聞こえる人も聞こえない人も 手話で楽しむ能狂言鑑賞会 実施

更新日:令和4年7月18日

成上りの舞台の様子 太刀を盗むすっぱ 会場の様子(成上り)
会場全体の様子(土蜘蛛) 手話で演じる役者 土蜘蛛との戦い
手話で経緯を説明する役者 土蜘蛛との戦いシーン 鑑賞者の手元


 令和4年7月18日(月・祝)、十四世喜多六平太記念能楽堂(上大崎4-6-9)の喜多能楽堂で「"手話"で楽しむ能狂言鑑賞会」が実施されました。

 第6回を迎える当鑑賞会は、公益財団法人十四世六平太記念財団と品川区が共催で「聞こえる人も聞こえない人も一緒になって能狂言を楽しんでほしい」という思いを込めて開催されました。日本ろう者劇団による手話狂言「成上り」と、喜多流の能「土蜘蛛」の上演でしたが、能についてはこれまで行っていた手話による同時解説を外し、出演する能楽師が手話を交えて演じる形をとりました。手話という"見る言葉”の力を借りて、新しいかたちで日本の伝統演劇を表現しました。
 会場にはパイオニア株式会社が開発した「パイオニア・ボディソニック席」が導入され、お囃子などの音に合わせてポーチとクッションが振動し、耳が聞こえない人も音楽を感じ、楽しむことができる工夫がなされました。

 はじめに、演者の大島輝久さんと日本ろう者劇団が対話形式で、劇団の紹介や手話で狂言を表現することになったきっかけ、普段の稽古の様子などについて手話通訳を通じて説明。その後、上演する「成上り」と「土蜘蛛」のあらすじ、固有名詞の手話表現方法などが丁寧に説明され、演者の意気込みや見どころについて紹介されました。

 第一幕では、主人から預かった大切な太刀が盗人により竹刀にすり替えられてしまった太郎冠者(たろうかじゃ)が、主人に怒られまいと必死に言葉遊びを仕掛ける狂言「成上り」を上演。日本ろう者劇団がテンポよくおかしく演じ、三宅狂言会(※)が声を充てて表現されました。
 第二幕では、病に臥せる源頼光と土蜘蛛の精霊との戦いを描いた「土蜘蛛」を大島輝久さんらが手話能で上演。土蜘蛛との戦いのシーンでは、手から蜘蛛の糸に見立てた白く細長い和紙を出す派手な演出もあり、鑑賞者からは驚きの声と拍手が沸き起こりました。

 鑑賞会に参加した人は「迫力があって感動しました」「蜘蛛の糸の演出で舞台の世界に入ったような、異次元にいるような感覚に浸りました」と感想を話しました。

※三宅狂言会とは、普段から日本ろう者劇団の指導を行う三宅右近さん率いる狂言会のこと