区長メッセージ 第72号 平成27年2月18日 平成27年度施政方針演説

更新日:平成27年2月18日

1.はじめに    品川区長  濱野 健

平成27年第1回区議会定例会の開会にあたり、区政運営の基本方針及び施策について、所信と決意を申し述べ、議員各位ならびに区民の皆さまのご理解とご協力をお願い申し上げます。

昨年10月、区民の皆さまのご信任をいただき、引き続き区長の重責を担わせていただくこととなり、区政運営の三期目をスタートしたところでございます。 そうした折、昨年実施いたしました品川区世論調査におきまして、前回に続き9割を超える方々から住み続けたいとのお答えをいただき、区政を担う者として大変嬉しく思うと同時に、改めてその責任の重さを痛感したところであります。

この三期目においては、長期基本計画の着実な実現に加えて、品川区のプラスをさらに伸ばすチャレンジの姿勢で施策に取り組み、「住んでよし、働いてよし、学んでよし、訪れてよし」の品川区をめざしてまいります。

27年度施政方針演説1

2.平成27年度  区政運営の基本方針

さて、品川区を取り巻く社会経済環境は、今なお大きく動いており、特に消費税の税率改定については、今後の行方も注視しながら、区民や区への影響を見極めていかなければなりません。
国は地方創生のための施策として、税制改正や地方への新たな交付金を決定するなど、地方の活性化に向けた展開を図っており、人口減少社会を見据えた地方自治体の舵取りが求められております。
品川区においては、現在も人口は増え続けておりますが、将来推計では9年後に減少に向かうと予測しており、将来の人口減少や人口構造の変化を見据えた施策展開が必要であります。
こうした状況のもと、区民と区との協働は区政を運営する上で今後増々重要となり、町会・自治会とのさらなる協働を推進するとともに、各種団体やNPO、企業や学校などとの、各分野での様々な形での協働を進めることで、地域の課題解決や活性化につなげてまいる所存であります。

一方で、東日本大震災から4年が経とうとしており、区は復興に向けた支援のため被災地に職員を派遣しておりますが、そこから具体的に学ぶことは数多くあります。さらに、阪神・淡路大震災から今年で20年が経過しましたが、都市における災害の教訓からは今なお学ぶべきことがあり、防災対策は引き続き強化していく必要があります。
将来の品川区を展望しますと2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催や国家戦略 特区による国際競争力の強化など、これまでにないスピードで変化を遂げようとしております。区ではこのような変化を好機と捉え、未来志向で一歩先を行く施策を展開してまいります。

こうしたことを踏まえ、平成27年度は引き続き防災対策の強化を重点課題としながら、区民と区との協働をより一層進め、改訂した長期基本計画を着実に実現させていくとともに、未来に向けたチャレンジの施策を進めてまいります。

3.平成27年度予算の重点課題 【防災対策の強化 災害に強いまちづくり】

はじめに、27年度も重点課題とした防災対策の強化について、その主な施策をご説明いたします。

まず、災害に強いまちづくりであります。
木密地域不燃化10年プロジェクト事業であります。平成27年度には「大井五・七丁目、西大井二・三・四丁目地区」、「放射2号線沿道地区」、「補助28号線沿道地区」の3地区を新たに加え、23区内では最多となる9地区を事業対象とした上で、これに当たる新たな課を設置し、木造住宅密集地域の改善を全力で推し進めてまいります。
あわせて、中延一丁目区営住宅の建替えとともに、木密地域不燃化事業の従前居住者用住宅の整備も行い、住み慣れた地域での住まいの確保に努めてまいります。

さらに、細街路拡幅整備事業における、行き止まり私道に対する助成対象地区の拡大や未接道宅地の解消に向けた具体的方策の検討など、関連事業との連携も強めてまいります。 木密地域不燃化事業と密接不可分である特定整備路線整備事業においても、事業主体である東京都との連携を一層強めつつ、地域の方々のご意見を十分に聴き、理解を得ながら進め、戸越公園駅周辺など地域や商店街の方々とともにまちづくりの検討を深めてまいります。
JTアパート跡地については、しながわ中央公園として拡張し、ヘリポートや防災備蓄倉庫などの整備を行い、28年度の開設をめざします。
次に、住宅の耐震化支援であります。木造住宅除却の助成や特定緊急輸送道路沿道建築物の耐震化助成を引き続き実施し、地震による建物倒壊の危険を減少させ延焼防止にもつなげてまいります。
家具転倒防止器具取付の助成枠を拡大し、地震時の居室内での安全性を確保してまいります。

次に、避難所機能の強化であります。 避難所は、災害時における生活の拠点であることから、その安全性は確実でなければなりません。27年度も、引き続き一次避難所等の非構造部材の耐震化に取り組むとともに、福祉避難所などの調査を行い、順次改修を進めその安全など機能強化を図ってまいります。 また、庁舎や福祉避難所など区有施設の排水管の耐震化も順次進め、災害時のトイレ問題に対する不安を解消いたします。

続いて、津波や浸水等への対策であります。
区においても津波の被害が想定されていることから、地域における勉強会や自主避難マップ作成支援などに引き続き取り組むとともに、津波避難施設の確保に向け、民間施設との協定締結をさらに増やしてまいります。
都市型水害の対策として進めている浜川雨水排水管の建設も、都と連携しながら整備を進め、浸水被害を抑えてまいります。
台風や豪雨などによる土砂災害の危険性は近年都市部においても脅威となっております。区内にも多数の崖や擁壁があることから、その実態を調査し、水防活動や被害軽減に向けた対応を検討してまいります。

次に、防災対策において重要な自助、共助でありますが、品川区災害対策基本条例の理念のもと、より一層促進してまいります。
初期消火体制の強化であります。
木造住宅密集地域への街頭消火器増設については、引き続き火災危険度の高い地域を中心に進め、さらに小学校への消火ポンプの配備を年4校から8校に倍増し、初期消火体制のさらなる強化をめざします。
防災拠点である防災センターについて、区民の防災意識のさらなる高揚を図るため、体験型施設としてリニューアルし、スタンドパイプ等の消火体験をはじめ、避難や応急救護体験などが行えるよう、実践に役立つ施設といたします。
自助、共助を促進する上で重要な「わが家の防災ハンドブック」でありますが、27年度は国際化への対応として外国語版を作成し、地域や大使館での防災訓練や啓発に役立ててまいります。
帰宅困難者への支援は、東日本大震災でその重要性が新たに見出された課題であり、区では国道15号線徒歩帰宅者支援対策協議会や目黒駅周辺帰宅困難者対策協議会など、地域や周辺区と連携、協議しながら対策を検討してまいりました。27年度は、区の中心核である大井町駅周辺においても、帰宅困難者対策協議会を設立し、滞留者等の安全確保に向けたエリア防災計画を策定いたします。

以上が、27年度の重点課題である防災対策の主なものであり、こうした取り組みを積極的に推し進め、災害に強いまちを築いてまいります。

27年度施政方針演説2

4.チャレンジする品川区

2020年東京オリンピック・パラリンピック開催まで、あと5年半となりました。また、国家戦略特区制度による新たな都市再生や外国人来訪者への対応が推進されるなど、品川区を取り巻く環境が劇的に変化してまいります。

これらのことは、品川区が未来に向け大きく発展するチャンスであり、この機を捉えて区民や区のプラスになることをさらに大きくするためのチャレンジの好機であります。27年度は区の新たな挑戦のスタートの年とし、区民や事業者のチャレンジも応援してまいります。

(1)オリンピック・パラリンピックに向けて

オリンピック・パラリンピックに向け、新たに準備担当課を設置し、その体制を整え進めてまいります。

まず、開催に向けての気運醸成であります。
品川区が競技会場となる種目を中心に、スポーツフェスタや体験型ワークショップなど、実際に競技が実施される区としての気運を醸成しながら、トップレベルの競技観戦、障害者水泳大会などの開催を通じ、区民のスポーツ全般に対する気運を高めてまいります。
また、昨今子どもたちの体力低下が指摘されており、このスポーツの世界的なイベントを迎えることを機に、子どもたちの体力向上を目的として小・中学校に体育専門指導員をモデル配置してまいります。

次に、国際化に向けた対応でありますが、区民が英語などの語学力を高めたり、まちなかで多言語の表記を整備することは、外国からの来訪者へのおもてなしの基盤となるものです。
26年度より開始いたしました「英語少し通じます商店街」をさらに進め、実施する店舗に「英語少し通じます」の英語看板を掲げるなど、実践に向けた取り組みとしてまいります。

区の観光資源として大きな役割を持つしながわ水族館においても、多言語対応の案内システムなど、様々な来訪者へのおもてなしを充実いたします。
また、区の窓口においても、同時通訳サービスを利用したタブレット端末を試験的に導入し、国際化への対応を図ってまいります。

さらに、次代を担う子どもたちが外国人とのコミュニケーション能力を高めることは、これからの国際化に向け大切であると同時に、子どもたち自身の夢の広がりにもつながります。そのため、26年度より小学校で実施しました日本人による英語専門指導者JTEの配置を拡大するとともに、中学校ではグローバル人材育成塾に加えてイングリッシュキャンプを実施するなど、国際社会において活躍できる人材を育ててまいります。
加えて、文化やスポーツ、観光、国際化の振興事業として文化振興事業団、スポーツ協会、国際友好協会、観光協会の4法人が共同で「千客万来プロジェクト」を実施することから、区もこれを支援し品川区のPRにつなげてまいります。
また、オリンピック・パラリンピックを実施するにあたって、ボランティアの活躍はどの開催国でも欠かせないものであります。そこで、ボランティアや地域活動に意欲を持った青少年による、外国人来訪者向けのボランティアガイド事業を実施し、ボランティアへの意欲を醸成いたします。

次に、大会開催に向けたまちづくりであります。
東京都や組織委員会において、競技に関することだけでなく、サインの多言語対応や輸送、競技場の後利用など、様々な角度からの検討が進んでおります。区もこのような動きをいち早く捉えながら、おもてなしのまちづくりをしてまいります。
ホッケーやブラインドサッカー等の会場となる大井ふ頭中央海浜公園付近において、都と連携し無電柱化を進めてまいります。
八潮北公園については、中央環状線の整備完了に伴い、工事ヤードの復旧に合わせ、スポーツ向けの設備も整備いたします。

また、大井町駅周辺では、現在バリアフリー計画を策定しており、大会開催時期も見据えたすべての人にやさしいまちづくりを進めるとともに、駅前については、区の玄関口としてふさわしい街並みに整備してまいります。さらに、広町のJRアパート跡地については、JRと引き続き方針を協議しているところですが、周辺の開発の状況なども視野に入れ、どのようなまちづくりをすべきか、区としてもさらに検討を深めてまいります。

(2)交通の要衝としての品川区を活かす

次に、交通の利便性を活かす取り組みであります。
品川区は古くから交通の要衝として発展し、人々が集い、便利でにぎわいのある街であります。今後においても、羽田空港の機能強化や東京港への大型旅客船の就航、357号線、リニア中央新幹線の開通などが見込まれ、多様な交通が接合し、日本人のみならず世界の人々が行き交う街としての礎ができてまいります。こうしたことから、多くの人が訪れ、働き、学び、そして住んでいただけるよう、積極的に品川区の魅力を打ち出してまいります。そのため、今年度戦略プランを検討しているシティプロモーション事業は、今後ビジョンを打ち出し、具体的な事業展開につなげてまいります。

また、さらなる交通の利便性向上として、大崎駅西口の交通広場にバスターミナル機能を整備し、他都市からの来訪者や旅行者の新たな受入れ拠点といたします。
さらに、大崎橋広場に区では初めてとなる観光桟橋「(仮称)五反田リバーステーション」を整備し、目黒川の舟運事業の拠点として水辺利活用の充実を図り、観光や防災に役立ててまいります。

交通の利便性を高めると同時にその安全性の強化や快適な交通環境の整備も必要であります。 JR大井町駅への可動式ホーム柵設置は、京浜東北線の単独ホームとしては初となり、区も整備助成を行うことで、駅構内の安全性を強化してまいります。
また、大森駅水神口自転車等駐車場については、今後の利用者の増加を見込み、地下機械式駐輪場を検討、整備してまいります。

国家戦略特区への対応であります。昨年5月に品川区は区域指定を受け、区の特徴を活かす施策を検討してまいりました。27年度は、大崎駅周辺でのエリアマネジメントを活用したにぎわい創出や旧東海道で展開しているゲストハウスなどの規制緩和に向け、具体的な提案をしてまいります。さらに、品川駅南地域についても、この特区を活用したまちづくりを推進してまいります。

(3)人やまちのチャレンジを応援する

新たな時代に向け区民や事業者も様々なことに取り組みを進めています。区はそうしたチャレンジを応援し、品川区全体の大きな活力を見出してまいります。

まず、地域で活躍する人々に対する支援であります。
現在、町会・自治会のあり方と区との協働に関して有識者や町会・自治会の方々と共に調査研究しております。その中で、町会・自治会への加入促進や区の支援のあり方などの議論があることから、今年度の調査結果を踏まえ、27年度はそれらの課題解決に向け、条例化なども視野にそのしくみ作りや具体的事業について検討してまいります。
また、五反田地区においては、飲食店などの客引き行為が顕在化していることから、地域の方々と協力しながら、この問題に対応する客引き行為等防止のための条例整備などを進めてまいります。
高齢者の地域での見守り活動は一層その重要性が増しており、町会・自治会への活動支援について、6年目以降の助成額を増額いたします。

次に、産業分野でありますが、区内に新たに集積してきている情報通信企業や開発型中小企業などが、各分野で相互連携することのできる品川産業支援交流施設を27年6月にオープンいたします。公募し決定した施設愛称の「SHIP(シップ)」は、「SHinagawa Industrial Platform」の略であり、ビジネスという大海原に革新を求め航海に乗り出す意味が込められ、品川区発、新ビジネス創出を期待するものであります。
また、就業意欲のある若者や女性に対し、就業体験を通してその機会の拡大と中小企業の人材確保を支援するとともに、女性の働き方やキャリアデザインの考え方などをテーマとした女性向けのセミナーを開催し、女性の活躍を支援いたします。
さらに、シルバー世代の方々は、それぞれお持ちの知識、経験、資格などを活用し起業したいという方も少なくないことから、起業セミナーを実施することで、その起業を支援し、区内産業への参入を促し、地域産業の活性化につなげてまいります。

障害者の芸術活動の支援として、自らの感性や思いを自由に表現できる場を提供することにより、障害者のいきいきとした地域生活を応援してまいります。

このようなことを効果的に進める上で、区からの情報発信は大変重要であります。ケーブルテレビ品川と連携し、テレビを活用して区民に必要な情報を直接送信する、プッシュ型情報配信を進めてまいります。

また、マイナンバー制度の本格実施を機に、コンビニでの住民票交付などを進め、さらに、区としての独自利用についても、区民の利便性が増すような活用について検討を進めてまいります。

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5.長期基本計画の着実な実現

改訂した長期基本計画で掲げる施策も着実に実現する必要があります。社会経済環境の変化や喫緊の課題への対応など、27年度の主な事業についてご説明いたします。

(1)だれもが輝くにぎわい都市

はじめに、「だれもが輝くにぎわい都市」であります。

まず、産業の振興についてでありますが、27年度より組織を再編し、産業施策を一層充実させてまいります。
これまでも区は、地域経済の活性化に向け総合的な経済対策を進めてきており、その結果、プレミアム付区内共通商品券は発行総額が39億円を超え、中小企業への緊急的に行ってまいりました特別支援資金融資あっ旋も約9,800件、680億円を超える融資が実行されるなど、一定の成果をあげてきております。しかしながら、区民や中小企業が景気の好況感を実感できるものにするためには、まだ成すべきことがあると考えております。
特に、プレミアム付区内共通商品券については、消費を喚起する有効な手法であり、国も地域住民生活等緊急支援のための交付金を決定したことから、27年度はこの交付金を活用し、プレミアム率の加算や発行総額の増額を行い、地域経済の活性につなげてまいります。

次に、観光への取り組みでありますが、27年度からは、オリンピック・パラリンピックの開催を視野に入れ、文化、スポーツと観光分野の組織を統合した上で、都市型観光アクションプランを改訂し、先を見据えた施策展開をしてまいります。

続いて、伝統文化と芸術の振興についてであります。
引き続き、品川区民芸術祭を開催することで、質の高い文化芸術に触れたり、楽しめるだけでなく、気軽に参加・鑑賞できる機会として充実させてまいります。
あわせて、これまでの区民の学ぶ機会であった区民大学やシルバー大学などを「しながわ学びの杜」として再編し、多様で体系的な学びとわかりやすい情報提供を行ってまいります。
また、地区図書館に指定管理者制度を導入し、開館時間の拡大や民間事業者ならではのサービスなど、その利便性の向上を図り、より身近で便利な図書館としてまいります。

(2)未来を創る子育て・教育都市

第2に、「未来を創る子育て・教育都市」についてであります。

はじめに、待機児童対策でありますが、民間の力も活用しながら総合的な対策に取り組み、平成22年度から26年度までの5年間で2,979人の受入れ枠拡大を行うなど、積極的な対応をしてまいりました。

しかしながら、待機児童ゼロに向けてさらなる展開が必要であり、27年度よりスタートする子ども・子育て支援新制度の影響や将来人口、保育需要の動向を見極めながら、区の喫緊の課題として捉え、集中的に取り組む決意であります。
その対応としまして、27年度、区では、認定こども園となる北品川第二保育園で40人の定員を拡大し、幼保一体施設の御殿山すこやか園に、五反田第二保育園を50人定員で開設するほか、弾力化により4園で計34人の定員拡大をすることで、区立施設で124人の定員を拡大します。

また、私立保育園においても、区独自の新規開設支援や運営費助成などにより、新規開設4園と定員拡大で364人、認証保育所3園開設で120人の拡大を予定しております。
さらに、27年度から新たな枠組みとなる小規模保育事業では、既存の事業所型家庭的保育事業17施設を移行させるとともに、新たに6ヶ所の開設等により、定員を98人拡大いたします。

このほか、区内企業の協力を得て、事業所内保育所への区独自の支援も行いながら、新たな総合的待機児童対策を展開し、27年度は受入れ枠を709人拡大いたします。
28年度に向けて、区有地を活用した大規模保育施設の検討も進めるなど、今後も様々な手法で取り組んでまいります。

保育施設の整備等による量的な拡大を図る一方で、保育士等の確保や離職防止が、待機児童対策を進める上で、今大きな課題となっております。そのため、これまでの処遇改善だけでなく、資格取得や離職した方の再就職、さらに私立施設の保育士等への家賃助成など、人材確保に向けた事業者への支援を総合的に行ってまいります。
また、発達障害など配慮を要する子どもへの早期対応として、区立保育園、幼稚園で実施している育児相談会について私立保育園、幼稚園も含め実施し、その支援を充実してまいります。
子育ち、親育ち支援の各種施策は、27年度、事業目的に合わせた組織に再編し、今年度策定しております品川区子ども・子育て計画などを踏まえながら、引き続ききめ細やかな事業展開をしてまいります。

次に、学校教育の推進であります。
27年4月から、区長と教育委員会の関係や教育長の権限など、地方教育行政の制度が大きく変わります。
私はかねてより首長と教育委員会の連携の必要性を重く捉え、国に先んじる形で「区長と教育委員の懇談会」を開き、教育を取り巻く諸問題について意見交換をしてまいりました。4月からは、総合教育会議を設置することで、品川区の教育行政がより発展できるものと考えております。

続いて、学校改築についてであります。
これまでは、耐震化や一貫校の整備と合わせ、老朽化した学校の改築を行ってまいりましたが、今後は建物の老朽度はもとより、児童・生徒数の変化や擁壁など周辺環境の危険性なども考慮した上で計画的に行ってまいります。27年度は、芳水小学校と城南小学校の設計を行い、改築に向けた準備を進めてまいります。

次は、小中一貫教育の推進であります。
品川区では平成18年より、全国に先駆けて小中一貫教育を推進してまいりました。この間、6校の施設一体型一貫校の建設、市民科や小学校からの英語教育など、独自の施策展開をし、国も小中一貫教育学校の法制化に向けて動き出すなど、常に一歩先を行く教育改革を行ってまいりました。小中一貫教育の全区展開から10年の節目となる27年度に、品川区教育フォーラムを開催し、これまでの成果を広く周知するとともに、これからの品川の教育を考える機会といたします。
また、教育センターの機能を再編し、特別支援教育や学校支援チーム「HEARTS(ハーツ)」、相談機能などを一元化することで、いじめへの対応や児童生徒の健全育成、特別支援教育などの充実を図る施設として「教育総合支援センター」を創設します。

続いて、平和で人権が尊重される社会の構築であります。
27年度は、新たな平和事業として、広島平和使節派遣の中学生からの提案をもとに、大井町駅前の平和の誓い像が設置された広場へ「しながわ平和の花壇」としてカンナの花などを植栽し、核兵器廃絶と恒久平和確立の精神を広く区民に普及してまいります。
また、今年度実施しました人権意識調査の結果を取りまとめた冊子を作成し、人権に係るイベントなどで配布するなど、人権尊重都市品川宣言の普及を進めてまいります。

(3)みんなで築く健康・福祉都市

第3に、「みんなで築く健康・福祉都市」についてであります。

今後増々進展する高齢化に対しては、先を見据えた計画的な対応が求められます。加えて、27年度からは介護保険制度の改正により、要支援者に係る予防訪問介護と予防通所介護が、区の地域支援事業に位置付けられることから組織を再編することとし、新たな制度に対応した事業展開をしてまいります。

はじめに、高齢期の住まいと安心を守るための取り組みであります。
とりわけ、入所・入居系施設の整備は区としても重要な課題と位置付けており、特に特別養護老人ホームは、在宅介護のセーフティネットであることから、現在も計画的に整備しているところであります。
平塚橋会館跡特別養護老人ホームは定員100人とし、西中延区営住宅の建替えに合わせ、多世代が交流できるシルバーセンターなどとの複合施設として、平成28年5月の開設に向け整備をしているところです。
また、上大崎三丁目特別養護老人ホームは、定員102人とし、地域交流施設との複合施設として平成29年度の開設をめざします。

次に、老人保健施設については、御殿山小学校の西側敷地において、民間事業者を活用しながら区内2ヶ所目の開設に向け準備を進めてまいります。

また、区立の認知症高齢者グループホームについても、大井認知症高齢者グループホームは27年8月の開設予定とし、東五反田四丁目については27年度中に着工し、29年度の開設をめざします。
このほか、民間の認知症高齢者グループホームや小規模多機能型居宅介護施設等の整備助成を行い、各種施設の充実を図ってまいります。
また、認知症高齢者グループホームの利用者負担額は、特別養護老人ホームと比べ負担が大きいため、認知症ケアが必要な高齢者が入所を断念し、特別養護老人ホームに申込みするケースがございます。こうしたことから、特別養護老人ホームへの入所基準の制度変更も踏まえ、利用者の家賃減額を行うグループホーム運営事業者に費用助成を行い、認知症高齢者グループホームの利用をしやすくしてまいります。

また、入院中の紙おむつ代助成を新設するとともに、在宅者の紙おむつ支給についても社会福祉協議会と連携して拡充を図るほか、緊急通報システム利用者負担金の減額などを行い、高齢者の地域での生活支援を一層充実してまいります。
さらに、近隣に公衆浴場のない南品川地区において、南品川シルバーセンターに浴室を設置し、高齢者の入浴環境を整備いたします。

次に、障害者福祉についてであります。
これまでも区では、バリアフリーなどのハード整備事業をはじめ、障害者の社会参加を促進するための事業を展開してまいりましたが、障害者差別解消法が制定されるなか、障害の有無に関わらず地域社会で共に生活するためには、地域や企業などの障害者に対する理解をさらに促進させる必要があります。27年度はそうした主旨のもと障害者施策をさらに充実させてまいります。

はじめに、品川区立障害児者総合支援施設の整備であります。今後、障害者の高齢化や障害の多様化・重度化などが見込まれており、住み慣れた地域で安心して暮らし続けられるよう、品川児童学園の改築に合わせ、障害者のライフステージを通して総合的、継続的な支援を行う地域生活支援拠点として整備してまいります。
また、障害者のグループホーム整備費や有資格者配置等の補助を新たに行い、民間施設の整備や開設を促してまいります。
さらに、近年増加傾向にある医療的ケアを必要とする障害児に対応ができる児童発達支援事業所が区にはないことから、看護師などの専門職配置などについて経費の一部を補助し、事業者の参入を促すことで、療育環境の整備をしてまいります。

次に、健康づくりについてであります。
27年度からは、健康、保健部門を所管する部を新設し、区民の健康づくりをはじめ、地域医療との連携や災害時の医療体制、新興感染症対策などの課題に積極的に取り組んでまいります。
区民の健康づくりにおいては、国民健康保険の基本健診やレセプトデータなどから、「品川区データヘルス計画」を策定し、生活習慣病の重症化予防などに役立ててまいります。 また、成人歯科健診において歯のクリーニングを実施し、口腔ケアによる健康づくりを推進いたします。

続いて、地域福祉への取り組みであります。
これまで、ひとり暮らし高齢者等の相談拠点を品川第二、荏原第二の2つの地域センターに設置しモデル展開しておりましたが、この成果を踏まえ、新たに機能を拡充し27年度は大崎第二、大井第二の2地区に新たに設置してまいります。
また、生活保護受給に至る前の生活困窮者に対して、新たに相談窓口を設け、早期に自立できるようきめ細かい支援をしてまいります。

(4)次代につなぐ環境都市

第4に、「次代につなぐ環境都市」についてであります。

はじめに、環境対策であります。
区民の環境や省エネルギーに対する意識の高まりを今後も持続させていくために、啓発ミュージカルを環境活動推進委員が主体となり作ってまいります。シナリオや楽曲など専門家の協力を得ながら、区民自らも演じてもらうことで、その啓発効果を高めてまいります。
また、商店街と連携した、節電啓発事業や国産間伐材を活用した事業も引き続き実施してまいります。
さらに、浜川小学校と伊藤小学校に太陽光発電設備を設置し、区有施設における自然エネルギーの活用を推進するとともに、LED照明の技術革新が進んでいることから、街路灯への設置を進め省エネルギーに役立ててまいります。

次に、公園整備でありますが、子どもたちのアイデアを活かした公園の4番目として、荏原南公園の改修に向け準備を進めてまいります。

(5)暮らしを守る安全・安心都市

第5に、「暮らしを守る安全・安心都市」についてであります。

はじめに、市街地再開発事業であります。
大崎駅周辺地区では、北品川五丁目第1地区において、区の産業支援交流施設や幼保一体施設なども配置しながら、5月の竣工をめざして進めております。また、西品川一丁目地区においては、本格工事を6月より着手する予定であります。
目黒駅前地区は、行政サービスコーナーなどの配置も行い、平成29年度竣工をめざしております。
また、武蔵小山駅周辺地区においても、パルム駅前地区の再開発を皮切りに、まちのリニューアルについて検討が進められているところであります。

次に、道路整備事業については、八潮地区の道路バリアフリー化について、27年度も引き続き整備するとともに、補助163号線の東急大井町線交差部について本格整備に入ってまいります。

次に、住環境の整備についてでありますが、今年度制定いたしました「品川区空き家等の適正管理等に関する条例」のもと、空き家の有効活用策についても検討しながら、庁内で横断的活動を行っている「地域の力支援チーム」との連携のもと、空き家の適正管理に努めてまいります。


以上が平成27年度の主な施策でありますが、これらを推進するための基本姿勢についてご説明申し上げます。

6.区政運営の基本姿勢

区がこれからも、様々な課題に対応し、新たな施策を展開するためには、今後も不断の行財政改革が必要であり、事業のスクラップ・アンド・ビルドを常に進めていくことが大切であります。また、健全財政を堅持することが、これまで申し上げた先駆的な施策を展開する上で重要なことであります。

そして、行財政改革の視点においては、公共施設有効活用プランの考えを軸に、区有施設の今後の改築需要などを見据えた上で、その有効活用を検討するとともに、活用の可能性がある国や都有地などについても、様々な手法による活用策について検討してまいります。

また、全国で人口減少社会が見通されており、都市と地方の税源偏在を理由に法人住民税の国税化が議論され、今般の国の地方創生の施策においても、東京への人口一極集中の是正が掲げられるなど、特別区と地方とが対比されることが多くなっております。しかし、地方との対立の構図が本来の問題ではなく、防災や産業、観光など様々な形で連携、協力して共存することが望ましく、そのような理解を広めていくことが大切であります。そのため、23区共同で展開している特別区全国連携プロジェクトにも積極的に取り組んでまいります。


7.平成27年度予算の概要

このようなことから、平成27年度予算は、重点課題であります防災対策の強化をはじめ、待機児童対策、高齢者や障害者への施策の充実など、課題の早期解決を行うとともに、未来に向けた予算といたしました。
編成にあたりましては、委託事業や新たに指定管理者制度を導入するなど、業務執行体制の見直し等により職員定数を5名削減し、約1億7,000万円の経費削減を行いました。
そして、これまで培ってまいりました財政力も活用しながら、一般会計予算を1,510億3,890万円とし、前年度比においては、プラス3.3%とし、必要な施策を着実に実現しながら、未来志向の予算としたものであります。


8.おわりに

今後も効果的・効率的な区政運営に努め、健全財政を堅持しながら、区民が真に必要とする施策を迅速かつ的確に推進し、「輝く笑顔 住み続けたいまち しながわ」をめざし、改めて不断の努力をしてまいる決意であります。

以上、平成27年度における施政方針をご説明申し上げました。議員ならびに区民の皆さまのご理解とご協力を重ねてお願い申し上げ、発言を終わります。ありがとうございました。
お問い合わせ

企画財政課
  電話:03-5742-6607