区長メッセージ 第9号 平成19年3月26日 代理出産最高裁決定について

更新日:平成26年7月10日

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代理出産により出生した子の
「出生届の受理」に関する
最高裁決定について

  平成19年 3月26日
品川区長

濱 野  健

  (はまの たけし)

 

 代理出産により出生した子の「出生届」につきまして、東京高等裁判所の受理を命ずる決定に対し、品川区は許可抗告をしておりましたが、平成19年3月23日に最高裁判所の決定(東京高裁の決定を破棄する)がおりましたので、この件に関する区長としての考えとこの間の経過をお話させていただきたいと思います。

 本日、マスコミに対し、区長として発表したコメントは以下のとおりです。


平成19年3月26日

最高裁決定へのコメント

品川区長
濱 野  健

 


   このたびの最高裁の決定につきましては、現在の法制度下における司法としての最終判断が示されたものと、厳粛に受け止めております。
 品川区では、区内にお住まいであれば戸籍の有無に関らず、国民健康保険や乳幼児医療をはじめ、子育てに必要な支援サービスを受けていただくことができます。区としましては、これまでもご夫妻のお子さまの福祉を最優先し、必要なサービスを受けていただくなどしてまいりましたが、今後もできる限り、支援していきたいと考えております。
 なお、「代理出産」については、国としての検討が進む中で、生まれてくるお子さんの福祉や医学的倫理的問題など幅広い観点から、慎重かつ活発な論議が尽くされ、国民の共感と合意を得ながら、一日も早い法整備がなされますことを心から願っております。

 

 この間の経過としましては、平成18年9月29日に東京高等裁判所の決定(「出生届を受理せよ」)があり、品川区はその命令を不服として、10月8日許可抗告をいたしました。この23日に最高裁判所の決定がおりるまでの6ヶ月間に、この問題はマスコミ報道にも大きく取り上げられ、品川区には区の内外から大きな反響がありました。

区としましても、延400件を超える賛否両論のご意見をいただく中で、「戸籍制度が全国一律の制度であることから、法務省とも協議を行ってきたこと。生殖補助医療の進歩と国民意識がそれを受容するに至るスピードは必ずしも同じではなく、社会的にも考え方が大きく分かれており、この問題については、さらに議論を深める必要があると考え、司法の最終判断を求めるべきとの結論に達したこと」などをご説明してまいりました。

 なお、今回については、もし区内にお住まいであれば戸籍の有無に関らず、国民健康保険や乳幼児医療をはじめ、子育てに必要な支援サービスを受けていただくことができます。区としましては、これまでもご夫妻のお子さまの福祉を最優先し、必要な行政サービスを受けていただくなどしてまいりましたが、今後も引き続きできる限りの支援をしていきたいと考えております。

 今回の最高裁の決定では、あくまで現行民法の下では、代理出産による出生には「実の親子関係を認められない」としながらも、民法の想定していない事態が現実に生じている以上、「代理出産」について法制度としてどう取り扱うかについて、医学的な観点、関係者間に生ずることが予想される問題、生まれてくる子の福祉などの含めた医療法制・親子法制の両面にわたる検討、社会的な合意形成への努力、それらに基づく速やかな立法を強く求めています。また、今後の親子関係にも配慮し、実子と同様な戸籍上の記載が行なわれる特別養子縁組についても示唆をしています。

 現在、法務省と厚生労働省からの要請を受けた「日本学術会議」おいて代理出産について審議が進められており、来年には答申がまとまるとのこと。また、厚生労働省では、代理出産に関する緊急の国民意識調査も実施中とのことです。

 区としましても、このような全国的な動きの中で、代理出産によって生を受けるお子さんの福祉や医学的倫理的問題など幅広い観点から慎重かつ活発な論議が尽くされ、国民の共感と合意を得ながら、一日も早く法整備がなされることを心から願い、その実現にむけて自治体としてできうる協力をしていきたいと考えております。