品川区の行財政改革

更新日:令和4年2月17日

1. 行財政改革の背景と必要性

 区では、品川区基本構想に掲げる将来像「輝く笑顔 住み続けたいまち しながわ」の実現に向けて、社会経済状況や災害の発生など、区を取り巻く環境の変化を踏まえた実効性のある施策を着実に実行するとともに、各分野において不断の行財政改革を進めてきました。

 品川区の人口の変遷を見ると、1964(昭和39)年の東京オリンピックの年をピークに減少してきましたが、1998(平成10)年以降増加に転じ、2010(平成22)年には人口35万人を超え、2019(令和元)年には40万人を突破しました。

 2018(平成30)年に行った将来人口推計では、2044(令和26)年まで増加を続け、同年に約44.8万人でピークを迎えた後に減少傾向に転じるとされ、2008(平成20)年以降人口が減少している日本全体の状況とは異なった傾向を示していましたが、新型コロナウイルス感染症の影響から、2022年(令和4年)2月1日現在では人口が減少傾向にあり、今後の動向や住民ニーズの変化について注視する必要があります。

 また、品川区の年間出生数は微増傾向にあり、令和2年の合計特殊出生率は1.21と、全国平均(1.31)よりも低く、東京都平均(1.13)よりも高い状況にあります。一方で、65歳以上の高齢者人口は20.21%と比率が高く、福祉分野の歳出圧力が高い状態にあります。

 その他にも区有施設の多くが老朽化し、将来に向けた整備や役割の整理などが求められており、区財政にとって大きな負担になることが見込まれています。
 このように、財政環境が一段と厳しさを増す中、中長期にわたり健全財政を維持しつつ、「だれもが住み続けたいと感じるまち」であり続けるための施策を展開していくためには、行財政改革を継続的に推進し、簡素で効率的な区政運営を行う必要があります。

2. 行財政改革の成果

 区では、区政を取り巻く環境や区民のニーズの変化に迅速かつ的確に対応し、充実したサービスを提供するため、事務事業の見直し、公共施設の有効活用、職員定数の削減等をすすめ、強固な財政基盤の維持に努めています。

(1)事業の見直し・公共施設の有効活用
 民間活力の導入の例として、平成27年より図書館への指定管理者制度を導入、平成29年より戸籍住民課の窓口委託を実施しました。また、窓口でのICT機器の活用、AIやRPAの活用による事務の効率化を推進しています。
 さらに、統廃合した学校・保育施設を「地域活動の場」「特別養護老人ホーム」として活用したほか、シルバーセンターのゆうゆうプラザ化など、施設の多機能化を進めています。

(2)職員定数の削減
 品川区は、昭和58年から不断の行財政改革を実施してきており、昭和57年度の職員定数(3,853人)と比較すると令和2年度には1,350人純減しました。

年度
S57   
S58~62   
S63~H4   
H5~9   
H10~14   
H15~19   
H20~24   
H25~29   
H30~R2   
見直し数
 ー
△448   
△117   
△330   
△703   
△424   
△216   
△79   
△26 △2,343
新規増
 ー  
296  *1 
73   
20   
333  *2
88   
72   
57   
54   *3 993
増減
 ー
△152   
△44   
△310   
△370   
△336   
△144   
△22   
28    △1,350
条例定数
3,853
3,701
【S62】
3,657
【H4】 
3,347
【H9】  
2,977
【H14】 
2,641
【H19】   
2,497
【H24】   
2,475 
【H29】  
2,503 
【R2】  
  ー

 *1  S58~62新規増のうち155人は八潮団地造成にともなうもの
 *2  H10~14新規増のうち289人は清掃事業移管にともなうもの
 *3  H30~R2新規増のうち23人は児童相談所移管準備にともなうもの

(3)財政指標から見た成果

指標   
概要   
対象
H14   
H18   
H22   
H26   
H30   
R2
経常収支
比率
財政の硬直化を示す指標で、おおむね70~80%が望ましいとされています。 品川区
79.7%
68.7%
78.8%
74.1%
71.9%
77.8%
23区全体
85.2%
73.0%
85.7%
80.7%
79.1%
81.9%
人件費比率 歳出(支出)に占める人件費の割合です。 品川区 26.6%
20.5%
20.1%
17.5%
14.6%
10.6%
23区全体 27.7%
23.1%
20.6%
17.3%
15.9%
12.6%
公債費比率 財政構造の弾力化を判断するものです。15%が警告ライン、20%が危険ラインといわれ、低い方が望ましいとされています。
平成18年度から実質公債費比率へと指標が移行されました。
品川区 6.3%
4.8%
  ー
  ー
  ー
  ー
23区全体 9.5%
6.8%
  ー 
  ー
  ー
  ー
実質公債費比率 公債費比率と同様に財政構造の弾力化を判断するものです。平成18年度起債から、許可制から同意制に変更されたことにより新たに採用された指標で、25%以上になると起債が認められなくなります。 品川区   ー
  ー
0.1%
△3.3%
△4.5%
△4.5%
23区全体   ー
  ー
0.9%
△1.8%
△3.4%
△3.4%
区債残高 区の借入金で、現在の区民の方だけでなく将来の区民の方にも負担していただくものです。 品川区 441億 380億 248億 180億 121億   
106億
23区全体 1兆
3,755億
1兆
100億
7,180億 5,478億 4,833億    4,721億
基金残高 区の貯金にあたるもので、健全な財政運営を確保する為に積み立てています。 品川区 518億 611億 685億 794億    1,016億    822億
23区全体 6兆
6,888億
1兆
907億
1兆
3,547億
1兆
4,115億
1兆
9,963億
2兆
1,100億

3. 今後の行財政改革の方向性

1. 基本的な考え方

 区民の幅広い意見を区政に反映させるため、区民ニーズを的確に把握し、それに応じた施策を展開していく必要があります。そのためには、さまざまな媒体を活用して区の情報を引き続き積極的に発信していくことや、事務事業を効果的・効率的に推進するための機動的で柔軟な組織運営が求められます。
 また、今後更新時期を迎える昭和30、40年代に建設された公共施設の改修・改築への対策や人口動向等を踏まえつつ、これまで以上に多様な区民ニーズに応えた施策を実行するために職員一人ひとりの能力をさらに高めるとともに、変化に対応できる組織体制を構築していく必要があります。
 
 さらに財政構造の弾力性を図る指標である「経常収支比率」は、2020(令和2)年度は77.8%となっており、19年連続で適正水準の範囲にありますが、今後も不断の見直しや歳入確保などの取り組みを実行し、健全財政を堅持する必要があります。

2. 具体的な方向性

(1) 情報発信を推進する
  ・区の情報を分かりやすく届けるため、紙や電子など多様な媒体、ICT(情報通信技術)を活用して必要な情報を直接・個別に提供するしくみを構築します。
  ・シティプロモーションや戦略的な情報発信により、効果的に区の魅力や施策を国内外にアピールしていきます。
  ・透明性の高い区政を推進するため、行政情報の公開や地域課題の解決につながるオープンデータの利活用などを進める一方、個人情報の保護を徹底します。

(2) 変化に対応して効果的・効率的に施策を展開する
  ・社会経済状況や人口構造の変化等に対応した施策を効果的・効率的に推進するとともに、民間活力の活用、財務情報の把握や行政評価などを推進します。

(3) 中長期的な視点で施設マネジメントを推進する
  ・長寿命化や複合化・機能融合などにより、公共建築物や道路などの土木インフラの的確な維持補修・更新・有効活用を図ります。
  ・公有地等について、多様な行政ニーズを踏まえた利活用に向け、民間活力の活用等、あらゆる手法を視野に入れ整備を進めます。

(4) ICTなどの先端技術を活用して利便性向上を推進する
  ・ICT(情報通信技術)やAI(人工知能)をはじめとする先端技術や、マイナンバーカードなどの活用により、
  区政運営のデジタル化・ペーパーレス化を推進し、来庁不要なサービス提供などの利便性向上や業務プロセスの改善を実現します。
  ・区が有するデータの分野横断的な利活用を促進し、より効果的に施策を展開すると同時に情報セキュリティ対策を強化します。

(5) 区民に信頼され実行力ある職員の育成と横断的な組織運営を推進する
  ・研修やジョブローテーションなどを通じた能力開発により、専門性や多様な主体と連携するコーディネート能力のある職員の育成を推進します。
  ・新たな課題に広い視野と新しい発想で取り組み成果を出す職場づくりを推進するとともに、仕事の進め方・働き方改革を行い、
  区民サービスの向上と業務効率化を両立させます。
  ・社会の変化に対応するため、柔軟で横断的な組織運営を行います。

(6) 健全財政を堅持する
  ・今後の財政需要を見据え、計画的に基金を積み立てるとともに経済状況を勘案しながら効果的・効率的な予算編成、健全な財政運営を引き続き堅持します。
  ・自主財源の安定的な確保に不可欠な税や保険料について、高い収納率を維持・向上させるとともに、キャッシュレス納付の推進など利用性向上に努めます。
  ・都区の税財源配分について、基礎自治体が担う役割にふさわしい適正なものとなるよう他区と連携して東京都へ働きかけ、財源を確保します。
  ・法人住民税の一部国税化、地方消費税の清算基準の見直しなどの不合理な税源偏在是正措置や、ふるさと納税制度のあり方等について、
  東京都や他区等と連携して国へ働きかけ、適切な制度運用を行います。
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