災の教訓のひとつとして、自助、共助の大切さが改めて認識されました。
 地震発生からの行動を、時間を追って考えますと、発生直後は身の安全を守るための自助の行動が中心となり、時間の経過とともに「向こう三軒両隣」と言われる隣近所による共助へと移り、避難所生活では町会、自治会単位での地域コミュニティによる共助となります。

 自治体の役割は公的機能を果たすとともに、共助がより確かなものとなるよう支援と調整を行うことであります。自助、共助、公助のしくみを改めて検証し、区民との協働による防災対策を推進してまいります。

 こうした視点のもとで、第一に、防災対策の基本方針である「品川区地域防災計画」の改訂を進めてまいります。すでに改訂に着手し、検討しておりますが、これからまとめられる東京都地域防災計画の被害想定等をもとに、避難所や備蓄のあり方、津波高潮対策、帰宅困難者への対応などを検証し、実効性ある計画へと改訂いたします。

 次に、地域の防災力を向上するための取り組みについてであります。
 地域の防災力の基盤を支えているのは、町会、自治会の活動であります。品川区の町会・自治会は防災に対する意識が非常に高く、防災区民組織としての役割を担い、秋の総合防災訓練をはじめ、身近な地域での防災訓練も積極的に行っております。

 こうした自主的な防災活動を支援するほか、地域防災対策三者連絡会議の活動を通して企業との連携を深め、地域における共助をより強固なものとしてまいります。
 平成20年3月作成の「わが家の防災ハンドブック」は、家庭や地域が取り組むべき対策を自助、共助、公助のしくみの中で示し、あわせて地区別の課題等をまとめたものであり、平成24年度は改訂版を作成し、全戸配布いたします。

 また、地域の防災拠点であります学校避難所の機能向上は重要であり、備蓄物資の充実などを進めるとともに、地域防災リーダーの育成をはじめ、小中学校への消火ポンプの配備など、地域と一体となって積極的に取り組んでおります。しかしながら、避難所の数には限りがあり、その確保は防災対策の課題の一つとされてきました。
 先日、パークホームズ武蔵小山の管理組合と締結しました避難所提供に関する協定は、23区初の取り組みであり大変意義のあることであります。今後もこのような民間との協力、連携を進めてまいります。
 
 区民への情報発信も重要であり、防災行政無線のほか、区ホームページ、広報しながわ、ケーブルテレビに加え、昨年10月からは緊急エリアメールを、12月からはツイッターを開始するなど、多様な手法を活用した迅速かつ確実な情報発信に努めております。

 平成24年度は、防災行政無線を補完するために、発電機能付防災ラジオの購入費の一部を助成いたします。あわせて商店街の放送設備を活用した情報発信とともに、防災行政無線とケーブルテレビのL字放送の自動連動化を進めてまいります。

 次に、建物の耐震化、不燃化等への取り組みであります。
 災害に強いまちづくりを進めるためには、住宅等の耐震化や防災広場の整備は大変重要であります。
 平成23年度に住宅、建築物耐震化支援制度を改正し、無料簡易診断の導入と補強設計への助成を新設するとともに、改修工事への助成額を倍増いたしました。これらに加え、平成24年度は、第一、第二京浜国道や中原街道などの特定緊急輸送道路の沿道建築物の耐震化助成を拡充いたします。

 また、これまで密集住宅市街地の整備促進に積極的に取り組み、この3年間で17ヵ所の防災広場を整備いたしました。平成24年度は戸越四丁目と豊町三丁目の防災広場の整備を進めてまいります。さらに、今後は東京都の「木密地域不燃化10年プロジェクト」と連携し、区内木密地域の解消を重点的に推進いたします。

 平成22年度から進めてきた避難所に接続する下水道管の耐震化については、計画を2年前倒しいたしまして、残り93施設を平成25年度までに完了させてまいります。また、耐震化が完了した学校避難所の安全性をより高めるために、天井材や照明器具などの非構造部材の耐震点検を全校で実施いたします。

 今回の大震災の特徴のひとつに、沿岸部を襲った巨大津波による甚大な被害があげられます。
 東京湾における津波対策は高潮防潮堤の整備を中心に進められてきましたが、想定外の津波に対応することもこの大震災の教訓であり、津波高潮対策の検討基礎調査をもとに、区内標高検索システムを構築し、本年3月より区ホームページで公開いたします。平成24年度は、区民参加によるハザードマップの作成、企業と連携した避難施設の指定などを進めるとともに、区内500ヵ所に海抜標示板を設置いたします。

 次に、帰宅困難者への対応であります。
 大震災発生当日、都内で多くの方が帰宅困難となり、品川区でも区施設6ヵ所で受け入れ、対応にあたりましたが、帰宅困難者の問題はそもそも発生を抑制することが重要であり、しながわCSR推進協議会等を通じまして、企業備蓄や従業員の施設内待機等を引き続き働きかけてまいります。
 一方で、一時滞在施設の確保も想定しておかなければならず、そのためには地域の避難所や備蓄物資とのすみ分けを明確にしておくことが大切であり、帰宅困難者用の飲料水や毛布等の備蓄を進めてまいります。

 また、震災時の業務継続も重要であります。
 区内中小企業の業務継続につきましては、BCP策定にかかる経費の一部を助成し、中小企業の被災リスクの低減を図ってまいります。さらに区の業務継続のために総合庁舎の電源環境の再構築やインターネット回線の二重化などを進めてまいります。

 また、放射能対策といたしまして、品川区からの働きかけにより、給食牛乳の放射性セシウム検査の結果が公表されるようになりました。そして、区内放射線量の測定と学校、保育園の給食食材の放射性物質の検査を継続するとともに、測定機器の貸し出しも行ってまいります。

 こうした取り組みを積極的に推進いたしまして、区民の安全と安心を守るまちづくりの実現に努力してまいります。
24年度施政方針演説3

3つの緊急課題への継続した取り組み

 次に、3つの緊急課題への取り組みについてご説明いたします。


1 緊急経済対策

 初めに、緊急経済対策についてであります。  緊急特別支援資金融資あっ旋では、これまでに約6,500件、460億円の融資が実行され、区内中小企業の経営を支えてまいりました。

 しかしながら、中小企業の経営は依然として厳しい状況にあり、事業者などからは経営の安定化を図るための長期の融資を求める声が上がっております。  そのため、返済期間を10年以内とする経営安定化資金を新設し、中小企業の経営を支援してまいります。  なお、3年間無利子の緊急特別支援資金融資あっ旋は継続いたします。

 また、中小企業の経営基盤を支えるための取り組みも重要であります。  高い技術力を有し、チャレンジ精神旺盛な企業への新製品・新技術開発助成を積極的に推進してまいりましたが、今後はこの取り組みをさらに一歩進めまして販路開拓への支援を行ってまいります。  この助成制度等により開発・実現化された製品・技術の中から優れたものを品川ブランドとして認定し、私自らが先頭に立ちセールスに努めるとともに、区ホームページや産業ニュースなどで広く紹介し、販路拡大へとつなげてまいります。

 次に、商業振興策のひとつでありますプレミアム付区内共通商品券についても、引き続き春と秋に計6億円を発行いたします。これにより、発行総額は25億円を超え、地域経済の活性化を図ってまいります。  さらに、公共工事の前倒し発注や前払い金制度を積極的に活用し、区内中小企業の経営を支援いたします。



2 総合的な待機児童対策

 次に、待機児童対策については、この2年間で受け入れ枠を約1,100人拡大し、大きな成果をあげてまいりました。

 引き続き取り組むべき課題ではありますが、将来的な財政の負担も考慮した施策を展開していくことが重要であり、平成24年度も民間事業者による認可、認証保育所の誘致を積極的に進めてまいります。

 区独自の開設準備経費と賃貸借保育所への家賃助成は、民間事業者の誘致を促進し、認可保育園3園、認証保育所4園、あわせて定員430人の新規開設へと結びつけました。平成24年度は、認可保育園7園、認証保育所2園で定員511人の開設を予定しています。 保育ママ事業では、新たに在宅型、事業所型を各3ヵ所開設し、定員を36人拡大いたします。

 また、NPO法人との協働による子育て支援ルームは、地域密着型であり利用率も高く、好評であります。 品川地区に続き、荏原地区においても空き店舗を活用し開設いたします。 さらに、幼保一体施設については、平塚すこやか園の新規開設と二葉すこやか園のリニューアルオープンを平成25年4月に予定しております。

 以上のような待機児童対策を総合的に展開し、平成24年度は、受け入れ枠を557人拡大いたします。



3 高齢期の住まいと安心対策

 次に、高齢期の住まいと安心を守るための取り組みであります。

 品川区の将来推計人口では、高齢者は平成32年に8万人を超え、平成42年には8万5千人に達し、高齢化率は24%になると予測しており、高齢化への対応は、計画的に取り組まなければなりません。とりわけ入所、入居系施設の整備は重要であります。

 そのため、学校施設跡を活用した特別養護老人ホーム等の整備を進め、平成23年5月開設の八潮南に続き、平成26年度には杜松小学校跡に開設する予定であります。

 また、西中延区営住宅の建て替えに伴い、併設する平塚橋会館を区内10ヵ所目となる特別養護老人ホーム等複合施設として整備いたします。定員は100人規模とし、平成27年度の開設をめざし、基本設計を進めてまいります。 なお、併設する平塚橋シルバーセンターについては、より多くの方にご利用いただけるよう区有施設の有効活用の観点から、施設名称も含めたあり方検討を進めてまいります。

 高齢者住宅の整備については、介護と医療のサービス提供と見守り機能を付加した大井林町高齢者住宅の入居が本年6月より始まります。

 一方で、高齢者の在宅生活を支えるための取り組みも引き続き推進してまいります。 町会、自治会による見守り活動は着実に定着し、現在は23団体が活動しております。こうした取り組みを円滑にするため、活動助成を2年間延長いたします。 さらに、高齢者世帯の安全・安心を守るために、火災警報器付リズムセンサーの設置を推進するとともに、家具転倒防止器具の設置助成の対象を拡大してまいります。



以上が平成24年度の最重点施策である防災対策の強化と3つの緊急課題への取り組みであります。

24年度施政方針演説4

24年度予算 長期基本計画の着実な実現

次に、長期基本計画の取り組みについて、新規および拡充する事業を中心にご説明いたします。


1 だれもが輝くにぎわい都市

 初めに、「だれもが輝くにぎわい都市」についてであります。このたびの東日本大震災では、町会、自治会を中心とする地域コミュニティが被災者支援の大きな力となりました。こうした地域のつながりは日常のコミュニケーションや様々な地域活動の積み重ねを通して生まれます。

 区内では町会、自治会をはじめ、NPOや企業による社会貢献活動など、多様な地域活動が活発に展開されており、こうした活動を積極的に支援してまいりました。 特に、この間、区民の自主的な活動を支えるための基盤整備を進め、荏原第3地域センターは定員100人の集会室を併設し8月から、荏原第5地域センターは豊葉の杜学園との複合施設となり、下神明駅前に移転し9月から、新たに業務を開始いたします。

 また、町会、自治会の自主的な活動を支える会館は、震災時には地域の避難としても機能いたします。 このたびの大震災を契機に新設した会館の耐震診断・補強設計への助成に加え、耐震改修に対する助成要件を緩和いたします。

 次に、産業振興についてであります。昨今の厳しい社会経済情勢のなか、中小企業が競争に勝ち残るためには、優秀な人材の確保と育成が重要であります。

 そこで、就業支援への取り組みに大きく踏み出すことといたします。 「品川区就業センター」の開設は、その第一歩であり、就業支援を推進するための専任組織を新設し、ハローワークを誘致いたしまして、総合的な就業支援施策を積極的に展開してまいります。 区独自施策としては、専門家によるセミナーや個別相談会の開催、求人情報の共同発信などを進め、中小企業の人材確保を支援してまいります。 さらに生活保護受給者や母子家庭への就労支援との連携を図るとともに、サポしながわを就業センターに移転させ、シルバー世代の就労支援を強化するなど、実効性ある就業支援施策を推進いたします。

 また、商店街はまちのにぎわいの源であり、高齢者や子育て世帯などの生活を支える身近な存在でもあります。 そのため、これまでの小規模商店街の活力づくり支援を検証し、さらに一歩進め、生活密着型小規模商店街元気づくり事業として、活性化を図ってまいります。

 次に、観光と国際化への取り組みについては、羽田空港の国際化を契機に、日本航空の機内誌に区の観光スポットなどの特集を掲載し、品川区の魅力を世界へと発信いたします。 区内大使館との交流も大切であり、東日本大震災やタイ王国の大洪水のときのような相互の助け合いは国際交流の原点でもあります。さらなる交流促進のための取り組みを進めてまいります。

 次に、文化芸術・スポーツ振興についてであります。平成25年3月、平塚小学校跡の文化・スポーツ活動施設がオープンいたします。 360席のホールは和の要素を取り入れ、寄席や演劇などの伝統文化の継承と発信の拠点とし、イベントホールは多様な区民活動の場とし、文化とスポーツによるまちづくりを進めてまいります。

 一方、スポーツの分野では、東京国体のハンドボール競技リハーサル大会やハンドボールフェスタなどを行い、機運を高めてまいります。

 また、区民の誰もが区の歴史に親しみを持っていただけるよう、新しい品川区史の編さんに取り組み、平成26年8月の発行をめざしてまいります。


2 未来を創る子育て・教育都市

 第2に、「未来を創る子育て・教育都市」についてであります。 区は、誰もが安心して子どもを産み育てることのできる環境を整備するとともに、子どもたちが自ら生きる力を育み、地域の一員として社会に貢献できるよう、家庭・地域・学校等と連携・協力しながら、子育て力豊かな地域社会の形成に取り組んでまいります。

 少子化や核家族化が進展するなかで、親子サロンやオアシスルームなどの在宅子育て支援策を推進し、育児への不安や孤立感の解消に努めてまいりました。 その中心的役割を担う児童センターも社会環境の変化等に伴い、役割を見直す時期に来ております。効率的な運営や今後の方向性など、児童センターのあり方検討を進めてまいります。

 また、幼児教育の充実のためのスクール・ステイ事業は、保育園児の小学校入学への不安解消だけでなく、小学校児童の心の教育にも大きな効果があることから実施園を6園拡大し、推進してまいります。

 青少年の健全育成は、活力ある地域社会の形成に不可欠であります。 地域の一員としての自覚と成長を促すため、「家庭の日」の啓発事業の推進や社会貢献活動の機会を通じて、青少年の「自立する力」を育成してまいります。

 次に、学校教育についてであります。 平成10年度より教育改革「プラン21」に取り組み、学校選択制の導入や小中一貫教育の推進、そして区固有教員の採用など、他に先駆けて教育改革を進めてまいりました。平成24年度はこの「プラン21」を新たな段階へと進め、義務教育のさらなる質の向上に努めてまいります。

 学校教育を推進するうえで大切なことは、教職員の資質や能力の向上であります。 私は、教員とは子どもたちに物事を教えるスペシャリストであり、そのためには「言葉の達人」になってほしいと考えております。 平成24年度は、区固有教員を対象とした実践的な研修等を実施し能力育成を図るとともに、メンタル面での健康維持のためにストレスチェックを行うなど、教育の質を高める取り組みを推進してまいります。また、標準授業時数の増加に対応するため土曜日授業を実施いたします。原則として第1、第3土曜日の午前授業といたしますが、地域と連携・協力しながら柔軟に実施してまいります。

 次に、教育環境の整備についてであります。 品川学園は現在校庭整備を進めており、本年9月には、全面オープンいたします。教育環境の向上に加え、少年少女のスポーツ活動等に広く開放いたしまして、地域に開かれた学校としてまいります。 なお、学校改築については、本年12月に荏原第六中学校が、平成25年2月に清水台小学校が、それぞれ竣工いたします。

 また、将来を担う子どもたちのために、平和で人権が尊重される地域社会を築くことは、私たち大人の責務であります。 平成24年度は品川区民憲章制定30周年であり、自由と平等、人権の尊重など、区民憲章の意義や精神を考えるよい機会であります。 この30周年を記念して写真コンクールなどを開催し、あらためて区民憲章の周知を図るとともに、人権尊重都市品川宣言の一層の普及に努めてまいります。


3 みんなで築く健康・福祉都市

 第3に、「みんなで築く健康・福祉都市」についてであります。 高齢者や障害のある方が住み慣れた地域で安心して暮らすためには、自助・共助・公助がそれぞれの役割を担い、連携しながら取り組むことが大切であります。

 平成24年度は第5期品川区介護保険事業計画のスタートの年であり、できる限り住み慣れた我が家で暮らすことを目標に、地域包括ケアシステムの構築と特別養護老人ホーム等の施設整備を重点課題として取り組んでまいります。 24時間対応の定期巡回・随時対応型訪問介護看護サービスの提供等による在宅支援の充実など、7つの推進プロジェクトを進めてまいります。

 また、施設整備についても杜松小学校跡や平塚橋会館を活用した特別養護老人ホーム等の整備計画や認知症高齢者グループホームの整備などを積極的に推進してまいります。

 次に、障害者福祉については、旧マイスクール八潮跡を活用し、重症心身障害者通所事業を開始いたします。看護師や理学療法士による身体機能の維持のための訓練や入浴サービスを提供するとともに、区独自事業として就学前の幼児を対象とした短時間のレスパイト事業も展開してまいります。

 また、高次脳機能障害者への支援では、これまでの専門相談に加え、地域医療コーディネーターを配置し連携することで、医療と保健福祉の両面から地域での生活を支えてまいります。

 次に、健康づくりについては、自らの健康は自分でつくるということを基本に、気軽に参加できる場の提供や生活習慣病の予防と早期発見のための取り組みを進めてまいりました。 平成24年度は各種がん検診の充実を図り、胃がんリスク検診を実施いたします。ピロリ菌抗体検査とペプシノゲン検査という血液検査により、受診者の身体的負担の軽減と検診の効率化を図ってまいります。

 また、20歳から35歳までの障害者を対象とする歯科健診を新たに実施するとともに、歯周疾患の改善指導も行いまして、障害者の口腔事情の改善に努めてまいります。

 区民の健康を守るために国保基本健診の受診率向上に取り組んできましたが、目標達成にはさらなる努力が必要であり、地域団体・企業・区の三者の協働による受診啓発プロジェクトを推進いたします。


4 次代につなぐ環境都市

 第4に、「次代につなぐ環境都市」についてであります。 環境都市の実現には、地域特性を活かしながら、自然との調和や都市の景観、さらには環境負荷の軽減に配慮したまちづくりが必要であり、品川区の持つ特性や個性を活かしたまちづくりを進めてまいります。

 初めに水辺空間の活用については、五反田ふれあい水辺広場と天王洲運河の親水性を高めるために桟橋等の整備を進めてまいります。観光資源としてだけでなく、災害時の避難や物資輸送手段のための沿岸部と内陸部を結ぶ防災拠点としても活用いたします。

 また、みどりの整備についても、区民の自主的な緑化活動等を支援するとともに、魅力ある公園づくりを進めてまいります。 国文学研究資料館跡地公園の整備も大詰めを迎え、平成25年2月に全面オープンいたします。地域の憩いの場だけでなく、災害時の広域避難場所としての防災機能の向上も図ってまいります。 さらに、旧荏原平塚中学校跡の多目的広場整備については、平成25年夏のオープンをめざし、着工いたします。

 次に、環境再生への取り組みについては、区民・事業者・行政がそれぞれの役割において、環境負荷を軽減するための行動を進めることが大切であり、普及啓発と活動支援を行ってまいりました。 平成24年度は品川区環境計画の改訂の年であり、これまでの取り組みを検証し、社会状況の変化に即応した内容へと見直しを図ってまいります。

 このたびの東日本大震災により節電への意識が高まり、品川区は昨年夏に節減目標を25%とし、区民の皆様のご協力を得ながら節電に取り組んできました。 しかしながら、電力の供給不足は依然として安心できる状況になく、継続した取り組みが必要であります。 そこで、平成24年度は商店街との協働により、節電キャンペーンや各種イベントを行い、省エネと節電の啓発を進めてまいります。

 街路灯・公園灯についても引き続き省エネ型へと建て替え、さらに人感センサー付街路灯・公園灯の実証実験を行い、省エネ効果や実用性などを検証してまいります。

 そして、清掃事業の新たな取り組みとしては、水銀式体温計・血圧計の資源回収を行い、水銀の再利用を図り、環境負荷を軽減してまいります。


5 暮らしを守る安全・安心都市

 第5に、「暮らしを守る安全・安心都市」についてであります。 安全で安心なまちづくりには、防災対策のほか、魅力的で住みやすい市街地整備や便利で安全な交通環境づくり、犯罪に強いまちづくりなど、様々な取り組みを進めていかなければなりません。

 高齢者や子育て世帯など、誰もが住みやすいまちづくりはもとより、まちの活性化や災害に強いまちづくりという視点を取り入れていくことも重要であり、これまで大井町駅や大崎駅周辺地区などにおいて市街地再開発を推進し、地域の特性を活かした魅力あるまちづくりを進めてまいりました。 平成24年度は、「品川区まちづくりマスタープラン」を策定し、区の将来像の実現に向けて、より快適で魅力あるまちづくりに取り組んでまいります。

 また、品川駅周辺のまちづくりも重要であります。 新幹線品川駅の開業や羽田空港の国際化に加え、リニア中央新幹線の始発駅となるなど、今後もさらなる発展が期待されており、国際都市東京の表玄関であります品川区の新たな拠点整備に向けて、品川駅南地域まちづくりビジョンの策定を地域と連携し進めてまいります。

 住宅施策としましては、西中延区営住宅を建て替えてまいります。現在の48戸と同規模とし、エレベーター設置などバリアフリー化を図ります。

 都市型水害等への対応も東京都と連携し、雨水流出抑制対策や排水施設の整備を進めてまいります。

 次に、交通環境の整備については、補助18号線と補助205号線2期区間の整備が完了し、平成25年4月から供用開始となります。 昨今、自転車の交通ルール無視やブレーキを取り外した自転車の走行などによる事故が多発しており、自転車安全教育の必要性が高まっております。 スタントマンを活用した安全教室に加え、年齢層別の安全教育などにも取り組んでまいります。

 次に、防犯対策については、区内警察署と締結した「品川区民の安全向上に関する協働宣言」を柱に、町会、自治会をはじめ、防犯協会等の関係団体や学校、PTAなどと連携し、犯罪件数の減少を目標に「セーフティアップ運動」に取り組んでまいりました。 こうした日々の積み重ねにより、発生件数は着実に減少しており、今後は、さらに自主的防犯活動団体である「セーフティアップパトロール隊」の活動を支援するなど、犯罪抑制をいっそう進めてまいります。


 以上が平成24年度の新規および拡充する施策についてでありますが、これらを推進するための基本姿勢についてご説明申し上げます。

24年度施政方針演説5

区政運営の基本姿勢と平成24年度予算の概要

区政運営の基本姿勢

 長引く景気の低迷や震災復興への取り組み、深刻な円高など、区政を取り巻く環境はいっそう厳しさを増しており、行財政改革をより強力に進めていくことが不可欠であります。 平成24年度は新たな視点で施策や事業を見直し、無駄や重複をなくしてまいります。

 事務事業評価は、平成23年度、区民参加による行政評価を実施し成果を上げてまいりましたが、平成24年度は横断的な視点のもとで、区主体の事務事業評価を実施し、各事業を検証いたします。

 また、杜松小学校跡や平塚橋会館などのように、跡地等を含めた区有施設の有効活用は重要な視点であります。

 一方で、管理運営の効率化を進めることも重要であり、区民保養施設事業に民間貸付方式を取り入れ、サービス向上と経費削減の両立を図ります。

 窓口サービスの向上も大切な取り組みであります。 日曜開庁には開始以来、多くの方にご利用いただき、平成24年度中には10万人を超えると見込んでおり、区民の利便性向上のために窓口サービスのさらなる充実を図ってまいります。

 次に、協働の推進についてでありますが、今回の東日本大震災では、地域の共助が力を発揮しました。地域の防災力は地域コミュニティの活性化等により向上するものであり、引き続き多様な協働を促進してまいります。

 次に、地域主権改革による権限委譲等への対応については、区に権限委譲がされる事項の条例制定の議案を今定例会に上程し、ご審議いただきますが、今後とも基礎自治体としての基盤の確立に向けて、しっかりと取り組んでまいります。


平成24年度予算の概要

 平成24年度予算は、最重点施策であります防災対策の強化をはじめ、3つの緊急課題への継続した取り組みと長期基本計画の着実な実現を主眼とした予算であり、編成にあたりましては、業務執行体制の見直しなどを進め、職員定数を26名削減し、人件費等の義務的経費の抑制に努めました。

 また、この2年間の事務事業評価の結果などを踏まえ、区民保養施設事業の見直し、清掃事業や図書館などの委託化の拡大などを進め所要の経費を削減し、一般会計予算は、1,325億9,700万円余といたしました。

 平成23年度当初予算との比較においては、学校改築や再開発などの大きなプロジェクトが一段落したことから、約53億円、マイナス3.8%となりますが、最重点施策である防災対策の強化には36億円余を充当し、さらに3つの緊急課題にもしっかりと取り組み、昨今の厳しい社会経済情勢においても、真に必要な施策を着実に実現するための堅実な予算であります。


おわりに

 今後も区政を取り巻く環境は大変厳しく、困難な舵取りを強いられるものと覚悟しておりますが、健全財政を堅持し、区民が直面する課題解決にむけて精一杯取り組んでまいります。

 以上、平成24年度における施政方針をご説明申し上げました。議員ならびに区民の皆様のご理解とご協力を重ねてお願い申し上げ、発言を終わります。

 ありがとうございました。

24年度施政方針演説6
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