公立学校の質的転換と信頼回復「学校選択制と教育委員会の役割」

更新日:平成29年12月27日

 これからの校長には、単に教育者の延長線上に位置付く優れた教育実践者としての存在だけではなく、スクールリーダーとしての組織マネジメントとアカウンタビリティの発揮を前提にした成果基盤型の学校経営能力が求められるようになってきています。管理職に対するこうした新しい資質・能力育成については、教育行政の立場からいえば、どうしてもOJTや様々な管理職研修に頼らざるを得ません。

 本区が行っている管理職研修の方法や内容も、従来型の教育論的管理能力の育成から経営論的管理能力の育成へとその内容をシフトし、それなりの工夫・改善を重ねてはいますが、おのずとそこには限界があることも事実です。特にそこで展開される「経営知」とでもいうべき「経営論」や「組織論」等々の内容が必ずしも系統的・論理的に構成されているわけでもなく、ややもすると対症療法的で単発的な内容にならざるを得ません。なぜならスクールリーダーとして真に必要な「経営知」とは、あくまでも「教育という営み」を前提にしたものとして捉えるのか、あるいは純粋に「経営マネジメント」として捉えるのかが明確になっていないからです。さらにこの場合の教育委員会のスタンスも課題となってくるでしょう。

 このような状況に加え、さらに大きな課題となってくるのが、実は管理職への動機付けの問題です。なぜなら教育界や学校現場では「経営」と言うわりに、その実「教育論」だけで全てを押し切ろうとする慣習や傾向が強く、経営論的発想は露骨で計算高く温かさや人間性に欠けているため教育という営みにはなじまないとする情緒的・感情的見解を色濃く残しているからです。したがって、「経営知」も大切だが(知らないより知っているほうが良いという程度)、今までの考え方や経営手法をより充実させることのほうがむしろ学校現場に課せられた使命である、という従来からの安穏(あんのん)とした考え方に落ち着くのが大方のところです。こうした意識が強い管理職に対して、「経営論」などの「経営知」をOJTや研修会でいくら強調してみたところで、所詮は耳学問の肥料にしかなりません。

 しかし、時代は既に確固たる経営論に支えられたスクールリーダー、常に切磋(せっさ)琢磨し成果を基盤に置いた、自律的学校経営の実現に向けて動き始めています。好むと好まざるとにかかわらず、結果的に「そうせざるを得ない状況」を学校の中に意図的に作り出すこと、「そうせざるを得ない状況」に学校や教職員を追い込んでいく「組織体としての力学」を発生させることが不可欠であると考えます。

 本区ではこうした考えを基に、従来からの学校経営に加えて、経営論的発想がどうしても必要不可欠となってくる施策が大切であると考え、小学校は平成12年度入学者、中学校は平成13年度入学者から「学校選択制」を導入し、「品川の教育改革『プラン21』」として、学校教育に新たな一歩を記しました。「学校選択制」の導入は保護者、子どもの要望に応えるという側面の一方、経営論的発想に根強い抵抗感を示す学校の体質そのものを変えていくことも目的としているのです。このような状況下での学校経営は、抽象的な言辞だけに頼ることを容認せず、本区における管理職研修とも密接な関連性を生じさせ、OJTをより有効なものたらしめる効果もねらったものといえます。

 以後本区の「プラン21」は、そのねらいを達成するための方策として、「学校選択制」、「外部評価制度」、「学力定着度調査」等の施策を導入し、特色ある学校づくりを進めるとともに、保護者・地域とともに新しい学校を創造してきました。これらは、教育論と経営論の両面からのアプローチを備えたものとなっています。

 こうした一連の施策により、本区の学校はこれまで潜在化されていた学校経営の様々な状況が顕在化され、外からも見えるようになってきました。これは、ある意味その学校の課題が明確になったということであり、言い換えれば学校改善のチャンスと捉えることができます。しかし、例えば学校選択による入学者の減少は、学校の努力とは別の要因が働いている場合もあります。また、人事や予算に関わることなど、学校の努力だけでは改善が困難な場合もあります。そこに、教育委員会の役割があります。本区では、こうした学校の状況を総合的に判断し、学校経営に対する支援を行っています。このように、本区の「学校選択制」は、その数に一喜一憂するのではなく、学校教育の質を高めるきっかけとして効果を挙げています。

学校選択制の実施

 対象者は小・中学校に入学予定の新1年生および新7年生です。現行の通学区域や指定校変更の制度は維持しつつ、保護者の意向を書面で確認する希望申請を、期限を定めて実施し、その希望申請に基づき、教育委員会は就学すべき学校の指定を行います。

 小学校は、品川区を4つのブロック(8校~12校)に分け、ブロック内で選択することができます。また、中学校は区内の全中学校から選択することが可能です。ただし、各学校の施設等の条件により受入れ枠を設ける場合があります。希望申請数が受入れ枠を超えた場合は、通学区域以外の希望者を対象として抽選することがあります。抽選になった場合、入れなかった人は「待機」とし、当該校に転出者等がいた場合繰上げを行います。

 実施方法や日程等については下記ページをご参照ください。

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