平成19年施政方針(全文)

更新日:平成20年2月20日

1.はじめに

 平成19年第1回区議会定例会の開会にあたり、区政運営の基本的な方針および施策について所信と決意を申し述べます。
  昨年10月、多くの区民の皆さまのご信任をいただき区長に就任して以来、はや5か月が過ぎようとしております。改めて、その責任の重さを痛感しているところでございます。
 品川区は、不断の行財政改革により健全財政を築き、数々の先進的施策を実施してまいりました。私は、これらの成果をしっかりと受け継ぎ、平和で人権が尊重される、活力にあふれた住みよいまち品川の実現に全力を尽くしてまいります。改めて、議員各位ならびに区民の皆様のご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。

 

2.区政運営の基本的な考え方

 さて、昨年10月に就任以来、区議会の場で区政全般について述べさせて頂くのは、今定例会が初めてということになります。そこで、この場におきまして、今後の区政運営にのぞむ基本的な考え方について申し上げます。

(社会や時代の大きな変化に対応する区政の運営)
  第一は、社会や時代の大きな変化に対応する区政の運営です。
  時代が大きく移り変わる中で、その変化を的確に捉え、如何に適切に対処していくか。これが今区政に課せられた最重要課題であります。
  ここ20年間の品川区の人口構成の変化を見ましても、15歳未満の子どもの数は最近わずかに増加しているものの、5万7千人が3万2千人と4割強の減。65歳以上の高齢者人口は3万6千人が6万3千人と7割強の増となっております。
  このように、区の人口構成が大きく変化してきたことは、当然のことながら、区民の行政需要にも影響をもたらしてきています。公共施設の配置についても、変化に対応した見直しが必要です。
  一方で、家庭や地域のあり様も変わり、子育てや防災・防犯など、様々な面で、行政による支えが必要となってきました。家庭・地域の自助・共助を促すための後方支援も求められています。
  また、区民の意識も多様化し、行政の内容や手法もこれに対応していく必要が生じています。
  その他、変化の中で、区がなすべきことは山積しております。当面する課題、中長期にわたって対応すべき課題、様々ではありますが、新たな視点からより適切で効果的な政策選択を通して、区民の期待にしっかりと応えていかなければなりません。
  こうした考え方をもとに、この度、区政運営の基本を成す品川区基本構想を改定したいと考えております。
  現行の基本構想は、昭和61年から検討を開始し、バブル景気全盛時の昭和63年に策定されており、既に20年近く経過いたします。改めて、この間の区政運営の成果を総括するとともに、現状と課題の分析・評価、あるべき将来像、今後区政が目指すべき方向について、区民・議会の意見も幅広く伺いながら策定を進めてまいります。
  合わせて、新しい基本構想による第四次長期基本計画の策定も行ってまいります。

(区民とともに自立と連帯をめざす区政)
  第二は、区民とともに自立と連帯をめざす区政です。
  働き方やライフスタイル、家族形態が変化し、区民意識や価値観が多様化する中で、区政は様々な課題に直面しております。これらの課題解決を、ひとり行政だけが担うことは現実的に困難であります。むしろ、行政がその役割を見直し、区民との連携・協力により地域での課題解決にあたることこそが重要と考えます。
  かつては、隣近所で助け合い、子どもたちや高齢者にも見守りの目が届く。こうした地域の絆をもとに、豊かな地域社会が成り立っておりました。今では、都市化とともに核家族化が進み、様相も変わってまいりましたが、品川区では、今日なお下町の良さが息づいております。町会・自治会などの活動も展開されております。
 一方、最近では、福祉や環境などの分野でNPO法人やボランティア団体による自主的な活動が活発化しております。さらに、今後は、豊かな知識と経験をもつ団塊の世代が、地域に戻ってまいります。こうした新しい区民の力も加わり、共に地域の活動を担っていただくことが、重要であると考えております。
  私は、こうした観点から、区民一人ひとりが地域の課題を我がことととらえ、支えあい・助け合う地域社会づくりが進むよう、連携・協力の仕組みを構築し、これを支援してまいりたいと考えます。

(区民の期待に応え信頼される区政)
  第三は、区民の期待に応え信頼される区政です。
  区政運営の基本は、信頼にあると考えます。区政は、区民からの負託により成り立つものであり、区民と区が共通の認識のもとで、共に地域や区政の課題を考え、解決していくことが不可欠であります。区は、区民に対し十分に説明を尽くすとともに、区民の意見を反映するための仕組みづくりが、求められています。
  そこで、これを具体化するため、区民意見公募手続き(パブリックコメント)を制度化してまいります。合わせて、区長と区民が率直に意見を交換しあうタウンミーティングを開催してまいります。
  「区民の声を聴く」、ここに出発点をおき、より開かれた区政運営の道筋をつけてまいります。

 

3.19年度予算の重点課題(五つの柱)

  以上申し上げました区政運営にのぞむ基本的な考え方に基づき、平成19年度予算の基本テーマは、「明日の品川にむけて-区民と連携・協力のまちづくり」とさせていただきました。以下、重点的に取り組むべき主な課題について、新規および拡充する事業を中心にご説明申し上げます。

(1)子育て支援の充実と教育改革の推進

  第一に、子育て支援と教育改革の推進について申し上げます。
  家庭の養育機能や地域における子育て支援のつながりが弱まる中で、もはや子育てをめぐる問題の解決を個人、家族の努力だけに委ねることは困難な状況にあります。そこで、区は、社会全体として取り組むべき役割の一端を担い、子育ての不安を解消し、安心して子どもを産み育てることのできる環境整備にむけて、総合的な子育て支援策を展開してまいります。

(安心して生み育てられるための条件整備)
  まず、現在、小学6年生まで医療費が無料の「子どもすこやか医療費助成」を、区独自に中学3年生まで拡大いたします。合わせて、乳幼児対象の予防接種の一部に費用助成を開始するとともに、区独自で創設した不妊治療助成制度、および妊婦健診時の超音波検査の制度を拡充いたします。
  今月3日から、医師会・薬剤師会の協力を得て小児土曜日夜間診療事業がスタートいたしました。妊娠から出産、子育てに至る各ステージを通した保健・医療面でのサポート体制をさらに整えてまいります。
  また、「すこやか児童手当」を3歳未満の第1子、第2子まで倍増するとともに、公私格差是正にむけた私立幼稚園保護者に対する入園料補助金を増額するなど、経済的負担の軽減も図ってまいります。

(親育ち支援、家庭の教育力の向上)
  最近は、子どもの問題行動の背景に親として育ちきれていない保護者の存在が指摘されております。子どもが基本的な生活習慣を身に付け、他人への思いやり、善悪の判断、社会的なマナーを育む出発点は家庭であります。しかし、核家族化が進む中で、親自身が子育ての術を知らず、家族や地域の援助も十分得られないまま途方に暮れるケースが跡を絶ちません。これでは、明日を担う子どもたちの健やかな成長を望むことは困難であります。
  そこで、子をもつ親としての成長を遂げることができるよう、妊娠から出産、子育ての各段階を通した「親育ち」を支援してまいります。
  新たにスタートする「すくすく赤ちゃん訪問事業」では、保健所と児童センター等のきめ細かな連携・協力により、全ての新生児家庭、特に要支援家庭への家庭訪問等を通して、育児の孤立化や子育て不安の解消、幼児虐待の未然防止につなげてまいります。
  また、地域における身近な子育て相談の拠点となる児童センターでは、親子サロンの増設と合わせて経験豊かな専門相談員を配置するなど、相談体制を強化いたします。地域における子育ての相互扶助組織であるファミリーサポートセンターにつきましても、社会福祉協議会の中に1カ所増設いたします。
  さらに、家庭の教育力の向上にむけて、教育委員会主催の家庭教育支援ネットワーク講習を充実するなど、多様な取り組みを展開してまいります。

(幼・保・小の連携、幼保一元化の推進)
  次に、幼保一元化の推進では、区立保育園3園を就学前の総合施設である「認定こども園」として位置づけ、幼児教育の充実を図るなど幼保一元化をより進展させてまいります。
  また、「小一プロブレム」といわれるように、小学校入学後の環境変化に対する適応の難しさが課題となっていることから、幼稚園・保育園と小学校間の入学前の段階からの相互交流を積極的に推進してまいります。さらに、こうした取り組みの指針となる区オリジナルの就学前教育プログラムを作成し、質の高い就学前教育と小学校への円滑な接続を目指します。

(教育改革の推進)
  次に、教育改革について申し上げます。
  現在、国をあげて教育の問題が論議されております。学力や生徒指導に対する不安が公立学校離れを引き起こしていると言われる今日、公教育が区民の信頼をしっかり得ることが急務であります。こうした観点から、本年度も新たな課題に挑戦し改革を推し進めてまいります。
  その第一歩として、品川区独自の教員採用を進めてまいります。現在、教員の採用、配置の権限は東京都にあり、他の区市への定期異動も義務付けられております。品川区の教育力を高めるには、高い志と品川区への愛着を持ち、小中一貫教育や保護者・地域との信頼関係づくりに腰をすえて取り組む人材が、必要であります。そこで、21年度の採用にむけ、制度面の検討、準備に着手してまいります。
  小中一貫校では、昨年開校した日野学園に続き、本年4月、新たに大井地区一貫校「伊藤学園」を開校いたします。続く、八潮地区は20年度、荏原西地区は22年度、品川地区は23年度の開校にむけて、それぞれ準備を進め、小中一貫校6校構想を着実に実現してまいります。
  また、最近、改めていじめの問題が大きな社会問題になっております。品川区では、全教員対象の研修を実施するなど、いち早く取り組みを進めておりますが、教員とともに専門の立場からいじめや問題行動等の早期対応にあたるスクールカウンセラーを倍増いたします。スクールカウンセラーは、発達障害の相談も担当し、特別支援教育の推進にもあたってまいります。
  なお、前段で申し上げましたように、児童・生徒数が大幅に減少していることを踏まえて、学校の適正規模のあり方等について検討を進めてまいります。

(2)高齢社会に対応した施策の充実

  第二に、高齢社会に対応した施策の充実について申し上げます。
  超高齢社会の到来間近と言われておりますが、高齢社会を決して悲観的に考えることはありません。むしろ、老いも若きも、障害のある方もない方も、地域でいきいきと自立した生活を営むための環境整備にむけた好機と捉えるべきであります。自助・共助・公助の適切なバランスを保ちつつ、地域社会での支え合いを基本とする心豊かな地域社会づくりを進めてまいります。

(高齢者の社会参加)
  これからの時代においては、高齢者自身が、これまで培ってきた知識や経験を活かし、地域社会の一員として積極的にその役割を果たすことが期待されております。とりわけ、社会経済の発展を支えてきた団塊の世代には大いに着目すべきであります。
  そこで、団塊の世代を対象に、地域活動への参加や就労意欲等に関する意識調査を実施し、区の施策に活かしてまいります。また、この世代をはじめとしてヤングシニアといわれる比較的若く元気な高齢者の社会参加を促進するため、活動拠点の整備とともに「しながわシニアネット」の活動をバックアップいたします。
  就業促進の面では、「サポしながわ」やシルバー人材センターにおいて、区外企業への求人開拓など新たな試みを取り入れてまいります。

(介護予防システムと施設整備)
  次に、高齢者福祉としては、要介護状態への移行や重度化を防ぐ介護予防システムの整備が重要であります。
  これまで在宅サービスセンターを中心に、様々な介護予防事業を展開してきておりますが、本年度は、新たに、NPO法人や地元商店街と連携し、「わくわくクッキング事業」をスタートいたします。買物や料理、高齢者同士やボランテイアとの交流を通して、閉じこもりや認知症の予防につなげてまいります。
  高齢者施設の整備ですが、これまで、早くから都市型高齢者施設の重要性に注目し、特別養護老人ホーム等を計画的に整備してまいりましたが、生活様式の変化や認知症高齢者が増大する中で、より質の高い居住空間や介護サービスが求められております。
  本年度は、旧都南病院跡地にケアホームやグループホームを整備するほか、原小学校跡においては、既存校舎を改修し、新しいタイプのケアホームや介護予防拠点を整備してまいります。

(障害者福祉の充実)
  障害者福祉につきましては、18年度から障害者自立支援法に基づく新たな制度に切り替わりました。社会的自立とノーマライゼイションの実現に向けて、雇用や自立支援、地域社会への参加促進など、一人ひとりの実情に応じた多様な支援策を進めてまいります。
  まず、地域生活支援の拠点である障害者生活支援センターを心身障害者福祉会館に移転、両者の機能を効果的に活用し、サービスの利用プラン作成や訪問相談など、ケアマネジメント機能を中心に支援体制を強化してまいります。
  また、広汎性発達障害や学習障害など、軽度発達障害をもつ児童が、就学前の早期の段階から専門的な療育支援を受けられるよう、品川児童学園において新たなデイサービス事業を展開いたします。
  なお制度改正に伴う利用者負担方式の変更を踏まえ、国制度に加え区独自の軽減措置を実施してまいります。

(生涯にわたる健康づくりの推進 )
 続いて、健康の問題ですが、区民一人ひとりが「自らの健康は自分でつくる」といった自覚を持つことが基本であります。
  平成20年度には、生活習慣病の予防に重点をおいた医療制度改革が実施されます。改めて、健康づくりの重要さを区民にアピールするため、健康づくりイベントを開催いたします。また、自殺やうつ病などに対する心の健康づくり、生活の基本を成す食育に関する各種事業も充実してまいります。

(3)安心安全を互いに見守る地域社会づくり

  第三に、安心安全を互いに見守る地域社会づくりについて申し上げます。
  災害や犯罪などの被害から住民を守り、安心して暮らせるまちをつくることは、行政に課せられた最も基本的な役割でありますが、同時に、地域をあげての連携協力の体制が不可欠であります。

(安心安全を見守る防災・防犯対策)
  区は、これまでも地域の協力を得て、幅広い防災対策を進めてまいりました。この度、その基本指針となる地域防災計画を、最新の被害想定をもとに新たな都市型災害に対応したものに改訂いたします。また、地域の防災活動のリーダーである防災アドバイザーの協力により、「我が家の防災ハンドブック」を作成し、全世帯に配布いたします。
  学校避難所は、計画的に機能の充実を図っており、避難者が優先的に利用可能な災害時優先電話を2年計画で配備してまいります。
 一方、防犯対策では、品川区は23区の中でも、比較的犯罪の発生率が低いと言われております。しかし、空き巣事件や子ども・高齢者をねらった犯罪被害の増加など事態は必ずしも楽観できません。そこで、地域住民自らが地域を見守るといった防犯意識を高めることを目的に、それぞれの地域特性に応じた実践的な防犯マニュアルを作成いたします。
  また、荏原町駅前交番跡地に23区初となる「荏原町安心安全ステーション」を開設するほか、生活安全サポート隊を増員するなど、地域と連携した防犯パトロール体制を強化してまいります。

(地域のふれあい)
  地域のふれあいでは、地域住民相互の支えあいを目的としたふれあいサポート活動の活性化にむけて、自主的な活動団体に対する顕彰制度をスタートいたします。高齢者や障害者など災害要援護者の避難訓練であるワークショップ、防災アドバイザーの研修体制も充実してまいります。

(災害に強いまちづくり)
  まちづくりの面では、住宅や建築物の耐震化を計画的に促進するための耐震改修促進計画を本年秋を目途に策定いたします。その計画をもとに、耐震診断・改修費用の助成制度の拡充を進めてまいります。
  区有施設の耐震化は、避難所となる学校や保育園など子どもの施設を先行してまいりました。平成20年度には概ね完了の見通しですので、今後は、その他の施設についても計画的に進めてまいります。
  都市計画道路は、それぞれの路線で整備が進んでおります。引き続き、区役所・百反坂間の補助163号線第二期区間の整備にむけた調査に着手いたします。また、災害時の重要な避難道路となる滝王子通りの道路拡幅や沿道不燃化など、機能強化を検討してまいります。

(4)環境にやさしく活力あるまちづくり

第四に、環境にやさしく活力あるまちづくりについて申し上げます。

(幅広い環境対策の展開)
  これまで商店街連合会等の協力を得て、マイバッグ運動を展開してまいりましたが、本年度は、容器リサイクル法の改正を踏まえ、消費者団体や地元大学との連携により、中小スーパーの実態を調査いたします。
  また、環境負荷が小さい自動車への転換を促し、大気汚染の改善が進むよう、低公害車の導入に対し、利子負担がゼロとなるよう助成措置を拡充いたします。

(リサイクルの推進)
  一方、環境負荷を軽減するには、区民一人ひとりの取り組みが欠かせません。現在、廃プラスチックは不燃ごみとして埋立て処分されておりますが、平成20年度からは、熱エネルギーとして回収するサーマルリサイクルへ移行いたします。そこで、分別の見直しが円滑に進むよう説明会やモデル地域の拡大など、周知徹底を図ってまいります。また、リサイクルを拡大し、23区でもトップレベルとなる14分別の資源回収を実施してまいります。
  なお、家具等の粗大ごみは、現在、清掃事務所が収集しておりますが、区民が資源化センターへ直接持ち込む方式を新たに導入するなど、利便性の向上に努めてまいります。

(景観への配慮と「水とみどり」のまちづくり)
  次に、景観への配慮と「水とみどり」を生かしたまちづくりについて申し上げます。
  これからのまちづくりは、利便性や機能性だけではなく、地域の個性を活かし、快適でうるおいのある街並みの整備を進めていくことが大切であります。
  そこで、北品川と戸越銀座両地区の商店街の電線地中化を推進してまいります。景観ガイドプランモデル地区の北品川地区では、旧東海道らしさに配慮した石畳の整備、戸越銀座地区では、ユビキタス商店街のための通信回線整備など、それぞれ特色を活かしてまいります。
  また、「水とみどり」では、「新水とみどりのネットワーク構想」の具体化にむけた推進プランを策定する一方、構想の骨格となる各プロジェクトについて必要な取り組みを進めてまいります。国文学研究資料館は、来年2月の移転がはっきりしておりますので、本年度中の跡地取得を目指すとともに、戸越公園との一体的整備にむけた指針を策定いたします。

(活力を高める産業振興と観光の推進)
  続いて、活力を高める産業振興と観光の推進であります。
  中小企業をめぐる経営環境には依然として厳しいものがあります。区は、こうした状況に立ち向かい必死に努力している中小企業が、元来の活力を取り戻せるよう、実効ある支援策を講じてまいります。
  ものづくりの分野では、高い技術力を持ちながらも新たな事業展開のノウハウや経験に乏しい中小企業の下請け構造からの脱却を後押しいたします。海外取引等に意欲をもつ企業を対象に市場調査、国際見本市出展等への助成を開始するとともに、専門知識や経験が豊富な技術者等を派遣するビジネスカタリスト制度を充実してまいります。
  一方、身近な商店街の賑わいが、便利で豊かな区民生活を支え、地域活性化の原動力となっております。
  元気のある個店、魅力のある個店の掘り起こしで反響を呼んだ「しながわの一番店発見プロジェクト」では、選ばれた個店で構成する「バーチャル商店街」の開設を組み合わせてまいります。また、武蔵小山サービスコーナー用地の本格整備を視野に入れ、駅前に相応しい創業支援等を目的とした施設のあり方について検討を進めてまいります。
  観光の推進につきましては、本年度、しながわ観光協会が創立10周年を迎えることから、その記念事業となる観光情報誌の発行を助成してまいります。また、観光スポットに設置する案内サインの検討など、区民の自主的な観光振興の活動を積極的に支援してまいります。

(区民の多様な文化活動の支援)
  次に、区民一人ひとりが生涯にわたって充実した人生を送るためには、文化・芸術・スポーツを中心に活動のための場を整備することが不可欠であります。
  五反田文化センターを、音楽ホールやプラネタリウムなどを配置した生涯学習の拠点として再整備いたします。
  また、都立品川南ふ頭公園の区移管に合わせて隣接の都有地を買収し、野球を中心に多目的な利用が可能な公園を整備してまいります。

(5)行政改革の着実な推進

 第五に、行政改革の着実な推進について申し上げます。
 区は、これまで不断の努力により行政改革に取り組み、大きな成果をあげてまいりました。今後とも、なお一層効果的、効率的な行財政の運営に努めてまいります。

(民間委託の推進)
  まず、民間委託の効果的な推進にむけたガイドラインを策定し、より質の高い公共サービスを効率的に提供するための指針としてまいります。モデル事業の検討や価格だけではなく業務の質を評価し契約先を選定する総合評価入札方式の導入を進めてまいります。

(区民との連携・協力の推進)
  次に、前段でも申し上げましたように、今後の区政運営にあたっては、町会・自治会等の地域団体に加え、ボランティア団体やNPO法人等、多様な区民との連携・協力が不可欠であります。そのための具体的なガイドラインと職員向けのマニュアルを作成し、連携・協力を推進してまいります。

(人材育成プランの策定)
  なお、区役所は、団塊の世代の大量退職期を迎え、今後10年間で職員の約4割が退職いたします。質の高い行政サービスの水準を維持発展させるための人材育成が急務となっておりますので、中長期的な人材育成プランを策定してまいります。

(都区制度改革の推進)
  最後に、都区制度改革について申し上げます。 19年度財調協議に持ち越された三位一体改革への対応は、特別交付金の配分をめぐって課題が残されたものの、最大の課題である配分率アップについて、都区間で合意に至りました。
  一方、都区制度の根幹の課題である都区の役割分担と財源配分につきましては、今後、抜本的かつ発展的な検討が本格化してまいります。
  ここで、平成12年の都区制度改革の意義を振り返ってみますと、23区は地方自治法上、基礎自治体として位置づけられ、都区の役割分担についてもその原則が法定されました。住民に身近な事務を23区が優先して幅広く担う、また、これに応じた財源配分を行うべきことは、法上も明白となったわけであります。
  この制度改革により、清掃事業は区に移管され、今日、大きな成果が得られております。品川区では、23区で唯一戸別収集が実現いたしました。リサイクルが充実し、ごみの減量化も進みました。このように、「区民に身近な事務」を「区民に最も身近な23区」が行うことの意義、重要性が、はっきりと実証されたわけであります。
  身近な事務は23区が担い、都は広域行政に徹する。私は、今後の都区のあり方の検討にあたっては、何よりも、この原点をしっかりと踏まえた論議がなされるべきと考えます。区域のあり方、再編の問題は、その上で議論すべき性格のものであります。
  私は、こうした考え方を、区長会をはじめとしてあらゆる機会を捉えて強く主張してまいる所存であります。

 

4.19年度予算の概要

  以上、申し上げました主な事業を中心に平成19年度予算を編成した結果、一般会計予算は、前年度対比0.3%増の1,345億円余となりました。予算編成にあたりましては、既定事業分の人件費減などによる義務的経費の抑制と、事務事業の見直しに努めてまいりました。また、職員定数につきましては、学校給食の調理業務代行や図書館の窓口業務委託の拡大等により、51名削減してまいります。これにより、昭和58年度に行財政改革に取り組んで以来の定数削減は、合計で1656名となります。
  なお、本年度、地方分権の推進にむけた三位一体改革に伴い、所得税から個人住民税への税源移譲が本格実施となります。税率のフラット化と国庫補助負担金の削減により、品川区ではマイナスの影響が生じますが、多くの区民の皆様にとっては、区に納めていただく区民税が増えるということになります。今後とも、行財政改革の一層の推進と区民サービスの向上に努め、ご負担いただいた税をより適切に活用できるよう徹底を期してまいります。

 

5.おわりに

  さて、この3月、品川区政は60周年を迎えます。地方分権、都区制度改革が進む中で、住民に最も身近な基礎自治体として、その果たすべき役割と責任はますます重大になっております。こうした新たな時代に区政を担わせていただく責任の重さを改めて肝に銘じ、区民の皆さまに品川区に住んでよかったと実感していただけるよう、全力を尽くしてまいります。
  以上、平成19年度における施政方針をご説明申し上げました。議員ならびに区民の皆さまのご支援とご協力を重ねてお願い申し上げ、発言を終わります。